コラム
<コラムのバックナンバー>

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『娯楽としての映画』(No.624/2013.12.27)
2013年最後の配信となりました。今年もお世話になりました。毎回、ご覧いただいてありがとうございます。
個人的には、よく通っていた三軒茶屋の映画館の一つが閉館したり、ものすごく心に響く作品も少なかったりなど、映画に関してはテンションのあがることの少ない年だった気がします。もちろん、それでもいい作品にはめぐり合えましたし、まだまだこれから期待したい作品もあります。
で、娯楽市場の中で映画って今どうなんだろうと思ったのですが、何となく、ゲームやテーマパークなど、他のエンターテイメントとしのぎを削っていることから、映画に関しては動員数や興行収入なども減っている気がしたのですが、東京都産業労働局の調べを見てみると、2010年までのデータしかなかったのですが、2010年に関して言えば、スクリーン数、興行収入ともに上昇しており、興行収入に関して言えば、通常の作品に比べて料金が高い3D映画の普及もあり、過去最高を記録したようです。ちょっと意外でしたが傾向としては安心しました。

液晶テレビもどんどん安くなって、家庭でも大画面でゆっくり映画をDVDやブルーレイで見られるようになりましたが、それでも、映画館で大きなスクリーン、素晴らしい音響で経験するのとは圧倒的に違います。来年も映画というメディアに感謝しつつ、このコラムも続けてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


『ジョーカーの声』(No.623/2013.12.20)
以前、このコラムでも書きましたが、今年の6月に地上波で放送されたクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』、悪役ジョーカーの日本語吹き替えが素晴らしかったです。で、先日、とある人とその話で盛り上がりました。その方いわく、『ダークナイト』のDVD&ブルーレイが発売されているのですが、その特典映像がかなり充実しているとのこと。いまだに、録画した『ダークナイト』を折に触れ見ている身としては、かなり興味をそそられる情報。が、しかし、やはりここで気になるのは吹き替えのこと。地上派と同じ人なら即買い?ということで調べてみました。ジョーカーの素晴らしい吹き替えを演じていたのは、大塚芳忠さんでした。さまざまなアニメで声優として活躍していらっしゃいますし、キーファー・サザーランド、ケビン・コスナー、ティム・ロビンスなどなど、大物俳優の声もたくさんっ。中でもこのジョーカー役のヒース・レジャーは兼ねてから熱望されていたとのこと。まさに適役。で、DVDを調べてみると、残念ながら違う方でした。もちろん、この方がダメというわけではありませんし、字幕で見れば何の問題もないのですが...ちょっと残念。

でも、ブルーレイの映画ソフトもかなり安くなってきたので、心は動いています(笑)。ちなみに、ヒース・レジャーについても改めて調べてみたのですが、『ダークナイト』でアカデミー助演男優賞を受賞したのが28歳。これは史上4番目の若さだったそうです。本当に残念。やっぱりブルーレイ、買い...か。


『テクノロック&ポップ』(No.622/2013.12.13)
先日、AmazonにてCDを2枚買いました。1枚はニューオーダー。2005年に発表されたアルバム『Waiting for Sirens' Call』のアウトテイク集となる『Lost Sirens』。今年初めに発売されたのですが、買おうと思って忘れていました。Amazonで別のものを買おうとしていたときにふと画面に出てきてビックリ。Amazonはこれがやばい(笑)。まあ、いずれ買おうと思っていたのでいいのですが。アウトテイク集とはいえ、ファンからするとこれで十分ニューアルバムとして楽しめます。大きな感動はさすがにないものの、知らない曲を聞けるだけでも単純に嬉しいっ。

もう1枚はイギリスのポップデュオ、Orchestral Manoeuvres In the Darkのこちらは新作となる『English Electric』。OMDは昔からホントに好きなバンドで、80年代から活躍していますが、今でもアルバムを発表する頻度は減ったのものの、ちゃんと活動を続けてくれているところが嬉しいです。もともとライブはあんまりやらないのでそれはOK(笑)。相変わらずの哀愁ただようメロディで、2000年以降に出たアルバムでは一番好きかも。電子的な音でこれだけ叙情性あふれる世界を作れる人はそうはいません。
ちなみにOMDの新作に関しては、公式サイトでも曲が聴けたりビデオが見られたりします。いつも思うんですが、ネット上で曲が聴けても、やっぱり欲しいものは買っちゃうんですよね。そういうことです。

OMD公式サイト:http://www.omd.uk.com/



『顔フォト!2013結果発表』(No.621/2013.12.06)
こちらのコラムでも毎回ご紹介させていただいている、233主催で毎年開催している写真コンテスト『顔フォト!コンテスト』。カバンの止め具や蛇口、建物の窓やドアなど、日常の中に存在する”顔”に見える写真を撮って送っていただくというコンテストです。今年で第4回目。10月末に募集が終了し、現在、審査結果の発表を行っています。
こちらの公式サイトからご覧ください。
→→→ http://kao-photo.petit.cc/
(メニューの「結果発表!はこちら」→「2013!結果発表」から)


”顔フォト”は誰でも撮れる作品で、カメラも選びません。携帯カメラで全く問題なし。それでいて、見つけたときはちょっと非日常感があり、楽しくなります。写真ですから人と共有することも簡単。そうやって、日常をより楽しくしていただきたい、との思いからコンテストを開催させていただいています。
毎回、300通を越える応募作品があり、審査員5名で決める”上位3賞”と、さまざまなメーカーさんから賞品を協賛いただいた”協賛賞”が9点。豪華賞品が揃っています。上位3賞に選ばれるものはやはり素晴らしい作品ばかりで、今回の第1位に選ばれた作品も、一枚の写真の中に驚くほどのストーリー性が込められています。ちょっとCGアニメっぽいところも楽しいです。映画の一場面のようですよ。ぜひご覧ください。


『寄生獣』(No.620/2013.11.29)
月刊アフタヌーンで連載されていた岩明均氏によるSF漫画『寄生獣』が、とうとう実写映画化されるようです。『寄生獣』は、突然、正体不明の生物”パラサイト”が地球上に飛来。鼻や耳などから進入して人間の脳に寄生、その人間をコントロールし、人間社会を支配しようとする中、寄生の失敗により、人間の理性を保ったまま人間以上の能力を得た主人公の高校生・泉新一がパラサイトたちとの戦いに挑むという物語。パラサイトと人間との知力と体力を尽くした闘いにリアリティがあり、個人的に大好きな漫画です。

もともとは2005年にアメリカのニューライン・シネマが映画化の権利を取得、「まさか『北斗の拳』や『ドラゴンボール』の二の舞になるのでは?」と心配していましたが、なかなか制作が決まらないまま数年が過ぎ、忘れていた頃にまさかの復活。最終的に映画化権を取得したのが東宝ということで、まあ、ハリウッドリメイクによる悪夢は逃れた気がしますが。
監督を務めるのは『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』の山崎貴監督。『探偵はBARにいる』シリーズの古沢良太氏が脚本を担当。主人公の新一を演じる染谷将太はいいと思いますが、作中重要な役となる田宮良子を演じるのが深津絵里。なんかちょっと違うかも...。2部構成で、第1部は来年の12月公開とのこと。アニメ化も進行中とのことで、『寄生獣』ファンは期待と不安の入り混じる日々を過ごすことになりそうです。アニメはまあいいのかなあ、と思いつつ、映画はやっぱり不安の方が大きいかも...。


『鉄子の部屋』(No.619/2013.11.22)
今月の20日(水)に配信された「東洋経済オンライン」の記事で興味深いものがありました。”プロデューサーが語る「徹子の部屋」の秘密”です。
「徹子の部屋」は、40年近く続いている”超長寿”テレビ番組。司会の黒柳徹子さんがゲストを招いて話す30分のトーク番組で、これまでに出演したゲストは1万人を超えるとのこと。まさにモンスター番組ですね。
個人的には”継続している”ものがすべて、という考え方を持っていて(ちょっと極端ですが...)、続いているものにはちゃんとした理由があるというのが持論です。そういう意味で、この記事は大変刺激的でした。

最近では、バラエティ番組「アメトーーク! 〜徹子の部屋芸人」などが企画されるほど、当該番組を見ている人以外にも広がっている感がありますが、やはりそこには確固たる指針と黒柳徹子さんのプロフェッショナルとしての気概が存在していました。
例えば、インタビューにおいてプロデューサーである田原敦子氏は、「徹子の部屋」の前に「世界の車窓から」のプロデューサーを担当していた経験から、”変えないことによる「お客様のおなじみ感」”を大切にしているそうです。
また黒柳徹子さんも、事前打ち合わせでゲストのお話を聞いて、それを全部メモし、1度で3回分の収録を、台本なし、編集なしで行うそうです。黒柳さんはテレビがまだ、録画技術がない生放送時代の人なので、たくさん撮影して、いいところだけを放送することについては、「ゲストの方に失礼だ」として、“編集なし”にこだわっているとのこと。テレビ業界が長いし話すのは得意だから、というようなおごりは一切ないのでしょう。まさにプロフェッショナルだと感じました。

一応、個人的にも『世田谷Webテレビ』というコミュニティメディアを主宰していて、7年近く毎週生放送をブロードバンドで放送し、アーカイブも編集無しでこだわっていますが、そういうインディペンデントの確信犯的アプローチとはまた違う、本物のプロの凄みを感じました。

長寿番組という意味では、30周年を迎えた、フジテレビ系バラエティ番組「森田一義アワー 笑っていいとも!」が、来年3月で終了することが明らかになったばかり。「徹子の部屋」、ずっと続いてほしいです。


『バルビゾン派』(No.618/2013.11.15)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中されている『バルビゾンへの道』展を見ました。この展覧会は、山形市の山寺にある後藤美術館のコレクションを中心に展示されているもので、16世紀のバロック期から19世紀後半のバルビゾン派の風景画に至る、多様なヨーロッパ絵画約60点が展示されています。
”バルビゾン派”とは、1830年から1870年頃にかけて、フランスのバルビゾン村やその周辺に滞在して作品を制作した人たちのことを指すようです。知りませんでした。中心的な画家にはコロー、ミレーなどがいたそうで、自然主義的な風景画や農民画を写実的に描いたものが多いようです。今回の展示では、神話画、宗教画、肖像画、静物画など、いろいろなテーマの作品が展示されています。会場は「神話・聖書・文学」「美しさと威厳」「静物画−見つめる」「風景と日々の営み」と5つの章から構成されていて、テーマや作家はバラエティに富んでいますが、まとまりがあって見やすかったです。第2章に立派な肖像画が非常に見ごたえがありましたが、中心となるのは、やはり風景を描いた作品のようで、どれも色合いが落ち着いていて、見ているだけで心が落ち着く、そんな印象を持ちました。日本でもあまり知られていない画家が多かったせいか、平日の午後という状況をのぞいても、会場内は人が少なめに感じました。
それにしてもこ、これだけ素晴らしいコレクションがほとんど個人によるものだということが本当に驚き。そういう意味でも非常に貴重な展覧会だと思います。会期は11月18日(月)まで。ぜひ。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/pickup/exhibition.html


