かつて絶大な人気だったロックのスーパースター、シャイアン(ショーン・ペン)。今はダブリンの豪邸で消防士の妻ジェーンと半隠遁生活を送っていた。そんなある日、故国アメリカから30年以上も会っていなかった父の危篤を知らせる連絡が届く。飛行機が苦手なシャイアンは船でニューヨークへ向かう。そこで、父が実はホロコーストの生き残りで、元SS隊員のアロイス・ランゲを生涯追い続けていたことを知る。シャイアンはわずかな手がかりを頼りに、もはや生きているかも分からないランゲの捜索に乗り出すが...という物語。
『イル・ディーヴォ』(2008)で同年のカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したパオロ・ソレンティーノ監督が、その際に審査委員長だったショーン・ペンと意気投合して製作したロード・ムービー。過去の栄光を捨てきれず、スター時代のメイクを落とせないまま隠居生活送る主人公が、父の遺志を引き継ぎ、アメリカ横断の旅を続ける中で、他人に心を開き、父とのつながりを取り戻し、自立していくプロセスが丁寧に描かれています。詩的な映像も美しく、元トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが手がける音楽も素晴らしい。おそらく彼自身が演出したと思われるライブ映像も印象的。シャイアンが旅の途中で出会った、水を恐れる子供とのセッションがグッときます。パオロ・ソレンティーノ監督とショーン・ペンという二人の才能によって生み出された傑作です。
|