【 コメント 】
毎回こだわりの映像作品を提供してくれるコーエン兄弟が、ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチなどの豪華キャストで描くドタバタコメディ。
CIAに勤務しているオズボーンは、突然上司から呼び出され、酒の問題を理由に左遷を言い渡される。頭にきたオズボーンは、CIAを退職、暴露本を執筆することにする。一方で、オズボーンの妻ケイティは、財務省連邦保安官ハリーと不倫中。秘かに離婚を計画しており、交渉を有利に進めるべく、オズボーンのパソコンをまるまるCD−ROMにコピーする。ところが、そのCD−ROMが、ひょんなことからフィットネスセンターで働く能天気男チャドの手にわたる。機密情報を手にしたと喜ぶチャドに、同僚のリンダが整形費用欲しさに、これをネタにオズボーンを脅迫しよう計画する。リンダは脅迫のためにロシア大使館に交渉を始めるが...という物語。
コーエン兄弟のオリジナル脚本によるコメディ。ジョン・マルコビッチから始まって、ハリウッドの豪華スターが強烈なキャラクターを演じています。少し歯車のおかしな人々が連鎖し、ブラックな笑いを引き起こすという意味では、コーエン兄弟らしいテイスト。場面場面は面白いのですが、欲望に絡めとられた人間たちの悲哀が伝わってくるかというとそうでもないです。ひっ迫感にもどこか乏しく、サスペンス的盛り上がりに関しても、コーエン兄弟特有のキレのようなものは今ひとつ。ただ、お約束ともいえる登場人物の突然の死などもあって、どこに向かうかわからない不安と快感は健在。ブラッド・ピットのおバカ加減も面白いし、フランシス・マクドーマンドの狂気も絶好調。お下品なジョークもご愛嬌。評論家からも絶賛され、アカデミー賞を獲得した『ノーカントリー』(2007)の次作ということもあってか、どこかゆる〜いモノを作りたかったのかなという気もします。コーエン兄弟の作品としてはノリが軽い方なので、そういう意味では万人受けするのかも。
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