『二人の天才』(No.617/2013.11.08)
先日、地上波でデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』が放送されていましたね。同作は世界最大規模のソーシャル・ネットワークサイト『Facebook』の創設者マーク・ザッカーバーグとその周辺人物との人間模様を描いたドラマで、公開当時見たときは、うまくまとめたなあ、という感想をもちました。音楽を担当したのが、大好きなナイン・インチ・ネイルズのフロントマン、トレント・レズナーで、またこの音楽がよかったこともあり、安くなったらDVDを買おうかな、と。まあ結局それ以来見ることも無く、先日の放送で見たのですが、やっぱり面白いなあ、と思う反面、すでに陳腐化している感があったのも事実...。3年前の公開なんですが。ITの世界はホントに移り変わりが早いですから。
で、今ちょうど、2011年に死去したアップルの創設者、スティーブ・ジョブズの生涯を描いた映画『スティーブ・ジョブズ』が公開中です。マーク・ザッカーバーグとスティーブ・ジョブズ、同じくITの分野で確実に一時代を築いた二人。見比べてみるのも面白いかと。そう考えると、マーク・ザッカーバーグも相当な成功者ではあるものの、やはりスティーブ・ジョブズのカリスマ性にはまだまだ一歩及ばない気がします。まあ、マーク・ザッカーバーグはまだまだこれからもありますから、どうなるかわかりませんが。スティーブ・ジョブズの場合は書籍もたくさん出ていますが、誰の視点から書かれたものを読んでも、それなりに面白いですからね。やはり不世出の人であることは間違いないと思います。ちなみに映画『スティーブ・ジョブズ』はあまり評判がよろしくないようですね。いろんなところで語りつくされ、また熱狂的なファンも多い人ですから、辛口評価も増えるのかも。

・映画『スティーブ・ジョブズ』公式サイト
http://jobs.gaga.ne.jp/



『叛逆の物語』(No.616/2013.11.01)
10月26〜27日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)によると、26日に公開されたアニメーション映画『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』が、2日間で27万人以上を動員し、興行収入も4億円を突破するなど、かなり好調のようです。
『魔法少女まどか☆マギカ』は、2011年1月〜4月まで毎日放送などで深夜アニメとして放送された作品で、タイトルからはちょっと想像のつかない残酷なストーリー展開と劇団イヌカレーによる独特のビジュアルなどが話題になりました。個人的にも作画が苦手な雰囲気だったので敬遠していたのですが、周りから進められてDVDを見てハマりました。
劇場版は過去に2作作られていて、基本的にはテレビアニメがベースとなっていたのですが、劇場版最新作は、脚本も作画もすべて完全新作とのことで、さらに期待値が高まったんでしょうね。確かに見たいかも。ただ、脚本を手がけている虚淵玄氏は、ダークな世界観に定評のある方なので、テレビアニメが一応のハッピーエンド(?)だと思っている身にとって、”さすがに続けてハッピーエンドは無いだろう”という思いもあり、ちょっと不安で見るのが怖いです(笑)。でもまさにその不安定で純粋な世界観こそが『魔法少女まどか☆マギカ』の醍醐味なんですが...。

・『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』
http://www.madoka-magica.com/


『MONKEY』(No.615/2013.10.25)
翻訳家の柴田元幸さんが責任編集をつとめる新しい文芸誌『MONKEY』が創刊されました。相変わらず業界的に不況が叫ばれている出版分野においての新たな試み、いいですねえ。柴田元幸責任編集、といえば、2008年に創刊された『モンキービジネス monkey business』(2011年休刊)が思い浮かびますが、名前からして、再出発といったところなのでしょうか。内容的にも、柴田氏の知り合いやリスペクトする執筆陣のようで、続編といった感じです。
創刊号の特集は、柴田さんが20年以上にわたり翻訳を続ける小説家ポール・オースター。「青春のポール・オースター」と銘打たれた特集では、オースターが1967年から70年にかけて書いた未完の小説の草稿と断片の翻訳、オースターが若き日について語ったインタビュー、高橋源一郎によるオースター論などが掲載されているとのこと。いいですねえ。ポール・オースターは個人的にもハマッた作家なので、これだけで買いっ。
他にも連載陣は川上弘美、岸本佐知子、古川日出男、村上春樹などなど、ジャンルにとらわれない、まさに柴田さんらしいチョイス。このいい意味での”マーケティング感の無さ”がワクワク感を生むんですよね。「猿のあいさつ」と題した柴田さんの創刊の言葉によれば、”日本あり外国あり現代あり古典ありで、自分たちが読んで面白いものを好き勝手に取り上げていこうと思います”とのこと。早速、創刊号は購入しましたが、できれば長く続いていただきたいです。

・「MONKEY」(Switch Publishing)
http://www.switch-store.net/SHOP/MO0001.html


『学生たちに向けて』(No.614/2013.10.18)
渋谷の日本デザイナー学院という専門学校のシブヤプロダクツ科で、非常勤講師をさせていただいています。今月から後期の授業が始まっているわけなんですが、専門学校は2年しかないので、ホント早い。2年生に関しては、この前知り合ったばかりのような感じがしますが、そう思っていたらもう就活。後は卒業制作に向かってまっしぐら。やっぱりこのあたりのスピード感が4年生の大学とは全然違いますねえ。

学校で教えるようになってから、あるクセのようなものがついたんですが、それは、「学生たちに読ませたい本」を探すこと。2年間しかありませんし、伝えたいことが全部伝えきれるとは思えません。ということでいろんなものに触れてもらいたいのですが、やはり世代的には本を読んでほしいなあと。
で、最近出会った本の中でおススメしたいもの。『芸術実行犯/Chim↑Pom』(朝日出版社)、『アーティストになれる人、なれない人/宮島達男 編』(マガジンハウス)、『話す写真/畠山直哉』(小学館)。どれもアートと社会との交わり考える際に、大きな指標となってくれる言葉がたくさん入っています。『アーティストになれる人、なれない人』では、私の好きな宮島達男さん以外にも、大竹伸朗さんや杉本博司さんが登場して刺激的でした。

地域と連携されている大学の教授や学生さんとお話をする機会も多いのですが、そこで思うのは、大学と専門学校のボーダーもあいまいになってきつつあるということ。大学も積極的にデザインやモノ作りを推進する学科を作ったり企画を実施したりしていますし、専門学校も、例えばシブヤプロダクツ科ではさまざまな”技術”を習得するだけでなく、いかに社会と関わるかを考える授業も行っています。いつの時代も何かが交わるところ=境界線が面白い。専門学校の2年間にいかに社会と触れ合うか、交わるか。後期が始まっているのにこんなこと言ってちゃだめなんですが(笑)、悩みながらのプログラム作りは個人的にも勉強になります。


『あなたはしゃべりすぎている』(No.613/2013.10.11)
先日、ヤフーニュース経由で面白い記事を発見しました。ウォール・ストリート・ジャーナルが10月7日(月)に配信したコラムで、タイトルは「あなたはしゃべりすぎている」。

誰かと長時間会話したあとに、自分が話した時間がどのくらいになるかをパーセントで計算するテストをやってみてほしい、という内容で、”人は、相手の話を聞くより自分が話すほうが楽しいがゆえに、自分の話している時間を短く見積もる傾向がある”とのこと。で、自分が話した割合に20%上乗せするのが妥当だと。で、その割合が70%を超えていれば、”しゃべりすぎ”となるらしい。つまり、二人で話していて、ちょうど半分ずつぐらい話たな、と思った時は、50%+20%で、すでにしゃべりすぎ、ということらしい。

でもこれ、結構的を得ている気がしますね。ギャラリーをやっていることもあり、人の話を聞く立場になることが多いですし、また、人と人とが会話している状況に身を置くことも多いのですが、”よくしゃべる人”というのは結構います。しかも見ていて思うのは、そういう人たちは、自分がしゃべりすぎと思っていないだろうな、というのがわかるということです。これは推測でしかありませんが。
このコラムに例が出てきます。「例えば、友達が「インターンのヘンリーはおかしいんじゃないかしら」と言ったとしよう。ここで「私のお母さんもそうなの。昨日も美術館でね」と言いたくなっても、言ってはいけない。あなたはしゃべりすぎている。母親の話をする代わりに、「どうしてそう思うの?ヘンリーがハンサムなら、私の姪にどうかと思っているのだけれど」と言ってみよう」。

このパターン、よく耳にします。よく耳にするからこそ、自分もこういうことがいいたくなるときに「ちょっと待てよ」と気づくのです。もちろん時と場合によっては話しますが。
さらに厳しい意見で畳み掛けてきます。「しかし、相手が無口で人の話を聞くのが楽しいという人ならどうするのか、とあなたは言うだろう。勘弁してほしい。相手は聞くのが楽しいわけではない。人の話を聞くことは企業の報告書を読むようなもので、話すのはシナモンパンを食べるようなものだ」。なるほど、これは気づきませんでした...。

ちなみにこのコラムを書いたラゼブニック氏はテレビアニメシリーズ「シンプソンズ」の作者の1人だそうです。さすが毒が効いてますね。


『キミコ・パワーズ』(No.612/2013.10.04)
国立新美術館で開催中の『アメリカン・ポップ・アート展』を見ました。日本美術および現代美術の両分野における、世界有数のコレクターである、アメリカ・コロラド州を本拠地とするジョン・アンド・キミコ・パワーズ夫妻のコレクションを中心とした展覧会です。同夫妻は、特にポップ・アートにおいて、アメリカにおけるその黎明期である1960年代から、パトロンおよびコレクターとして積極的に活動し、アート・シーンに大きく貢献してきたとのこと。確かに素晴らしいコレクションで、個人的に大好きなジャンルでもあり、大変楽しめました。

アンディ・ウォーホルの作品がやはりメインのようで、キミコさんのために作ったポートレートや、キャンベルスープを描いた初期作品などが印象的です。もちろん他の作家の作品もたくさん展示されていますが、バスキアやジャスパー・ジョーンズあたりがなかったのが意外。でもロバート・ラウシェンバーグの作品がたくさんあって大満足。やっぱりかっこいい。音声ガイドも小林克也さんがパーソナリティを務められていて楽しかったです。まさに気分は”ベストヒットUSA”。いや音楽じゃなくてアートが主役なんですが。
ところどころ印象派の画家にもろに影響を受けた作品なんかもあり、ポップアートが突然変異ではなく、あくまでも美術史の流れの中で生まれたものであることが確認できたのも興味深かったです。お客さんに若い人が多かったのも驚き。ポップアートの勢いはまだまだ続きそうです。会期は10月21日(月)まで。

・国立新美術館−アメリカン・ポップ・アート展
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/american_pop_art/


『ロックと印刷』(No.611/2013.09.27)
最近、いろいろなつながりから、シルクスクリーン印刷に関わることが多いのですが、先日、四谷のライブハウスを借りて、バンドをやっているミュージシャンを対象に、その場でデータから製版し、シルク印刷を行うイベントを開催しました。プリントゴッコでおなじみのRISOさんにも協力いただいたのですが、シルク印刷&ロック(ロックが割とメインのライブハウスでした)&Tシャツ(参加者の方がプリントするのはだいたいTシャツ)の相性の良さをあらためて感じたイベントでした。そもそもTシャツはもともと肌着だったアイテム。それをあえてアウターとして着ることがかっこいいとされ、流行ったと言われています。ある種の反骨精神。ロックですねえ。

