No.149
タイトル
キャリントン
(原題)
CARRINGTON
監督
クリストファー・ハンプトン
キャスト
エマ・トンプソン、ジョナサン・プライス、スティーヴン・ウォーディントン他
制作
1995年/イギリス、フランス
ジャンル ドラマ
上映時間
122分
評価
★★★★
<ストーリー>
20世紀初頭のイギリス。男勝りの画家ドーラ・キャリントン(エマ・トンプソン)は作家のリットン・ストレイチー(ジョナサン・プライス)と出会い、恋に落ちる。しかし、実はリットンは同性愛者であり、二人はいわゆる普通の男と女の関係にはならなかった。それでもキャリントンは彼を愛し続ける.....。

<コメント>
原作はマイケル・ホルロイド著の評伝『リットン・ストレイチー』。リットン・ストレイチーはゲイであることを公にし、反戦主義を貫いた伝記作家。これを英国演劇界の重鎮で、これが初監督作となる劇作家クリストファー・ハンプトンが映画化。主演は『ハワーズ・エンド』(1992)でアカデミー主演女優賞を受賞したエマ・トンプソン。共演は『未来世紀ブラジル』(1985)のジョナサン・プライス。彼はこの作品で1995年のカンヌ国際映画祭・主演男優賞に輝きました。本作品は同映画祭の脚本賞を受賞。ちなみにエマ・トンプソンが演じるドーラ・キャリントンは20世紀初頭に実在した女流画家です。

このキャスティングですから、やはり主人公二人の演技が見ものです。非常に繊細で深いドラマでありながら、主人公の二人は見た目的にはどちらかというと野暮ったい。しかし、エマ・トンプソン、ジョナサン・ブライスともに芯の強い精神を持ち、さらに知性を感じさせる人物像をリアリティを持って演じています。エマの女性らしい優しさを持ちながらも少年のような輝きを感じさせるの瞳の演技!そしてジョナサン・ブライスの、ひげで覆われてほとんど表情がわからない中での微妙な感情表現。二人の振る舞い、そして熱いながらも距離を保ち続けるクールさ、この距離感が思わず間に飛び込みたくなる切なさを感じさせます。
リットンへの一途な想いに駆られながら、流れに身を任せるまま次々と男たちに抱かれていくキャリントンを見ていると、性別や国籍等の表層的な記号はどろどろと溶け始め、人と人を結びつける絆、そしてその絆の持つ驚くべき強さに胸を打たれます。キャリントンを取りまく男たちの描写も良く出来ていて、とりわけ彼女がリットンを繋ぎとめるために結婚するレイフの描写は興味深いです。キャリントン同様、レイフもまた彼女をものにするために(資金的援助を受けるためにという目的もあったかもしれませんが)、リットンを含めた3人での共同生活を受け入れた男。登場した最初こそマッチョで嫌な奴ですが、次第にリットンを含めた環境を受け入れていく辺り、おそらく複雑な心境にあったことでしょう。それでいてキャリントンの自殺未遂やリットンの臨終の際に見せる優しさは胸に響きます。
一見すると人間関係は複雑で、どちらかというと傷つく人間が多く、ラストの受け止め方によっては救いがありませんが、根底に流れるさまざまな愛は純粋で、個人的には見終わった後に爽快感さえ感じました。運命を残酷と捉えることもできるけれど、その中を一生懸命愛し続け、生き続ける人間は間違いなく輝いています。キャリントンの瞳、リットンの言葉、イギリスの田園風景、そして『ピアノ・レッスン』のマイケル・ナイマンの音楽が胸に張り付く作品です。

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