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■『娯楽としての映画』(No.624/2013.12.27)
・東急Bunkamuraザ・ミュージアム |
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■『レオ・レオニの世界』(No.602/2013.07.26) 東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『レオ・レオニ絵本の仕事』展を見ました。 レオ・レオニは、日本の小学校の教科書にも掲載されている絵本『スイミー』などの作品で知られるオランダ生まれの絵本画家です。イタリアでグラフィック・デザイナーとして活躍、戦争のためにアメリカへ移住して以後、絵本作家として活躍しました。『スイミー』以外にも、ねずみの『フレデリック』や尺取り虫の『ひとあしひとあし』など、素晴らしい絵本を数多く製作し、その作品は世界中の人々から愛されています。 今回は、絵本原画約100点、さらに油彩、彫刻、資料など約30点が展示されています。個人的には、『スイミー』のお話は知っているものの、それ以外の作品はほとんど知りませんでした。しかしながら、どの絵本作品も、シンプルで色鮮やかで、楽しいお話なのに奥の深さを感じさせ、レオニ・ワールドにすっかり魅了されてしまいました。絵本の原画はサイズは小さいのですが、本当にどれもかわいいです。小さな色紙をコラージュして作った、ねずみのフレデリックの立体感!そして生命を感じさせる温かみ。他の作品も、今にも動き出しそうなものばかりで、ずっと見入ってしまいました。 展覧会場では、円形のスクリーンによるスイミーの動画や、絵本を読むスペースなどが設置されていて、今回の会期中は、ザ・ミュージアムが美術館ではなくテーマパークになったかのようです。最後のミュージアム・ショップが充実しているのも楽しかったです。仕事での関わりもあるので、ここ10年来のザ・ミュージムでの展示はすべて拝見していますが、こんなにショップスペースが広いのは初めて。丸一日、というと少し大げさですが、ゆっくり、のんびり楽しめる展示だと思います。会期は8月4日(日)まで。 ・東急Bunkamuraザ・ミュージアム http://www.bunkamura.co.jp/ ■『ショートショートフィルム2013』(No.601/2013.07.19) 俳優の別所哲也さんが主催されている、毎年6月に行われるアジア最大級の短編映画祭『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013』が今年も開催されました。このイベントは、2004年に米国アカデミー協会より認定をうけ、日本で唯一の米国アカデミー賞公認短編映画祭ショートショートフィルムフェスティバルとなっており、毎回素晴らしい作品が世界各国から集まります。昨年はいろんなつながりから、同フェスティバルのアワードセレモニーを取材させていただきました。今年はいけなかったのが残念...。 今年のグランプリを獲得したのは、ガブリエル・ゴーシュ監督のイギリス映画『人間の尊厳』だそうです。他にもさまざまな賞の受賞作品があり、横浜のショートショートシアターにて順次上映されています。1プログラム60分程度。数本のショートフィルムで構成されています。これで1,000円。意外にお安いです。個人的にもショートフィルム好きなので、ぜひ観にいきたいと思っています。 ...で、余談になりますが、週間シネママガジンというWebマガジンに、『ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2013』のアワードレポートが掲載されているのですが、これがちょっと辛口で面白かったです。 http://cinema-magazine.com/#!/news/2600 今年15周年とのことですし、そもそもシアターまで作ってしまった別所さんの情熱に頭が下がるばかりですが、一方でこういう企画・イベントの運営の難しさも伝わってくる記事ですね。ショートフィルム好きのみなさん、ぜひこのイベントを盛り上げていきましょう。 ・ショートショートシアター:http://www.brillia-sst.jp/ ■『編ZINE展』(No.600/2013.07.12) 今、うちのギャラリー世田谷233にて『編ZINE展』という、ちょっと面白い企画展を開催しています。テーマは”買う人が自分で編集する雑誌”。30名近いクリエイターさんによる、B6サイズの”表紙”と”本文”が壁面にずらりと並んでいて、買う人は、その中から好きな”表紙”と、好きな”本文”=中身となるページを選んで、横にある作業場で、ホッチキスで綴じて製本するというもの。表紙はすべてカラーで1枚30円、本文は1ページ10円。自分が選んだ枚数分のお金をその場で支払います。 ここ数年、リトルプレス、とかZINE=ジンという名称で、ハンドメイドの小冊子が流行っていますが、この展示も基本的にはこれ。ただ、最も違うのが、買う人が自由に編集できるところ。個人的にも、YOUTUBEが登場したあたりから、世の中にちゃんと”編集”されたものより、素人の一発勝負的な作品の集合体の方がウケる感じになってきたことに少し疑問を感じていました。もちろん、そういう作品の中にも素晴らしいものがたくさんあることは間違いないのですが、他にも、自分のお店が雑誌やテレビなどのメディアの取材を受ける際に、編集のクオリティよりもスピードを重視している感じを受けたりすることがあり、何となく”編集”がないがしろにされている感が募っていました。実際、テレビや雑誌の取材〜放送・出版までの時間って、ホントここ5〜6年で絶対短くなったと思います。作品であれ記事であれ、”伝える”ということが目的でしょうから、やはりしっかりと編集することが絶対大事だと思います。まあ、この企画展は、それを一番のテーマに掲げているわけではありませんが、編集が軽視される時代なら、もう雑誌も編集者なんかいらない、買う人が好きにやればいいじゃん、というピリ辛も少し伝わればと。手前味噌ながら、そういうこと抜きにしても内容的には面白いと思います。 さらに詳細はこちらから:http://homepage2.nifty.com/axk/henzine233.html ■『電話ではない』(No.599/2013.07.05) 昔、勤めていた会社が「アステル」というPHS事業者と関係があり、営業マンとしてPHSを渡された経緯から、いまだにずっとPHSを使っています。携帯ゲームやアプリなどはまったく使いませんし、PHSの音の良さと、地下でつながる便利さ(このあたりの他社の現在の状況はよくわかりませんが)もあって、ずっと満足しています。ただ、周りはやっぱりスマホを使っている人が多いですねえ。 この前、電車に乗っていて(自分は立っていました)、目の前に座っている人がスマホらしきものを広げたのですが、そのカバーがかなり分厚く、ちょっとしたメモやカードなども入るポケットがついていたのに気づきました。何気なく見ただけだったのですが、その時に思ったのが、「これだと電話できないんじゃないか」ということ。