D-Movie(No.60)
タイトル
オール・ザット・ジャズ
(原題)
ALL THAT JAZZ
監督
ボブ・フォッシー
キャスト
ロイ・シャイダー、ジェシカ・ラング、アン・ラインキング他 
制作
1979年/アメリカ
ジャンル ミュージカル
上映時間
123分
評価
★★★
<ストーリー>
ブロードウェイの人気プロデューサーとしてショー・ビジネス界のトップに立つ男ジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)。彼は家族を犠牲にしながら新作ミュージカルの演出や映画の編集作業に追われていた。仕事上の摩擦や恋人との確執等、公私共に問題を抱える彼は酒・タバコ・アンフェタミン等によってそれらを押さえ込んでいたが、ついには入院する事態になってしまう。そこで彼は幻想の世界の中で自らの人生を回想する.......。


<コメント>
監督作『キャバレー』(1971)でオスカーを総なめにしたブロードウェイの振付師であり演出家であるボブ・フォッシーの作品。ショー・ビジネスの世界を鮮烈に生き抜いた男の物語をミュージカル仕立てで描いた内容で、ボブ・フォッシー本人の自伝的作品と言われています。
随所に挿入されるミュージカルの場面はさすが彼ならではの迫力です。プロモーターの前での本番さながらのシーンのみならず、練習やオーディションのシーンも厳しいショー・ビジネスの世界の緊迫感が伝わってきます。
主演のロイ・シャイダーは自らの肉体や精神を犠牲にしてエンターテイメントの世界に身を委ねる演出家を緊張感をもって演じており、同時に演出家が持ち合わせる男としての傲慢さや弱さを良く体現していると思います。この作品はあの『ジョーズ』(ロイ・シャイダー主演)の翌年に公開されましたが、この頃の彼は一番役者としてノっていたと言えるのではないでしょうか。

ただ、一番最初に(多分高校生の頃TVで)見たときは彼が毎朝発する『ショータイム!』という言葉が、現実の世界を虚構の世界へと変える狂気じみた呪文のように聞こえ、さらに主人公の孤独、苦悩、葛藤等はもっと現実と虚構をらせんのように行き来し、そういったカオスの中から彼の意識の中に天使(=悪魔?)が現れたような気がしていたのですが、久しぶりに見てみるとそういった感覚は少し薄れていました。
今見ると主人公の苦悩は、演出家として生き馬の目を抜くショー・ビジネスの世界に翻弄された部分よりも、男として自分の蒔いた種からもたらされた部分の方が大きいような気がしました。それはそれで構わないのですが、そうすると男の苦悩の部分の描き方がちょっともの足りません。これは単に個人的な意識の変化の問題(ようするに年をとったということ!!)かもしれませんが.....。
しかし”主人公の苦悩を幻想的に映像化”出来ているかというと、良く言われるようにフェリーニの『81/2』を思い出してしまいます(ちなみに彼が1969年に監督した『スイート・チャリティ』の原作はフェリーニの『カビリアの夜』です)。あの名作と比べてしまうとやはりこのわかりやすいどぎつさが陳腐に感じてしまいます。まあそれがブロードウェイ=アメリカのエンターテイメントの世界だ、と言えなくもないですが。

なお本作品は1979年のアカデミー賞9部門にノミネートされ音楽賞等4部門にて受賞、1980年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞しています。
とりあえずミュージカル好きの方は必見です。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送