コラム
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『10周年』(No.572/2012.12.28)
私が運営するギャラリーが今週24日にオープンからおかげさまで丸10年を迎えました。感謝の意を込めて、24日はクリスマスパーティと忘年会と10周年記念パーティをまとめて開催させていただきました。たくさんの方がいらしてくださったのも嬉しかったですが、何よりみなさんが祝ってくださる気持ちが嬉しかったし、老若男女いろんな世代の方がいらしてくださったのも嬉しかったです。
そもそも何事も20年やったらとりあえず一人前かなあ、と思っているところがあるので、10周年では特別なイベントを行うつもりはなかったのですが、たまたま今年は24日が祝日になったこともあり、お客様からのご提案でちょっと大きくイベントを開催させていただきました。感謝。
そう考えるとこの『D-Movie』のメルマガも最初の配信が2001年の11月9日ですから、まだ12年目。今回が今年最後の配信ですが、これからもどうぞよろしくお願いします。ということで、みなさまにとって2013年が素晴らしい年になりますように。


『現場のチカラ』(No.571/2012.12.21)
先週このコラムで、さまざまな人のアイデアのプレゼンテーションを提供している『TED』という団体、そしてその中からの選りすぐりを放送しているNHK教育テレビで毎週月曜日の夜11時から放送の『スーパープレゼンテーション』をご紹介しました。
その中でのお気に入りのひとつで、一時期毎日のように見直していたのが、インドの社会活動家バンカー・ロイさんの「裸足の学校」に関するプレゼンテーションです。
バンカー・ロイさんは、インドの裕福な家庭に生まれ、恵まれた教育を受け、医者だろうが弁護士だろうが好きな職業に就ける立場でありながら、貧困にあえぐ村の自立に尽力された方です。「裸足の学校」での独特な教育システムは、インド国内だけでなくアフリカ諸国にも広まり、注目を集めているとのこと。これは過去の映像がNHKのサイト(今日現在)で見られます。
http://www.nhk.or.jp/superpresentation/backnumber/121105.html

この学校での”独特の教育”のひとつが、やみくもに外のチカラに頼らないこと。基本的に自分たちでつくりあげるところです。バンカー・ロイさんは言います。『外に頼る必要はありません。答えは近くにあります。身近な人を頼りにしてください』。必要なのは、自分たちの中にある技術や知識を改めて見直し、共有すること。
私もさまざまなプロジェクトに関わらせていただく中で最も大事にしているのは、”その場所にいる人が、自らの手によって生み出すものが、その場所にとって最も価値がある”ということ。裸足の学校で実践されていることはまさにこのことのように思えました。
簡単に外のチカラを検索し、知ることができる時代だからこそ、自分たちの内なるチカラが見えなくなりがちです。でも本当に必要なことはすべてその現場にあるはず。それを、その現場を最もよく知る人たちが、自らの手と、お互いの連携を通じて、”知”や”経験”を積み重ねること。そこから生み出されるものは、間違いなくその現場からしか作りえないものだと思います。前回ご紹介したジル・ボルト・テイラー博士のプレゼンと同じく、私たちの人生に素晴らしい価値を与えてくれる考え方だと思います。


『広める価値のあるアイデア』(No.570/2012.12.14)
NHK教育テレビで毎週月曜日の夜11時から放送されている『スーパープレゼンテーション』。いいですねえ。アメリカのTEDという団体が作っているコンテンツの中から選りすぐりを放送している番組です。
毎回、さまざまな業種・業界で活躍されている人たちが、壇上で自分の伝えたいこと、アイデアをプレゼンテーションします。簡単なスライドショーも使われますが、基本的には、スタンディングで、身振り手振りで話をするだけ。これがかっこいいし、内容も興味深いものが多いです。
最近は録画して見ているのですが、以前はたまたま月曜日の夜に見ていただけで、もっと過去の放送を見たいなあと思ったものの、NHKのサイトでは、さほどアーカイブが充実しておらず。とはいえ、youtubeにアップされている動画は言語の問題もあり...と思っていたら、TEDのサイトに翻訳機能があることを発見しました。灯台もと暗し。素晴らしい〜。

