D-Movie(No.159)
タイトル
トゥエンティフォー・セブン
(原題)
24 7:TWENTY FOUR SEVEN
監督
シェーン・メドウス
キャスト
ボブ・ホスキンス、ダニー・ナスバウム、ジミー・ハインド他
制作
1997年/イギリス
ジャンル ドラマ
上映時間
96分
評価
★★★
<ストーリー>
イングランド中部のノッティンガムの街には何をするでもない無気力な若者たちが溢れていた。現状をブチ破ろうとするものはいないが、ダーシー(ボブ・ホプキンス)だけは違った。彼は、若者たちに希望を持たせようと立ち上がり、「101ボクシングクラブ」を開く。若者たちも最初はしぶしぶ付き合うだけだったが、やがてダーシーの熱意に惹かれ、熱心に練習をし始める.....。

<コメント>
本作が長編デビュー作にして、ベネチア国際映画祭・国際評論家賞を射止めた若干25歳のシェーン・メドウス監督の作品。主演は『モナリザ』(1986)や『ロジャー・ラビット』(1988)等の作品で活躍している名優ボブ・ホプキンス。その他の登場人物は地元の俳優や初心者を使って撮影しているそうです。
1日24時間が7回で1週間。人生とはこの”トゥエンティフォー・セブン”を繰り返すだけの退屈なもの。いかなる人間もこの平凡な時間の繰り返しに埋もれ、日々をやり過ごしているだけ。街の若者たちはあても無く無意味な争いを繰り返すばかり。誰も現状を打破しようとしない、する気力さえ無いという空気が蔓延する街。そんな中、元ボクサーの主人公アラン・ダーシーは、この流れに逆らうべく立ち上がります。将来に希望を見出せない不良少年達を集め、ボクシング・ジムを開くのです。そこで彼は少年達に生きる意味や目的を与えようとします。
強烈なモノクロームの映像、社会に対する批判や厳しい現実を伝える語り、そして浮浪者と思われる男の登場等々、冒頭から決して夢と希望だけを描いた青春ドラマで無いことが宣言されています。イギリスではケン・ローチの後継者と称されることもあるメドウス監督ですが、ここでも背景にあるのは80年代に自由主義経済に大きく舵を振り、合理性や効率を追い求めたサッチャリズムに対する批判です。作中さまざまな登場人物から、悲惨な住宅事情や食品の安全性への疑問等が語られます。
全体的にはそういった社会的閉塞感を背景にした熱血青春モノと言えるかもしれませんが、人々の希望や熱が含まれている脚本であるにも関わらず、少し淡々とし過ぎている気がしました。ほとんど素人ばかりとは言え、若者たちはリアリティを感じさせる演技をしているし、ボブ・ホプキンスも落差の激しい役どころを好演しているのに、感情移入度は低め。ボクシングの試合のシーンも中途半端で、ダーシーと彼が恋心を寄せる女性とのエピソードも煮え切らない。山での合宿もウェールズの素晴らしい風景だけが心に残ります。モノクロームの映像は陰影も美しく印象的ですが、ドキュメンタリーっぽさを狙ったのだとしたら効果のほどは疑問です。要するに監督の目線が冷静すぎるのが原因かもしれません。やはりこういうシビアなドラマでは、厳しい現実社会という井戸の中に放り込まれた小石が揺らす波紋のように、人々の希望がはかなく浮かんで消える、という感じがもっと伝わってきてほしかったです。音楽に80年代ロックばかりでなくてヴァン・モリソン何かも使ったり、ラストシーンにも人間への優しい視線を忘れなかったり、現代社会への失望と古き良き時代への惜別を謳いたかったのではないかと思いますが、ちょっともったいない作品。

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