【 コメント 】
才能のある建築家でありながら、なかなかチャンスを生かせないシモン。生計を立てるために街で似顔絵を描いて日々をしのいでいる。そんなシモンに同棲している彼女のカルメンも不安でしょうがない。やがて、やり手社長ポレルが経営する大手建築会社のコンペに自分の建築デザインが盗まれたことが発覚。シモンはポレルに直訴するが相手にされない。さらには会社から放り出されて車に轢かれて死んでしまう...。こんなについていない人生があるものか、と思ったのもつかの間、シモンは新生児の魂に乗り移り、生まれ変わっていた。ところがその父親はあのポレル。シモンは自分に冷たくしたポレルに対し、赤ちゃんの立場から復讐を決意する...という物語。
赤ちゃんが大人びた行動をとったり、騒動を巻き起こしたり、という設定の映画はありますが、ここまでたちの悪いのは珍しいっ。自分が憎んでいる男の子供として生まれ変わってしまった主人公が、父親に対してあの手この手で復讐します。しかしながら、単純にドタバタを繰り返すだけではなく、そこはフランス映画らしいひねりが効いています。ただ単に手を焼かせるだけの赤ちゃんではありません。浮気性の母親や口ばかりであてにならない祖母に比べ、父親があまりにも自分=赤ちゃんを大切にしているとみてとるや、その最愛の子供=自分を無き者にしようと”自殺”を図るのです。ある意味哲学的です。とは言え、冒頭シモンがありにツキが無く、挙句に死んでしまう序盤から含めて、まったく暗さはありません。底抜けの明るさゆえに、輪廻転生もチカラ技。さらにエロシーンやお下劣なシーンもたくさんあります(映倫R−15指定)。それでもなぜか引き込まれてしまうのは全体のテンポがいいんでしょうね。
こういう物語は結構オチが読めてしまうのですが、そのあたりもよく考えられています。さらに最後は少しほのぼのとして大団円。シモネタがなければ、万人にオススメできるコメディですが(笑)、この”毒”が面白い作品です。
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