内気な少年シャロンは、母ポーラと２人暮らしだったが、ポーラは麻薬中毒でほとんど育児放棄状態。学校ではリトルとあだ名され、いつもいじめられていた。シャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友だちだった。そんなある日、いじめられているところをフアンという男に助けられる。以来、フアンとその恋人テレサに我が子のように目をかけてもらい、初めて人の温もりを感じるシャロン。高校生になっても、相変わらずいじめは続いていた。そんな中、唯一の友ケヴィンに対して友情以上の感情を抱き始めていたシャロンだったが．．．という物語。

黒人たちが暮らす貧困地域に生まれた孤独を抱える主人公が、自らのセクシャリティに悩みながらも自分で人生を切り開いていく様子を描いたドラマ。第89回のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞に輝きました。３パートに分けた構成、革新的な映像美、もちろん脚本や登場人物たちの演技も含め、強烈な印象を残す作品です。社会の常識や規範などとは関係なく、環境によって決定されてしまう人生に従わざるを得ない切なさ。そんな中に本当に小さく光る希望。どうしようもない貧困や構造を変えられないコミュニティの中にありながらも、セクシャリティを超えた”人を想う気持ち”の確かさに心が救われる一作です。