No.31
タイトル
トリエステから来た女
(原題)
LA RAGAZZA DI TRIESTE
監督
パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
制作
1983年/イタリア
ジャンル 恋愛ドラマ
上映時間
113分
評価
★★★★
<ストーリー>
漫画家ディーノ(ベン・ギャザラ)は海で溺れかけた女ニコル(オルネラ・ムーティ)とお互いに引かれあい、愛しあうようになる。しかしニコルは急にいなくなる等謎の部分が多く、ディーノは彼女にいいように振り回される。それでも彼はニコルを追い続け、次第にニコルの秘密が明らかになっていく.........。


<コメント>
『祖国は誰のものぞ』(1961)や『山猫』(1963)等の脚本でも知られるイタリアの監督パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレが自ら書いた小説を映画化した作品。
ミステリアスな雰囲気を持つ謎の女に振り回され翻弄されながらも愛し続ける男.....。ストーリーとしてはありがちな感じがしますが、最近ヴィンセント・ギャロの『バッファロー66』(1998)でも味のある演技を見せていたベテラン、ベン・ギャザラが主演しており、一風変わった大人の寓話という雰囲気に仕上がっています。

この監督の作品を見るのは初めてでしたが、よけいな装飾はなく、出口の無い愛の物語が官能的、かつ寓話的にシンプルに綴られていて好感が持てました。もちろん、ベン・ギャザラの優しさあふれる演技とオルネラ・ムーティの危うい美しさが作品を引き立てていることは間違いありません。オルネラ・ムーティと言えば個人的に印象に残っているのはチャールズ・ブコウスキー原作の『町でいちばんの美女/ありきたりな狂気の物語』(1981)ですが、この作品も彼女のミステリアスな魅力にうまくマッチしていると思います。
アルフィオ・コンチーニ(『砂丘』(1970)、『愛の嵐』(1973)等)の映像も美しいです。

ちょっと気になったところをあげるとすれば、音楽の使い方がもったいない気がしました。冒頭と終わりは悪くありませんが。ラスト・シーンも印象的ではありますが、主演のベン・ギャザラの役柄が漫画家なわけですから、彼が描いた彼女のスケッチを使って、もっと幻想的な味付けが出来れば、さらに余韻の大きな作品になったのではないかと思います。

”愛”を通して男の優しさを描いたと言う意味では、フランスの映画監督ジャン・ジャック・ベネックスが『ベティ・ブルー』(1986)で扱ったテーマと似ている気がしました。向こうは時にコミカルで時にスタイリッシュな感じでしたが、こちらは演出、キャスティングも含めて落ち着いた大人のドラマという感じですね。
”美しさ”というもののはかなさと、それゆえに美しいものを愛し続ける難しさを考えさせられる1本でした。

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