No.233
タイトル
記憶の扉
(原題)
UNA PURA FORMALITA
監督
ジュゼッペ・トルナトーレ
キャスト
ジェラール・ドパルデュー、ロマン・ポランスキー、セルジオ・ルビーニ他
制作
1994年/フランス、イタリア
ジャンル サスペンス
上映時間
112分
評価
★★★★
<ストーリー>
舞台は北イタリア、トスカーナ地方。豪雨の中を走り続ける作家のオノフ(ジェラール・ドパルデュー)は、突然警察に捕らえられる。雨漏りがする取調室の中で警察署長(ロマン・ポランスキー)の尋問を受けるが、オノフの記憶はあいまいで的を得ない。なかなか拘束が解かれないことに苛立つオノフだが、やがて自分に殺人の容疑がかかっている事を知る.....。

<コメント>
『ニュー・シネマ・パラダイス』(1989)、『海の上のピアニスト』(1999)等の作品で日本でも人気が高いジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。『戦場のピアニスト』(2002)の監督ロマン・ポランスキーとフランス映画界の重鎮ジェラール・ドパルデューの二人の演技が真っ向から激突します。二人の男の心理描写を通して謎に満ちた事件を解きほぐしていく展開は、どちらかとうとヒューマン・ドラマが印象的な同監督の中でも異色作に数えられる作品だと思います。

冒頭こそちょっと陳腐なタイポグラフィーと男のあえぎ声、不安定に揺れる画面がB級サスペンスを思い起こさせますが、主人公が捕まってからの映像はアンドレイ・タルコフスキーを連想させる凝った作り。舞台となる部屋にあふれる”水”が非日常空間を作り出しています。主人公オノフがフラッシュバックする場面も良い意味で90年代っぽい感じ。
オノフの記憶はあいまいで供述も矛盾も多く、尋問する刑事たちも事件の真相を隠しているようで歯切れが悪い。しかし、主人公を演じる俳優二人の演技に迫力があり、緊張感も途切れないため、リアリティを保ったままぐいぐいと物語に引き込まれていきます。
とある殺人事件が発端となっているのですが、二人のやり取りは、事件の真相を追究するというよりも、お互いの人間性を抉り出しあう駆け引きの様相を呈してきます。床にたまった水、記憶にないシャツの血、書けないボールペン、不条理な事象が続く中で、彼らが紡ぐ言葉だけが世界を構築しています。そしてそれらの事象や言葉が複雑に絡み合いながら、やがて結末に向かって収束していく。トルナトーレ監督の作品は、時にやりすぎを感じさせる場合もあるのですが(その分涙の量は増える...笑)、物語における謎の部分が解明されていく過程が、最小限の情報量で上手くまとめられていると思います。
テーマとしては宗教的な要素もあるため、日本人には完全に理解することは難しいのかもしれません。であれば、それはそれとして、もっと徹底的に映像美や芸術的な演出を突き詰めても面白かったかも、と思いました。でも、それじゃ本当にタルコフスキーか。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送