ということで、早速見たのが、アメリカの神経解剖学者ジル・ボルト・テイラー博士の『パワフルな洞察の発作』。またコレを見られる幸せ。最初はテレビの放送を見たのですが、その時に”プレゼンテーションでここまで感動的な体験が出来るのか”と鳥肌が立ったのを覚えています。アメリカ人って、ホントこういうのがうまいですねえ。もちろん、素晴らしいのは、プレゼンテーションの技術だけではなく、自分自身が脳卒中になった時に得た経験談を元に、人間がどういう生き方を選ぶべきか、という視点が非常に示唆的で、刺激的なんです。彼女のプレゼンを多くの人が見れば、世界はもっと平和になるのにっ、とすら思ってしまいます。

他にも廃屋をコミュニティの活性化に利用した女性の話や、インドのエリート学校を卒業して、貧困にあえぐ村おこしに人生をささげた男性の話など、ここで繰り広げられるプレゼンテーションには、人生を豊かにする知恵がいっぱい詰まっています。ご興味のある方、ぜひ。

・TED:ジル・ボルト・テイラーのパワフルな洞察の発作
http://p.tl/74Qq


『メン・イン・ブラック3』(No.569/2012.12.07)
大好きなシリーズでありながら、何となく”予感”が働いて、劇場に見に行かずで終わってしまう作品というのがあります。最近だと『メン・イン・ブラック3』です。ということで、DVDで借りて見たのですが...ちょっと予感が当たっちゃったかも、という感じでした。
いや、基本的にはテンポもよくて、世界観や登場人物のキャラクターが出来上がっているので楽しめることは間違いないのですが、またまたエージェント”K”の物語、というところが、10年待った割には、という感じなんですよね。ファンとしては楽しいストーリーながら、どこかスケール感に欠けるというか。冒頭の悪役ボグロダイト星人・ボリスを収監した刑務所がいきなり月にあるのも、安易にスケール感を求めての結果に思えてしまいます。
その割りにこの悪役がいまひとつ迫力が無い。やっぱり1作目の”バグ”は強烈でした。実際、”K”を演じるトミー・リー・ジョーンズは60歳半ばで、アクションも難しいでしょうから、そういう意味では、練りに練られた脚本なのだとは思いますが。
それと、本作はシリーズ初の3D対応。3Dでは見ていないので、何ともいえませんが、例えばタイムスリップの方法などは、3Dあり気なのかなと邪推してみたり...。D-Movieで評価させていただくとしたら、やはり★3つかと。

それでも、若き日の”K”を演じるジョシュ・ブローリンのキャスティングとメイクがすごくて、どう考えてもトミー・リー・ジョーンズの若いときにしか見えなかったり、ウィル・スミス演じる”J”の物語もしっかり盛り込まれているところなど、しっかり楽しめる作品ではあります。CGもやっぱり進化していますからね。

それにしても最近のハリウッド映画は、昔のシリーズの復活や、リニューアルが多いですね。実は『アメイジング・スパイダーマン』や『ダークナイト・ライジング』も、ちょっといやな”予感”がした作品。DVDで見てみます。予感が外れているといいんですが。


『英国の水彩画』(No.568/2012.11.30)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の『巨匠たちの英国水彩画展』を見ました。マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵の作品が公開されたもので、英国の伝統と言われている水彩画の名画の数々が約150点ずらりと並ぶ、見所たっぷりの展覧会でした。
”ターナーからミレイまで 儚く美しき英国水彩画の世界”とサブタイトルにあるように、特にターナーの作品が充実しており、鮮やかな色彩と幻想的な雰囲気で表現された風景は、どこか夢の世界のような美しさを放っていました。

...で、こういった水彩画の巨匠たちによる作品はもちろんですが、私の心をわしづかみにしたのは、ウィリアム・ブレイクの作品でした。ウィリアム・ブレイクは17〜18世紀にかけて活躍した英国の画家・詩人で、今でもなお、多くのアーティストたちに影響を与え続けている人です。
映画や小説にもよく登場し、ジム・ジャームッシュ監督の『デッドマン』、レクター博士シリーズの『レッド・ドラゴン』などにも重要なモチーフとして登場します。
この水彩画展に展示されているとは知らず、会場内で突然異質な、それでいて強烈な印象の作品《『ヨーロッパ』図版1、口絵、《日の老いたる者》》の前に立った時、そしてその作者がウィリアム・ブレイクであるとわかった瞬間、思いっきり鳥肌が立ちました。まさか、こんなところで原画を見る事ができるとは。これぞまさに運命の”出会い”ですね。