で、なぜ、この3つの親和性を感じたかというと、Tシャツは刷り台の上で刷るのですが、参加人数が予想以上に多かったので、刷り台が足りなくなったんですね。そこで店内にあるもので代用、ということで、使われたのがダンボール。とりあえず平坦ではあるものの、多少波があります。刷るときに力を入れると、その波模様がプリントに出てしまった。ところがこの波がストライプっぽくなって超かっこいいんです。まさに奇跡。こうやって、逆境や失敗からまったく新しい表現が生まれる。シルク印刷の自由さと、ロックの精神、Tシャツというアイテムだからこそ生まれたコラボ。こういうのたまりませんねえ。夕方18時からスタートして、24時まで、ずっとみんなで刷っては酒を飲んで遊んでいました(笑)。レポートがこちらのサイトにあります。ぜひご覧ください(ゴッコファン:http://goccofan.net/

ちなみにTシャツの流行に一役買ったのが、映画『欲望という名の電車』(1951)。主役のマーロン・ブランドがTシャツをかっこよく着こなしていたことから流行ったとか。Tシャツを抜きにしても、この頃のマーロン・ブランドはホントかっこよかったです。


『顔フォト2013』(No.610/2013.09.20)
今年で4回目となる『顔フォト!コンテスト2013』の募集をスタートしました。”顔フォト”とは、カバンの止め具や蛇口などなど、日常の中に偶然存在する”顔”に見える写真。誰でも一度はそういう写真を撮ったことがあるのではないでしょうか。当コンテストは、そんな”顔フォト”を応募していただいて、優秀な作品には豪華賞品をプレゼント、という企画です。さまざまな企業の方から、サーバをご提供いただいたり、賞品を協賛していただいたりして、毎回300通を超える応募をいただいています。大感謝。

ということで、今回も募集が始まっています。コンテストの目的は、ズバリ『日常を楽しくする』ということ。普段見過ごしてしまっている日常の中に潜む”顔”。ちょっと視点を変えてみるだけで、これらの顔を発見することが出来ますし、それだけでちょっと楽しくなります。写真自体のクオリティなどはほとんど問いませんので、敷居が低いこともポイント。視点を変えるだけで、世界は変わりますっ。賞品は、デジタルフォトフレーム、デジタルカメラ、カメラバッグ、カメラストラップなどなどなど。募集期間は10月末日ですので、これから撮り始めても十分間に合います。ぜひご応募ください。詳細は以下のサイトからどうぞ。

・『顔フォト!コンテスト』
http://kao-photo.petit.cc/


『ソダーバーグ』(No.609/2013.09.13)
26歳にしてカンヌ国際映画際パルム・ドール(『セックスと嘘とビデオテープ』(1989))に輝いた天才監督、スティーブン・ソダーバーグがいよいよ映画界を離れるようですね。以前から映画界への不満をほのめかしていたものの、まさか本当に引退するとは...。劇場映画の最終作となる、現在公開中の『サイド・エフェクト』の評判も高いだけに残念...。
インディーズ色の強かった長編デビュー作である『セックスと嘘とビデオテープ』、一転して社会問題をテーマにした『エリン・ブロコビッチ』、群像劇で複雑な人間関係や心理を描ききった『トラフィック』、娯楽大作として大ヒットした『オーシャンズ』シリーズなど、縦横無尽の活躍は、ハリウッドの中でも異彩を放っていました。引退の記事には、”インディペンデント精神あふれる斬新な企画に、もはや保守的な状況に陥ったハリウッドはそぐわないと判断し、テレビ界へと活躍の場を移すことを決意した”とありますが、もしそれが本当だとすると、ソダーバーグ個人の問題にとどまらず、これからの映画界が心配になります。ただ、ハイペースで作品を作り続ける、ほとんどワーカホリックともいえる彼のことですから、突然映画作品を作って私たちを驚かす、なんてこともありえる話。
いずれにしても、主演のジュード・ロウをはじめ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズなどのキャスティングも話題になっている『サイド・エフェクト』は必見です。ちなみに、公式サイトには、最後の劇場映画公開記念(?)として、”もう一度スクリーンで見たい、ファンが選ぶソダーバーグ映画の投票企画”もあります。さて1位は?

・『サイド・エフェクト』
http://www.side-effects.jp/


『フジタ』(No.608/2013.09.06)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『レオナール・フジタ』展を見ました。1920年代にエコール・ド・パリの画家として活躍、裸婦のほか自画像や猫を主題とした作品によって、当時のパリ画壇で最も人気のある画家の一人となりました。丸いメガネとちょびヒゲという愛嬌のある風貌や、海外での評価の高さなどから、日本人にとっては、岡本太郎氏と並ぶ印象的な画家ではないでしょうか。
今回の展示は、フジタ作品の国内最大級のコレクションを有するポーラ美術館の収蔵作品約170点を中心に、国内の美術館や個人蔵による作品や、フジタが晩年に暮らしたフランス、エソンヌ県のメゾン=アトリエ・フジタに保管されているマケット(建築模型)や、アトリエで制作する姿を撮影した土門拳と阿部徹雄の写真など、貴重な作品を含む総数約200点が展示されています。
正直、個人的には特に集中して作品を見たことはありませんでした。日本よりもパリで活躍していたこと、乳白色のキャンバスを使っていたこと、裁縫や料理もこなす、などの一般的な情報以外はほとんど知りませんでした。そういう、私のようなフジタ素人にとっては、本当に驚愕とも言える内容の展示でした。
乳白色のキャンバスや墨を使った表現、マケットなどの造形物、職人として描かれた子供のタイル画のかわらいらしさと量、それらの圧倒的なオリジナリティから浮かび上がってくるフジタの生き様。こんな日本人がいたのか、という驚き。すべてを自分の美意識で貫き通すこだわりから、しびれるような刺激をいただきました。会期もたっぷりありますので、ぜひ観ていただきたい展示です。会期は10月14日(月)まで。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/


『写真SNS』(No.607/2013.08.30)
うちのギャラリー233では、いろんなサークル活動をサポートさせていただいていますが、その中でも最大規模を誇るのが『233写真部』。部員数はアマチュア・プロ問わずいろんな方がおよそ500名。今は、ケータイでもきれいに写せますからねー。国民総カメラマンといっても過言ではありません。で、その写真部なんですが、今まではカメラピープルSNSという、ソーシャルメディアの中のいちコミュニティとして情報交換などを行っていたのですが、このSNSが8月末をもって終了するそうなんですね。そのコミュニティだけでも登録している部員が520名ほどいらっしゃったので、9月からどこを拠点にして動こうかと部員の方と話し合ったところ、部長がシステム系に強い人で、じゃあ、自前でSNSをたちあげよう、ということになり、立ち上がりました(笑)。それが233写真部SNS。
ご利用には登録が必要ですが無料ですし、写真をやっていらっしゃる方なら活動&PRの場として登録して損はないと思います。基本的には営利目的ではありませんので、いろんな広告が届くようなこともありませんし。ということで、写真好きのみなさん、ぜひのぞいてみてください。

・233写真部SNS:http://sns.233photos.net/


『小商い』(No.606/2013.08.23)
ニワトリが先か、卵が先か...どちらが最初にありきなのか、もしくは、どちらが大事、どちらを大事にするか、みたいな場合にも使われますが、最近よく直面する問題が、「お金が先が、楽しさが先か」という議論。イベントや店舗運営のアドバイザーとして関わる仕事の中で登場します。

個人的に大事にしているのは、もちろん”楽しさ”が先ってこと。近年では、個人の発信力が大きくなったこともあり、単発的、短期的なイベントでも、長期的な運営を視野に入れた店舗でも、来場者の方との関係性が構築しやすく、もしくは見えやすくなり、好むと好まざるとに関わらず、コミュニティ的な側面が持ち上がってきます。なので、どんなイベントでも、ビジネスでも”楽しさ”が先、だと思うわけです。
そういう話をさせていただくと、必ず、「それはわかるし、そうしたいのは山々ですが...」という発言が出ます。しかしながら、そもそも”楽しさ”(状況によっては別の価値でも構わないんですが)を提供せずに、利益が出せるのであればそれでいいわけです。ただ、そう簡単に利益が出せないからこそ、”何かしよう”と、イベントなり何なりの企画を考えようとしているわけで。その時に、企画の内容はもちろんしっかり考えないといけませんが、それ以上に最も頭を使わないといけないのが、”楽しさ優先の企画”をどうやってお金につなげるか、というところ。マネタイズです。多くは、このマネタイズを企画に折込み、いわば同時進行(入場料、年会費などなど)で考えますので、結果的に企画倒れになるパターンや、予想通りに収益につながらないのです。そしてそこに決定的にかけているのが、”長期的視点”。そのイベントで儲からなくても、時間をかけてもいいから、最終的に利益につながればいい。利益が出るまでは耐える必要があるように思われることもありますが、その循環を作れば、最終的にはきっちり回っていきます。

で、一番問題なのは、こういう理論が通じない最大の理由が、先方の企業の評価体系がネックになっている場合が多いこと。ようするに、”やろうと思えばできる”ことなんですが...。最近、個人がベースとなった”小商い”なんて考え方が広まってきたのも、うなづける気がします。そっちの方が早いし面白いですから。


『唐茄子屋政談』(No.605/2013.08.16)
ギャラリー233にて、毎月第2水曜日の夜に『233落語ナイト』というイベントを開催しています。あえて平日の夜に開催し、月に1度ぐらいは、仕事帰りに落語でも聞いて笑っていただきたいという想いで続けています。で、一昨日8月の会で、100回目を迎えました。ありがたいです。感謝。とはいえ、特に記念イベント的なことは何も行わなかったのですが(笑)、第1回目の演者さんと同じラインナップで開催しました。入船亭遊一さんと古今亭菊志んさんのお二人です。満席でも15席の小さな寄席なので、基本的には二つ目さんに出演いただいておりまして、真打になると”卒業”ということなんですが、今回は特別に菊志んさんにご出演いただきました。幸い、遊一さんはまだ二つ目でしたので...(笑)。もちろん、遊一さんも実力をつけていらっしゃいますし、菊志んさんはさすがの熱演で、落語の楽しさを満喫しました。楽しかったっ。
第1回目のころから菊志んさん(当時は二つ目で菊朗さんでした)のファンだったんですが、あらためて惹かれました。演目は『唐茄子屋政談』。長い噺ですので、途中で終わりましたが、ずっと聞いていたい、と思うほどの迫力。やはりそれぞれのキャラクターの色がしっかり出ていますし、何気ないやり取りにも抑揚があって飽きないです。10年後、いや、5年後には相当ブレイクされていると思います。応援しています。

