【 コメント 】
『マルコヴィッチの穴』(1999)、『ヒューマン・ネイチュア』(2001)など、奇想天外な作品の脚本、製作に関わり、一部に熱狂的にファンを持つ、チャーリー・カウフマンが初めて監督まで手がけた作品。『カポーティ』(2005)でアカデミー主演男優賞を獲得したフィリップ・シーモア・ホフマンを主役に、さまざまな人間関係の中で、己の人生に翻弄される男を、独特の映像センスで描いています。
舞台監督のケイデンは芸術家の妻アデルと娘のオリーヴと共に、ニューヨークに暮らしている。ケイデンに失望したとして、彼から距離を置いている妻アデルは夫婦でセラピーを受けるもうまくいかない。結局アデルはベルリンで開催される個展のために、オリーヴだけを連れて旅立ってしまう。残されたケイデンは悲しみにくれるが、自身の演劇でマッカーサー賞を受賞し、莫大な制作費を手にする。それでも、家族との関係は修復できず、体調を崩しながらも、新しい舞台の製作にのめり込んでいくが、構想通りに進まず...という物語。
チャーリー・カウフマンが監督まで手がけたということで、ファン待望の作品と言えると思いますが、内容的には良くも悪くも彼らしい作品に仕上がっています。最初こそ、仕事は順調ながら妻の尊敬を得られず、家族関係に悩む男の物語として幕を開けますが、中盤以降、映像的にもストーリー的にもどんどんカオスと化していきます。純粋にストーリーを追っていくとわけがわからなくなりますし、見る人によってはまったく意味がわからない作品と感じる方もいらっしゃると思います。個人的にはこういうテイストは嫌いではないのですが、それでも難解でした(笑)。ただ、最後まで見ると、己の生き方を貫けなかった男の悲哀や切なさが伝わってきて、見終わった後はそれなりに爽快感がありました。フィリップ・シーモア・ホフマンをはじめ、サマンサ・モートンやキャサリン・キーナーなど、脇を固める女優陣の演技も素晴らしく、見ごたえのあるドラマだと思います。
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