自身の医療ミスによる訴訟問題を抱え、病院を追われた医師シュテルン。難民キャンプで働いていた彼のもとにある日、国境警備隊のラズロによる違法な銃撃で重傷を負った難民の青年アリアンが運び込まれる。そこでシュテルンはアリアンが重力を操り浮遊する不思議な能力を持ち、傷さえも自力で治癒してしまうことを知る。訴訟のために金を必要としていたシュテルンはそんなアリアンを利用しようと思いつく。一方、国境警備隊の違法銃撃を揉み消したいラズロは、口封じのためにアリアンの行方を追っていた...という物語。
前作『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』(2014)が世界的に反響を呼んだハンガリーのコルネル・ムンドルッツォ監督作品。ヨーロッパの難民問題を背景に、医療ミスで崖っぷちの医師と不思議な能力に目覚めた青年の過酷な逃避行を描いた異色のSFドラマ。社会的背景や宗教的要素もあるため、理解しにくい部分もありますが、逆に難民問題を考えるきっかけにもなると思います。映像や構図は非常に印象的。浮遊=自由のモチーフと思われ、全体的に暗いイメージながら、奇跡の力を得た青年と医師との交流に、ささやかな希望を感じられる作品。
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