No.212
タイトル
ファーゴ
(原題)
FARGO
監督
ジョエル・コーエン
キャスト
フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェーミ、ウィリアム・H・メイシー他
制作
1996年/アメリカ
ジャンル サスペンス
上映時間
98分
評価
★★★★★
<ストーリー>
ノース・ダコタ州・ファーゴ。多額の借金を負い、生活が破綻しそうな自動車セールスマンのジェリー(ウィリアム・H・メイシー)はとんでもない解決方法を思いつく。前科者二人組みを雇い、自分の妻を偽装誘拐させて、自動車業界の大物である義父から身代金をだまし取ろうというのだ。ところが事件はジェリーの思惑を超えて思わぬ方向に転換する.....。

<コメント>
独特の映像美と微妙な心理描写で見るものをとりこにするジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督・製作の作品。普通の人々の日常が複雑に絡み合いながら異様にねじれていく様子を、雪の白をバックにしたクールな映像をベースに描き出しています。他の作品と同様に本作の脚本も兄弟で手がけていますが、実際に起こった犯罪がベースになっています。
個人的にコーエン兄弟の大ファンなのですが、その中でもかなり好きな作品です。冒頭の真っ白い空間の描写から、”先行きの見えない漠然とした不安”が浮き彫りになっている気がして、思わず引き込まれてしまいます。ストーリー自体は終わってみれば何という事のない犯罪モノなのですが、全体を支配するどんよりとした緊迫感が最高ですね。『バートン・フィンク』(1991)の映像も好きでしたが、壁紙がめくれる等の暗喩的な映像が少ない分、こちらの方がリアリティが感じられます。

例えば、戦争等の極限状態では、人を殺すという行為に対する罪悪感が麻痺してしまうのと同じように、人間が自分の考えや周りの状況に飲み込まれて行動を起こす時、おそらく当人の精神状態は”普通”(少なくとも自分にとっては)なのではないかと思います。で、それは、実は極限状態でなくても起こりうることで、雪がうずたかく積もっている、という状態も異様と言えば言えなくもないと思うんですよ。しかし、そこで暮らしている人はそうは思わない。そういう空間や心理状態のねじれがうまく描写されているなあと。だから、コーエン兄弟の作品は、人間が常日頃から抱いている考えや欲望をほんの少し表に出したことから、日常生活が砕けていく様を描いた物が多いと思うのですが、意外と無理が無いんですよね。それと絵画的な構図の美しいシーンも多いので、そんなに奇をてらったストーリー展開が無くても、印象深い作品として記憶に残るんです。

本作では、キャスティングも最高ですね。婦人警官役のフランシス・マクドーマンド(ジョエル・コーエン監督の奥さん)は常連とは言え、彼女の存在のおかげでうまくバランスが保たれていると思います。彼女がいないと、内容的に結構人も死にますし、救いがないという意見もさもありなん、ですよね。彼女は本作で1996年アカデミー賞の主演女優賞を受賞しました。またスティーブ・ブシェーミは、異様な雰囲気をかもし出すのに一役買っています、というのはかわいそうでしょうか(笑)。
確か公開当時の本作のキャッチコピーは「人間はおかしくて、哀しい」だったと思いますが、コーエン兄弟の作品全般に当てはまる良いコピーだと思いました。

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