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No.83 |
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タイトル
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ドクター |
(原題)
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THE DOCTOR |
監督
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ランダ・ヘインズ |
キャスト
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ウィリアム・ハート、エリザベス・パーキンス、クリスティーン・ラーチ他 |
制作
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1991年/アメリカ |
ジャンル |
ドラマ |
上映時間
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123分 |
評価
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★★★ |
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<ストーリー>
恵まれた家庭と高い名声、優秀な外科医ジャック(ウィリアム・ハート)の順調な人生が突然の病に倒れることで一転、一人の無力な患者になる。弱いものになってはじめて気づく事務的で冷たい病院のシステムや医師の態度。死への不安や恐怖と格闘する中で彼は一人の女性患者と出会う.....。
<コメント>
『愛は静けさの中に』(1986)でアカデミー賞5部門にノミネートされ注目を浴びたランダ・ヘインズ監督が、再びウィリアム・ハートを主演に向かえて放つ病院を舞台にした人間ドラマ。患者にとって病院とは何なのか、医者とは何なのかをあらためて問いかける作品です。
医者が患者の立場になって初めてその不安や孤独を知り、やがて人間性を取り戻し同時に人生を取り戻していくという、テーマとしてはありがちとも言えるものです。ストーリーに絡んでくる登場人物やエピソードも、重病患者の女性および彼女との関係、それまでは幸せだった家庭の崩壊、同僚との確執、等々特にひねりが効いているわけでもありません。しかし、しかし、ウィリアム・ハートの優しさに包まれたリアリティ溢れる演技にまたしてもやられてしまうのです。前半の自信が少し鼻につくような性格の描写(少しやりすぎの感じがしないでもないですが。多分日本では絶対ありえないと思う描写も...)から、途中、恐怖と不安に苛まれ空虚な人間性を露呈する場面、他人との関係から人間性を取り戻し、立ち直っていく終盤、うーん、どれもうまいですね。
また、彼に示唆を与える女性患者ジューンを演じるエリザベス・パーキンスも良いです。治る見込みの無い病気を抱えながら、はかなくも力強く生きる女性像をうまく演じていて好感が持てます。彼女はジャックが実は人に心を開くことのできない人間であること、ゆえに妻とも距離を置いていたこと(これは病気になって初めて気づかされることですが)、そういった彼の心の問題を解きほぐしていくのですが、このあたりも無理がありません。地位と名誉を手に入れ、やがてそれを維持することが人生の目的となってしまい、子供とも十分にコミュニケーションをとってこなかったジャック。そんな彼が真っ直ぐに自分を見てくれる彼女に惹かれたのは当然といえば当然です。共に未来を失った2人が車を走らせ、途中ダンスを踊って心を通わすシーンは映像の美しさも手伝い、心に残ります。
ただ、残念なのはこの2人の絡みが最大の見せ所で、後は総じて平坦な印象しか残らないことです。夫婦の関係は最終的に少しご都合主義的にまとめてしまった感じがしますが、ここはもっと深く描いてほしかったし(はっきり言って妻役のクリスティーン・ラーチは違うキャスティングでもよかったかも)、子供との関係や患者との訴訟問題についてもちょっと消化不良といった感じです。
それでも全体的にはそれなりにまとまった佳作といった感じで、見終わった後の爽快感はなかなかでした。
ラストシーン、何気ない小話が私たちの胸にすうっと入り込み、肩の力が抜けるようなカタルシスを感じさせたかと思うと、その後のウィリアム・ハートの自然な微笑みの演技が私たちの胸を熱くします。
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