【 ストーリー 】
妻を亡くし、悲しみから立ち直れない日々を過ごすパン屋のフランク（ロバート・カーライル）。ある日、彼はパンの配送中に交通事故の現場に遭遇する。事故現場の車の中には瀕死の重傷を負ったスティーブ（ジョン・グッドマン）という男が。彼は少年時代に初恋の相手と再会の約束をした場所へ行かなければならないと言う。フランクは、成り行きから彼の代わりに行く羽目になってしまう ．．．。

【 コメント 】
アメリカで人気のラップ・チーム“キッドン・プレイ“の二人を主演にした学園コメディ『クラス・アクト』(1992)で長編デビューしたランドール・ミラー監督作品。この監督は以後本作まで５作の映画を撮っていますが、すべて日本未公開。うーん、どうしてでしょうね。
割りとコメディっぽい作品が多い監督ですが、本作は笑える場面が多いものの、基本的にはラブストーリー。ロバート・カーライル演じる主人公のフランクが、スティーブから託された約束を果たす現在と、スティーブの少年時代の思い出とが交錯しながら進んでいく、ちょっと複雑な構成です。さらにそこにフランクの過去の思い出も挿入されます。
ロバート・カーライル、相手役の女性を演じるマリサ・トメイ、さらにスティーブ役にジョン・グッドマンというしっかりしたキャスティング。ダンス教室の先生にメアリー・スティンバージェン、ショーン・アスティン、ドニー・ウォルバーグ、ちょっとだけですがダニー・デビートも登場します。大スターはいませんが、なかなか豪華ですね。

妻を亡くして落胆に暮れる男が、ふとしたきっかけで出会ったダンスを通して自己の再生を図る物語．．．なんですが、そもそもここに登場するのはみんな何らかのネガティブな過去を背負った人間ばかり。彼らが肉体を動かすことによって、心の問題をクリアしていく様子は非常にポジティブでよいのですが、それぞれの過去についてはほとんど語られないので、さすがにちょっと短絡的過ぎる気もします。このあたりの軽さをどう受け取るかによって見方が変わってきます。交通事故を起こし、自らの約束を果たせないスティーブの過去や、その相手の女性の描き方もちょっと方向性が違う気がします。登場人物がみんなそれなりに幸せになるというバランスを選んだ分、フランクの心の再生の物語としては大きな感動を得られない結果となってしまいました。もともと監督が作った短編映画を自らリメイクした作品のようですので、しょうがないのかもしれません。