傷害罪によって禁固６年の刑を受け、刑務所へと収監されたアラブ系の青年マリク。刑務所内では、所内を牛耳るコルシカ・マフィアとアラブ系との対立が激しかったが、知恵も教養も無い彼は、とにかく無事に６年の刑期を務めようと努力する。ところがある日コルシカ・マフィアのボスであるセザールから同じアラブ系の囚人の殺害を指示される。圧倒的な権力を誇る彼らの命令に逆らえず、やむを得ず殺人に手を染めるマリク。それを機にセザールたちの手下として動きながら、読み書きや言語を学び、所内で彼独自のコネクションを築き上げていく．．．という物語。

人種間対立の激しい刑務所に放り込まれた無学で孤独なアラブ系フランス人青年が、生命の危機に幾度とさらされながらも、過酷な世界で生き延び、のし上がって行くサスペンス・ドラマ。主人公のマリクを演じるタハール・ラヒムと、コルシカ・マフィアのリーダー・セザールを演じるニエル・アレストリュプの二人の演技がすさまじく、最初から最後までとんでもない緊張感が途切れません。ハリウッド映画にありがちな甘さも一切無く、完全無欠の男の世界が描かれています。マリクに幻影がつきまとう部分が少しファンタジックで賛否分かれそうですが、１５０分の長さを感じさせない、一級のサスペンス・ドラマになっています。