ウィリアム・ブレイクの作品はもちろん、今回は点数も多いので、これまた後2回は行くと思います(笑)。会期は12月9日(日)までです。ぜひ。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/


『スターバックス物語』(No.567/2012.11.23)
先般少し取材させていただいた関係もあり、元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄さんの著書(『MISSION』/アスコム、『「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方/サンマーク出版、など)をずっと読んでいます。個人的には、もちろん嫌いではないものの、スタバ・フリークというほどではありませんが、同社の目指すもの、実践していることには大変共感できることが多く、多少なりとも店舗経営を行っている身には(規模的にはまったく違いますが)、非常に示唆に富む内容となっています。
簡単に言うと、企業の社会的責任とは何か、というような話なのですが、それにしても、岩田さんの語るスタバの店員によるマニュアルを超えたサービスのエピソードには圧倒されます。下手な映画よりよっぽど感動的。スタバ以外の企業の事例もたくさん出てくるあたりがフェアな感じ。もともと商売人の家に生まれ育ったので、特にこういう物語が好きだといこともあると思いますが。

...と思っていたら、2007年に出版されたベストセラーノンフィクション「ラテに感謝!(原題:How Starbucks Saved My Life)」の映画化権を、米ワインスタイン・カンパニーが獲得したという話が飛び込んできました。日本語版の副題は”転落エリートの私を救った世界最高の仕事”。大学卒業後、大手広告会社の役員にまで上り詰めた著者のマイケル・ゲイツ・ギルが、ある日突然解雇され、離婚して家族も失った後、60歳を過ぎてスターバックスの店員として一から働き始め、これまで知らなかった仕事や人生の喜びを見いだしていくという物語。
なんとなく、ここまでくると、スタバが絡んでの宣伝戦略に見えなくも無いですが...う〜ん、見てみたい気はします。それはともかく、自分の職業や、仕事のことで悩んでいる人にとって、岩田さんの本はおススメです。


『阿賀に生きる・ニュープリント』(No.566/2012.11.16)
新潟県を流れる阿賀野川。多くの発電所が立ち並び、”新潟水俣病”の舞台ともなった川です。地元の人たちからは親しみを込めて”阿賀”と呼ばれています。その”阿賀”に3年間にわたって住み込み、地域の人々を見つめ続け、フィルムに収めてきたドキュメンタリー映画『阿賀に生きる』が、ニュープリントで東京・渋谷ユーロスペースにて上映されます。
この映画が最初に上映されたのは1992年。当時ドキュメンタリー映画がロードショートして上映されるのはかなり異例でした。そういう状況もあってか、社会派の作品ながら大きな話題になった記憶があります。私も東京で見ました。公害病をテーマにしたドキュメンタリー映画でありながら、企業を悪とみなし、その所業を抉り出すというような鋭利さよりも、人々の生活や人生を丁寧に描写している様子が大変印象的だったのを覚えています。そうすることで、逆に病気の重さと問題の深さが浮き彫りになっていると思います。

監督を始めとする7人のスタッフが阿賀野川流域に住み、そこに住む人びとを3年間にわたって撮影した記録。田んぼを守り続ける老夫婦、川舟を造ってきた舟大工、名人と呼ばれる餅つき職人。さまざまな人々の暮らしは一見おだやかで幸せに見えます。しかしその人たちは、新潟水俣病の被害者家族でもあるのです。
問題解決の第一歩となるのは、まず知ること、だと思います。本作は、新潟水俣病だけでなく、他の公害や環境問題などにも通ずる普遍性を持っていると思います。今回は渋谷ユーロスペースを皮切りに、東海・関西地方でも上映されるようです。

・『阿賀に生きる』(http://kasamafilm.com/aga/


『大学許認可問題』(No.564/2012.11.09)
田中真紀子文部科学相が、来春新設予定だった3大学を認可しなかったことが大きな問題としてメディアに取り上げられていますが、結局、不認可を事実上撤回したようですね。もともと文科省の指導によって大学の設立に向けて動いていたわけですから、認可されないのはとんでもない話で、素人の判断でしかありませんが、対象となっている3大学はいずれも専門性が高く、認可するに値する気がしますので、もしそうであれば、ちゃんと認可されることを祈るばかりです。もちろん、今後の大学の新設に関してはさらに慎重論があっていいと思いますが。しかも最終的には「今回(の騒動が)逆にいい宣伝になって4、5年間はブームになるかもしれない」と語ったとか..。田中真紀子氏、相変わらずですねえ。