・古今亭菊志ん公式サイト:http://kikusing.com/


『ロック&ファンク』(No.604/2013.08.09)
先日、ソウル、ファンクミュージックについて、話が盛り上がった場面がありまして、相手は20代前半の女の子だったのですが(ソウルはいいとして、ファンクが好き、っていう女の子は少ないんです)、気になった発言がひとつ。「ファンクとロックを融合させた人、誰でしたっけ?好きなんですよ」と言うので、う〜ん、誰だろう。例えばすぐ頭に浮かぶのは、スライ&ファミリー・ストーン、ファンカデリックあたりで、いずれも1970年代なんですが、そのあたりのバンド名を出しても、「いや、そうじゃなくて」ということなので、「なんだろうねー」と一緒に考えていたら、「あっ、思い出しました。レニー・クラビッツです」とのこと。とほほ。レニー・クラビッツ、確かに。でも彼がヴァージン・レコードからデビューしたのは1989年。おじさんにしてみると”つい最近”。どうせその時代なら、レッチリとか、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかあげてほしかったと思うんですが。

まあそれはいいとして、レニー・クラビッツといえば、サンダンス映画祭やアカデミー賞などでも評価が高かった映画『プレシャス』 (2009)に出演していましたが、なかなかのインパクトでした。で、いろいろ調べてみると、他にも何作か映画に登場しているんですね。その中に『ズーランダー』(2001)と『潜水服は蝶の夢を見る』(2007)が出てきたので驚きました。いずれも見たことがあるのですが、記憶に無く..。『ズーランダー』はまあいいとしても(いや、面白い作品ですが)、『潜水服は蝶の夢を見る』はかなり印象に残った作品なので、覚えていてもいいんですが..。不思議です。あらためて見てみようと思います。


『シガー・ロス新譜』(No.603/2013.08.02)
出身地アイスランドのみならず、世界的にも高い評価を受けている3人組のバンド、『シガーロス』の最新アルバム『ヴァルタリ〜遠い鼓動』が6月に発売されました。日本盤の先行発売をスルーして輸入盤をやっと購入。聴きこんでいます。いいですね。前のアルバムはスケール感を広げつつ、全体にオープンなイメージがあったのですが(全裸の若者が走っているジャケットが内容を物語っていた?)、今回は、古くからのファンも納得の深遠なる内容。ジャケットもモノクロベースのダークなイメージです。これです、これ。

久しぶりに公式サイトをのぞいたのですが、今年の5月にシガー・ロスの『世にも奇妙な映像実験』というDVD作品の爆音上映会が東京と神戸で開催されていたようですね。これは行きたかった...残念。
昔、東京国際フォーラムで来日ライブを見た事があるんですが、その時も結構背景に映像を使用していたんですよね。ものすごく凝ったものではなかった気がしますが、広がりのある音とそのホールの空間と、さらに映像が重なって、場所のみならず、自らの感覚も広がっていくような心地よさを感じたのを覚えています。
公式サイトでは、シガー・ロス海外サイトにて実施されていた「シガー・ロスの世にも奇妙な映像実験」に関連する、コンペティションの最優秀作品の発表も行われています。1000近くのエントリー作品から一般のファンが選んだ最優秀作品「people's choice winner」とバンドが選んだ最優秀作品「overall winner」などが見られます。どっちもかっこいい。やっぱり映像と合いますね。必見。

・シガーロス日本公式サイト:http://www.emimusic.jp/intl/sigurros/


『レオ・レオニの世界』(No.602/2013.07.26)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『レオ・レオニ絵本の仕事』展を見ました。
レオ・レオニは、日本の小学校の教科書にも掲載されている絵本『スイミー』などの作品で知られるオランダ生まれの絵本画家です。イタリアでグラフィック・デザイナーとして活躍、戦争のためにアメリカへ移住して以後、絵本作家として活躍しました。『スイミー』以外にも、ねずみの『フレデリック』や尺取り虫の『ひとあしひとあし』など、素晴らしい絵本を数多く製作し、その作品は世界中の人々から愛されています。

今回は、絵本原画約100点、さらに油彩、彫刻、資料など約30点が展示されています。個人的には、『スイミー』のお話は知っているものの、それ以外の作品はほとんど知りませんでした。しかしながら、どの絵本作品も、シンプルで色鮮やかで、楽しいお話なのに奥の深さを感じさせ、レオニ・ワールドにすっかり魅了されてしまいました。絵本の原画はサイズは小さいのですが、本当にどれもかわいいです。小さな色紙をコラージュして作った、ねずみのフレデリックの立体感!そして生命を感じさせる温かみ。他の作品も、今にも動き出しそうなものばかりで、ずっと見入ってしまいました。

展覧会場では、円形のスクリーンによるスイミーの動画や、絵本を読むスペースなどが設置されていて、今回の会期中は、ザ・ミュージアムが美術館ではなくテーマパークになったかのようです。最後のミュージアム・ショップが充実しているのも楽しかったです。仕事での関わりもあるので、ここ10年来のザ・ミュージムでの展示はすべて拝見していますが、こんなにショップスペースが広いのは初めて。丸一日、というと少し大げさですが、ゆっくり、のんびり楽しめる展示だと思います。会期は8月4日(日)まで。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/


『ショートショートフィルム2013』(No.601/2013.07.19)
俳優の別所哲也さんが主催されている、毎年6月に行われるアジア最大級の短編映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013』が今年も開催されました。このイベントは、2004年に米国アカデミー協会より認定をうけ、日本で唯一の米国アカデミー賞公認短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバルとなっており、毎回素晴らしい作品が世界各国から集まります。昨年はいろんなつながりから、同フェスティバルのアワードセレモニーを取材させていただきました。今年はいけなかったのが残念...。

今年のグランプリを獲得したのは、ガブリエル・ゴーシュ監督のイギリス映画『人間の尊厳』だそうです。他にもさまざまな賞の受賞作品があり、横浜のショートショートシアターにて順次上映されています。1プログラム60分程度。数本のショートフィルムで構成されています。これで1,000円。意外にお安いです。個人的にもショートフィルム好きなので、ぜひ観にいきたいと思っています。

...で、余談になりますが、週間シネママガジンというWebマガジンに、『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013』のアワードレポートが掲載されているのですが、これがちょっと辛口で面白かったです。
http://cinema-magazine.com/#!/news/2600
今年15周年とのことですし、そもそもシアターまで作ってしまった別所さんの情熱に頭が下がるばかりですが、一方でこういう企画・イベントの運営の難しさも伝わってくる記事ですね。ショートフィルム好きのみなさん、ぜひこのイベントを盛り上げていきましょう。

・ショートショートシアター:http://www.brillia-sst.jp/


『編ZINE展』(No.600/2013.07.12)
今、うちのギャラリー世田谷233にて『編ZINE展』という、ちょっと面白い企画展を開催しています。テーマは”買う人が自分で編集する雑誌”。30名近いクリエイターさんによる、B6サイズの”表紙”と”本文”が壁面にずらりと並んでいて、買う人は、その中から好きな”表紙”と、好きな”本文”=中身となるページを選んで、横にある作業場で、ホッチキスで綴じて製本するというもの。表紙はすべてカラーで1枚30円、本文は1ページ10円。自分が選んだ枚数分のお金をその場で支払います。

ここ数年、リトルプレス、とかZINE=ジンという名称で、ハンドメイドの小冊子が流行っていますが、この展示も基本的にはこれ。ただ、最も違うのが、買う人が自由に編集できるところ。個人的にも、YOUTUBEが登場したあたりから、世の中にちゃんと”編集”されたものより、素人の一発勝負的な作品の集合体の方がウケる感じになってきたことに少し疑問を感じていました。もちろん、そういう作品の中にも素晴らしいものがたくさんあることは間違いないのですが、他にも、自分のお店が雑誌やテレビなどのメディアの取材を受ける際に、編集のクオリティよりもスピードを重視している感じを受けたりすることがあり、何となく”編集”がないがしろにされている感が募っていました。実際、テレビや雑誌の取材〜放送・出版までの時間って、ホントここ5〜6年で絶対短くなったと思います。作品であれ記事であれ、”伝える”ということが目的でしょうから、やはりしっかりと編集することが絶対大事だと思います。まあ、この企画展は、それを一番のテーマに掲げているわけではありませんが、編集が軽視される時代なら、もう雑誌も編集者なんかいらない、買う人が好きにやればいいじゃん、というピリ辛も少し伝わればと。手前味噌ながら、そういうこと抜きにしても内容的には面白いと思います。

さらに詳細はこちらから:http://homepage2.nifty.com/axk/henzine233.html


『電話ではない』(No.599/2013.07.05)
昔、勤めていた会社が「アステル」というPHS事業者と関係があり、営業マンとしてPHSを渡された経緯から、いまだにずっとPHSを使っています。携帯ゲームやアプリなどはまったく使いませんし、PHSの音の良さと、地下でつながる便利さ(このあたりの他社の現在の状況はよくわかりませんが)もあって、ずっと満足しています。ただ、周りはやっぱりスマホを使っている人が多いですねえ。
この前、電車に乗っていて(自分は立っていました)、目の前に座っている人がスマホらしきものを広げたのですが、そのカバーがかなり分厚く、ちょっとしたメモやカードなども入るポケットがついていたのに気づきました。何気なく見ただけだったのですが、その時に思ったのが、「これだと電話できないんじゃないか」ということ。ひょっとしたら通話用に別途PHSやもう一台携帯を持っているのかもしれませんが、間違いなく、そのカバーつきでは、電話として使えない、とまではいかないものの、かなり不便ではないかという感じ。で、自分が教えている専門学校の生徒のことを思い浮かべたのですが、実は携帯で電話をしている場面があまり浮かびません...。いや、アプリで遊んでいたり、LINEで会話したりしているのは四六時中目にしますが、そういえば、彼らが自分の携帯(どれもかなりデコられています)で、通話している場面が浮かばないなと。ひょっとしたら、電話と言うメディアそのものの使用頻度も減っているのかも、思ったり。私たち世代はともかく、デジタルネイティブになると、メディアやアプリ経由の方が、言いたいことが言えたり、コミュニケーションのスピードそのものが早かったりするのかもしれません。
コミュニケーションがどんどん”メディア”に左右され、振り回される時代。その行き着く先は、トム・クルーズ主演の『マイノリティ・リポート』(2002)のように、コンピュータがはじいた”情報”の方が、人間の命より重要になるような社会でなければいいですが...。


『サム・サフィ』(No.598/2013.06.28)
ストリッパーをしていた女の子が、あまりの自由さに嫌気がさし、ある日突然“普通に生きることが最高”と思い、”普通”を求めて生きる様を描いた作品がフランスのヴィルジニー・テヴネ監督の『サム・サフィ』(1992)。
主人公の女の子エヴァを演じたオーレ・アッティカも魅力的でしたし、ミュージシャンのキザイア・ジョーンズやネグレス・ヴェルトなども出演するなど、ファッショナブルで楽しい作品でした。
ちょっと別件で、この作品を見る必要があり、レンタルで借りようと思ったのですが三軒茶屋の大店舗を含む近隣のツタヤになく、まあ好きな作品でもあるし、中古を見つけてDVDを購入しようと決意。ヴィルジニー・テヴネは好きな監督でもありますし。で、ネットで検索して探したんですが...が出てこないんですよね。
AMAZONでやっと見つけたものの、中古DVDが4点あって、何とどれも2万円〜2万5千円...。いったい何が?...とても買える値段ではないので、他を探したら何とかVHSのビデオで千円台のものを発見。一応、程度は”良”だったので、それに決めました。しかし、そこまでマイナーな監督でもないし、この作品は日仏合作ということもあって、いわゆるフランス映画っぽい哲学的な感じではなく、公開当時も結構女性には受けていた気がするんですが、何かしらの理由で需要と供給のバランスがおかしくなったんでしょうか。さすがに2万円では誰も買わないような気がしますが...。。


