【 コメント 】
アルゼンチンのブエノスアイレスにあるアーケード商店街を舞台に、そこに暮らす様々な人々の人間模様を描いたドラマ。監督はブエノスアイレス出身のダニエル・ブルマン。
舞台はアルゼンチンのブエノスアイレス。オンセ地区にある下町風情の残る小さなガレリア(アーケード商店街)。主人公は、母親が営むランジェリーショップを手伝う青年アリエル。父親は、彼が生まれてまもなくイスラエルの戦争に行ったきり戻ってこない。商店街の一角で過ごしながら、将来に希望の持てない日々を過ごす中で、彼は、祖父母の祖国ポーランドの国籍を取得しヨーロッパへ移住しようと考えていた。そんなある日、たまに母に電話をよこすだけの関係だった父親が、突然帰ってくることになった。未来への不安、父親への不満など、さまざまな状況の中でもがくアリエルに希望はあるのか...という物語。
本作は、第54回ベルリン国際映画祭で審査員特別大賞と最優秀男優賞をダブル受賞し、世界的に高い評価を得ました。ただ、アルゼンチンの経済危機やユダヤ人コミュニティなど、日本人にあまりなじみの無い背景を知っていないとなかなかストーリーを理解したり、登場人物に感情移入したりするのは難しいかもです。このあたりはまだ残っている公式サイトにある程度の解説がありますので、そちらをまずご覧になることをオススメします(http://www.annieplanet.co.jp/buenos/)。
また一方で、そういった社会的背景とは別に、主人公アリエルの成長が描かれているところが興味深いです。30歳になろうとするアリエルはまだまだ子供っぽさが残る、見方によっては”ダメな”青年なんですが、ポーランド人になろうとするプロセスや、父親との確執などを通して、現実と対峙することになります。商店街に生きる人々はみんなドラマティックではありませんが、アリエルが想像するよりもはるかにさまざまな想いを抱えて生きています。夢や希望はさておき、地に足の着いた一歩を踏み出すことが人生にとって大切であることを教えてくれる作品です。