D-Movie(No.503)

・邦題:『ローサのぬくもり』
・原題:『SOLAS』
・監督:ベニト・サンブラノ
・脚本:ベニト・サンブラノ
・キャスト:マリア・ガリアナ、アナ・フェルナンデス他
・公開/制作:1999年/スペイン
・ジャンル:ドラマ
・上映時間:98分
・評価:★★★★


【 ストーリー 】
横暴な父や小さな村の閉塞感から田舎を離れ、スペインの大都市で一人暮らす35歳のマリア(アナ・フェルナンデス)。だが、都会の生活は厳しく、酒浸りの日々。そんなある日、父親が倒れ、彼女の住む街の病院に入院する。父に付き添ってきた母のローサは、マリアのアパートに滞在。優しいローサはマリアや隣人に何かと世話を焼くが ...。

【 コメント 】
父親の入院によって一つ屋根の下で暮らすことになった娘と母。病に倒れてもなお横暴な父の言いなりになる母に苛立ちを覚える娘、娘の隣人に世話を焼いたことから、あらためて”女”を自覚する母、それぞれの想いを抱えながら生きる二人の女性の微妙な心のゆれを描いた作品。監督のベニト・サンブラノはこれが長編デビュー作にもかかわらず、いきなりベルリン映画祭に選出され、観客賞と国際批評家連盟賞を受賞という快挙を成し遂げました。

全体的には非常に地味なんですが、しんみりと心に響く作品です。都会に出てきて過酷な暮らしをしている娘マリア、父親の入院をきっかけに病院の近くにある娘の部屋に滞在することになった母ローサ。娘マリアは35歳という設定もあってか、個人的には、どちらかというと最初はマリアの方に感情移入してしまいます。入院し、看病される見でありながら横柄な父、さらに過去には母親に暴力を振るっていたことも発覚。それでも父に従い、尽くす母親に苛立ちを覚える人も多いでしょう。さらにマリアに対する気遣いや隣人の老人に対する優しさも、おせっかいと感じる人もいるかもしれません。それでも、部屋に花を飾ったり、他人のために料理や編み物をしたりしながら、日常に彩を添え、豊かにする姿勢に周りの人間のみならず、観ているこちらも心をほぐされていきます。

最後まで明かされませんが、母親が娘に伝えようとした「生まれ変わったら変えたい一つのこと」、つまり心に抱えていたものがあること、また、隣人の老人に対しても、夫に従いながらも明らかに恋心を覗かせていることなど、そういう意味では、他人のために尽くしながらも、自分自身をしっかり持っていて、すべてを包み込むように生きてきたローサ。彼女の優しさと強さはまさに母の強さ。そしてそれは、また次の世代に受け継がれていきます。人生は厳しいけれど、人は優しい。誰もが見失いがちなそんなシンプルな事実に気づいた時、本当の人生が始まるのかもしれません。

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