ひょっとしたら通話用に別途PHSやもう一台携帯を持っているのかもしれませんが、間違いなく、そのカバーつきでは、電話として使えない、とまではいかないものの、かなり不便ではないかという感じ。で、自分が教えている専門学校の生徒のことを思い浮かべたのですが、実は携帯で電話をしている場面があまり浮かびません...。いや、アプリで遊んでいたり、LINEで会話したりしているのは四六時中目にしますが、そういえば、彼らが自分の携帯(どれもかなりデコられています)で、通話している場面が浮かばないなと。ひょっとしたら、電話と言うメディアそのものの使用頻度も減っているのかも、思ったり。私たち世代はともかく、デジタルネイティブになると、メディアやアプリ経由の方が、言いたいことが言えたり、コミュニケーションのスピードそのものが早かったりするのかもしれません。 コミュニケーションがどんどん”メディア”に左右され、振り回される時代。その行き着く先は、トム・クルーズ主演の『マイノリティ・リポート』(2002)のように、コンピュータがはじいた”情報”の方が、人間の命より重要になるような社会でなければいいですが...。 ■『サム・サフィ』(No.598/2013.06.28) ストリッパーをしていた女の子が、あまりの自由さに嫌気がさし、ある日突然“普通に生きることが最高”と思い、”普通”を求めて生きる様を描いた作品がフランスのヴィルジニー・テヴネ監督の『サム・サフィ』(1992)。 主人公の女の子エヴァを演じたオーレ・アッティカも魅力的でしたし、ミュージシャンのキザイア・ジョーンズやネグレス・ヴェルトなども出演するなど、ファッショナブルで楽しい作品でした。 ちょっと別件で、この作品を見る必要があり、レンタルで借りようと思ったのですが三軒茶屋の大店舗を含む近隣のツタヤになく、まあ好きな作品でもあるし、中古を見つけてDVDを購入しようと決意。ヴィルジニー・テヴネは好きな監督でもありますし。で、ネットで検索して探したんですが...が出てこないんですよね。 AMAZONでやっと見つけたものの、中古DVDが4点あって、何とどれも2万円〜2万5千円...。いったい何が?...とても買える値段ではないので、他を探したら何とかVHSのビデオで千円台のものを発見。一応、程度は”良”だったので、それに決めました。しかし、そこまでマイナーな監督でもないし、この作品は日仏合作ということもあって、いわゆるフランス映画っぽい哲学的な感じではなく、公開当時も結構女性には受けていた気がするんですが、何かしらの理由で需要と供給のバランスがおかしくなったんでしょうか。さすがに2万円では誰も買わないような気がしますが...。。 ■『はたらきたい。』(No.597/2013.06.21) コピーライター(今でもでこの肩書きでいいんですよね?)の糸井重里さんが主催する、”ほぼ日”こと『日刊イトイ新聞』今月で15周年だそうです。その記念として、渋谷のパルコミュージアムで「はたらきたい展。」を開催(終了しました)。これに伴い、いろんなところで糸井さんのインタビューなどが掲載されていて、いろいろ読んでいるとやっぱり面白いですね。 そのうちのひとつ。東洋経済オンラインで配信されたインタビュー、「ブラック企業が生まれる理由」。タイトルからしてインパクト...。 最初に紹介されている「99の『はたらく人』のことば。」からの、萩本欽一さんのエピソードがいいですね。あれだけテレビを通じてお茶の間の人気を独占した萩本欽一さんが「したくない仕事しか来ない」と言っていたと。「不本意な仕事しかなかった。全部と言っていいぐらい不本意な仕事だった」そうです。要するに、それをいかに自分が楽しんじゃうか、自分のやりたい仕事に変えてしまうかってことなんですね。ホントその通り。専門学校で若い人相手にいろんなことをやってますが、この姿勢が社会に出てから一番大事なことなんじゃないかと思います。でもそのためには、いろいろと心のコントロールや技術的な向上などが必要になってくるんですね。そういう”コツ”のようなものをつかめるかどうかなんでしょうね。 ちなみにタイトルの”ブラック企業”については、糸井さん曰く、「デザイン事務所は全部ブラック企業ですよ。ブラックを超えているんじゃないかなあ(笑)。」と(笑)。「ブラックになるのは、やっぱり稼ぎ方がまだ見えてないからですね。デザイン事務所がちゃんとどうやって稼ぐかをわかって、仕事の配分を上手にしていけば、あんなにブラックにする必要はないのかもしれない。」。確かに企業としての姿勢もあるでしょうけれど、しっかり(ちゃんと、と言い換えてもいいかも)稼げていれば、そういう働き方をしなくていいはず。もちろん、その”ちゃんと稼ぐ”ということが、ビジネスでは一番難しいわけで、残念ながらそれが出来ない人は経営者としての資質に欠けるということ。一応、自分も経営者の端くれですから、すごく納得できます。「はたらきたい展。」行けなかったのが残念...。 ■『世界の終わり19本』(No.596/2013.06.14) 昨年の話ですが、『ハリウッド・リポーター』という、映画やテレビなどのエンターテインメント業界の情報を扱うアメリカの週刊誌が、”世界の終わり”を描いた19本の映画をリストアップしました。ランキングの並び順はわからないのですが、リストに入ったのはこの19本。 「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」(1964) 「猿の惑星」(1968) 「ターミネーター」(1984) 「マッドマックス サンダードーム」(1985) 「12モンキーズ」(1996) 「インデペンデンス・デイ」(1996) 「アルマゲドン」(1998) 「ディープ・インパクト」(1998) 「28日後...」(2002) 「デイ・アフター・トゥモロー」(2004) 「宇宙戦争」(2005) 「トゥモロー・ワールド」(2006) 「アイ・アム・レジェンド」(2007) 「ウォーリー」(2008) 「2012」(2009) 「ザ・ロード」(2009) 「テイク・シェルター」(2011) 「メランコリア」(2011) 「エンド・オブ・ザ・ワールド」(2012) まあ、そうそうたる作品が並びますね。何度地球が破壊されたことやら..。この中で好きなのは、「博士の異常な愛情」と「猿の惑星」と「12モンキーズ」、「メランコリア」あたりでしょうか。「ザ・ロード」(2009)と「テイク・シェルター」(2011)は観てないです。どちらも興味はあったのですが、見逃してしまいました。もちろん、”世界の終わり”を描いた作品はこれだけではありませんが、ここにリストアップされた作品は、ある意味”終末”という普遍的なテーマを描いていることもあってか、舞台設定や脚本にかなりこだわりを感じる作品が多いですね。ひょっとしたら、”世界の終わり”を描いた作品に、大失敗作無し、という方程式が成り立つかもしれません。...あっ、すみません。「宇宙戦争」(2005)を見落としてました。トム・クルーズが逃げ回るだけの、このリメイク版はさすがに...。 ■『劇団おぼんろ』(No.595/2013.06.07) 『劇団おぼんろ』の舞台『ビョードロ〜月色の森で抱きよせて』を観ました。というか、この劇団の場合、”体験してきました”の方がピッタリかも。