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No.99 |
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タイトル
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友達のうちはどこ? |
(原題)
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WHERE IS THE FRIEND'S HOME? |
監督
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アッバス・キアロスタミ |
キャスト
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ババク・アハマッドプール、アハマッド・アハマッドプール他 |
制作
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1987年/イラン |
ジャンル |
ドラマ |
上映時間
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85分 |
評価
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★★★★★ |
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<ストーリー>
舞台はイラン北部の寒村。あるクラスでノートではなく紙切れに宿題を書いてきた子に対し、先生は「今度やったら退学だ」と厳しく言い渡す。その子が泣くのを心配しながら見ていたアハマッドはあやまってその子のノートを持って帰ってきてしまう。アハマッドはとにかくノートを返さねばと、その子の家を探すために隣村に出かけていくのだが、家はなかなか見つからず.....。
<コメント>
イラン映画を広く世界に知らしめた功労者であり、いまや世界を代表する監督となったアッバス・キアロスタミ監督の作品。このサイトを始めた当初から「いつキアロスタミ監督を載せよう、どれを載せよう?」と思い悩んできました。他にもそういう監督は山ほどいますが、キアロスタミ監督に関しては今回メルマガのコラムと併せてやっと載せる決心がつきました。
私がキアロスタミ監督の作品と最初に向き合ったのは、実は友人からもらった彼の写真集でした。それまで名前を聞いたことはありましたがちゃんと作品を見たことの無かった私は、派手さは無いけれど間違いなく”美しい”と感じさせるその魔法のような写真に惹かれました。そして映画を見てさらに驚きました。生活がリアルに伝わってくるドキュメンタリー・タッチの作風、派手な色使いは無いけれど絵画的に美しい絵作り、なんと言うことはない単純なストーリーなのに最後まで目が離せない演出、それはまさに魔法にかかったようでした。その後、初期に子供を撮った作品が多いのは、イランでは検閲が厳しいためであることや、一見ドキュメンタリー風ですが、その裏では過剰なぐらい演出が行われていること(たまに槍玉に挙げられますね)等を知り、計算し尽くされたエンターテイメントとリアルの境を揺れ動く彼の世界にさらにハマっていきました。
この作品は俗にいう「ジグザグ3部作」(ご覧になればわかると思います)の最初の作品で、彼の出世作でもあります。1989年のロカルノ国際映画祭で銅豹賞等5部門に輝きました。あやまって友達のノートを持って帰って来てしまった少年が、ノートを返すために奔走するだけのストーリー。しかし独特の間を生かした心理描写が巧みで思わず主人公の少年に感情移入してしまいます。さらにヒッチコックにも通ずるようなサスペンスっぽい演出もあり、最後まで飽きさせません。冒頭、やみくもに規律を守ることを強調する教師の姿勢や、一方的に孫をしつけようとするおじいさんの態度の描写には、古き体制に対する批判も含まれている気がします。また、子供の言うことを聞き入れない母親や、途中で出会う歩くスピードも考え方も違う老人と少年の間には子供と大人の境界線がきっちりと見て取れます。そういうメッセージも多く盛り込まれているものの、最後に作品を締めくくるのはハッとさせられながらも心温まるラストシーン。いろんなことを感じながらも、これを見た人は無くしていた宝物を見つけ出したような気持ちになるでしょう。
とは言え、エンターテイメントとも呼べないジャンク・カルチャーが横行し、うわべだけの派手な仕掛けに慣れてしまった日本人の中には作品の途中で寝てしまう人も多いかもしれません。もちろんそういう人を非難するつもりはありません。重要なのは”少なくともある人たちの心を激しく動かす作品”を自分はなぜ理解しないのか?(出来ないのか、と考える必要は全くありません)を考え自分を見つめなおすことだと思います。作品の良し悪しはすべて自分が決めることですからそれで良いのです。しかし、傑作も駄作も様々なことを考えるきっかけになります。それが映画を見たり本を読んだりする上で一番大切なことだと思います。オススメ。
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