一応、専門学校で非常勤講師もやらせていただいていますので、大学・専門学校の教育についてはいろいろと考えるところもあるのですが、このところ、専門学校の方が面白いことができるのでは、と思っています。実際、専門学校に通う生徒の、1割近くが大卒らしいです。私の生徒たちでいえば、クラス20名のうち4名が大卒です。そういう人たちが、もっと実践的な技術を身につけたいと専門学校に入り直すわけです。若干、モラトリアム期間の延長では?と思うところもありますが、就職の厳しさが存在するのは事実で、そういう意味ではみんな必死にがんばっています。

もちろん、立派な人材を輩出している大学もたくさんありますし、専門学校も数は多いので、いろんなところがあります。もっと大きな枠組みで見ると、大学・専門学校の数、経営の問題も今後しっかり考えないといけませんし、そこでどういう教育をするかは将来の日本にとっても非常に大事な問題だと思います。うーん、文科相この人ではやっぱり不安...。野田総理、どういう判断を下すんでしょうか。


『233PRESS』(No.563/2012.11.02)
うちのギャラリー(世田谷233)では、うちを部室として活動するいろんなサークルさんがあります。着物用の小物を作る人たち、写真部、コミケ部、などなど。どれもお客さまが”立ち上げたいっ”といって作られたもので、活動内容によって、ギャラリーから部費をお出ししたり、いろいろとサポートをさせていただいています。
で、先日新たに立ち上がったのが、出版を目的とした『233PRESS』。出版といってもフリーペーパーとWebがメインで、コンセプトは「自分たちのつながりを通じて、いろんな場所に行って、いろんな人に会おう」というもの。
個人的に、フリーでいろんな人を取材するお仕事をさせていただいていて、その経験が今の仕事や、もっと大きく言えば人生にもものすごくいい影響を与えてもらっていると思うのですが、ギャラリーを立ち上げてからは、時間的な問題もあって、ちょっとインタビューの仕事が以前ほどできなくなっていたんですね。そういうこともあって、改めて原点に戻って、いろんな人に会うプロジェクトを始めようと。
ということで、サークルは基本的に部長やリーダーは、言いだしっぺの方=お客さまなんですが、このプロジェクトに関しては私が責任者となりました。

現在、いろいろと取材の話が動いています。こういうのをちゃんと形として立ち上げると、取材依頼なんかもいただけるんですね。面白いです。で、今、Webにアップしている最新記事は、元スターバックスCEOの岩田松雄さんの記事。私は直接取材に関われませんでしたが、今回の取材をきっかけにまたいろんなことに気づかされましたし、面白いことにもつながりそうです。やっぱり人を取材するのは楽しいっ。ぜひご覧ください。

・『233PRESS』(http://233.jp/press/


『スーパーマン転職?』(No.562/2012.10.26)
橋下徹大阪市長の出自に関する『週刊朝日』の連載を巡り、同誌を発行する朝日新聞出版の幹部が、24日に大阪市役所を訪れ、橋下市長への謝罪と連載の経緯を第三者機関で検証する意向を、市の担当者に伝えたとのこと。橋本市長が週刊朝日を鬼畜集団呼ばわりしてツイッターで謝罪したり、何かとメディアを騒がせていた問題ですが、結果的には週刊朝日側の敗北ということで落ち着きそうです。
まあ、一般的にはどっちもどっちと、冷めた目で見ている人が大半なのではないかと思いますが、出版社側が十分な調査や検証を行わずに記事にしたのだとしたら大問題ですね。IT技術の進歩により、雑誌・新聞をはじめとする紙媒体の凋落が叫ばれ続けていますが、やはりインパクトを求めての結果だったのでしょうか。媒体は何であれ、許されることではないと思います。

そんな折、アメリカから、スーパーマンの仮の姿、クラーク・ケントが長年勤めてきたデイリー・プラネット紙の記者をやめることになったという話が飛び込んできました。24日にアメリカで発売されるコミック最新号で「新聞がジャーナリズムではなく、エンターテインメントになっている」と同僚の前で抗議し、辞職するとのこと。作者のスコット・ロブデル氏がUSAトゥデー紙に語ったということです。最終的には自分の能力で地球を救うわけですから、仮の姿は何でも良いんじゃないかと思いますし、本当にそう思うなら、新聞記者として理想のジャーナリズムを貫けばいいんじゃないかと思いますが、やはりこれも世相を反映した結果なんでしょうね。ちなみにスーパーマンの次作は2013年夏に公開予定で、『インセプション』や『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督が製作を手がけるようです。これは楽しみ。

