D-Movie(No.152)
タイトル
背信の日々
(原題)
BETRAYED
監督
コスタ・ガブラス
キャスト
トム・ベレンジャー、デブラ・ウィンガー、ジョン・ハード他
制作
1988年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
127分
評価
★★★
<ストーリー>
FBI捜査官のケーティー(デブラ・ウィンガー)は任務のため季節労働者となり、ある農村にもぐりこんだ。そこで幼い子供たち二人と暮らす男ゲーリー(トム・べレンジャー)と出会い、恋に落ちる。しかしその男こそが彼女が追い求める白人至上主義グループのテロリストだった.....。

<コメント>
質の高い社会派作品を世に送り出しているコスタ・ガブラス監督が問題作『ミッシング』(1982)に続いて放った作品。季節労働者としてネブラスカの小麦畑にやってきた女とそこで知り合った男。二人は互いに惹かれあう仲になるものの、女は実はFBIの秘密捜査官で、男はそのターゲットである白人至上主義グループのテロリスト。相反する立場にいる二人に待ち受ける哀しい運命。ガブラス監督らしく、男女の愛の物語を軸にしつつ、そこには常に緊張感が横たわっています。
トム・べレンジャー演じるゲーリーは良くも悪くもアメリカ的イメージを象徴する男。マッチョであり白人至上主義を掲げる人間。このステレオタイプな人間像をトム・べレンジャーが熱演しています。この種の問題はアメリカに昔から根付く問題でありますが、単純に問題提起で終わらないのは監督の手腕。黒人狩り等の非人道的行為を愛する人に見せるのは、普通に考えれば常軌を逸した行動に見えますし、とにかくすべてをさらけ出して、さらに理解を求めるのは子供じみているとも言えます。しかし、その根底にあるのはアメリカ人の持つ特有の純粋さではないかと思います。子供が何のためらいも無く昆虫や小動物等を殺すように、歪んだ常識や思想が純粋さとして伝わってくる時、この問題の根深さがあらためて白日の下に晒されるのです。子供に対する教育の場面に時間を割くのも、人種差別者が特別変異で生まれるものではないことを訴える役目を果たしていると思います。
また、女捜査官ケーティーは自身の信念に基づき、男への愛よりも社会的役割、責任を重んじて行動するわけですが、それでも結局、根源的な問題は何一つ解決しないストーリー展開がさらに切ないですね。重く激しい個人の感情に左右されることなく、国家や組織の思惑はとどまるところを知りません。監督はラストに彼女に投げかけられる子供の言葉に、ささやかな救いを用意したのかもしれませんが、それは所詮気休めでしかないと思います。
と、十分社会派としての視点を有している作品なのだとは思いますが、結ばれることの無い男女の愛を中心に置いたことでぬるさが生じてしまった部分もある気がします。黒人狩りの場面等、他に類を見ないほど残酷で卑劣なシーンだを思うのですが、見終わった後にこみ上げてくるのはやはり主役の二人の間に流れた男女間の虚しい感情でした。理解されようがされまいが、自分の愛する女を信じたいという気持ちのままに行動する男と、それが裏切られたときに見せる男の目の寂しさ。逆に言うとラストの二人の演技が素晴らしいということなのですが。

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