【 コメント 】
妻と別居状態で売上も芳しくない保険のセールスマンが、ふとしたことから大金を手に入れるチャンスに恵まれたものの、予想外の展開に翻弄されるサスペンス・ドラマ。監督はジル・スプレカー。主人公のセールスマンを演じるのは、『恋愛小説家』(1997)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート経験のあるグレッグ・キニア。

雪深い田舎町で保険のセールスマンとして働くミッキー。口先だけは達者だが、保険の営業成績は悪く、妻とも別居状態。経済状況は逼迫していた。ある日、新しい顧客を獲得しようと、町はずれで暮らす孤独な老人宅を訪問。何とか住宅保険の契約にこぎつける。訪問する度に与太話につき合わされるのにうんざりしていたが、ふとしたことから老人が高額のバイオリンを所有していることを知る。彼は老人をだましてバイオリンを転売して儲けようとたくらむが、さまざまな人間が関わってきてしまい、事態は急激に悪い方向へと転がり始める．．．という物語。

しがないセールスマンが出来心から思いついたちょっとした儲け話が、とんでもない犯罪へとつながっていくストーリーは、『ファーゴ』(1996)や『シンプル・プラン』(1998)を髣髴させます。実際、ＤＶＤのパッケージにも両方の作品を凌ぐクライム・サスペンス、とのコピーがあります。コーエン兄弟で言うと『バーバー』(2001)なんかもそうですね。人間の欲望が招いたちょっとした事件が雪だるま式に膨らんでいくパターンはクライム・サスペンスとしてはありがちですが、やはり見ていてドキドキします。主人公が追い詰められていく演出や、どんでん返しも用意されているので、日本未公開なのが不思議なくらいです。ただ、主人公のグレッグ・キニアが、『ファーゴ』のウィリアム・Ｈ・メイシーと同じような存在感なので、どうしても二番煎じ的な雰囲気はぬぐえません。どんでん返しもよく考えると破綻しているところもあるような気もします。全編を通した緊張感はそれなりですが、しっかりと楽しめる作品だと思います。