・『マン・オブ・スティール』
http://wwws.warnerbros.co.jp/manofsteel/


『こんな日本でよかったね』(No.561/2012.10.19)
相変わらず内田樹さんの本を読み続けています。内田樹さんは、フランス現代思想、映画、武道などなど、幅広い分野で活躍されている思想家です。個人的には特に日本の格差社会や教育問題について大変刺激をいただいています。ご自身のブログ『内田樹の研究室』でも、日々あらゆるテーマでさまざまな論説を展開されていて、またその多くが書籍として出版されています。ブログもずっと拝見しているのですが、この書籍が出版される度に買ってしまうんです。いや、”しまう”というのは失礼ですが、毎回タイトルのつけ方が秀逸なんですよね。『態度が悪くてすみません―内なる「他者」との出会い』『こんな日本でよかったね 構造主義的日本論』などなど。何か気になって頭から離れない(笑)。

内田先生の思想を読んでいて最もためになる(というか”楽しい”)のは、世間一般に”常識”とされていることや”正しい”とされている考え方などを、とりあえず疑ってみるという姿勢です。その振れ幅の広さから、何でもかんでも疑っているのではないか、という気さえしますが、多くの場合、最終的にはこちらの目からウロコが落ちる感覚を味わうことになります。今読んでいるのは『こんな日本でよかったね』の文庫本なんですが、ここにも『おむつは要らない』『少子化問題は存在しない』『自分の手で未来を切り開けるということはない』などなど衝撃的なフレーズがたくさん出てきます。しかしながらそのいずれもが荒唐無稽な話ではなく、非常に論理的に説明されているのです。
そもそもブログの内容を(多少加筆などはするとしても)まとめてどんどん出版する、というのはある意味”パンク”ですよね。ブログというメディアが流行りだした頃は、それが新しい書籍出版へのプロセスだといわれていたこともあったと思いますが、実際はネット上で無料配布しているものをまとめるだけで書籍として出版し、経済的に成立させるのは難しいですから。オープンな場から新たな価値を生み出す。ここにも先日コラムでご紹介した、グレイトフル・デッドのマーケティングに近いものを感じます。


『会田誠ドキュメンタリー』(No.560/2012.10.12)
”毒とユーモア”、”リアリティとファンタジー”、そんな両極を併せ持つ狂気あふれる作品で国内のみならず国際的にも評価されてきたアーティスト会田誠氏。そんな彼の作品製作のプロセスを追ったドキュメンタリー作品が11月10日(土)から日本で公開されることになりました。

渡辺正悟監督による『駄作の中にだけ俺がいる 会田誠ドキュメンタリー』です。2009年7月から2010年5月の個展開催まで、会田誠氏の日常に密着したドキュメンタリー。無数のサラリーマンの死体で出来ている山を描いた『灰色の山』の制作過程を追ったもの。会田誠氏の圧倒的な”こだわる姿勢”をまるごとカメラに収めた作品になっているようです。楽しみ。
会田氏の作品は、美術館のみならず、テレビ番組などでもたくさん紹介されていますのでご覧になった方も多いと思います。緻密な描写で社会性の強い作品もある一方で、とんでもなく脱力しているような作品もあります。そして本人もメディアによく登場されますが、まさに”芸術家”(どちらかと言うと駄目なイメージの方)という表現がぴったりな、どこか世間離れした風貌。ちなみにさまざまな分野のアーティストのドキュメンタリー作品シリーズ『≒』(ニアイコール)で会田誠氏が取り上げられた際、サブタイトルは”無気力大陸”でした...。そういうとらえどころの無さと作品のインパクトのある種のギャップも魅力です。

このドキュメンタリーの収録が終わってから10カ月後に、東日本大震災が発生。渡辺監督は、『灰色の山』をある種の「予見性」を持った作品として捉えているようです。個人的にはさすがに疑問を感じますが、会田氏の作品が常にさまざまな捉え方ができる振れ幅と多様性を持っていることは間違いないと思います。

