No.283
タイトル
ギャベ
(原題)
GABBEH
監督
モフセン・マフマルバフ
脚本
モフセン・マフマルバフ
キャスト
シャガイエグ・ジョタト、アッバス・サヤヒ、ホセイン・モハラミ他
制作
1996年/イラン、フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
73分
評価
★★★
<ストーリー>
イランの素朴な絨毯(=ギャベ)に託す若い娘の愛の物語。遊牧民の一家に生まれた娘は羊を飼いギャベを織る。ある時、狼の声を出す男と恋に落ちるが、父親はよそ者との結婚を許さない。娘の一途な思いを感じ取った父親は、病気のおばあさんや独身のおじさんを使い、あの手この手で娘の恋の熱が冷めるよう時間を稼ごうとするが.....。

<コメント>
反体制運動家時代、警官をナイフで刺して懲役をくらったこともあるイランのモフセン・マフマルバフ監督作品。小川で美しい絨毯(=ギャベ)を洗っている老夫婦の前に現れた”ギャベ”と名のる若く美しい娘。父親に恋人との結婚を許してもらえなかったという彼女の語りから、老夫婦は不思議な世界に誘われていくというストーリー。

モフセン・マフマルバフ監督(それにしても発音しづらいですね)が自身のエピソードをベースに作った『パンと植木鉢』(1996)を見たときの衝撃は未だに忘れられません。こんな映画へのアプローチ、ストーリーテリングがあったのかと驚かされました。本作はその『パンと植木鉢』と同じ時期に作られた作品。ドキュメンタリーっぽく過去の事実をつなぎ合わせていく前者と比べ、こちらは”絨毯”をモチーフにファンタジックで幻想的な作品となっています。この監督の他の作品と見比べると異色な感じがしますね。フランスと合作と言うことも影響しているのかもしれません。

冒頭、突如現れる若い娘”ギャベ”役の女性の美しさ、繰り返し登場する絨毯の素朴な風合い等、イラン民族の持つ美意識や素材感と言うようなものが画面を通して伝わってきます。大勢の子供たちを前に”色”を説明する場面の力強いこと。ちょっとやりすぎの感が無きにしも非ず、ですが。
ストーリー的には、ちゃんと筋を追っていくのは結構難しいです。娘の語りと絨毯の絵柄、そして歌うように語る老人の言葉が複雑に絡み合います。この老人こそが馬に乗った若者なのでは、ととれなくもないですが、そういった内容の解釈よりも、イランの伝統的な”色”の美しさ、”色”に対する感性を伝えるための寓話と言った感じですので、素直に登場人物の語り、美しい風景、鮮やかな色彩に心を奪われながら鑑賞するのが良いのではないかと思います。
それにしてもイランの映画というのは、アッバス・キアロスタミ監督の作品もそうですが、何かしっかりと大地に根付いた人間の強さを感じさせてくれますね。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送