No.288
タイトル
風櫃の少年
(原題)
風櫃來的人
監督
ホウ・シャオシェン
脚本
チュー・ティエンウェン
キャスト
ニュー・チャンザイ、チャン・スー、チャオ・バンジュ他
制作
1983年/台湾
ジャンル ドラマ
上映時間
101分
評価
★★★★
<ストーリー>
風櫃(フンクイ)に住む阿清(ニュー・チャンザイ)と彼の友人たちは、いたずらや喧嘩に明け暮れる日々。阿清の父親は野球の試合中の事故が元で、廃人同然となっている。ある日、対立するグループとの争いが警察沙汰となり、家に戻ることが出来なくなった阿清らは、地方都市の高雄に行くことを決める。高雄に着いた彼らは、新しい生活を始めるが.....。

<コメント>
『悲情城市』(1989) 以降、『戯夢人生』(1993)や『好男好女』(1995) 等、製作したほとんどの作品がカンヌやヴェネチア等の国際映画祭で高い評価を受けるという、アジアのみならず世界的にも重要な作家である侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品。監督自身の経験を重ね合わせて作った青春ドラマで、風櫃の田舎でくすぶっていた若者が触れる人生の機微を表現した作品です。

前半、風櫃を舞台にした場面は、田舎の若者たちの鬱屈をストレートに描いています。さまざまな暴力沙汰や脳に障害のある父親の描写等がありながらも、重くなり過ぎないのは、やはり島の美しい風景と生活する人々の素朴な描写が優れているからだと思います。このあたりの手腕はさすが。主人公のアーチンら3人はビリヤードや喧嘩に明け暮れる日々ですが、釣りをする場面にしても、食事の場面にしてもどこか牧歌的で微笑ましい。もちろん、そうは言っても、やりたいことも見つからず、将来に希望が持てない若者の不安は浮き彫りにされています。3人が対立するグループと警察沙汰になり、高尾という地方都市に舞台に移してからは、人の多さ、街の喧騒が画面を覆いつくします。主人公も工場で単調作業を繰り返すだけで、場所は変わっても、相変わらず先が見えないのは同じ。同じアパートに同棲するカップルがいるため、アーチンの心の揺れは増すばかりです。
同監督の他の作品と比べると小品という趣ですし、90年代以降に作られた作品と比べると、まだまだ洗練されていない感がありますが、広角で長回し等の手法はほぼ確立されていて、生々しいリアルな心情描写は見ごたえがあります。同棲するカップルやテープを売る商売等、社会そのものが変革や過渡期を思わせる描写が主人公の心情とリンクしていて、ドキュメンタリー・タッチの映像と合わせて、観ている側の心も揺さぶられるようです。
人生は思うように行かないし、本当にやりたいこと等、あるのかどうかすらわかりません。だからこそ、その時その瞬間に自分の生を思い切りぶつけるしかないのです。

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