借金の取り立て屋をしているサンフンは、母と妹を死なせた父親に対する激しい怒りと憎しみを抱えて生きていた。常に暴力を振るっては周囲を怖がらせていたサンフンは、ある日道端で唾を吐き、偶然通りかかった女子高生ヨニのネクタイを汚してしまう。見るからに強面のサンフンに対しても怯むことなく突っかかっていくヨニ。最悪な出会いの2人だったが、不思議とウマが合い、奇妙な交流が始まる。ヨニもまた、ベトナム戦争の後遺症で精神を病んだ父親との間に確執を抱えていたのだった。そんな中、ヨニの弟ヨンジェが偶然にもサンフンの手下となり取り立ての仕事を始めるのだが...という物語。
韓国インディー映画界で俳優として活躍してきたヤン・イクチュンの長編初監督。愛を知らずに社会の底辺で生きるヤクザな男と心に傷を抱えた勝気な女子高生の出会いと別れ。すさまじい暴力描写と真っ向から感情をぶつけ合う心理描写で緊張感あふれるドラマとなっています。製作・監督・脚本・編集・主演まですべてこなしたヤン・イクチュンがすごいですね。暴力でしか感情表現できない主人公と、愛し方を知らずに育った女子高生の関係性があまりにも純粋でせつないです。エンディングは個人的な好みには少し合いませんでしたが、130分という時間を感じさせない見ごたえのある作品です。
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