うちのギャラリーで放送している世田谷Webテレビに、代表の末原拓馬氏がゲストとして出演してくださったことがきっかけで知ったのですが、その時の放送で、彼の口から飛び出す言葉の一つ一つから本気度がびんびん伝わってきましたし、劇団の運営においても既存のシステムとは全然違うものや新しいものを提供しているところもすごく共感し、その場で「絶対観にいく」と約束したのでした。 で、実際に観にいったわけですが、すべてが期待通り、というか期待以上で大満足でした。脚本も演技もよかったし、最終的には感動のエンディングで、いい空気を共有できました。それでいて、まだまだのびしろがある感じで、将来が楽しみです。ちなみに彼らの将来の夢は、5年後に渋谷のシアターコテNチ[テモツ?マ ̄ノノツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?ツ?チB劇団の姿勢や運営については、ホームページに詳細が書かれているのでぜひ読んでみてください。斬新な開演スタイルや楽しいチケット設定など、読むときっと応援したくなりますよ。 現在上演中の『ビョードロ〜月色の森で抱きよせて』は、追加公演が決まったようなので、まだ間に合いそうです。 ・劇団おぼんろ:http://www.obonro2012-9.net/ ■『店舗のつながり』(No.594/2013.05.31) 三軒茶屋でギャラリーのようなリアルの店舗を運営していると、おのずと地域のつながりが強くなります。商店街の中にある店舗ではないため、商店会を通しての、お店同士の横のつながみたいなのは少ないですが、逆に、ギャラリーという業種上(+フリーランスとしての活動もあり)、さまざまな場所、組織、団体とのつながりがたくさん生まれます。 先日は、知人の美容室のオープン5周年記念パーティに参加してきました。ちょこっとプロデュースもお手伝い。大勢のお客さまや知人・友人が集まり、大盛り上がりでした。 うちのギャラリーのお客さまにもお声がけし、その美容室のお客さまであるなしを問わず、みんなでお祝いしようと。その分、参加費やチャージなどは一切なしにしました。まず”感謝”から始まるイベント。その結果、お客さま同士のつながりも深まりましたし、美容室も、またうちのギャラリーもかなりのPRとなりました。 プロデュース、というほどのことはしていませんが、最初に相談があったときに考えたのは、リアルのお店だからこそできるつながりを大事にするということ。お店でのつながりというと、大体はお店のスタッフとお客様のつながりを想像しますが、お店のスタッフ同士もそうですし、お客さま同士のつながりもあると思います。自分のお店の中で、いろんな人同士がつながり、そこから新しいことや楽しい事が生まれていく。これこそがリアルの店舗を運営する醍醐味のひとつ。もちろん、お店が本来提供しているサービスや商品がちゃんと価値があること、接客が優れていること、この2つは大前提ですが。商店街の活性化はいろんな場所でいろんな試みが行われていますが、なかなかうまくいっているところは少ないと思います。ただ、こうやって、それぞれの店舗が努力し、そして横にしっかりつながれば、それだけで十分商店街の魅力はアップする、それは間違いないと思います。いろんな人の思惑が交差するのはしょうがないのですが、やっぱりどれだけベクトルを揃えられるか、ということが一番おおきいんでしょうね。 特に今の時代にはそういうつながりを生かしていかに価値を高めるかが勝負になってくると思いますが、その大切さをあらためて感じました。感謝、感謝。 ■『名作アニメ』(No.593/2013.05.24) 映画作品の中でもいろんな意味でターニング・ポイントとなったような作品は、折にふれ、繰り返し見たくなります。”ターニング・ポイント”というのが、大げさであれば、単に”好きな作品”と言ってもいいのですが。例えば、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』、や『エイリアン』、『ブレードランナー』『マトリックス』などなど。映画と言うメディアが、他のメディアと同じくテクノロジーの発展と切り離せない側面がある以上、どうしてもSF作品が多くなりますが、これらの作品は、その映像美、世界観、ストーリー、どれをとっても斬新で、今見ても(ということは今後いつ見ても?)それまでの常識を覆すような新鮮な驚きがあります。 で、先日そういう文脈で見直したのが『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)。改めてみると、最初に見たときほど、ストーリーの山場を感じませんでしたが、それでも『マトリックス』に多く引用された作品らしい、独特の魅力があります。ちょっと驚いたのは、本作ではなく特典映像。これは以前スルーしていたらしく初見でしたが、非常に興味深い内容でした。同作品の内容や、アニメ製作について、監督の押井守氏がインタビューに答える形式なのですが、これが単に作品に言及しているだけでなく、この作品の中で使用されている新しい技術やソフトについて詳しく解説しており、いかに先進的な技術によって生まれたかがわかります。 グローバルな戦略としての”ジャパン・ブランド”のようなものが語られる時、必ず”アニメ”の分野は登場しますが、日本の”アニメ”がいかに”技術”に支えられているか。ここで導入されている技術の多くは外国のものだと思いますが、それを駆使してまったく新しい映像表現を生み出しているプロセスを聞いていると、あらためてアニメの分野の可能性が感じられるようです。さらに、そういった技術やソフト面も日本から発信・提供することができれば一番いいんでしょうね。今の時代は当時から20年近くたっていますから、このあたりの話はもっと進んでいるんだと思いますが。 こういう種類の映画について話したり考えたりする度にいつも思うのですが、後は1984年に出版されたウィリアム・ギブスンによるサイバーパンクの金字塔ともいえる小説『ニューロマンサー』がいつ実写化されるかが気になりますね。今までも話が出ては消え、出ては消え、そうしているうちに30年経ってしまいましたから。そういえば、ウォシャウスキー監督の『マトリックス』は『ニューロマンサー』の映画化から話が始まったそうです。スポンサーがつかないなどの問題で立ち消えになったそうですが、このときが一番実現に近かったのかも。コレだけ時間が経っても、やっぱり見てみたいです。 ■『アントニオ・ロペス展』(No.592/2013.05.17) 東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『アントニオ・ロペス』展を見ました。アントニオ・ロペスは現代のスペインを代表する作家で、身近なテーマを主題に、さまざまな技法でリアリズムを追求し、独自の世界を切り開いています。ロペスがマルメロの果実を描く様子を綴ったビクトル・エリセ監督によるドキュメンタリー映画『マルメロの陽光』(1992)は、公開当時日本でも話題となりました。今回は、ロペスの日本初の個展として、初期の美術学校時代から近年までに手がけた油彩、素描、彫刻の各ジャンルの代表作が展示されています。そういう意味では貴重な展示ですね。 展覧会のポスターに使われている娘の肖像画やマドリードの風景は、一見写真と見まがうほどのリアリティ。