D-Movie(No.210)
タイトル
アパートメント・ゼロ
(原題)
APARTMENT ZERO
監督
マーティン・ドノヴァン
キャスト
コリン・ファース、ハート・ボックナー、ドーラ・ブライアン他
制作
1988年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
124分
評価
★★★
<ストーリー>
異国の街−ブエノスアイレス。さびれた名画座を経営する孤独な青年エイドリアン(コリン・ファース)は、古びたアパートの10号室、今はその数字もはがれ落ち、ゼロ号室と呼ばれる部屋に一人住まい。経済的理由から魅力的で人好きのするジャック(ハート・ボシュナー)という青年をルームメイトにしたときから、二人の奇妙な同居生活が始まる.....。

<コメント>
ブエノスアイレスの街を舞台に繰り広げられるサイコ・サスペンス。監督はロバート・ゼメキス監督の『永遠に美しく…』(1992)の脚本等を手がけたマーティン・ドノヴァン。本作では原案・製作・脚本まですべて手がけています。脚本に関しては『ジュラシック・パーク』(1993)、『スパイダーマン』(2002)等のデヴィッド・コープも手伝ったようです。神経症的で他人の目や行動に敏感な青年エイドリアンが素性の知らない男に惹かれ、事件に巻き込まれていく物語。
一見普通の他人が深く付き合ってみると実は意外な一面を持っていたと言うのは、映画でなくてもよくある話。その相手が実は政治犯であったり、殺人鬼であったりと言うのは、映画でよくある話。本作はこの”映画でよくある話”に主人公の屈折したキャラクターとエキセントリックな隣人たちを加え、今までとは一味違うスリラーに仕上げています。このあたりはさすがデヴィッド・コープの手腕もあるのでしょうか。
この映画を最初から最後まで貫いて、作品的に良い意味で私たちの居心地を悪くしているのが”あやふや感”。主人公は人付き合いを嫌うが故に、周りの人間たちと”職場の同僚”や”アパートの隣人たち”という関係の上でしか関わりあっていません。他人が自分のことをどう思っているのかわからなくてもお構いなし。自分を中心に置いて理解された世界で暮らしています。ひょんなことからルームメイトとなったジャックとも、唯一近しい知り合いとしての親しさを超えた同性愛的な関係を感じさせはするものの、ストレートに描写されることはありません。ジャックが何か裏で行動しているにおいを嗅ぎつけても、まだ真実を知ろうとはしない。あやふやさは居心地が良い反面、不安も呼び起こします。映画を見ている私たちは、おそらく最初はアパートの隣人たちと同じ立場なのだと思います。いろんな断片からその人の性格や生活を勝手に想像して作り上げる。しかしそれは真実ではありません。したがって、その断片が増えたり怪しさが増したりしてくると、不安が芽生えてくる。そして結局エイドリアンと同じことを思うかもしれません。『真実を明かせないのならいっそ隠し通してくれ』と。そして、真実を知らないのは主役の2人に対してだけではなくて、私たちもまたお互いに謎の部分、個人的な部分を抱えながら生きているのだということに気づかされます。なかなか考えさせられる作品でした。
ちなみに、本作では主役の2人が、出演している俳優3人から映画の作品名を当てるというゲームを行うのですが、これが面白かったですね。映画好きの方は楽しめると思いますよ。

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