作品詳細&公開スケジュールなどはこちらから。
・『駄作の中にだけ俺がいる 会田誠ドキュメンタリー』
http://aida-artmovie.com/


『デッドヘッズ』(No.559/2012.10.05)
1965年にジェリー・ガルシアを中心にサンフランシスコで結成され、ヒッピームーヴメントの象徴的なバンドとして人気を得、今なお多くのファンを魅了し続けるモンスター・ロックバンド。グレイトフル・デッド。
個人的にはもう少し下の世代なので、リアルタイムではあまり聞いていないのですが、1987年には『イン・ザ・ダーク』と言うアルバムをリリース、シングルヒットも飛ばしましたし、折に触れ聞いていたバンドではありました。熱狂的、とは言えないんですが、それでもグレイトフル・デッドの数々の伝説は他に類を見ないかっこよさで、憧れの対象であったことは間違いありません。

他のほとんどのバンドと違ってライブは録音OK、ファンがそのテープを交換し合ったとか、チケットは中間業者を通さずすべて自ら販売(熱狂的なファンが一番前を確保できる、無用な値上がりが無いなどなどいい面がほとんど)したとか、彼らのライブにくっついて巡業して生計を立てているグッズや飲食の販売を行っているファンがいる、などなど。本当に面白いエピソードに事欠きません。もちろん、ライブのクオリティの高さは言うまでもなく。

先日、そんな彼らからマーケティングを学ぼう、と言う書籍の日本語版を見つけて購入しました(日本語版初版は昨年12月)。その名もずばり『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社)です。著書はデイヴィッド・ミーアマン・スコットとブライアン・バリガンという、ファンの二人。渡辺由佳里さん訳の糸井重里さん監修&解説。糸井さんがどうやら日本語版の言いだしっぺのようですね。
本書の中で、まさに彼らがやってきたことが現代のビジネスモデルを先取りしていたことが証明されています。音源の販売ではなくライブで収益を上げていたことなどはその際たるもの。”フリー”や”シェア”の考え方をすでに取り入れていたことがすごい。取り入れていた、と言うのは間違いですね。彼らが発明した、と言っても過言ではないかも。
実は、私がやっているギャラリーも彼らの姿勢には少なからず影響を受けています。個人の発信力がこれだけ強度を持った今、店内の撮影や作品の撮影など、基本的にオープンに対応することで多くの人が自然に”宣伝”をしてくれる状況が生まれます。
ヒッピー・ムーブメントに対する評価はいろいろあるかと思いますが、少なくともコミュニティの形成が豊かな社会や経済の成長にいい影響を及ぼす、と言うのは、今の時代において重要な考え方のひとつであることに間違いはないと思います。


『シャッター音』(No.558/2012.09.28)
個人的にフリーで取材やインタビューの仕事をさせていただいていますが、取材時の撮影に関しても、出来る限りカメラマンさんにお願いするのではなく、自分で撮るようにしています(もちろん専門的な技術が必要なときは別ですが)。というのも、インタビューなどの時に、どうしても”シャッター音”が気になってしまうんですね。もちろん、カメラマンさんはいいショットを撮ろうと努力されているわけなのですが、インタビュアーとしての立場でいうと、シャッター音が無い方が嬉しい場合が多いんです。
自分で撮影するようになってから、このシャッター音がせずに、ちゃんとした仕事レベルの画質で撮れるカメラを探し続けてきました。ただ、一眼レフレベルの画質を求めると、基本的にシャッターも機械的に優れたものになりますから、実はこの手の条件を満たすカメラってなかったんです。
で、やっと見つけました。今月発売されたパナソニックの『G5』というミラーレス一眼カメラです。いや別に宣伝ではないんですが(笑)。このカメラは機械式シャッターと電子シャッターを選べるんですね。で、電子シャッターを選んで電子音を消しておけば、無音で撮影が可能!!!いや〜長かったです。コンパクトカメラでちょっと画質がいいのが出ると買い替え、デジ一でシャッター音が小さいと聞けば買い替え、何十台も渡り歩いてきましたが、その旅もやっと終わりそうです。
別に仕事じゃなくても、イベント撮影や、発表会などでも絶対に必要としている人はいるはず、とずっと思っていたんですが、ホント全然でなかったんですよ。もちろん、電子シャッターには動体を写すとちょっとゆがむなど、デメリットもあるからなんですけどね。同じようにお考えだった方にはオススメです。
とはいえ、これからこの手のカメラが増えてくるのだとすると、それはそれで悩むのかも(笑)。画質はさらにいいに越したことはありませんからね。後、デジ一だからレンズ交換が出来るのでレンズも欲しくなるかも..。


