【 コメント 】
”親友”と呼べる存在がいないことに気づいた中年男が、親友を求めて彷徨う物語。監督は『髪結いの亭主』(1990)、『列車に乗った男』(2002)などのパトリス・ルコント。主演は『八日目』(1996)、『夜の子供たち』(1996)のダニエル・オートゥイユ。と人気コメディアンのダニー・ブーンが相手役を務めます。
中年男性のフランソワは女性のパートナー・カトリーヌとともに美術商を営んでいる。商売はそれなりに順調だったが、自分の誕生パーティの席で思いがけない事実を突きつけられる。出席者が口を揃えて、フランソワには親友がいないと断言したのだ。反発するフランソワはカトリーヌの挑発に乗って、10日以内に親友を連れてくるという賭けをしてしまう。もし出来なければ、20万ユーロで落札したばかりの大切な古代ギリシャの壷を手放す事態に。さっそく自分が親友だと思っていた人たちを訪ねて回るフランソワだったが、自己中心的な性格が災いして結局誰からも相手にされずじまい。途方に暮れるフランソワは、ふとしたきっかけで出会ったタクシー運転手のブリュノにどうすれば友達が作れるのか相談するが...という物語。
”親友”がいない、という設定で、思わず共感してしまう人も多いのでは?男性であれば(女性も?)一度は考えてしまうような内容をパトリス・ルコントがユーモアと皮肉を交えて軽やかに描いています。主人公のフランソワは、友達がいない設定ですが、娘もいますし、恋人や仕事仲間もいますので、”ダメ人間”感はそうでもないあたりがちょっとリアリティにかけるかも。周辺人物の存在感やバックグラウンドもほとんど描かれないところも物足りない感じです。終盤テレビのクイズ番組が舞台となるあたりもベタ。それでも、人間の孤独さ、それゆえのつながりの大切さはしっかりと描かれています。”親友”の定義などは無く、結局私たちはそれぞれに孤独なのかもしれません。ルコント作品としては平均的な出来だと思いますが、後味の良い作品だと思います。
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