ロペスの卓越した観察力と技術力が伝わってきます。制作期間が長いことでも知られ、10年を経てもなお筆を入れるほどだそうです。確かに、『マルメロの陽光』も公開当時見ましたが、作品に筆が入り、移り変わっていく過程ではなく、ロペスがマルメロの樹に寄り添っている様子を描いているという感じでした。ビクトル・エリセも寡作な監督ですしね。どこか共通した感覚を持っているのかもしれません。 ロペスの作品からは、身近なものへの愛情がしっかり感じられるんですが、それでいてどこかクールな視点もあり、個人的にはかなり好きな作家さんになりました。会期は6月16日(日)まで。ぜひ。 ・東急Bunkamuraザ・ミュージアム http://www.bunkamura.co.jp/ ■『映画にできること』(No.591/2013.05.10) ちょっと前の話になりますが、昨年9月にNHKのETV特集で放送された『映画にできること 園子温と大震災』。個人的に心に残るドキュメンタリーでした。園子温監督は90年代にインディーズ映画界を席巻、当時の作品『自転車吐息』(1990年)、『部屋 THE ROOM』(1994年)などは結構話題になりましたし、実際劇場で見て衝撃を受けた記憶があります。ポスト・パンクにハマッた世代としては、園子温監督の映画作品はもちろん、アナーキーな路上パフォーマンス集団『東京ガガガ』にしびれました。実際に渋谷で見たかったなと。 で、園子温監督が東日本大震災の後、南相馬市での出会いをきっかけに、放射能災害の現場を歩き、被災した人たちから直接話を聞き、それらをベースに一本の映画作品として完成させたのが『希望の国』。『映画にできること 園子温と大震災』は同作品が出来上がるまでのプロセスを追ったドキュメンタリーです。 放送の中で、「まずは数えなければならない。全部、数えろ」という園子温監督の詩が登場します。園子温監督といえばスプラッタな場面が特徴的ですが、この補助線こそ、詩人・園子温の真骨頂。震災によるさまざまな出来事を直接、脳に刻む込もうとする姿勢から、監督の純粋さがにじみ出るようです。被災地の人々との直接の対話を元にしながら映画というフィクションの世界を作り上げていく監督。最後に取材させていただいた人々を前に上映会を開催。そのある意味辛らつな内容に、当事者からも戸惑いの声が起こります。それでも園子温監督は自分の姿勢を崩しません。それはたとえ映画がどのように受け取られても、この震災による現状を、やみくもに希望に変換することなく、彼が思ったままに伝えたいという意志の表れに他ならないと思います。だからこそ信用できる。『希望の国』、現在は劇場公開は終了しましたが、DVDとBlu-rayが発売されています。震災や原発を描いたドキュメンタリーや映画はたくさん作られました。そして本作はその中でも、日本人としてみておかなければならない作品のひとつであることは間違いないと思います。 ・『希望の国』(http://www.kibounokuni.jp/) ■『3つの指針』(No.590/2013.05.03) 価値のあるアイデアを世に広めることを目的とするアメリカの非営利団体、TEDが開催しているプレゼンイベント『TEDカンファレンス』。U2のボノや映画監督のジェームズ・キャメロンなど、著名人も多数登場しています。その中から選りすぐりを放送しているのがNHKのスーパープレゼンテーション。以前もコチラのコラムで紹介させていただきました。 ホントに刺激的で、毎回楽しみにしているんですが、この前も面白い内容のプレゼンがありました。作家&ジャーナリストでもある、ダニエル・ピンクによる「やる気の謎解き(The puzzle of motivation)」。アメリカにおいて、お金を目当てにみんなが働くということが、国の競争力にとてもマイナスになるというお話。私たちの働き方を根底から覆す内容でした。で、内容もそうですが、ダニエル・ピンクが語っていた、これからの時代の会社経営に大事な3つのプリンシプル(指針)がよかった。まずは自分で行動するという『autonomy(自主性)』。次に技術があるという『mastery(熟達)』、そして最後に、なぜ働くかという『purpose(目的)』。 プロジェクトや組織の目的や存在意義を考えるときに、3つの言葉で表す、というのはよく使われ、なおかつ思考が明確になる手法なんですが、この3つ、説得力がありますね。ちなみに番組のパーソナリティのMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏もこれを受けて、メディアラボの所長に就任して最初の教員会議で決めた3つの指針を紹介してくれました。「メディアラボで我々が働く理由は何か?」という議論の結果集約されたのは、『uniqueness(独自性)』、『impact(影響)』、『magic(マジック)』。これもいいですね。特に最後の『magic』というのが、まだ見ぬ未来への希望を感じさせます。さすが。 ■『ブルーレイ特典』(No.589/2013.04.26) 最近、映画のレンタルもDVDからブルーレイへと移行しつつありますね。個人的には一応ブルーレイプレーヤーもありますので、どちらでもいいのですが、気になるのは往年の名作のブルーレイ化。 ただ単にメディアを変えるだけでなく、さまざまな特典をつけることによって、新たなマーケットとなっているようです。うーん、商法としてはよくあるパターンなのですが、やっぱり惹かれるものがありますね。 例えばスティーブ・マックイーン主演の『大脱走』。これは小さい頃にテレビで見て、大興奮した記憶があります。1963年製作の作品ということもあり、”製作50周年記念版コレクターズ版”として、特典映像てんこ盛りのBOXが販売されています。確かにこの作品は脱獄映画としてのみならず、映画史上に残る傑作ですから、こういう形で発売されると手元に置いておきたい気持ちになります。お値段は税込みで6千円ぐらい。5千円切ってたら買ってましたね...。 他にも、ブルース・ウィルス演じるジョン・マクレーンの吹き替え音声をトリプル収録した『ダイ・ハード』シリーズや、『燃えよドラゴン』の製作40周年記念BOX、『スター・ウォーズ』シリーズと嬉しいラインナップがたくさんあります。中には、”コンプリート”と銘打っておきながら、肝心の映画が完全版でなかったり、特典のTシャツやグッズがちょっとしょぼいものもあるようですが、ファンにとってはテンションあがるアイテムです。まだまだこれからたくさん登場しそう。 DVDと同じシリーズや監督のBOXでも、ブルーレイでも登場するとDVDとは違った特典がついてくる可能性があるのも楽しみです。例えば、スタンリー・キューブリック監督のブルーレイBOXでは、『時計じかけのオレンジ』のメイキングが初登場でした。ただ、キューブリック監督の作品って、BOXのまとめ方がホントぐだぐだなんですよね。それはブルーレイでも同じでした...。BOX販売の特典映像やグッズは、まあにぎやかしでもいいですが、収録作品はばっちりキメてもらいたいものです。 ■『つながりの価値』(No.588/2013.04.19) mixi、GREE、Facebook、Myspace、twitterなどなど、インターネット上で社会的なつながりやサービスを提供するシステムが花盛りです。