『はたらきたい。』(No.597/2013.06.21)
コピーライター(今でもでこの肩書きでいいんですよね?)の糸井重里さんが主催する、”ほぼ日”こと『日刊イトイ新聞』今月で15周年だそうです。その記念として、渋谷のパルコミュージアムで「はたらきたい展。」を開催(終了しました)。これに伴い、いろんなところで糸井さんのインタビューなどが掲載されていて、いろいろ読んでいるとやっぱり面白いですね。
そのうちのひとつ。東洋経済オンラインで配信されたインタビュー、「ブラック企業が生まれる理由」。タイトルからしてインパクト...。
最初に紹介されている「99の『はたらく人』のことば。」からの、萩本欽一さんのエピソードがいいですね。あれだけテレビを通じてお茶の間の人気を独占した萩本欽一さんが「したくない仕事しか来ない」と言っていたと。「不本意な仕事しかなかった。全部と言っていいぐらい不本意な仕事だった」そうです。要するに、それをいかに自分が楽しんじゃうか、自分のやりたい仕事に変えてしまうかってことなんですね。ホントその通り。専門学校で若い人相手にいろんなことをやってますが、この姿勢が社会に出てから一番大事なことなんじゃないかと思います。でもそのためには、いろいろと心のコントロールや技術的な向上などが必要になってくるんですね。そういう”コツ”のようなものをつかめるかどうかなんでしょうね。

ちなみにタイトルの”ブラック企業”については、糸井さん曰く、「デザイン事務所は全部ブラック企業ですよ。ブラックを超えているんじゃないかなあ(笑)。」と(笑)。「ブラックになるのは、やっぱり稼ぎ方がまだ見えてないからですね。デザイン事務所がちゃんとどうやって稼ぐかをわかって、仕事の配分を上手にしていけば、あんなにブラックにする必要はないのかもしれない。」。確かに企業としての姿勢もあるでしょうけれど、しっかり(ちゃんと、と言い換えてもいいかも)稼げていれば、そういう働き方をしなくていいはず。もちろん、その”ちゃんと稼ぐ”ということが、ビジネスでは一番難しいわけで、残念ながらそれが出来ない人は経営者としての資質に欠けるということ。一応、自分も経営者の端くれですから、すごく納得できます。「はたらきたい展。」行けなかったのが残念...。


『世界の終わり19本』(No.596/2013.06.14)
昨年の話ですが、『ハリウッド・リポーター』という、映画やテレビなどのエンターテインメント業界の情報を扱うアメリカの週刊誌が、”世界の終わり”を描いた19本の映画をリストアップしました。ランキングの並び順はわからないのですが、リストに入ったのはこの19本。

「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(1964)
「猿の惑星」(1968)
「ターミネーター」(1984)
「マッドマックス サンダードーム」(1985)
「12モンキーズ」(1996)
「インデペンデンス・デイ」(1996)
「アルマゲドン」(1998)
「ディープ・インパクト」(1998)
「28日後...」(2002)
「デイ・アフター・トゥモロー」(2004)
「宇宙戦争」(2005)
「トゥモロー・ワールド」(2006)
「アイ・アム・レジェンド」(2007)
「ウォーリー」(2008)
「2012」(2009)
「ザ・ロード」(2009)
「テイク・シェルター」(2011)
「メランコリア」(2011)
「エンド・オブ・ザ・ワールド」(2012)

まあ、そうそうたる作品が並びますね。何度地球が破壊されたことやら..。この中で好きなのは、「博士の異常な愛情」と「猿の惑星」と「12モンキーズ」、「メランコリア」あたりでしょうか。「ザ・ロード」(2009)と「テイク・シェルター」(2011)は観てないです。どちらも興味はあったのですが、見逃してしまいました。もちろん、”世界の終わり”を描いた作品はこれだけではありませんが、ここにリストアップされた作品は、ある意味”終末”という普遍的なテーマを描いていることもあってか、舞台設定や脚本にかなりこだわりを感じる作品が多いですね。ひょっとしたら、”世界の終わり”を描いた作品に、大失敗作無し、という方程式が成り立つかもしれません。...あっ、すみません。「宇宙戦争」(2005)を見落としてました。トム・クルーズが逃げ回るだけの、このリメイク版はさすがに...。


『劇団おぼんろ』(No.595/2013.06.07)
『劇団おぼんろ』の舞台『ビョードロ〜月色の森で抱きよせて』を観ました。というか、この劇団の場合、”体験してきました”の方がピッタリかも。うちのギャラリーで放送している世田谷Webテレビに、代表の末原拓馬氏がゲストとして出演してくださったことがきっかけで知ったのですが、その時の放送で、彼の口から飛び出す言葉の一つ一つから本気度がびんびん伝わってきましたし、劇団の運営においても既存のシステムとは全然違うものや新しいものを提供しているところもすごく共感し、その場で「絶対観にいく」と約束したのでした。
で、実際に観にいったわけですが、すべてが期待通り、というか期待以上で大満足でした。脚本も演技もよかったし、最終的には感動のエンディングで、いい空気を共有できました。それでいて、まだまだのびしろがある感じで、将来が楽しみです。ちなみに彼らの将来の夢は、5年後に渋谷のシアターコテNチ[テモツ?マ ̄ノノツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?チB劇団の姿勢や運営については、ホームページに詳細が書かれているのでぜひ読んでみてください。斬新な開演スタイルや楽しいチケット設定など、読むときっと応援したくなりますよ。
現在上演中の『ビョードロ〜月色の森で抱きよせて』は、追加公演が決まったようなので、まだ間に合いそうです。

・劇団おぼんろ:http://www.obonro2012-9.net/


『店舗のつながり』(No.594/2013.05.31)
三軒茶屋でギャラリーのようなリアルの店舗を運営していると、おのずと地域のつながりが強くなります。商店街の中にある店舗ではないため、商店会を通しての、お店同士の横のつながみたいなのは少ないですが、逆に、ギャラリーという業種上(+フリーランスとしての活動もあり)、さまざまな場所、組織、団体とのつながりがたくさん生まれます。
先日は、知人の美容室のオープン5周年記念パーティに参加してきました。ちょこっとプロデュースもお手伝い。大勢のお客さまや知人・友人が集まり、大盛り上がりでした。
うちのギャラリーのお客さまにもお声がけし、その美容室のお客さまであるなしを問わず、みんなでお祝いしようと。その分、参加費やチャージなどは一切なしにしました。まず”感謝”から始まるイベント。その結果、お客さま同士のつながりも深まりましたし、美容室も、またうちのギャラリーもかなりのPRとなりました。
プロデュース、というほどのことはしていませんが、最初に相談があったときに考えたのは、リアルのお店だからこそできるつながりを大事にするということ。お店でのつながりというと、大体はお店のスタッフとお客様のつながりを想像しますが、お店のスタッフ同士もそうですし、お客さま同士のつながりもあると思います。自分のお店の中で、いろんな人同士がつながり、そこから新しいことや楽しい事が生まれていく。これこそがリアルの店舗を運営する醍醐味のひとつ。もちろん、お店が本来提供しているサービスや商品がちゃんと価値があること、接客が優れていること、この2つは大前提ですが。商店街の活性化はいろんな場所でいろんな試みが行われていますが、なかなかうまくいっているところは少ないと思います。ただ、こうやって、それぞれの店舗が努力し、そして横にしっかりつながれば、それだけで十分商店街の魅力はアップする、それは間違いないと思います。いろんな人の思惑が交差するのはしょうがないのですが、やっぱりどれだけベクトルを揃えられるか、ということが一番おおきいんでしょうね。
特に今の時代にはそういうつながりを生かしていかに価値を高めるかが勝負になってくると思いますが、その大切さをあらためて感じました。感謝、感謝。


『名作アニメ』(No.593/2013.05.24)
映画作品の中でもいろんな意味でターニング・ポイントとなったような作品は、折にふれ、繰り返し見たくなります。”ターニング・ポイント”というのが、大げさであれば、単に”好きな作品”と言ってもいいのですが。例えば、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』、や『エイリアン』、『ブレードランナー』『マトリックス』などなど。映画と言うメディアが、他のメディアと同じくテクノロジーの発展と切り離せない側面がある以上、どうしてもSF作品が多くなりますが、これらの作品は、その映像美、世界観、ストーリー、どれをとっても斬新で、今見ても(ということは今後いつ見ても?)それまでの常識を覆すような新鮮な驚きがあります。
で、先日そういう文脈で見直したのが『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)。改めてみると、最初に見たときほど、ストーリーの山場を感じませんでしたが、それでも『マトリックス』に多く引用された作品らしい、独特の魅力があります。ちょっと驚いたのは、本作ではなく特典映像。これは以前スルーしていたらしく初見でしたが、非常に興味深い内容でした。同作品の内容や、アニメ製作について、監督の押井守氏がインタビューに答える形式なのですが、これが単に作品に言及しているだけでなく、この作品の中で使用されている新しい技術やソフトについて詳しく解説しており、いかに先進的な技術によって生まれたかがわかります。
グローバルな戦略としての”ジャパン・ブランド”のようなものが語られる時、必ず”アニメ”の分野は登場しますが、日本の”アニメ”がいかに”技術”に支えられているか。ここで導入されている技術の多くは外国のものだと思いますが、それを駆使してまったく新しい映像表現を生み出しているプロセスを聞いていると、あらためてアニメの分野の可能性が感じられるようです。さらに、そういった技術やソフト面も日本から発信・提供することができれば一番いいんでしょうね。今の時代は当時から20年近くたっていますから、このあたりの話はもっと進んでいるんだと思いますが。

こういう種類の映画について話したり考えたりする度にいつも思うのですが、後は1984年に出版されたウィリアム・ギブスンによるサイバーパンクの金字塔ともいえる小説『ニューロマンサー』がいつ実写化されるかが気になりますね。今までも話が出ては消え、出ては消え、そうしているうちに30年経ってしまいましたから。そういえば、ウォシャウスキー監督の『マトリックス』は『ニューロマンサー』の映画化から話が始まったそうです。スポンサーがつかないなどの問題で立ち消えになったそうですが、このときが一番実現に近かったのかも。コレだけ時間が経っても、やっぱり見てみたいです。


『アントニオ・ロペス展』(No.592/2013.05.17)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『アントニオ・ロペス』展を見ました。アントニオ・ロペスは現代のスペインを代表する作家で、身近なテーマを主題に、さまざまな技法でリアリズムを追求し、独自の世界を切り開いています。ロペスがマルメロの果実を描く様子を綴ったビクトル・エリセ監督によるドキュメンタリー映画『マルメロの陽光』(1992)は、公開当時日本でも話題となりました。今回は、ロペスの日本初の個展として、初期の美術学校時代から近年までに手がけた油彩、素描、彫刻の各ジャンルの代表作が展示されています。そういう意味では貴重な展示ですね。

