【 コメント 】
ヨーロッパのサッカークラブチームNo.1を決めるチャンピオンズリーグ決勝戦が行われる1日を舞台に、ロシア・モスクワ、トルコ・イスタンブール、スペイン・サンティアゴ・デ・コンポステラ、ドイツ・ベルリンの4都市で繰り広げられるドラマを綴ったオムニバス・ムービー。監督はドイツのハネス・シュテーア。
世界の各地で起こる人間ドラマのオムニバス作品と言うとジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991)を思い浮かべますが、本作はそこまで”笑い”がこめられていないものの、コミュニケーションの不全から発生するずれた感覚は共通している気がします。
第1話の主人公は仕事でイギリスからやって来た女性・ケイト。タクシーでホテルを目指すも途中で降ろされ、さらに強盗に遭ってすべて盗まれてしまいます。それを見ていた地元の老婆との奇妙な交流。そしてエンディングにはちょっと驚く出会いが...と言う物語。その後も、トルコにやってきたドイツ人の学生の物語、スペインの聖地を目指してきた巡礼者の災難、ドイツにやってきたスペイン人とフランス人のカップルの物語と、さまざまな人種が登場しいろんな言語が飛び交う複雑な内容となっています。
個人的にジャームッシュの作品が大好きなので、どうしても笑いがベースにある作品を期待してしまうのですが、本作はもう少し辛口。どのエピソードも強盗や保険金などが絡んでいるところも見ていてちょっとつらい部分。作中の警官がみんなやる気がない描写なのは、さすがにこれは...と思いますが、実際にはどうなのでしょうか。とにかくどのエピソードでもこれでもかというぐらいサッカーへの愛着が感じられるところは楽しいです。”失ったもの”に対してものすごく執着する人間とまったく執着しない人間が出てくるところも面白かったですね。決して見終わった後にすっきりする作品ではありませんが、ヨーロッパの複雑さと雰囲気をしっかり感じられる作品ではあると思います。
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