個人的にはほとんど使っていないので、何ともいえないんですが、これだけ隆盛するということは、やはりニーズがある、ということなんでしょうね。 もともと私たちの生活は、血縁関係や地域社会などを通して、さまざまな人とつながりがあったわけで、核家族化や個人主義などによって、段々とそのつながりが薄れていきました。そこには、もともと”人と人のつながりは面倒くさい”という価値観が多少なりともあったのではないかと思いますが、結局、人間というものは、一人では生きていけない、ということなのでしょうか。 専門学校の講師や運営するギャラリーを通して、20代の人たちと話をする機会が多いですが、こういったSNSサービスを使っている人たちにちょっと心配な傾向がひとつあります。それは、”人とつながるという価値の低下”です。一昔前は、自分にとって有益な人を紹介されたり、したりすることは、大変価値があることでした。それが仕事であれ恋愛であれ何であれ。ところが、最近は本当に簡単に人とつながれるため、その中で有益な人と付き合う、という方向性に変わってきているのではないかと思います。つまり、人から紹介を受けたことに対する感謝の気持ちが薄れている、ということです。いや別に大きく感謝されたい、というわけではないんですが(笑)、紹介する側は、さまざまなことを鑑みて、人を紹介しているわけで...。簡単につながれる人とは簡単に別れられる、そんな関係性からいったい何が生まれるんでしょう。人間さえも”情報”になってしまったのか、というと、ちょっと考えすぎでしょうか。でも人とのつながりは人生において大切な「財産」ですから。 ちなみに私がこれらのSNSサービスを使わないのは、確固たるポリシーがあるわけではなく、ただ”面倒くさい”だけです...。 ■『アントン・コービン』(No.587/2013.04.12) いよいよ先週6日(土)から、渋谷のシアター・イメージフォーラムにて公開が始まった映画『アントン・コービン』。U2やデペッシュ・モードなど世界を代表するバンドやミュージシャンを撮影し、時には写真のみならず、PVや映画まで手がける鬼才アントン・コービンの素顔に迫るドキュメンタリー作品です。 U2、デペッシュ・モード(どちらも個人的に大ファンっ)のジャケット写真やPVはもちろん、彼が手がけたミュージシャンを挙げるときりがありません。ジョニー・キャッシュ、ニルヴァーナ、メタリカ、トム・ウェイツ、マイルス・デイヴィス、フランク・シナトラなどなど。もちろん、被写体はミュージシャンにとどまらず、クリント・イーストウッド、ウィリアム・S・バロウズ、キャメロン・ディアスなど、こちらも数え切れません。 映画監督としてのデビュー作であり、世界的に絶賛された、夭折したジョイ・ディヴィジョンの天才ボーカル、イアン・カーティスの生涯を描いた『コントロール』(2008)の素晴らしさもまだまだ鮮烈に記憶に残っています。 そんなアントン・コービンの素顔はもちろん、前述のミュージシャンたちとの作品製作のプロセスなんかも映像化されているようなので、これは本当に見逃せません。伝説に残る作品になることは間違いないと思います。楽しみ。ちなみにロモグラフィー・ジャパンでは、同映画公開にあわせて、クールなポートレート作品のコンテストを開催しています。ご興味のある方、ぜひ。 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ http://www.lomography.jp/magazine/competitions/2013/04/03/antoncorbijn ・『アントン・コービン』公式サイト (http://antoncorbijn-movie.jp/) ■『レコードの会』(No.586/2013.04.05) 昨年から、うちのギャラリーで『アナログレコードの会』というイベントを開催しています。その名の通り、アナログレコードを持ち寄り、ターンテーブルで聴くというシンプルなイベント。ただ、ターンテーブルは2台用意し、曲をつないで遊ぶDJの要素を入れています。その場にいる方全員がDJになります。もちろん初心者の方も大歓迎。まあ、自分がまさにそうですが、曲をつなぐだけならすぐにできますから。そしてコレがすごく楽しいっ。このイベントには、本当にいろんな年代の方が来てくださって、毎回かかる曲もさまざまん。ゴスペルもあれば、ロックもあれば、テクノもあれば、ニューミュージックもある。オフスプリングから山崎ハコまで、何でもありです(笑)。 このイベントをやっていて面白いのが、結構若い人(20〜30代)がアナログレコードにハマるということ。20代は親がレコードを聞いていた世代で、あんまり深く知らなかったものの、実際聴くとそのメカニックなところやDJプレイの面白さも含めて楽しんでいます。また、30代はレコードは自分でも持っていたものの、すぐにCDに取って代わったことからほとんど聴いていなかった世代。こういうイベントで昔懐かしいレコードをあらためて聴くことにより、当時の音楽の素晴らしさを再発見したパターンです。 個人的にも、レコードはたくさん持っており、コンパクトなプレーヤーもあるものの、本当にたまに聴く程度でしたが、自分でもアナログの楽しさを再発見しました。 音質はもちろん、機材のセッティング、レコードの手入れ、針の手入れ、そしてある種の儀式のようにレコードをターンテーブルに載せ、音楽をかける。この一連の作業によって、流れる音そのものに愛着がわきます。そこにお酒でもあろうものなら(基本的にはあるのですが...笑)、至福のときとなります。音楽が素晴らしいのはもちろん、ゆっくり手間ひま=時間をかける、ということが、”贅沢”感につながるのかもしれませんね。 |
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■『重複』(No.585/2013.03.29) おかげさまでこのメルマガも600号間近。メルマガ発行前にホームページで紹介させていただいた映画も含めると、紹介本数640本を超えました。ありがとうございます。 で、先日、今日の紹介用にレンタルショップでDVDを借りて帰ったら、以前借りたものでした...。たまにあるんですよね。ほとんどが洋画ですし、それも超大ヒット作は少なく、めちゃくちゃマニアックだったり、アーティスティックだったりするものもそんなにありません。となると、たま〜にこういうことが起こります。さすがに600本を超える作品をすべて覚える頭脳もなく、スマートフォンやiPadのような、常に持ち歩けてネットにつないで、自分のサイトを確認するようなツールもなく...と思っていたらありました。そういえばAMAZONでKindleを買ったのでした。これは一番安いモデルで、モノクロだし、音楽や動画が見られるわけではないんですが、ワードの文書やHTMLファイル、PDFファイルなど、対応している形式のデータは、メール経由で端末に送ると閲覧が出来るんです。 早速、自分のサイトの「タイトル別」のページをHTMLファイルで保存して、Kindleに送信。そうしたらちゃんと見られました。素晴らしいっ。これをちょこちょこ更新すれば、間違って以前借りた作品をまた借りてしまうってことはなくなりそうです。よかった。