No.115
タイトル
デストラップ・死の罠
(原題)
DEATH TRAP
監督
シドニー・ルメット
キャスト
マイケル・ケイン、クリストファー・リーヴ、ダイアン・キャノン他
制作
1982年/アメリカ
ジャンル ミステリー
上映時間
116分
評価
★★★★
<ストーリー>
シドニー・ブリュール(マイケル・ケーン)はブロードウェーのロングラン記録を持つ人気劇作家。しかし最近は失敗作続きで最新作も初日に酷評される始末。そんな自分の才能に絶望する彼の下に届いたのは、かつての教え子クリフ・アンダーソン(クリストファー・リーブ)からの原稿。そのミステリーの原稿があまりにもよく出来ていたことから、彼にある考えが浮かぶ.....。

<コメント>
『ブラジルからきた少年』(1978)や『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)等で知られるアイラ・レヴィン原作、『キャバレー』(1971)のジェイ・プレッソン・アレン脚本、監督が『十二人の怒れる男』(1957)のシドニー・ルメットという、これだけで十分食指をそそる作品。もともと大ヒットした舞台劇を映画化したもので、最後まで読めないストーリー展開はさすが。
こういう風にストーリーが二転三転する脚本の場合、演出が単調だと途中でリアリティを失ってしらけてしまう場合があります。例えばデヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』(1997)なんかがそうでした。脚本は悪くないのですが演出が今ひとつで、結局は物語が「ゲーム」か「そうでない」かのいずれかに集約されてしまい、ラスト近くで興ざめになってしまった記憶があります。そうなるといくらエンディングでジェファーソン・エアプレインの名曲『ホワイト・ラビット』を流したところで、現実と虚構の狭間を漂ったような浮遊感は得られません。その点、本作ではラストまでしっかり盛り上げてくれます。霊媒師に対する伏線の張り方や、部屋に飾られた数々の凶器の小道具の使い方もうまい。戯曲の映画化と知っていて見たからかもしれませんが、どうしても構図といいセリフの言い回しといい、舞台的に感じられる部分もありますし、途中「やりすぎでは」と思わせるほど稲光や暗闇を多用します。しかし、原作がもともと室内劇だったこともあるでしょうし(まあこれは回避しようと思えばいくらでも出来たでしょう)、見終わった後、「なるほど、それも狙いだったのかも」、と思わせられるところもあるので、個人的には納得。
マイケル・ケインとクリストファー・リーブの演技ももちろんこの作品の成功に貢献しています。マイケル・ケイン演じる主人公のシドニーは、現在は落ち目とはいえ一度は栄光を手にした脚本家。他人に殺意を抱くまでには相応の苦悩が必要です。序盤のシーンで心に闇を抱えている人物像とその人物の苦悩を炙り出すお手並みは、演出もさることながら、マイケル・ケインの演技のおかげもあるはず。ショー・ビジネスの世界に生きる人間のプライドと垢が見事に伝わってきます。それにしても、『オースティン・パワーズ』でパワーズの父親役を演じた彼ですが、そのカッコよさは健在でした。日本人で言うと田村正和かなー。

社会派で重厚さが持ち味のシドニー・ルメット監督の作品としては平凡な感じは否めませんし、エンターテインメントの域を出ない印象はありますが、戯曲の映画化としては成功していて、ミステリーとしても一級品だと思います。
ちなみに主人公の妻を熱演したダイアン・キャノンは、残念ながら1983年のラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)・ワースト助演女優賞にノミネートされてしまいました。ちょっと演技が大げさすぎたか。

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