No.171
タイトル
シングル・ガール
(原題)
LA FILLE SEULE
監督
ブノワ・ジャコー
キャスト
ヴィルジニー・ルドワイヤン、ブノワ・マジメル、ドミニク・ヴァラディエ他
制作
1995年/フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
90分
評価
★★★★
<ストーリー>
ある朝、ヴァレリー(ヴィルジニー・ルドワイヤン)は妊娠したことを恋人に告げる。その日は彼女がホテルのルーム・サービスとして仕事を始める初日でもあった。恋人との口喧嘩、そして職場での様々な客との出会い、母親との電話のやりとり。妊娠を契機にありふれた日常の中で少女は大人へ変わっていく.....。

<コメント>
フランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』(2002)にも出演したヴィルジニー・ルドワイヤン主演のドラマ。”妊娠”という女性にとって人生最大の出来事を前に揺れ動く心と自立への過程をリアルタイムで捉えた作品です。
ストーリー的にはシンプル。妊娠を打ち明けた少女が、彼氏の頼りなさに落胆し、あせりと不安を抱えながら、新しい職場で仕事をする物語。で、まず驚くのはその手法。冒頭、恋人に妊娠を告げた後、仕事場のホテルまで急ぐ彼女を、そのままリアルタイムで追いかけるカメラ。さらにそこで終わることなく、その後もずっとカメラは彼女を付回します。つまりこの作品は作中の時間の進行と映画の上映時間が一致する作りなのです。
同じく1995年にアメリカで製作されたジョニー・デップ主演の『ニック・オブ・タイム』も、リアルタイムで仕上げられたサスペンスでした。この手法は観客をスクリーンに釘付けにし、緊張感を与える効果があるのではないかと思いますが、リアルタイムでさまざまな展開があるため、逆にリアリティを失う結果も招きかねません。また、本作では、客観的な視点でありながら時に主人公の視線そのままの動きも見せる映像は、常に”映画”であることを意識させます。しかし、こういった手法が本作では主人公が抱える不安を浮き彫りにし、より深く感情移入できるような効果を生んでいると思います。特に、彼のいるカフェと仕事場であるホテルを行き来する映像は、彼女が今まさに不安に直面しているのだということ、それでいて街は、そして人々は何らその事実とは関係なく動いているのだという現実感と浮遊感が混ざり合った複雑な感情を表現していると思います。だからこそ私たちは自分自身で決断しなければならないのです。彼女の心は、仕事による社会との接触やさまざまな出来事を経験するうちに、徐々に変化し、成長していきますが、ここのくだりは、”日常的な生活の中で”というよりも”次から次へといろんなことが”という感じで少し残念。まあこういう手法を使っている限りしょうがないのかもしれませんが。

私たちが人生の中でいろんな選択をしなければならない時、それがいかに需要なことであっても、それを行うのはエレベータが来るまでの待ち時間かもしれないし、朝食を部屋に運んでいる最中かもしれないし、自分のことについてあれこれ質問されている瞬間かもしれない。でも、私たちが生きている世界はそんな風にあやふやだし、頼りないものなのです。本作はそんな人間の心の動きや変化を捉え、そして女性の強さを見事に表した作品だと思います。
ちなみに本作で主演のヴィルジニー・ルドワイヤンは、プラハ国際映画祭最優秀女優賞を受賞しました。

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