こういう場面に出会うと、ITの技術って便利だなあと思いますね。 とはいえ、もう一度借りたやつを見たら見たで、新たな発見もあるんだとは思いますが。 ちなみにかぶって借りた作品は『隣のヒットマン』。いや、何か怪しい予感はあったんです。実際調べてみたら、前に借りたのが2010年の12月でした。2年と3ヶ月前。 そんなに昔じゃないところがちょっとショック。 ■『放送予定』(No.584/2013.03.22) 久しぶりにテレビ番組の取材を受けました。情報番組の中で、うちのギャラリーを紹介いただけるとのこと。ありがたい話です。取材・放送内容的にも全然問題なく、無事に終える事が出来たのですが、事前告知については控えて欲しいとお達しがありました。まあテレビの場合はよくあることなんですが。緊急でニュースが入ったり、速報が入ったりする可能性があるので、放送はあくまで”予定”であると。だから、突然予定が変更になって放送されたなかった場合のリスクヘッジなんでしょうね。今まで何度かテレビの取材を受けましたが、すべてではないものの、たまにこういうパターンがありました。しかしながら、久しぶりの取材と言うこともあってか、この期に及んで、という感じでちょっとびっくり。 突然の変更によって放送予定が変わる、まあ、ありえることです。しかし、ツイッターやフェイスブックなど、リアルタイムのSNSサービスがこれだけ普及した中、「テレビで放送されるはずが急遽変更になって放送されなかった」ことすらも”いいネタ”になるご時勢。それはちゃんとした理由があれば、決してテレビ側にも損はないはず。やっぱり、テレビの人たちってまだ考え方がついていっていないのかなあと思わざるを得ませんでした。ちょっとしたことで文句を言ったり、キレたりする人が増えた世の中。そういう苦情に対して最も有効(?)なのが、トラブルを起こさないこと。そういう姿勢から面白いものや新しいものが生まれるのでしょうか...。 ちなみに昨日CNNが配信したニュースによると、米携帯電話会社のモトローラ・モビリティが実施したメディア利用動向に関する年次調査で、就寝時に寝室でスマートフォンやタブレットを使って動画を見る人が増え、テレビを見る人を上回ったそうです。メディアの利便性、使い勝手などももちろんあるとは思いますが...。 ■『震災から2年』(No.583/2013.03.15) 東日本大震災の発生から丸2年が過ぎました。個人的には地震以降、被災地に行ったことはありませんが、何とか個人的に出来る支援を細々と続けさせていただいています。個人的に付き合いのある被災された方からは、まだ全然復興が進んでいないことも聞きますし、阪神・淡路大震災を経験された関西の方からは、被災地はもちろん、関東ともすでに温度差があり、風化してしまっているのではないか、という話も聞いています。本当にこの震災は、日本が抱えるさまざまな問題を丸裸にしました。2年経過ということで、今また写真展やテレビ番組など、いろんなメディアで震災が取り上げられていますね。時間がある限り、見たり聞いたりしていますが、常に思うのは、今回の傷を癒すためには、2年というレベルの時間では、まったく足りないと言うこと。 そういえば、ちょうど1年前にこのコラムで、震災から1年経って開催された銀座・新宿ニコンサロンでの連続企画展『Remembrance 3.11』をご紹介しました。あれからさらに1年経った今、展示の図録が作られたようです。一般書店では販売せず、ニコンサロンのみの販売で限定500部とのこと。参加した写真家は、石川直樹、和田直樹、笹岡啓子、田代一倫、新井 卓、鷲尾和彦、吉野正起、宍戸清孝の8名。 これからまだまだ長い復興の道のりで最も大切なのは、被災しているいないに関わらず、それぞれがそれぞれの方法で復興に関わること。これしかないと思います。そしてそのために私たちに必要なのが、本当に基本的なことですが、”忘れない”ということ。それをこの図録のニュースを聞いてあらためて強く思いました。 ・『ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11』:http://bit.ly/wcR73W ■『アナログの魅力』(No.582/2013.03.08) 先般、三軒茶屋中央劇場という映画館が閉館されたことをお伝えしました。映画のみならず、カメラのフィルムやレコードなど、アナログなメディアがさまざまなフィールドから消えつつありますね。アナログと言うと、どうしてもデジタルより古い技術、と捉えられがちですが、もちろん時系列ではそうなるものの、そもそも成り立ちや存在意義が全然違うと思います。 誤解を恐れずに単純化すれば、デジタルはすべてゼロとイチに置き換えられたもの。それゆえにコピーも簡単だし、遠くに送ることもできる。一方でアナログとは、連続性によって表現されたもの。ですから全然違う。それぞれにいいところもあれば悪いところもある。それなのに、デジタルの可能性や手軽さばかりがもてはやされている気がしてなりません。アナログって何かとというと、結局”つながり”と言うことだと思うんですね。だから例えば、人と人のつながりなんかは、どれだけソーシャルメディアのようなものが進化したとしても、やはりそれは”アナログ”的な価値なんだと思います。もちろん、人とのつながり=人間関係にはいい関係も悪い関係もあります。いずれにしても”つながり続けようとする意思と行動”が無ければ成立しません。それはまた楽しい反面、時に面倒くさい作業でもあるわけですが、そういう意思や行動を積み重ねた結果でしか得られない幸せがある。 音楽産業でも、音源はデジタルのCDを通り越してデータになりました。お金に換算した音楽の価値はどんどん下がっていますが、一方で、日本国内のライブの売り上げは伸びているようです。つまり、デジタルでは表現できない、連続性=リアルな体験の価値は上がっているといえるのかもしれません。もっと多くの人がその価値に気づけば、映画館のような存在も今まで以上に貴重な場になると思うのですが。 ■『第85回アカデミー賞』(No.581/2013.03.01) 今週、第85回アカデミー賞が発表されました。作品賞はベン・アフレックが監督、製作、主演を務めた『アルゴ』。大方の予想はどうなんでしょう、やはりスティーブン・スピルバーグ監督の『リンカーン』あたりだったのでしょうか。今年もほとんどロードショーを見れていないので、今まで以上に情報を知らず...。それでも、やはり『ジャンゴ 繋がれざる者』のクエンティン・タランティーノや『愛、アムール』のミヒャエル・ハネケなどの個性派監督が名を連ねているのは楽しいですね。このあたりの作品は来月から日本公開なのでぜひ見たいと思います。 総じて、昨年や一昨年のような超大作は見当たりませんが、『リンカーン』に主演したダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞を獲得し、史上初の3度目の同賞受賞という快挙を成し遂げたり、『レ・ミゼラブル』でファンテーヌ役を演じたアン・ハサウェイが助演女優賞を受賞し、初のオスカー像を獲得するなど、それなりに話題は多かったようです。そういう意味では、昨年お亡くなりになられた、日本人のデザイナーの石岡瑛子さんが『白雪姫と鏡の女王』で衣装デザイン賞にノミネートされていたものの、受賞に至らなかったのは残念でした。 