No.119
タイトル
ファーノース
(原題)
FAR NORTH
監督
サム・シェパード
キャスト
ジェシカ・ラング、チャールズ・ダーニング、アン・ウェッジワース他
制作
1988年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
90分
評価
★★
<ストーリー>
バートラム(チャールズ・ダーニング)は大地のように誇り高く頑固な男。信頼する愛馬に振り落とされたことがプライドを傷つけ、馬を殺すことを決心させた。彼は怪我で入院している自分の代わりに都会から戻った娘ケイト(ジェシカ・ラング)に馬を殺すよう依頼するが.....。

<コメント>
アメリカを代表する俳優・劇作家であり、『砂丘』(1970)、『パリ・テキサス』(1984)等の脚本でも知られるサム・シェパードの初監督作。アメリカの北方に生きる人々の気質・風土を背景に、古き良き時代の終焉を軽やかに切り取った作品です。もちろん脚本も手掛けています。

オープニングのスタイリッシュともミステリアスとも呼べる凝った演出はさすが個性派、と言いたくなる出来。最初からぐいっと引き込まれます。所々に挟み込まれる風景描写も派手さはないものの、非常に豊かな色彩で素晴らしい。こういった映像の美しさが、北に生まれ育った人々が持つ、故郷への愛を代弁している気がします。
ただ、ストーリー的には、家族を支え養うことに誇りを持ってきた昔ながらの男達への哀歌とでも言うべき内容。意外と視点はシビアです。昔は日本でも小津安二郎監督の作品で見られるように、子供達は父親に対して敬語を使っていました。本作品でも昔の男達は家の外では戦い、中ではテーブルを埋め尽くし、そして女達はそんな男達に尽くすことに喜びを感じてきました。しかし、そんな栄光も今は昔、主人公ケイトの父親は寄る年波に勝てず、馬から落馬して入院、その仇を娘に頼む始末。娘の差し入れがレモン・ドロップとういのも子供じみていて、さらにそれをなめている姿は何とも滑稽。主人公のおじにあたる男も酒とギャンブルにのめり込んでいて冴えない。反面、家に残された女達はそれぞれに問題を抱えながらもしっかりと日々を生きており、自由で奔放な一面ものぞかせる。このあたりの描き方は対照的で批判精神に溢れています。
物語の主となるジェシカ・ラングやチャールズ・ダーニングのキャスティングは成功していると思いますし、その他の俳優も実力派から若手までこだわりを感じさせるラインナップなのですが、それぞれの人間性の描き方が少しもの足りなく、人間関係の崩壊に伴う悲哀というものは思ったほど伝わってきませんでした。ジェシカ・ラングは都会での生活や男との関係についても掘り下げて欲しかったし、パトリシア・アークエットのキャラクターも説明不足で少し浮いている感じ(しかし、彼女はこの頃から充分魅力的ですね)。さすがにラストでは北の果てを象徴する情景描写を背景に哀愁を感じさせますが、幻想的なシーンやロードムービー的なアプローチ等、途中何度かお目にかかるこだわりの(というかトリッキー?)演出の割には平凡な印象でした。なので評価の★は2つ。まあ、初監督作としては良くも悪くも無難な出来というところでしょうか。

<以下、ネタばれ注意!>
結局は馬を殺せない父親、そして馬と一緒にどこへともなく消えていくラストのロングショット。受け取り方によってはシビアな終わり方ですが、サム・シェパードが、男達の地位の凋落に寂しさを感じながらも、彼らの優しさをクローズアップさせたようにも見える、叙情的で印象に残るシーンです。

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