虐待やネグレクトなどに遭い、親と暮らせなくなった10代の少年少女たちを一時的に預かる短期保護施設“ショート・ターム”。ここで働く20代のケアマネージャー、グレイスは、同僚で恋人のメイソンと同棲中。明るくて仕事ぶりも有能な彼女は現場スタッフのリーダー的存在。スタッフからはもちろんのこと、心に傷を抱えた施設の子どもたちからも厚い信頼を寄せられていた。しかし、そんなグレイスも、メイソンにさえ打ち明けられない深い心の闇を抱えていた。ある日、新しく入所した少女ジェイデンのケアを任されたグレイス。聡明ながら誰とも馴染もうとせず、施設を転々としてきたジェイデン。彼女の心の傷と真摯に向き合っていく中で、次第に自らの辛い過去とも対峙していくグレイスだったが...という物語。
監督のデスティン・ダニエル・クレットンは、自身の体験を基に本作を製作したそうで、ドキュメンタリーっぽい映像と相まって、非常にリアリティのある作品となっています。ケアマネージャーのグレイスと若者たちの距離が非常に近く、それがある種の痛みを引き起こすのですが、そこから生まれる人間関係や信頼関係には、見ているものを巻き込んで納得させる説得力があります。ともすればかなり重くなりがちな素材を、観る側がへこまない、ギリギリのところでバランスをとっているところが見事。不必要に大事件が起こったり、死者が出ないところも好感が持てます。観た後に、他人に少し優しくなれる秀作です。
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