ちなみに『アルゴ』は、1979年のイラン革命成立後、イランの学生400人あまりが首都テヘランにある米大使館を占拠し、52人のアメリカ人を444日間拘束するという事件がベースになっていて、さらに授賞式には大統領夫人が登場したことなどから、イランからかなり反発をくらっているようです。まあでも、結局アメリカの映画賞ですからねえ。 ■『電子書籍その後』(No.580/2013.02.22) 前回の続きっぽく。とうとうAMAZONの電子書籍リーダー『kindle』を買ったわけですが、実際に2週間ほど使ってみて、なかなか満足しています。 良い点は、やはり外出時に何冊も本を持ち歩く必要がなく、1冊だけ持ち出して、「今日はこれじゃなかった!」「急に違うのが読みたくなった!」ということがほぼなくなったということ。紙と電子、どちらの媒体でもあるコンテンツの場合、基本的に電子書籍の方が安いのも魅力。まあ原価を考えると当然でしょうが。中には電子書籍でしか読めないコンテンツがあるのも面白いです。 コンテンツの量に関しては、まだまだ圧倒的に紙媒体の方が多いですが、電子書籍版を前提にいろんな本を探していると、紙媒体での検索では引っかからなかったようなものもちょこちょこあります。これもなかなかの掘り出し物があって楽しい。 例えば『岡田斗司夫の企画をたてる10のコツ』(株式会社ロケット)なんかは、『ニコニコ生放送』で放送された、岡田斗司夫さんと学生たちによる団体『Be the 1st』との会議を書籍化したもので、これが70ページで105円でした。おそらく電子書籍のみだと思います。結構刺激になった。 一方で悪い点、というわけではないですが、やはりリーダーで読むのはいろいろとインクの感じや使い方になれる必要がありますね。後、「これを読みたい!」と言うのがまずある場合、それが電子書籍化されているかどうか、ということになりますが、これに関しては、やっぱりまだされていない場合が多いです。一応、AMAZONの場合は”電子書籍リクエスト”というのがあって、電子版が欲しいと思うものはその旨を伝える事が出来るのですが、まあそんなに簡単に反映されるものでもないでしょうし。 ちなみに、「お風呂で読みたい!」と思っていたのですが、これはフリーザーバッグの”ジップロック”に入れることで解決しました(笑)。長く読んでいると湯気で曇りますが。 ■『電子書籍』(No.579/2013.02.15) 以前から気になっていた電子書籍なんですが、とうとうAMAZONの電子書籍リーダー『kindle』を買ってしまいました。昨年末に発売された後、すぐに品薄になっていた人気商品です。何種類かあるのですが、一番安いタイプは、電子書籍を読むための専用端末で、7,980円ですからね。個人的には、端末に写真データを入れて持ち歩いたり、アプリを使ったりはしないので、電子書籍が読めれば十分。しかも、このタイプはバッテリーが長持ち。一度充電すると、1日30分使っても8週間持つそうです。素晴らしい!!! ということで、電車に載る時や、いろんな待ち時間などに使っているわけですが、かなり快適です。さすがに使いやすさは紙の本と比べてしまうと、慣れが必要ですが、もともと、”本という媒体で持っていたい”というほどではない書籍を読むために購入したので問題無しです。ビジネス本をよく読むのですが、ずっと持っていたい、というものにめぐり合うのはまれですし、大体かさばるんですよね。 しかしながら、この端末でもAMAZONストアにネットでつないで、ワンクリックでいろんな書籍を購入できてしまうところが怖い...。まあこれが狙いなんでしょうけど(笑)。雑誌の一部だけを100円程度でバラ売りしてるのも面白いですね(「週刊ダイヤモンド(1月12日号)」の第2特集”誰が音楽を殺したか?”→そもそもこれが読みたくて買った部分もあります)。漫画雑誌「モーニング」にて途中で連載が終わってしまったSF漫画の知られざる名作『暁星記』(菅原雅雪)も全巻揃ってますし、大好きな小田扉先生の『団地ともお』もある..。 基本的には紙媒体より100円程度安いのも魅力。...ですが、気をつけないと、ホントあっという間に電子書棚がいっぱいになりそうです。 ■『三茶の映画館その2』(No.578/2013.02.08) 先週コチラで取り上げさせていただいた『三軒茶屋中央劇場』閉館のニュース。その後、ギャラリーのつながりで映写技師の方とお話しする機会に恵まれました。閉館に至るまでのさまざまなお話や、純粋に映画に対する想いなど交わし、その中で、彼らが三軒茶屋において「ミニシアター」という文化残したいという熱い想いをいだいていらっしゃることも判明。もちろん、中央劇場自体の存続(復活?)も視野に入れているとのこと。微力ながらお手伝いさせていただくこととしました。 ということで、現在行っているのは署名活動。とりあえず経営に携わる方々に、存続を願うファンの想いを伝えようという趣旨だそうです。もちろん署名させていただきました。 中央劇場のみならず、映画業界においてミニシアターの閉館が続いています。わかりやすいアクション・サスペンスものや有名な俳優たちが登場する作品(もちろんそれはそれで存在価値がありますが)ばかりでは、映画の多様性が失われてしまいます。うちのギャラリーも何度かインディーズ映画の撮影に協力させていただきました。その中には、海外の小さな映画祭で受賞した監督もちらほら。それでも国内では、その程度のキャリアではなかなか上映されないのだそうです。きっと、世に出るチャンスを待っている名作や迷作がたくさんあるはず。そういう作品を積極的に上映する映画館が今、望まれていると思います。先日ホームページやWeb署名のシステムなどが立ち上がりました。以下アドレスからどうぞ。 ・三軒茶屋中央劇場 閉館に向けて(http://www.kappa-dna.com/) ■『三茶の映画館』(No.577/2013.02.01) このメルマガでも何度か登場していただいた昔ながらの風情あふれる映画館『三軒茶屋中央劇場』。河童の絵が描かれた看板が印象的で、テレビや雑誌にもよく登場している歴史ある建物です。お隣の三軒茶屋シネマと同様2本立てで格安のお値段で見られることから、よく通いました。そもそも、桜新町から三軒茶屋に引っ越したのも、映画館がある街、というのが理由のひとつでした。残念ながら、この映画館が来月14日で閉館になるようです..。さまざまな理由があるようですが、いずれにしても本当に残念でなりません。 個人的に映画が好きですし、だからこそこういったメルマガもやらせていただいているのですが、「映画が好き」の中には「映画館が好き」も含まれています。あの巨大なスクリーン、ずらっと並んだ座席、大きな音響、それらの要素がすべて絡み合って、独特の非日常空間が生まれます。そこにゆったりと身をゆだねる快楽。やはり映画の醍醐味は映画館なくしては語れません。最初、三軒茶屋に引っ越してきたときには、映画館が3館ありました。それがひとつなくなり、そしてまたひとつ。これが時代の趨勢だとすれば、ひょっとしたら残りのひとつもなくなってしまう日が来るのかも。時代とともに娯楽もメディアも変わります。それはしょうがないし、ある意味避けられないことかもしれません。それでも、やっぱり映画館の持つ独特の雰囲気は残ってほしいです。 