舞台は1990年代のロンドン。ゲイでアル中の詐欺師アラン・コンウェイは、バーやレストラン、ライブハウスなど、いたるところで、「自分は映画監督のスタンリー・キューブリック」と名乗り、現金をせびったり、飲食代を払わせたりしていた。コンウェイは、映画のこともキューブリック監督のこともよく知らずにペテンにかけるのだが、声をかけられた人々は、「あの有名なキューブリック監督!」と疑わず、映画出演の話を持ちかけられて気をよくし、コンウェイの言うがままにお金を払ったり、おごったりしてしまう。しかも、だまされたとわかっても、あまりの稚拙な詐欺に、恥ずかしくてほとんど訴えられない。しかし、そんなコンウェイの詐欺を暴こうとする記者が現れ...という物語。
タイトルにもあるように、実際にあった話がベースになっているとのこと。とはいえ、インターネットの時代なら存在し得ない、お間抜けな詐欺を連発する男をジョン・マルコヴィッチが怪演。有名人と聞けばすぐに信じてしまう、周りの人間たちの浅はかさも皮肉たっぷりに描かれています。詐欺のパターンは同じなので、中盤少しだれてしまう感じはありますが、なんと言ってもジョン・マルコヴィッチの存在感が凄いです。階級や貧困、人種差別など、イギリス社会のさまざまな側面があぶりだされている部分もあり、単なるコメディを超えた深みのある作品になっていると思います。
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