ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属するニナは、元ダンサーの母親の期待を一身に背負い、バレエに全てを捧げてレッスンに励む日々。そんな彼女に、人生最大のチャンスが訪れる。長年バレエ団の象徴的存在だったプリマ・バレリーナの引退を受け、新作の『白鳥の湖』のプリマにニナが抜擢されたのだ。しかし、白鳥の湖では純真な白鳥役と同時に、奔放で邪悪な黒鳥役も演じなければならない。優等生タイプのニナにとって、魔性の黒鳥を踊れるかが大きな試練となる。対照的に、官能的にして大胆不敵な踊りで、芸術監督のルロイに理想的な黒鳥と言わしめた新人ダンサーのリリー。彼女の台頭によって、不安と焦りが極限まで高まってしまうニナだった...という物語。
『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)のダーレン・アロノフスキー監督が、厳しい競争に晒されるバレエの世界を舞台に、プリマまで上り詰めながら、あまりのプレッシャーと疑心暗鬼から精神を崩壊していくヒロインを描いた物語。主人公を演じるのは、本作でアカデミー賞主演女優賞にも輝いたナタリー・ポートマン。主人公が徐々に精神的に追い詰められ、幻覚や妄想にハマっていく設定は割りとありがちですが、本作はナタリー・ポートマンの演技とバレエの世界観をしっかり描いていることで、作品に深みがあります。ラストも悲劇的ではあるものの、芸術に身も心も捧げた人間のカタルシスが感じられて一種の爽快感があるところがさすが。バレエに興味がなくても楽しめる一作です
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