D-Movie(No.623)

・邦題:『サルバドールの朝』
・原題:『SALVADOR』
・監督:マヌエル・ウエルガ
・脚本:ユイス・アルカラーソ
・キャスト:ダニエル・ブリュール、トリスタン・ウヨア他
・制作:2006年/スペイン、イギリス
・ジャンル:ドラマ
・上映時間:135分
・評価:★★★★


【 コメント 】
1970年代半ばまで、スペインにおいて独裁者として君臨したフランコ総統。その独裁政権下で、体制に反発して革命活動に身を投じ、最終的には25歳の若さで死刑に処せられた実在の青年サルバドール・ブッチ・アンティックの最期の数日間を描写したドラマ。主演は『グッバイ、レーニン!』(2003)で世界的にブレイクしたダニエル・ブリュール。

1970年代初頭、フランコ独裁政権下のスペイン。正義感に満ち溢れた青年サルバドール・ブッチ・アンティックは、革命の意思を持つ若者たちとともに、反体制運動を行っていた。最初は純粋に政治的野心による活動を行っていたが、やがて活動資金を得るために銀行強盗を繰り返すようになり、武器を手にし、とうとう警察にマークされてしまう。仲間のおとり捜査にはまったサルバドールは、警官たちに追い詰められた際、拳銃を用い、彼の撃った銃弾は若い警官を直撃、サルバドール自身も瀕死の重傷を負ってしまう。結局、撃たれた警官は死亡。一命を取り留めたサルバドールは逮捕され、軍事法廷にかけられる。フランコ政権が揺らぐ中、満足な調査もされないまま、サルバドールは、死刑の判決を受ける...という物語。

スペインで実際に起こった事件をベースにした作品です。サルバドールの銃弾によって死亡した警官には、他の銃弾の跡もあったようですが、十分な検証はなされなかったそうです。結果的に彼は死刑になってしまいますが、この不公平な判断が、フランコ政権を覆すきっかけになったとも言われています。
作品はサルバドールを英雄視するでもなく、体制側の警官たちを皮肉に描いている様子もありません。ただ淡々と彼に残されたわずかな時間を周りの人間たちとの関係も含めて丁寧に描写しているだけです。だからこそ、彼が感じた恐怖、希望、後悔、決意など、さまざまな心情や心の揺れがしっかりと伝わってきて、見ている側の心を揺さぶります。スペイン国内の物語という範疇を超えて、死と対峙する人間の恐怖と尊厳を描いた作品です。

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