D-Movie(No.284)
タイトル
秋のミルク
(原題)
HERBEST MILCH
監督
ヨゼフ・フィルスマイアー
脚本
ペーター・シュタインバッハ
キャスト
ダーナ・ヴァヴロヴァ、ヴェルナー・シュトッカー他
制作
1988年/西ドイツ
ジャンル ドラマ
上映時間
111分
評価
★★★★
<ストーリー>
少女の頃から大家族の母親代わりをつとめてきたアンナ(ダーナ・ヴァヴロヴァ)は18歳の美しい娘に成長していた。ある日、街で好青年のアルバート(ヴェルナー・シュトッカー)に出会い、いつしか二人は恋に落ちる。やがて結婚に至る二人だったが、幸せな時間もつかの間、アルバートに召集令状が届く.....。

<コメント>
ドイツで70万部を越えるベストセラーとなった、一人のおばあちゃんアンナ・ヴィムシュナイダーが孫娘のために書いた回想録を映画化した作品。監督は『スターリングラード』(1993)のヨゼフ・フィルスマイアー。ドイツ・バイエルンの農村に嫁いだ女性アンナがさまざまな困難を乗り越えて成長していく様を描いています。
長女として大家族の母親役を務めるアンナば看護婦になるのが夢。街は戦争へと突き進むナチスに染められている。そんな中アンナは青年アルバートに出会う。教養があり話も面白いアルバートに惹かれるアンナ。やがて二人は結婚へ。しかし、結婚後わずか11日目にアルバートに召集令状が来てしまう。一人取り残されたアンナは、意地悪な姑や老人たちの中でアルバートを想いながら辛い日々を生き抜いていく、というストーリー。

主役となるアンナはかわいいし、アルバートも上背があってたくましい。それでも、そんな登場人物たちの存在がかすんでしまうほど、自然の描写が素晴らしいです。幾度と無く映像として繰り返される四季の移り変わり。決して派手さはありませんが、人間たちの日々の生活に確実に変化を与えています。ヨーロッパの農村の寒々とした貧しさをストレートに描くことによって、逆に映像的には純粋で力強い美しさが表現されています。撮影を手がけたのは監督であるヨゼフ・フィルスマイアー。映画は本作が初作ですが、その手腕の確かさに脱帽です。細かな描写をちゃんと積み上げていく演出と、ミレーの絵画のようなアースカラーを基調とした映像がリアリティを生み、観る者の目を捉えて離しません。そんな美しく、厳しい自然の中でたくましく生きる人々。そして人一倍耐え忍ぶアンナ。戦争も家畜も食べ物もあらゆるものの生き死にもすべて人間の営みと共にあるという、ある種の宗教性すら感じさせます。人が生きるということはイデオロギーや目的以前に、食べ物を作りそして食すということ。子供を生み育てるということ。さらにその営みを担う大きな存在として女性がいるということ。素朴で力強いドラマです。

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