展覧会のポスターに使われている娘の肖像画やマドリードの風景は、一見写真と見まがうほどのリアリティ。ロペスの卓越した観察力と技術力が伝わってきます。制作期間が長いことでも知られ、10年を経てもなお筆を入れるほどだそうです。確かに、『マルメロの陽光』も公開当時見ましたが、作品に筆が入り、移り変わっていく過程ではなく、ロペスがマルメロの樹に寄り添っている様子を描いているという感じでした。ビクトル・エリセも寡作な監督ですしね。どこか共通した感覚を持っているのかもしれません。

ロペスの作品からは、身近なものへの愛情がしっかり感じられるんですが、それでいてどこかクールな視点もあり、個人的にはかなり好きな作家さんになりました。会期は6月16日(日)まで。ぜひ。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/


『映画にできること』(No.591/2013.05.10)
ちょっと前の話になりますが、昨年9月にNHKのETV特集で放送された『映画にできること 園子温と大震災』。個人的に心に残るドキュメンタリーでした。園子温監督は90年代にインディーズ映画界を席巻、当時の作品『自転車吐息』(1990年)、『部屋 THE ROOM』(1994年)などは結構話題になりましたし、実際劇場で見て衝撃を受けた記憶があります。ポスト・パンクにハマッた世代としては、園子温監督の映画作品はもちろん、アナーキーな路上パフォーマンス集団『東京ガガガ』にしびれました。実際に渋谷で見たかったなと。
で、園子温監督が東日本大震災の後、南相馬市での出会いをきっかけに、放射能災害の現場を歩き、被災した人たちから直接話を聞き、それらをベースに一本の映画作品として完成させたのが『希望の国』。『映画にできること 園子温と大震災』は同作品が出来上がるまでのプロセスを追ったドキュメンタリーです。
放送の中で、「まずは数えなければならない。全部、数えろ」という園子温監督の詩が登場します。園子温監督といえばスプラッタな場面が特徴的ですが、この補助線こそ、詩人・園子温の真骨頂。震災によるさまざまな出来事を直接、脳に刻む込もうとする姿勢から、監督の純粋さがにじみ出るようです。被災地の人々との直接の対話を元にしながら映画というフィクションの世界を作り上げていく監督。最後に取材させていただいた人々を前に上映会を開催。そのある意味辛らつな内容に、当事者からも戸惑いの声が起こります。それでも園子温監督は自分の姿勢を崩しません。それはたとえ映画がどのように受け取られても、この震災による現状を、やみくもに希望に変換することなく、彼が思ったままに伝えたいという意志の表れに他ならないと思います。だからこそ信用できる。『希望の国』、現在は劇場公開は終了しましたが、DVDとBlu-rayが発売されています。震災や原発を描いたドキュメンタリーや映画はたくさん作られました。そして本作はその中でも、日本人としてみておかなければならない作品のひとつであることは間違いないと思います。

・『希望の国』(http://www.kibounokuni.jp/


『3つの指針』(No.590/2013.05.03)
価値のあるアイデアを世に広めることを目的とするアメリカの非営利団体、TEDが開催しているプレゼンイベント『TEDカンファレンス』。U2のボノや映画監督のジェームズ・キャメロンなど、著名人も多数登場しています。その中から選りすぐりを放送しているのがNHKのスーパープレゼンテーション。以前もコチラのコラムで紹介させていただきました。
ホントに刺激的で、毎回楽しみにしているんですが、この前も面白い内容のプレゼンがありました。作家&ジャーナリストでもある、ダニエル・ピンクによる「やる気の謎解き(The puzzle of motivation)」。アメリカにおいて、お金を目当てにみんなが働くということが、国の競争力にとてもマイナスになるというお話。私たちの働き方を根底から覆す内容でした。で、内容もそうですが、ダニエル・ピンクが語っていた、これからの時代の会社経営に大事な3つのプリンシプル(指針)がよかった。まずは自分で行動するという『autonomy(自主性)』。次に技術があるという『mastery(熟達)』、そして最後に、なぜ働くかという『purpose(目的)』。
プロジェクトや組織の目的や存在意義を考えるときに、3つの言葉で表す、というのはよく使われ、なおかつ思考が明確になる手法なんですが、この3つ、説得力がありますね。ちなみに番組のパーソナリティのMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏もこれを受けて、メディアラボの所長に就任して最初の教員会議で決めた3つの指針を紹介してくれました。「メディアラボで我々が働く理由は何か?」という議論の結果集約されたのは、『uniqueness(独自性)』、『impact(影響)』、『magic(マジック)』。これもいいですね。特に最後の『magic』というのが、まだ見ぬ未来への希望を感じさせます。さすが。


『ブルーレイ特典』(No.589/2013.04.26)
最近、映画のレンタルもDVDからブルーレイへと移行しつつありますね。個人的には一応ブルーレイプレーヤーもありますので、どちらでもいいのですが、気になるのは往年の名作のブルーレイ化。
ただ単にメディアを変えるだけでなく、さまざまな特典をつけることによって、新たなマーケットとなっているようです。うーん、商法としてはよくあるパターンなのですが、やっぱり惹かれるものがありますね。
例えばスティーブ・マックイーン主演の『大脱走』。これは小さい頃にテレビで見て、大興奮した記憶があります。1963年製作の作品ということもあり、”製作50周年記念版コレクターズ版”として、特典映像てんこ盛りのBOXが販売されています。確かにこの作品は脱獄映画としてのみならず、映画史上に残る傑作ですから、こういう形で発売されると手元に置いておきたい気持ちになります。お値段は税込みで6千円ぐらい。5千円切ってたら買ってましたね...。
他にも、ブルース・ウィルス演じるジョン・マクレーンの吹き替え音声をトリプル収録した『ダイ・ハード』シリーズや、『燃えよドラゴン』の製作40周年記念BOX、『スター・ウォーズ』シリーズと嬉しいラインナップがたくさんあります。中には、”コンプリート”と銘打っておきながら、肝心の映画が完全版でなかったり、特典のTシャツやグッズがちょっとしょぼいものもあるようですが、ファンにとってはテンションあがるアイテムです。まだまだこれからたくさん登場しそう。
DVDと同じシリーズや監督のBOXでも、ブルーレイでも登場するとDVDとは違った特典がついてくる可能性があるのも楽しみです。例えば、スタンリー・キューブリック監督のブルーレイBOXでは、『時計じかけのオレンジ』のメイキングが初登場でした。ただ、キューブリック監督の作品って、BOXのまとめ方がホントぐだぐだなんですよね。それはブルーレイでも同じでした...。BOX販売の特典映像やグッズは、まあにぎやかしでもいいですが、収録作品はばっちりキメてもらいたいものです。


『つながりの価値』(No.588/2013.04.19)
mixi、GREE、Facebook、Myspace、twitterなどなど、インターネット上で社会的なつながりやサービスを提供するシステムが花盛りです。個人的にはほとんど使っていないので、何ともいえないんですが、これだけ隆盛するということは、やはりニーズがある、ということなんでしょうね。

もともと私たちの生活は、血縁関係や地域社会などを通して、さまざまな人とつながりがあったわけで、核家族化や個人主義などによって、段々とそのつながりが薄れていきました。そこには、もともと”人と人のつながりは面倒くさい”という価値観が多少なりともあったのではないかと思いますが、結局、人間というものは、一人では生きていけない、ということなのでしょうか。

専門学校の講師や運営するギャラリーを通して、20代の人たちと話をする機会が多いですが、こういったSNSサービスを使っている人たちにちょっと心配な傾向がひとつあります。それは、”人とつながるという価値の低下”です。一昔前は、自分にとって有益な人を紹介されたり、したりすることは、大変価値があることでした。それが仕事であれ恋愛であれ何であれ。ところが、最近は本当に簡単に人とつながれるため、その中で有益な人と付き合う、という方向性に変わってきているのではないかと思います。つまり、人から紹介を受けたことに対する感謝の気持ちが薄れている、ということです。いや別に大きく感謝されたい、というわけではないんですが(笑)、紹介する側は、さまざまなことを鑑みて、人を紹介しているわけで...。簡単につながれる人とは簡単に別れられる、そんな関係性からいったい何が生まれるんでしょう。人間さえも”情報”になってしまったのか、というと、ちょっと考えすぎでしょうか。でも人とのつながりは人生において大切な「財産」ですから。

ちなみに私がこれらのSNSサービスを使わないのは、確固たるポリシーがあるわけではなく、ただ”面倒くさい”だけです...。


『アントン・コービン』(No.587/2013.04.12)
いよいよ先週6日(土)から、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて公開が始まった映画『アントン・コービン』。U2やデペッシュ・モードなど世界を代表するバンドやミュージシャンを撮影し、時には写真のみならず、PVや映画まで手がける鬼才アントン・コービンの素顔に迫るドキュメンタリー作品です。

U2、デペッシュ・モード(どちらも個人的に大ファンっ)のジャケット写真やPVはもちろん、彼が手がけたミュージシャンを挙げるときりがありません。ジョニー・キャッシュ、ニルヴァーナ、メタリカ、トム・ウェイツ、マイルス・デイヴィス、フランク・シナトラなどなど。もちろん、被写体はミュージシャンにとどまらず、クリント・イーストウッド、ウィリアム・S・バロウズ、キャメロン・ディアスなど、こちらも数え切れません。
映画監督としてのデビュー作であり、世界的に絶賛された、夭折したジョイ・ディヴィジョンの天才ボーカル、イアン・カーティスの生涯を描いた『コントロール』(2008)の素晴らしさもまだまだ鮮烈に記憶に残っています。

そんなアントン・コービンの素顔はもちろん、前述のミュージシャンたちとの作品製作のプロセスなんかも映像化されているようなので、これは本当に見逃せません。伝説に残る作品になることは間違いないと思います。楽しみ。ちなみにロモグラフィー・ジャパンでは、同映画公開にあわせて、クールなポートレート作品のコンテストを開催しています。ご興味のある方、ぜひ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
http://www.lomography.jp/magazine/competitions/2013/04/03/antoncorbijn

・『アントン・コービン』公式サイト
http://antoncorbijn-movie.jp/


『レコードの会』(No.586/2013.04.05)
昨年から、うちのギャラリーで『アナログレコードの会』というイベントを開催しています。その名の通り、アナログレコードを持ち寄り、ターンテーブルで聴くというシンプルなイベント。ただ、ターンテーブルは2台用意し、曲をつないで遊ぶDJの要素を入れています。その場にいる方全員がDJになります。もちろん初心者の方も大歓迎。まあ、自分がまさにそうですが、曲をつなぐだけならすぐにできますから。そしてコレがすごく楽しいっ。このイベントには、本当にいろんな年代の方が来てくださって、毎回かかる曲もさまざまん。ゴスペルもあれば、ロックもあれば、テクノもあれば、ニューミュージックもある。オフスプリングから山崎ハコまで、何でもありです(笑)。
このイベントをやっていて面白いのが、結構若い人(20〜30代)がアナログレコードにハマるということ。20代は親がレコードを聞いていた世代で、あんまり深く知らなかったものの、実際聴くとそのメカニックなところやDJプレイの面白さも含めて楽しんでいます。また、30代はレコードは自分でも持っていたものの、すぐにCDに取って代わったことからほとんど聴いていなかった世代。こういうイベントで昔懐かしいレコードをあらためて聴くことにより、当時の音楽の素晴らしさを再発見したパターンです。