スケジュールとしては、明日2月2日からの『天地明察』『ハンガー・ゲーム』のラインナップで終了のようです。こちらの映画館に思い入れのある方はぜひ。 ■『LIFE』(No.576/2013.01.25) 毎年1月に、うちのギャラリーで企画写真展を開催しています。トイカメラとして人気のあるロシアが生んだコンパクト・カメラ”ロモ”によるグループ写真展『LIFE LOMO 2013』です。2006年のスタートなので今年で8回目。毎回トイカメラ好き、ロモカメラ好きのいろんな方が参加してくださっています。テーマは毎回同じ”LIFE”。解釈は自由なのでそれぞれのLIFEも、作品もさまざま。ここが普通のカメラの写真展と違う面白いところです。 出展される方は大体10名〜15名ぐらいなんですが、ずっと続けて出してくださっている方もいらっしゃいます。毎回、娘さんのポートレートを出展される方、地元である福島県南相馬の風景を出展される方、1月なので、年末年始にふるさとに帰って撮影された写真を出展される方。出展者の数だけ”LIFE”があります。福島の方は、東日本大震災が起こる前から参加されていて、私もずっと南相馬の風景写真を拝見しています。残念なのは、復興が全然進んでいないこと。泊まりでなければ入れるようにはなったそうですが、がれきや流された船、車などもそのままだそうです。政治に期待できない状況ではしょうがないのかもしれませんが...。とりあえず、元気で参加してくださっていることが本当にうれしいです。 LIFE展の会期は毎回ほぼ丸々1ヶ月。今回も1月末日まで開催しております。入場無料。夜も20時までオープンしておりますので、ご興味のある方ぜひ。 ・『LIFE LOMO 2013』(http://233.jp/life/) ■『御法度』(No.575/2013.01.18) 『日本の夜と霧』、『愛のコリーダ』など、挑発的な作品を世に送り出しながら、『愛の亡霊』でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞するなど、国際的にも高く評価された大島渚監督が今月15日にお亡くなりになりました..。 私が劇場で自らの意思で始めて観た作品が、大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』でした。北野武、デビッド・ボウイ、坂本龍一などなど、当時大活躍していたタレントやミュージシャンを起用し、またほとんど戦闘場面の出てこない戦争映画としても世間を賑わし、話題になった作品です。当時高校生だったこともあり、観終わった後は、今まで味わったことの無い何とも切ない余韻に包まれ、しばし席が立てなかったこと(ちょっとおおげさですが)を今でも覚えています。 その後、監督の作品はビデオやDVDで拝見しましたが、松竹ヌーベルバーグの旗手と呼ばれた頃からの初期作品は、本当に先鋭的で、基本的に映画といえばおもに洋画にハマっていた私にとって衝撃的でした。遺作となった『御法度』(1999年)はちゃんと観ていなかったので、あらためて観てみたいと思います。そういう意味では最後まで社会の常識や権力と闘っていた方ですね。 今の時代は、良くも悪くも世界的に映画が”エンターテイメント”として定着してしまっている気がします。もちろんそういう楽しみを提供してくれるのも映画の持つ役割の一つですが、また一方で、社会に波紋や疑問を投げかけることも映画にできることのひとつでしょう。2時間前後で社会を、世界を変えるだけのメッセージを伝える事が出来る、やはりこれは映画というメディアならでは存在価値かと。...ご冥福をお祈りします。 ■『ラジオのチカラ』(No.574/2013.01.11) インターネットのラジオが盛況ですね。テレビや動画とはまた違う独特の空気感や流しっぱなしにできる手軽さのようなものがあらためて見直されているのでしょうか。従来のように局側が作ったコンテンツを聴く、というだけでなく、さまざまなサービスが隆盛してきたことも要因のひとつでしょう。最近知人から聴いたのは『Pandora』というインターネットラジオ。好きなアーティスト名や曲名を入力すると、それらの曲のみならず、共通の要素(ジャンル、時代など)のある曲が候補に挙がり、次々と流してくれるそうです。 といえば、AMAZONなんかでもよくある、チェックしたり購入したりした商品から類似のものを探すサービスを思い浮かべますが、ウソかホントか、この候補の選曲を人力で行っているのだそうです。商品につけられたタグや情報からの検索ではなく、実際に人が「この人はこの曲が好きならこれも好きだろう」的に選曲しているというだとか。ちょっと眉唾ですが、もし本当ならコレは信頼できますよね。よくあるその手の広告は、単なる類似商品だったり、割と想像できる範囲内のものが多いのですが、同じような音楽が好きな人が教えてくれる情報って聞いてみたい。実際、『Pandora』教えてくれた知人はプロのミュージシャンで音楽に超くわしいのですが、やはり自分の知らない、それでいて気に入る曲がたくさん候補に挙がってくるそうです。音楽好きって、自分の好きな音楽を人に聞かせたがるところがありますから。私もそうですが(笑)。著作権の関係から日本では聴けないのが残念...。やっぱりメディアって、どういうメディアかって言うことよりも、どう使うかが勝負なんですね。 ■『白隠さん』(No.573/2013.01.04) 東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『白隠展』を見ました。白隠(はくいん)は、江戸時代中期の禅僧で、大量の書画を遺したお坊さん。”500年に一人の英傑として讃えられ、現在の臨済宗の僧侶たちの系譜をさかのぼれば、すべて白隠に行き着くほどの重要な存在”とのこと。 今回は白隠が世の中に仏教を広めるために描いた書画を、全国各地40ヶ所にわたる寺院や個人コレクションから、厳選された約100点を集めたもの。コレだけまとまった数を一度に見られるのは本当に貴重だそうです。そういう情報を知ってから見たということもあるかもしれませんが、とにかく終始圧倒される展覧会でした。 白隠が描いたテーマは、釈迦や達磨、菩薩などの仏教的なものが多いのですが、画風は庶民向けなのでどこか楽しさにあふれいているところがあります。そうかと思うとやはり達磨の絵などは、何かしらの魂のようなものがこめられているかのごとく生々しいものもあります。 テーマごとに区分けされた部屋もいくつかあるのですが、達磨の絵が集められた場所などはまさに渋谷に出現したパワースポット。その場にいるだけで何か力の源を得たような気分になる、と言ったらおおげさでしょうか。たまたまレセプションに参加したと言うのもありますが、結構書画を提供したと思われるお寺の住職が結構いて、いい意味でかなり違和感がありました(笑)。 非常に落ち着く空間になっています。毎度ザ・ミュージアムの展示は会場装飾も凝っていて楽しいです。会期も2月24日(日)とたっぷりあります。ぜひご覧ください。 ・東急Bunkamuraザ・ミュージアム http://www.bunkamura.co.jp/ |
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