【 コメント 】
リー・デヴィッド・ズロトフ監督作品。とある保守的な町に降り立った少女が巻き起こす物語を、優しい視点で描いたドラマ。
刑務所から出所したばかりの少女パーシー。新たな天地を求めてバスに乗った彼女は、以前、観光局の仕事をしていたことで知った小さな町ギリアドに降り立つ。そこの駐在所で紹介された仕事先は、ハナという老女が経営するレストラン”スピットファイアー・グリル”。仕事も寝床も得て、新たな生活を始めたパーシーだったが、町の人々はよそ者である彼女に奇異のまなざしを向ける。それでも逆境に耐えつつ懸命に生きるパーシーの姿に、やがて町の人々の中にも協力者が現れ、レストランにも幸せな出来事をもたらすが、中にはそれをよく思わない者もいて...という物語。
”この森で、天使はバスを降りた”というファンタジックな邦題がついていますが、あながち間違いではないものの、原題は”スピットファイアー(戦闘機)・グリル”。主人公の女性パーシーが働くことになるレストランの名前です。閉鎖的な田舎町に”よそ者”が現れ、最初は地元の人々に嫌われながらも、やがて受け入れられていく物語というと、『バグダッド・カフェ』(1987)あたりが浮かびますが、本作も割と同じような展開と言えます。ただパーシーひとりの物語というよりも、レストランの女主人ハナ、そしてハナの甥の妻シェルビーと女性3人の織り成す物語となっています。特にシェルビーはパーシーのおかげで女性としても成長しますので、彼女を中心に見ても成立します。
途中、レストランを売るための作文コンテストがあり、これが中盤以降の物語の大きな柱となりますし、エピソードとしても楽しいので、そういう意味ではもっと単純にハートフルな物語のまま終わってもよかったのではないかと思います。ただ、このラストだからこその余韻もあり、そのあたりはご覧になった方の受け取り次第と言うところでしょうか。
他人を受け入れると言うことは、そのまま自分の人生を受け入れると言うこと。ハナやシェルビーに受け入れられたパーシーはきっと幸せだったと思います。
|