『ポケット・ゴルゴ』(No.557/2012.09.21)
最近、さまざまなメディアで昔の漫画やアニメの名作(「巨人の星」、「アルプスの少女ハイジ」などなど)がキャラクターとして使われています。過去の遺産の再利用といえなくも無いものの、特定の世代への受けを狙ったということでは意味があるのでしょうが、あんまり目に余ると、安易に映ってしまいます。コンビニなんかでのコラボもそうですね。大体こういうのって、本来ならそのキャラクターが絶対やらないことをやったり、言ったりしていますから、純粋なファンは複雑な気持ちかも。
このところ目にしたのが「ゴルゴ13」。一匹狼の超一流スナイパーが世界を舞台に暗躍する漫画ですが、個人的に原作の大ファンだけにこれはちょっと複雑。まあ、それでもいまだにそうやってメディアに登場すること自体、名作の証なんでしょうね。

ゴルゴ13の漫画は何度もいろんな形式で出版されていまして、おそらく今一番安いのがコンビにでも販売されている”ポケットエディション”。A6サイズのまさにポケットサイズ。1冊に大体3話入って350円。税込み。これがちょっと買いやすくてやばいパッケージなんですよね。こういうのは大歓迎。夜遅くまで仕事をした後、ちょっとコンビニで買い物って時にふと手に持ってしまうんです。ずっとシリーズが登場し続けていますから、売れているんじゃないでしょうか。同じような人が多いのかも(笑)。
私も気が付けば、40冊ほど買っていました。ゴルゴの場合、同じ話でも何度読んでも面白いのでさらにやばいんですよね。小さいから場所もとらないとか、自分を納得させたり(笑)。
原作の方は1968年から雑誌に連載開始。以後今でも連載が続いているモンスターヒット。リイド社より発行されている単行本は2011年12月の数字で160巻を超え、文庫本は130巻を超えているそうです...。まさに日本のハードボイルド漫画の金字塔。ポケットエディションの購入もまだまだ止まりそうにありません。
ちなみに作者のさいとう・たかを氏は、主人公ゴルゴ13のモデルは高倉健さんだと語っていますね。実際に高倉健主演で1973年に実写版ゴルゴが映画化されました。いずれ「D-Movie」でもレビューするかもです。


『ムソルグスキーの肖像』(No.556/2012.09.14)
ただいま東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会『国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展』。国立トレチャコフ美術館に所蔵されている近代ロシア絵画の巨匠・レーピンの素晴らしい肖像画や歴史画をたっぷりと堪能できる貴重な展覧会です。
先般、こちらのコラムで、ブロガーさん向けのイベントをご案内させていただきましたが、お手伝いも含めて鑑賞したのと、さらにその後の回も含めると都合3回観たことになります。いやでもまだ見たいです(笑)。それぐらい圧倒的でした。
代表的な作品の一つにムソルグスキーの肖像画があるのですが、これがムソルグスキーの亡くなる10日前にかかれたものだそうで、レーピンはこの天才作曲家の不遇の晩年を徹底的に冷めた視点で描いています。アルコール依存症だからか鼻も赤く染まっていますし、目もうつろ。時代や国が違えば、天才としてもっと厚遇されたかもしれません。そういった背景までもレーピンは描き出しています。しかし、個人的には、そういう時代を背負いながらも、絵の中のムソルグスキーは稀代の存在感、オーラを放っている気がします。その絵の大きさもあって、しばらく前から動けませんでした。他にもレーピンの代表作と言われる作品がいくつも展示されています。そしてどれも圧巻。本当にこういう画家が日本であまり知られていないのはもったいないと思います。今見なければ、次はいつ見られるか...。
『レーピン展』は10月8日(月・祝)までの開催です。ぜひお見逃しなく。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/


『顔フォト!2012』(No.555/2012.09.07)
今年で3回目となる『顔フォト!コンテスト2012』。9月1日より募集開始となりました。”顔フォト”とは、カバンの止め具や蛇口などなど、日常の中に偶然存在する”顔”を写真に撮って送っていただくコンテスト。さまざまな企業の方から、サーバをご提供いただいたり、賞品を協賛していただいたりして、毎回300通を超える応募をいただき、盛り上がっています。大感謝。