個人的にも、レコードはたくさん持っており、コンパクトなプレーヤーもあるものの、本当にたまに聴く程度でしたが、自分でもアナログの楽しさを再発見しました。
音質はもちろん、機材のセッティング、レコードの手入れ、針の手入れ、そしてある種の儀式のようにレコードをターンテーブルに載せ、音楽をかける。この一連の作業によって、流れる音そのものに愛着がわきます。そこにお酒でもあろうものなら(基本的にはあるのですが...笑)、至福のときとなります。音楽が素晴らしいのはもちろん、ゆっくり手間ひま=時間をかける、ということが、”贅沢”感につながるのかもしれませんね。


『重複』(No.585/2013.03.29)
おかげさまでこのメルマガも600号間近。メルマガ発行前にホームページで紹介させていただいた映画も含めると、紹介本数640本を超えました。ありがとうございます。
で、先日、今日の紹介用にレンタルショップでDVDを借りて帰ったら、以前借りたものでした...。たまにあるんですよね。ほとんどが洋画ですし、それも超大ヒット作は少なく、めちゃくちゃマニアックだったり、アーティスティックだったりするものもそんなにありません。となると、たま〜にこういうことが起こります。さすがに600本を超える作品をすべて覚える頭脳もなく、スマートフォンやiPadのような、常に持ち歩けてネットにつないで、自分のサイトを確認するようなツールもなく...と思っていたらありました。そういえばAMAZONでKindleを買ったのでした。これは一番安いモデルで、モノクロだし、音楽や動画が見られるわけではないんですが、ワードの文書やHTMLファイル、PDFファイルなど、対応している形式のデータは、メール経由で端末に送ると閲覧が出来るんです。

早速、自分のサイトの「タイトル別」のページをHTMLファイルで保存して、Kindleに送信。そうしたらちゃんと見られました。素晴らしいっ。これをちょこちょこ更新すれば、間違って以前借りた作品をまた借りてしまうってことはなくなりそうです。よかった。こういう場面に出会うと、ITの技術って便利だなあと思いますね。
とはいえ、もう一度借りたやつを見たら見たで、新たな発見もあるんだとは思いますが。

ちなみにかぶって借りた作品は『隣のヒットマン』。いや、何か怪しい予感はあったんです。実際調べてみたら、前に借りたのが2010年の12月でした。2年と3ヶ月前。 そんなに昔じゃないところがちょっとショック。


『放送予定』(No.584/2013.03.22)
久しぶりにテレビ番組の取材を受けました。情報番組の中で、うちのギャラリーを紹介いただけるとのこと。ありがたい話です。取材・放送内容的にも全然問題なく、無事に終える事が出来たのですが、事前告知については控えて欲しいとお達しがありました。まあテレビの場合はよくあることなんですが。緊急でニュースが入ったり、速報が入ったりする可能性があるので、放送はあくまで”予定”であると。だから、突然予定が変更になって放送されたなかった場合のリスクヘッジなんでしょうね。今まで何度かテレビの取材を受けましたが、すべてではないものの、たまにこういうパターンがありました。しかしながら、久しぶりの取材と言うこともあってか、この期に及んで、という感じでちょっとびっくり。
突然の変更によって放送予定が変わる、まあ、ありえることです。しかし、ツイッターやフェイスブックなど、リアルタイムのSNSサービスがこれだけ普及した中、「テレビで放送されるはずが急遽変更になって放送されなかった」ことすらも”いいネタ”になるご時勢。それはちゃんとした理由があれば、決してテレビ側にも損はないはず。やっぱり、テレビの人たちってまだ考え方がついていっていないのかなあと思わざるを得ませんでした。ちょっとしたことで文句を言ったり、キレたりする人が増えた世の中。そういう苦情に対して最も有効(?)なのが、トラブルを起こさないこと。そういう姿勢から面白いものや新しいものが生まれるのでしょうか...。

ちなみに昨日CNNが配信したニュースによると、米携帯電話会社のモトローラ・モビリティが実施したメディア利用動向に関する年次調査で、就寝時に寝室でスマートフォンやタブレットを使って動画を見る人が増え、テレビを見る人を上回ったそうです。メディアの利便性、使い勝手などももちろんあるとは思いますが...。


『震災から2年』(No.583/2013.03.15)
東日本大震災の発生から丸2年が過ぎました。個人的には地震以降、被災地に行ったことはありませんが、何とか個人的に出来る支援を細々と続けさせていただいています。個人的に付き合いのある被災された方からは、まだ全然復興が進んでいないことも聞きますし、阪神・淡路大震災を経験された関西の方からは、被災地はもちろん、関東ともすでに温度差があり、風化してしまっているのではないか、という話も聞いています。本当にこの震災は、日本が抱えるさまざまな問題を丸裸にしました。2年経過ということで、今また写真展やテレビ番組など、いろんなメディアで震災が取り上げられていますね。時間がある限り、見たり聞いたりしていますが、常に思うのは、今回の傷を癒すためには、2年というレベルの時間では、まったく足りないと言うこと。

そういえば、ちょうど1年前にこのコラムで、震災から1年経って開催された銀座・新宿ニコンサロンでの連続企画展『Remembrance 3.11』をご紹介しました。あれからさらに1年経った今、展示の図録が作られたようです。一般書店では販売せず、ニコンサロンのみの販売で限定500部とのこと。参加した写真家は、石川直樹、和田直樹、笹岡啓子、田代一倫、新井 卓、鷲尾和彦、吉野正起、宍戸清孝の8名。
これからまだまだ長い復興の道のりで最も大切なのは、被災しているいないに関わらず、それぞれがそれぞれの方法で復興に関わること。これしかないと思います。そしてそのために私たちに必要なのが、本当に基本的なことですが、”忘れない”ということ。それをこの図録のニュースを聞いてあらためて強く思いました。

・『ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11』:http://bit.ly/wcR73W


『アナログの魅力』(No.582/2013.03.08)
先般、三軒茶屋中央劇場という映画館が閉館されたことをお伝えしました。映画のみならず、カメラのフィルムやレコードなど、アナログなメディアがさまざまなフィールドから消えつつありますね。アナログと言うと、どうしてもデジタルより古い技術、と捉えられがちですが、もちろん時系列ではそうなるものの、そもそも成り立ちや存在意義が全然違うと思います。
誤解を恐れずに単純化すれば、デジタルはすべてゼロとイチに置き換えられたもの。それゆえにコピーも簡単だし、遠くに送ることもできる。一方でアナログとは、連続性によって表現されたもの。ですから全然違う。それぞれにいいところもあれば悪いところもある。それなのに、デジタルの可能性や手軽さばかりがもてはやされている気がしてなりません。アナログって何かとというと、結局”つながり”と言うことだと思うんですね。だから例えば、人と人のつながりなんかは、どれだけソーシャルメディアのようなものが進化したとしても、やはりそれは”アナログ”的な価値なんだと思います。もちろん、人とのつながり=人間関係にはいい関係も悪い関係もあります。いずれにしても”つながり続けようとする意思と行動”が無ければ成立しません。それはまた楽しい反面、時に面倒くさい作業でもあるわけですが、そういう意思や行動を積み重ねた結果でしか得られない幸せがある。
音楽産業でも、音源はデジタルのCDを通り越してデータになりました。お金に換算した音楽の価値はどんどん下がっていますが、一方で、日本国内のライブの売り上げは伸びているようです。つまり、デジタルでは表現できない、連続性=リアルな体験の価値は上がっているといえるのかもしれません。もっと多くの人がその価値に気づけば、映画館のような存在も今まで以上に貴重な場になると思うのですが。


『第85回アカデミー賞』(No.581/2013.03.01)
今週、第85回アカデミー賞が発表されました。作品賞はベン・アフレックが監督、製作、主演を務めた『アルゴ』。大方の予想はどうなんでしょう、やはりスティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』あたりだったのでしょうか。今年もほとんどロードショーを見れていないので、今まで以上に情報を知らず...。それでも、やはり『ジャンゴ 繋がれざる者』のクエンティン・タランティーノや『愛、アムール』のミヒャエル・ハネケなどの個性派監督が名を連ねているのは楽しいですね。このあたりの作品は来月から日本公開なのでぜひ見たいと思います。
総じて、昨年や一昨年のような超大作は見当たりませんが、『リンカーン』に主演したダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞を獲得し、史上初の3度目の同賞受賞という快挙を成し遂げたり、『レ・ミゼラブル』でファンテーヌ役を演じたアン・ハサウェイが助演女優賞を受賞し、初のオスカー像を獲得するなど、それなりに話題は多かったようです。そういう意味では、昨年お亡くなりになられた、日本人のデザイナーの石岡瑛子さんが『白雪姫と鏡の女王』で衣装デザイン賞にノミネートされていたものの、受賞に至らなかったのは残念でした。

ちなみに『アルゴ』は、1979年のイラン革命成立後、イランの学生400人あまりが首都テヘランにある米大使館を占拠し、52人のアメリカ人を444日間拘束するという事件がベースになっていて、さらに授賞式には大統領夫人が登場したことなどから、イランからかなり反発をくらっているようです。まあでも、結局アメリカの映画賞ですからねえ。


『電子書籍その後』(No.580/2013.02.22)
前回の続きっぽく。とうとうAMAZONの電子書籍リーダー『kindle』を買ったわけですが、実際に2週間ほど使ってみて、なかなか満足しています。
良い点は、やはり外出時に何冊も本を持ち歩く必要がなく、1冊だけ持ち出して、「今日はこれじゃなかった!」「急に違うのが読みたくなった!」ということがほぼなくなったということ。紙と電子、どちらの媒体でもあるコンテンツの場合、基本的に電子書籍の方が安いのも魅力。まあ原価を考えると当然でしょうが。中には電子書籍でしか読めないコンテンツがあるのも面白いです。
コンテンツの量に関しては、まだまだ圧倒的に紙媒体の方が多いですが、電子書籍版を前提にいろんな本を探していると、紙媒体での検索では引っかからなかったようなものもちょこちょこあります。これもなかなかの掘り出し物があって楽しい。
例えば『岡田斗司夫の企画をたてる10のコツ』(株式会社ロケット)なんかは、『ニコニコ生放送』で放送された、岡田斗司夫さんと学生たちによる団体『Be the 1st』との会議を書籍化したもので、これが70ページで105円でした。おそらく電子書籍のみだと思います。結構刺激になった。

一方で悪い点、というわけではないですが、やはりリーダーで読むのはいろいろとインクの感じや使い方になれる必要がありますね。後、「これを読みたい!」と言うのがまずある場合、それが電子書籍化されているかどうか、ということになりますが、これに関しては、やっぱりまだされていない場合が多いです。一応、AMAZONの場合は”電子書籍リクエスト”というのがあって、電子版が欲しいと思うものはその旨を伝える事が出来るのですが、まあそんなに簡単に反映されるものでもないでしょうし。
ちなみに、「お風呂で読みたい!」と思っていたのですが、これはフリーザーバッグの”ジップロック”に入れることで解決しました(笑)。長く読んでいると湯気で曇りますが。


