【 コメント 】
工場で働きながらラジオのDJを務めるロバートは、自殺した兄を死に追いやった原因を探すために車でロンドンからブリストルまでの旅に出ることを決意。途中さまざまな人々との出会いやトラブルに遭いながらも、目的を果たすために放浪するというロードムービー。
監督はこれが長編デビューとなるクリストファー・ペティット。製作陣には『都会のアリス』(1973)や『パリ、テキサス』(1984)などを手がけたヴィム・ヴェンダースの名があります。
ヴィム・ヴェンダースが製作に関わっていることもあってか、山場のあるストーリー展開に重きが置かれているというよりも、どこか魂の放浪的な静かさを感じさせる、静謐さにあふれています。綿密に考えられたカメラアングルや台詞、登場人物同士のどこかずれたコミュニケーションなど、これでコメディの要素が含まれていれば、ジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキをいった趣のテイストです。
DVDのパッケージには使用されている音楽について記載されていて、これがスティング、デヴィッド・ボウイ、クラフトワーク、DEVOなどなど、80年代ロック好きにはたまらないチョイス。
中でもスティングは売れないミュージシャン役で登場。ギター片手に歌も披露してくれますので、これはこれでかなり貴重なシーンだと思います。文句なくかっこいいです。
ただ、音楽も含め、私のようにモノクロでオフビートな映画好きには、引き込まれる要素がたくさんあるものの、肝心の音楽(楽曲&シーン)の使い方や、ストーリー展開も含め、オフ・ビートというよりはどこか冗長な感じで、個人的にはちょっと残念な感じでした。ドラマチックな展開はなくてもいいのですが、少なくとも主人公の心の揺れや動き、みたいなものはもっと伝わってきて欲しかったと思います。むしろ、これが80年代ではなく、79年に作られたということが逆に珍しく、ヴィム・ヴェンダースが関わったと言う意味でも貴重な作品ではあると思います。
|