No.85
タイトル
二重の鍵
(原題)
A DOUBLE TOUR
監督
クロード・シャブロル
キャスト
ジャン・ポール・ベルモンド、ベルナデット・ラフォン他
制作
1959年/フランス
ジャンル サスペンス
上映時間
100分
評価
★★★
<ストーリー>
南仏ニースの近くに豪邸を構えるマルクー一族。当主のアンリとテレーズの間には2人の子供がいた。息子のリシャールはかなりのマザー・コンプレックス、娘のエリザベートは無頼者ラズロー(ジャン・ポール・ベルモンド)に夢中。テレーズは無頼者ラズロを良く思わず娘を心配するが、そんな中、当主のアンリはラズローの友人レダ(アントネラ・ルアルディ)と愛人関係に。緊迫した人間関係の中でやがて殺人事件が起きる。.....。

<コメント>
ヌーヴェル・バーグの鬼才クロード・シャブロル監督の作品。脚本まで手がけています。フランスを代表する伊達男ジャン・ポール・ベルモンドが主演、ヌーヴェルバーグでははずせない女優ベルナデット・ラフォンが出演しています。原作はアメリカの小説家スタンリー・エリンの『ニコラス街の鍵』。

原作者のスタンリー・エリンはどちらかと言うと短編が有名な作家で、この作品は彼の初期の長編をベースにしています。”短編が有名”といっても、では長編が面白くないかと言うとそんなことはありません。しかし監督はサスペンスとしての土台が欲しかっただけのようで、原作の持ち味を十分に引き出して映像化、という方向性は感じられません。「誰が殺したのか?」という殺人の謎解きや犯人と刑事(役割的には被害者の友人であるジャン・ポール・ベルモンド)の駆け引き等はあっさりしています。また演出的にはヒッチコックを連想させる場面も少なくないです。しかしいかにもヌーヴェルバーグという感じの美しい色彩の映像と過去を思い起こすフラッシュ・バックの手法はとても印象的です。フラッシュバックの部分は正直効果的なのかどうか判断しかねますが、色使いは素晴らしいですね。特に被害者と主人の愛し合う場面は特筆ものです。ストーリー的には裏切られる妻の方がかわいそうな感じがしますが、この妻・テレーズ役をマドレーヌ・ロバンソンが熱演。彼女は同年のヴェネチア国際映画祭で女優賞を受賞しています。また、ベルナデット・ラフォンの魅力炸裂の冒頭部分も良いです。これは必見。
個人的にはここでのジャン・ポールベルモンドは大好きです。彼のキャリアの中では初期の作品ですが、結構良い方に入るのではないかと思います。飾らない素直さが時に下品にも映りますが、その言動の裏には常に優しさが隠れている、そんな感じです。彼が朝からワインを飲みながら食事をする場面や貧乏な友人に気前良く酒を振舞うシーン等、単なる無邪気では済ませない可愛さや暖かさが感じられます。

原作は読んでいないのですが、ハヤカワミステリから文庫本で出版されているようですので興味のある方はこちらも要チェック。同じシャブロル監督でももっとサスペンス風味を味わいたいのであれば、パトリシア・ハイスミス(彼女が原作の『太陽がいっぱい』(1960)のリメイク『リプリー』(1999)が映画化されたときに、ちょっとした復活ブームがありましたね)原作の『ふくろうの叫び』(1987)あたりがオススメです。

(以下、ネタばれ注意!)
当主アンリが愛人レダと過ごした時間をフラッシュバックする場面は確かに素晴らしいですが、個人的にはこれは作品の設定として主人が犯人の場合の方が効果があるのではないかと思います(この作品ではそれはありえないので、主人がうるさい奥さんを殺した場合等)。そうでないと映像的な手法としての意味合いばかりが強くなってしまう気がします。そんなことは関係なく、美しければ良いということかもしれませんが。

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