『電子書籍』(No.579/2013.02.15)
以前から気になっていた電子書籍なんですが、とうとうAMAZONの電子書籍リーダー『kindle』を買ってしまいました。昨年末に発売された後、すぐに品薄になっていた人気商品です。何種類かあるのですが、一番安いタイプは、電子書籍を読むための専用端末で、7,980円ですからね。個人的には、端末に写真データを入れて持ち歩いたり、アプリを使ったりはしないので、電子書籍が読めれば十分。しかも、このタイプはバッテリーが長持ち。一度充電すると、1日30分使っても8週間持つそうです。素晴らしい!!!
ということで、電車に載る時や、いろんな待ち時間などに使っているわけですが、かなり快適です。さすがに使いやすさは紙の本と比べてしまうと、慣れが必要ですが、もともと、”本という媒体で持っていたい”というほどではない書籍を読むために購入したので問題無しです。ビジネス本をよく読むのですが、ずっと持っていたい、というものにめぐり合うのはまれですし、大体かさばるんですよね。
しかしながら、この端末でもAMAZONストアにネットでつないで、ワンクリックでいろんな書籍を購入できてしまうところが怖い...。まあこれが狙いなんでしょうけど(笑)。雑誌の一部だけを100円程度でバラ売りしてるのも面白いですね(「週刊ダイヤモンド(1月12日号)」の第2特集”誰が音楽を殺したか?”→そもそもこれが読みたくて買った部分もあります)。漫画雑誌「モーニング」にて途中で連載が終わってしまったSF漫画の知られざる名作『暁星記』(菅原雅雪)も全巻揃ってますし、大好きな小田扉先生の『団地ともお』もある..。
基本的には紙媒体より100円程度安いのも魅力。...ですが、気をつけないと、ホントあっという間に電子書棚がいっぱいになりそうです。


『三茶の映画館その2』(No.578/2013.02.08)
先週コチラで取り上げさせていただいた『三軒茶屋中央劇場』閉館のニュース。その後、ギャラリーのつながりで映写技師の方とお話しする機会に恵まれました。閉館に至るまでのさまざまなお話や、純粋に映画に対する想いなど交わし、その中で、彼らが三軒茶屋において「ミニシアター」という文化残したいという熱い想いをいだいていらっしゃることも判明。もちろん、中央劇場自体の存続(復活?)も視野に入れているとのこと。微力ながらお手伝いさせていただくこととしました。
ということで、現在行っているのは署名活動。とりあえず経営に携わる方々に、存続を願うファンの想いを伝えようという趣旨だそうです。もちろん署名させていただきました。

中央劇場のみならず、映画業界においてミニシアターの閉館が続いています。わかりやすいアクション・サスペンスものや有名な俳優たちが登場する作品(もちろんそれはそれで存在価値がありますが)ばかりでは、映画の多様性が失われてしまいます。うちのギャラリーも何度かインディーズ映画の撮影に協力させていただきました。その中には、海外の小さな映画祭で受賞した監督もちらほら。それでも国内では、その程度のキャリアではなかなか上映されないのだそうです。きっと、世に出るチャンスを待っている名作や迷作がたくさんあるはず。そういう作品を積極的に上映する映画館が今、望まれていると思います。先日ホームページやWeb署名のシステムなどが立ち上がりました。以下アドレスからどうぞ。

・三軒茶屋中央劇場 閉館に向けて(http://www.kappa-dna.com/


『三茶の映画館』(No.577/2013.02.01)
このメルマガでも何度か登場していただいた昔ながらの風情あふれる映画館『三軒茶屋中央劇場』。河童の絵が描かれた看板が印象的で、テレビや雑誌にもよく登場している歴史ある建物です。お隣の三軒茶屋シネマと同様2本立てで格安のお値段で見られることから、よく通いました。そもそも、桜新町から三軒茶屋に引っ越したのも、映画館がある街、というのが理由のひとつでした。残念ながら、この映画館が来月14日で閉館になるようです..。さまざまな理由があるようですが、いずれにしても本当に残念でなりません。

個人的に映画が好きですし、だからこそこういったメルマガもやらせていただいているのですが、「映画が好き」の中には「映画館が好き」も含まれています。あの巨大なスクリーン、ずらっと並んだ座席、大きな音響、それらの要素がすべて絡み合って、独特の非日常空間が生まれます。そこにゆったりと身をゆだねる快楽。やはり映画の醍醐味は映画館なくしては語れません。最初、三軒茶屋に引っ越してきたときには、映画館が3館ありました。それがひとつなくなり、そしてまたひとつ。これが時代の趨勢だとすれば、ひょっとしたら残りのひとつもなくなってしまう日が来るのかも。時代とともに娯楽もメディアも変わります。それはしょうがないし、ある意味避けられないことかもしれません。それでも、やっぱり映画館の持つ独特の雰囲気は残ってほしいです。
スケジュールとしては、明日2月2日からの『天地明察』『ハンガー・ゲーム』のラインナップで終了のようです。こちらの映画館に思い入れのある方はぜひ。


『LIFE』(No.576/2013.01.25)
毎年1月に、うちのギャラリーで企画写真展を開催しています。トイカメラとして人気のあるロシアが生んだコンパクト・カメラ”ロモ”によるグループ写真展『LIFE LOMO 2013』です。2006年のスタートなので今年で8回目。毎回トイカメラ好き、ロモカメラ好きのいろんな方が参加してくださっています。テーマは毎回同じ”LIFE”。解釈は自由なのでそれぞれのLIFEも、作品もさまざま。ここが普通のカメラの写真展と違う面白いところです。

出展される方は大体10名〜15名ぐらいなんですが、ずっと続けて出してくださっている方もいらっしゃいます。毎回、娘さんのポートレートを出展される方、地元である福島県南相馬の風景を出展される方、1月なので、年末年始にふるさとに帰って撮影された写真を出展される方。出展者の数だけ”LIFE”があります。福島の方は、東日本大震災が起こる前から参加されていて、私もずっと南相馬の風景写真を拝見しています。残念なのは、復興が全然進んでいないこと。泊まりでなければ入れるようにはなったそうですが、がれきや流された船、車などもそのままだそうです。政治に期待できない状況ではしょうがないのかもしれませんが...。とりあえず、元気で参加してくださっていることが本当にうれしいです。
LIFE展の会期は毎回ほぼ丸々1ヶ月。今回も1月末日まで開催しております。入場無料。夜も20時までオープンしておりますので、ご興味のある方ぜひ。

・『LIFE LOMO 2013』(http://233.jp/life/


『御法度』(No.575/2013.01.18)
『日本の夜と霧』、『愛のコリーダ』など、挑発的な作品を世に送り出しながら、『愛の亡霊』でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞するなど、国際的にも高く評価された大島渚監督が今月15日にお亡くなりになりました..。

私が劇場で自らの意思で始めて観た作品が、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』でした。北野武、デビッド・ボウイ、坂本龍一などなど、当時大活躍していたタレントやミュージシャンを起用し、またほとんど戦闘場面の出てこない戦争映画としても世間を賑わし、話題になった作品です。当時高校生だったこともあり、観終わった後は、今まで味わったことの無い何とも切ない余韻に包まれ、しばし席が立てなかったこと(ちょっとおおげさですが)を今でも覚えています。
その後、監督の作品はビデオやDVDで拝見しましたが、松竹ヌーベルバーグの旗手と呼ばれた頃からの初期作品は、本当に先鋭的で、基本的に映画といえばおもに洋画にハマっていた私にとって衝撃的でした。遺作となった『御法度』(1999年)はちゃんと観ていなかったので、あらためて観てみたいと思います。そういう意味では最後まで社会の常識や権力と闘っていた方ですね。
今の時代は、良くも悪くも世界的に映画が”エンターテイメント”として定着してしまっている気がします。もちろんそういう楽しみを提供してくれるのも映画の持つ役割の一つですが、また一方で、社会に波紋や疑問を投げかけることも映画にできることのひとつでしょう。2時間前後で社会を、世界を変えるだけのメッセージを伝える事が出来る、やはりこれは映画というメディアならでは存在価値かと。...ご冥福をお祈りします。


『ラジオのチカラ』(No.574/2013.01.11)
インターネットのラジオが盛況ですね。テレビや動画とはまた違う独特の空気感や流しっぱなしにできる手軽さのようなものがあらためて見直されているのでしょうか。従来のように局側が作ったコンテンツを聴く、というだけでなく、さまざまなサービスが隆盛してきたことも要因のひとつでしょう。最近知人から聴いたのは『Pandora』というインターネットラジオ。好きなアーティスト名や曲名を入力すると、それらの曲のみならず、共通の要素(ジャンル、時代など)のある曲が候補に挙がり、次々と流してくれるそうです。
といえば、AMAZONなんかでもよくある、チェックしたり購入したりした商品から類似のものを探すサービスを思い浮かべますが、ウソかホントか、この候補の選曲を人力で行っているのだそうです。商品につけられたタグや情報からの検索ではなく、実際に人が「この人はこの曲が好きならこれも好きだろう」的に選曲しているというだとか。ちょっと眉唾ですが、もし本当ならコレは信頼できますよね。よくあるその手の広告は、単なる類似商品だったり、割と想像できる範囲内のものが多いのですが、同じような音楽が好きな人が教えてくれる情報って聞いてみたい。実際、『Pandora』教えてくれた知人はプロのミュージシャンで音楽に超くわしいのですが、やはり自分の知らない、それでいて気に入る曲がたくさん候補に挙がってくるそうです。音楽好きって、自分の好きな音楽を人に聞かせたがるところがありますから。私もそうですが(笑)。著作権の関係から日本では聴けないのが残念...。やっぱりメディアって、どういうメディアかって言うことよりも、どう使うかが勝負なんですね。


『白隠さん』(No.573/2013.01.04)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『白隠展』を見ました。白隠(はくいん)は、江戸時代中期の禅僧で、大量の書画を遺したお坊さん。”500年に一人の英傑として讃えられ、現在の臨済宗の僧侶たちの系譜をさかのぼれば、すべて白隠に行き着くほどの重要な存在”とのこと。
今回は白隠が世の中に仏教を広めるために描いた書画を、全国各地40ヶ所にわたる寺院や個人コレクションから、厳選された約100点を集めたもの。コレだけまとまった数を一度に見られるのは本当に貴重だそうです。そういう情報を知ってから見たということもあるかもしれませんが、とにかく終始圧倒される展覧会でした。
白隠が描いたテーマは、釈迦や達磨、菩薩などの仏教的なものが多いのですが、画風は庶民向けなのでどこか楽しさにあふれいているところがあります。そうかと思うとやはり達磨の絵などは、何かしらの魂のようなものがこめられているかのごとく生々しいものもあります。
テーマごとに区分けされた部屋もいくつかあるのですが、達磨の絵が集められた場所などはまさに渋谷に出現したパワースポット。その場にいるだけで何か力の源を得たような気分になる、と言ったらおおげさでしょうか。たまたまレセプションに参加したと言うのもありますが、結構書画を提供したと思われるお寺の住職が結構いて、いい意味でかなり違和感がありました(笑)。
非常に落ち着く空間になっています。毎度ザ・ミュージアムの展示は会場装飾も凝っていて楽しいです。会期も2月24日(日)とたっぷりあります。ぜひご覧ください。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/


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