No.444
タイトル
ガッジョ・ディーロ
(原題)
GADJO DILO
監督
トニー・ガトリフ
脚本
トニー・ガトリフ
キャスト
ロマン・デュリス、ローナ・ハートナー他
制作
1997年/フランス、ルーマニア
ジャンル ドラマ
上映時間
100分
評価
★★★★★

【 ストーリー 】
死んだ父親の残した1本のカセットテープをもとに、ノラ・ルカという歌手を探し求めるフランス人の青年フィリップ(ロマン・デュリス)。やがて彼は、ルーマニアにあるロマの小さな村にたどり着く。寒さのために宿を求めるが叶わず、結局、近所にいたロマの老人イシドール(イシドール・サーバン)と飲み明かすことになってしまう ...。

【 コメント 】
自身もロマ人の血をひく(母親がロマ人)トニー・ガトリフ監督が、ロマの村を舞台に、フランス人の男とロマ人の女との魂の交流を描いた物語。タイトルの”ガッジョ・ディーロ”とはロマの言葉で”愚かなよそ者”の意味。本作では、主演のフィリップを演じるロマン・デュリスとロマ人女性サビーナを演じるローナ・ハートナー以外は、ほとんどが本物のロマの人々で、演技については素人だったため半ば即興的に撮影が進められたそうです。

豊かな音楽の文化を持ち、芸能の民として重宝される一方で、犯罪者扱いされるなど蔑まれているロマ(=国によってジプシー、ボヘミアンなどとも呼ばれる)の人たち。その重いテーマと現状を人間ドラマを通して、ある種爽やかに伝えてくれる作品。
主人公のフィリップは、父親が残してくれたカセットに収められたルーマニア人の歌手ノラ・ルカを捜し求める旅人。父親との関係、もしくは因縁などはほとんど描かれないのですが、いずれにしても彼はこの郷愁あふれる音楽の虜になっており、その音楽を生み出した文化に触れようとします。

そして、偶然たどり着いたロマの村で、”愚かなよそ者”でありながら幸運にも受け入れられ、ロマの人々との交流を通して、ノラ・ルカを捜し求め、行く先々で彼らの奏でる音楽を録音し、収集します。しかし、訳もなく犯罪者扱いされたり投獄されたり、ロマの人々を取り巻く環境は厳しく根は深い。フィリップは、そんなロマの人々や文化の上澄みだけをなぞっていた愚かな自分に気づかされます。
他者を、他者が築いた文化を、本当に理解することなどできるのでしょうか。
旅人は通り過ぎるからこそ旅人たるのかもしれません。また、流浪の民は自らの血の中に、文化の中に確固たる価値と信念を持っているからこそ漂えるのかもしれません。他者を通して自らを顧みる時、人は初めて自分以外の何かを理解できるのでしょう。旅をするという行為も、旅をしないという行為もすべてはそこから始まるのです。

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