No.206
タイトル
ブルックリン最終出口
(原題)
LAST EXIT TO BROOKLYN
監督
ウリ・エデル
キャスト
スティーヴン・ラング、ジェニファー・ジェイソン・リー、バート・ヤング他
制作
1989年/西ドイツ、アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
103分
評価
★★★★
<ストーリー>
1952年ニューヨーク州ブルックリン85番街。鋼鉄場のスト期間中の出来事。3人の酔っ払い兵が、街にたむろしていた若者たちと口論になり襲われる。金髪で娼婦まがいの衣装に身を包むトララ(ジェニファー・ジェイソン・リー)とその仲間のヴィニー(ピーター・ドブソン)たち。彼らは荒んだ街で仕事もせず兵隊の金を巻き上げて暮らしていた.....。

<コメント>
13才の少女が麻薬に溺れ、娼婦に堕ちていく様をドキュメンタリー・タッチで綴った衝撃作『クリスチーネF』(1981)のウリ・エデル監督作品。原作はヒューバート・セルビー・Jrのベストセラー小説。ストライキで生活に苦しむ労働者たちを中心に、この街で生きるゲイや娼婦等、さまざまな人々の人生が交錯する様を描いた物語です。
とにかく全編から当時のブルックリンを包む荒んだ空気が伝わってくる重い作品です。バーテンに10数えさせ、その間に男を引っ掛ける娼婦トララ。トララを餌に兵隊から金を巻き上げる男たち。普通の恋愛や生活が出来ない人々。会社と組合の衝突。けんかや暴力は日常茶飯事。不安や焦燥、緊張が蔓延する街。”重い”作品と言っても、それはそういう陰鬱な部分だけではありません。そんな荒れた街の中でも希望を持つものがいる。そしてまた新たな愛が生まれ、命も生まれる。望まれる愛もあれば望まれない愛もある。それを営むのが人間である以上、すべての行為は重い。街がどうあれ、そこには人が住み、生きています。そういう人間の凄さが伝わってくる作品です。

群像劇なので誰が主人公というわけでもないのですが、前半こそ労働組合の責任者であるハリー・ブラック(スティーブン・ラング)がメインに描かれているものの、どちらかというと娼婦トララが強烈に印象に残りますね。それもすべてジェニファー・ジェイソン・リーの演技が素晴らしいからだと思います。すでにこの街にいることが救いが無く、自暴自棄になりながらも日々を生き抜くトララ。そんな彼女がカモに選んだ中尉と恋に落ちていく。しかしこの街、この時代には、そんな小さな愛は長続きしない。そして彼女は酒に溺れていく。一人の女性の愛のドラマとしてみても十分見ごたえがあると思います。それにしてもジェニファー・ジェイソン・リーって映画デビュー作『他人の眼』(1980)に出演して以降 、個性派として堅実な女優人生を歩んでいる気がします。いろんな役もこなせますしね。ちなみに彼女はこの作品で1990年のNY批評家協会賞の助演女優賞を受賞しました。
本作で唯一心を和ませてくれる役柄がキャメロン・ジョアン演じるバイク好きのスプーク。そんなに目立つ存在では無いのですが、彼のおかげでそれなりにバランスが取れている気がします。もちろんバランスが取れていると言っても、個々のエピソードは結構救いが無く、悲喜こもごもと言い切れるような軽さは無いのですが、それでも街の人々は今を生きることに一生懸命だし、その熱さというかエネルギーのようなものはしっかりと伝わってくるんですよね。ブルックリンの街で堕ちていく者、死にゆく者、生まれる者、希望を抱くもの、あきらめる者、組織の衝突、停滞と復活、そういったいろんな熱が交錯する様子が凝縮されていると思います。

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