D-Movie(No.620)

・邦題:『フランドル』
・原題:『FLANDRES』
・監督:ブリュノ・デュモン
・脚本:ブリュノ・デュモン
・キャスト:アデライード・ルルー、サミュエル・ボワダン他
・制作:2005年/フランス
・ジャンル:ドラマ
・上映時間:91分
・評価:★★★


【 コメント 】
『ユマニテ』(1999)で、同年のカンヌ国際映画祭のパルム・ドールにノミネートされ、審査員特別グランプリを受賞したブリュノ・デュモン監督作品。本作も同様にパルム・ドールにノミネート。受賞は逃したが、審査員特別グランプリを受賞しました。美しいフランドルの寒々しくも美しい農村の風景と、不条理に満ちた戦場の地獄絵図を対比させ、少女と若者の心情の揺れを抉り出すように表現した問題作。作中、ショッキングなシーンもありますので、苦手な方はご注意ください。

舞台はフランス最北部フランドル地方の小さな農村。少女バルブと朴訥とした青年デメステルは親しい関係。ところがバルブは、彼のみならず、村の男ブロンデルらともセックスを重ねていた。やがて、デメステルやブロンデルを含む村の男たちは、次々と戦争に召集される。静かな村での暮らしが嘘のように、場所や目的もわからぬまま、戦地で生き延びるのに必死な男たち。戦場での殺戮の繰り返しに、やがて彼らの精神は病んでいくが、それと時を同じくして、村に残されたバルブもまた精神のバランスを崩していく...と言う物語。

登場人物たちの会話も少なく、多くの事柄が説明されないまま、物語は進みます。村の男たちは戦場に送られますが、どんな戦争(年代的に近いイラク戦争?)でどんな状況なのかまったくわかりません。ただ、いつ現れるかわからないゲリラとの戦いの中で緊張感と精神が崩壊していくプロセスのみが描かれます。
途中までは、『ディア・ハンター』(1978)のように、故郷の青春物語と戦争の悲惨さが対比されるのかと思っていましたが、あまりにもリアリティがなく、これはあくまでも登場する男女の心象風景を象徴的に描いたものではないかという結論に至りました。そう考えてみると、人間の心の奥底に渦巻くさまざまな感情や欲望などがバランスを崩してしまった世界に放り出された二人のヒリヒリとした感覚が伝わってきました。決して安息のない私たち人間の愚かで、優しい世界がここにあります。

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