No.39
タイトル
狼たちの午後
(原題)
DOG DAY AFTERNOON
監督
シドニー・ルメット
制作
1975年/アメリカ
ジャンル ドラマ
上映時間
125分
評価
★★★★★
<ストーリー>
白昼ブルックリンの銀行を襲った3人組。計画ではわずか30分で終わるはずだった。しかし、銀行はすでに本店に送金した後で現金はほとんど残っていなかった。思わぬ事態にメンバーの一人サル(ジョン・カザール)はやめたいと言い出す始末。主犯のソニー(アル・パチーノ)は必死で事態を収集しようとするが、物語はとんでもない方向に向かっていた.........。


<コメント>
『セルピコ』(1973)、『評決』(1982)等、社会派作品で定評のある映画界の重鎮、シドニー・ルメット監督の作品です。3人組が銀行を襲う様子とその結末を描いた作品で、ストーリー自体は単純ですが、アメリカが抱える問題とそれに対する強烈な皮肉が全編通して表現されています。

これを初めて観たのはテレビですが、あの時の衝撃は今でも忘れられないです。とにかく冒頭の銀行強盗に押し入る場面からとんでもない緊張感が漂っています。その後登場人物の会話にとぼけたやり取り(このあたりは名優ジョン・カザールの真骨頂)が出てきますが、最初の緊張感が保たれているため外しすぎません。
中盤、主役の2人の性格や背景が徐々に明らかになるにつれ、多少全体の空気も和らいでぎますが、その頃には主演のアルパチーノの演技に狂気が宿りだし、そこから物語は最後まで一気に突き進みます。

主人公のソニーが銀行の前でお金をばら撒く様はまるでドキュメンタリーを見ているような感じで、この辺りの監督の演出は圧巻です。
またやはり何と言ってもアル・パチーノの演技がすごい。無計画でいて抜け目ない、感情的でいて理性的、表面上は社会性を保っているがその内面は空虚で不安だらけ、そんな複雑で難しい人間像を見事に演じていると思います。彼はこの作品でアカデミー賞主演男優賞にノミネート、LA批評家協会賞では男優賞を受賞しました(LA批評家協会賞では作品賞、監督賞も受賞)。

マスコミや大衆によってあっという間に持ち上げられ、あたかも世間の代弁者のような役割を果たしてしまう主人公。しかし彼は周りの扇動に応えることによってしか認められない異形のヒーローです。彼の心が満たされるのは自分の要求が認められたときだけです。例えばマスコミを賑わすような事件を犯す人々は、途中、一瞬でも主人公と同じようなヒーロー感を感じるのかもしれないと思うとぞっとしました。

ちなみにこの作品は1972年にアメリカで実際に起きた事件を元にしているということを付け加えておきます。
この年のアカデミー賞では6部門にノミネート。脚本賞を受賞しました。

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