No.183
タイトル
バウンティフルへの旅
(原題)
THE TRIP TO BOUNTIFUL
監督
ピーター・マスターソン
キャスト
ジェラルディン・ペイジ、ジョン・ハード、レベッカ・デモーネイ他
制作
1985年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
106分
評価
★★★
<ストーリー>
キャリー・ワッツ(ジェラルディン・ペイジ)は息子夫婦と暮らしている。気むずかしい嫁とのいさかいが絶えない日々。彼女の唯一の楽しみは、賛美歌をハミングし、故郷バウンティフルを思い出すことだった。死ぬまでに一度故郷の我が家を見てみたいと願う彼女は、年金のことで嫁と争った翌朝、一人バウンティフルに旅立つのだった.....。

<コメント>
日本では公開作が少ないですが、人間関係をじっくり描いたハートウォーミングな作品を得意とするピーター・マスターソン監督の作品。何かと文句をつけてくる息子の嫁との確執から逃れ、生まれ故郷をひと目みたいと願う老女の物語。
思い出というのは人生になくてはならないものだと常々思っています。良い思い出はもちろん、悪い思い出も時間が経つにつれ自分の人生の一部という意味でいとおしくなったりするから不思議なものです。とても素晴らしい思い出があったとして、それこそ、それを思い出すたびに微笑がこぼれるような、涙が滑り落ちるような思い出があれば、それだけで生きていけるかもしれません。思い出だけにすがって生きる、という言い方をしてしまうと後ろ向きな感じがしますが、それでもすがって生きるだけの思い出があるということは幸せなのではないでしょうか。しかし、その思い出が単なる出来事やエピソードではなくて、昔住んだ家や好きだった人、というような”現状が確認可能”な思い出の場合、果たしてあなたはどうしますか?あくまでも良き記憶として自分の心にしまっておくか、ふとした拍子にもう一度愛でるべく確認作業を行うか。本作の主人公の老女は息子の嫁との折り合いが悪く、日頃から生まれ故郷のバウンティフルへ思いを馳せながら生活をしています。そして、とあるいさかいをきっかけに家を飛び出して故郷に向かうのです。
基本的にはロードムービーですが、若いカップルがあてもなく車を転がす、というような状況ではないものの、老女が心臓を患っているという設定や、息子の懸命な捜索もあって、結構飽きずに見られます。周辺人物のキャラクターも温かくていいですね。ハラハラしながらも、安心して見ていられる感じです。要するに単なるバス旅行なんですけどね。終盤バウンティフルが舞台になりますが、ゆっくりとした時間が流れていたんだろうなと想像させる映像が牧歌的で素敵でした。
本作は1985年度アカデミー賞で脚本賞にノミネート(ホートン・フート)、主演女優賞を受賞(ジェラルディン・ペイジ)しました。

<以下、ネタばれ注意!>
結局、老女の郷愁の念もむなしく、故郷は荒れ果てて見るすべもないのですが、それでも、息子と一緒に昔の思い出を紡ぎだすくだりは優しさにあふれていていい場面です。思い出は人を豊かにしてくれるけれど、それと同時に私たちは”今”を生きているんだということを教えてくれます。切ない物語だけれど、観た後に爽快感があるのは、思い出を思い出として再確認した後に、頼りない息子と自己中心な嫁、過去に生きる老女の3人がそれぞれに成長を遂げる様がさらりと描かれているからだと思います。

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