毎回このコラムでもご案内させていただいているのですが、コンテストの目的は、ズバリ『日常を楽しくする』ということ。普段見過ごしてしまっている日常の中に潜む”顔”。ちょっと視点を変えてみるだけで、これらの顔を発見することが出来ますし、それだけでちょっと楽しくなります。写真自体のクオリティなどはほとんど問いませんので、敷居が低いこともポイント。視点を変えるだけで、世界は変わりますっ。私もほとんど毎日”顔フォト”を撮っていますがホント楽しいっ。

今回も富士フイルム、ロモグラフィーをはじめ、たくさんの企業の方々に賞品をご提供いただいて賞品も盛りだくさん。上位3賞(金賞、銀賞、銅賞)は私を含め”顔フォト”関連の5名で協議をして決定させていただきますが、協賛いただいた賞品は、それぞのれ企業の担当の方が、直接好きな顔フォトを選んでくださいます。なので、どんな作品でも賞品を獲得する可能性があります。そういう意味でも楽しいコンテストとなっております。ぜひ、ご応募ください。

・『顔フォト!コンテスト』詳細&応募はこちら↓↓↓
http://kao-photo.petit.cc/


『アナログ・レコード』(No.554/2012.08.31)
最近、またアナログ・レコードの人気が徐々に高まりつつあるようです。中高年世代があらためてオーディオにこだわるのはもちろん、若手のロックバンドでもシングルをデジタル音源やCDではなく、あえてアナログ・レコードでリリースするケースなんかがあるとのこと。まあ、便利かどうかという基準ではなく、音域の広さや独特の味わい、みたいなもので判断するのであれば、デジタルもアナログもそれぞれにいいところがあるわけですから、どこに着目するか、ということなんでしょうね。

もともと海外では、アナログ・レコードの需要はそんなに減っていないそうです。ネット配信への移行が急激に進んだ結果、アナログのまま聴くか、すべてデジタル音源に変えるかの二極化が進んだ感じなのでしょうか。映像ソフト販売を集計するNielsen SoundScanによると、アメリカでの2011年のアナログレコードのアルバム販売は前年比36.5%増加(350万枚以上)。ネット通販の「Amazon」でもかなり前から「アナログレコード」コーナーが作られていますしね。日本でも、日本レコード協会によると、2011年のアナログレコードの生産数量は21万枚で10年比でほぼ2倍に増えたそうです。
私たちアラフォー世代は、どちらかというとレコードよりCDで聴いている時間が長いですが、もっと若い人はCDよりデジタル音源の方が身近なのでしょう。そういう人たちが、ただ聴ければいい、ということではなくて、音楽に”モノ”としての価値を求めるなら、CDよりアナログ・レコードに傾いても不思議はありませんね。

うちのギャラリーでも『アナログ・レコードの会』というイベントをやっていますが、新しい曲は別として、昔の曲だとCD化や音源化がされていない楽曲もありますから、そういう意味で幅広い年代の人たちや異なったジャンルの音楽が集まるので楽しいんですよね。で、個人的にもレコードを買う機会が増えたのですが、新作などはレコードの方が高いんですよね...。それがちょっと悩み。

『ヒーロー大集合』(No.553/2012.08.24)
『X−メン』(2000)や『スパイダーマン』(2002)など、数多くのアメリカン・コミックスをベースにした映画を製作し、ヒット作を飛ばし続けているマーベル・スタジオが、ヒーロー全部入りとして世に送り出したのが『アベンジャーズ』。現在日本でも公開中。興行成績で1位になるなど、かなりヒットしているようです。
個人的にもマーベル・スタジオの作品は嫌いではなく、『X−メン』シリーズや『スパイダーマン』シリーズ、『デアデビル』(2003)など、結構よく出来ていると思います。
しかし『アベンジャーズ』に関しては、アイアンマン、ハルク、マイティ・ソー、キャプテン・アメリカなど、マーベル・スタジオのヒーローが集結。一見、とんでもない発想が面白そうなんですが、ソーにいたっては神ですし、話自体もファンタジー。何か無理がありそうな気がしますね。そもそも一人では倒せない敵が現れた時点でそれぞれ個別のエピソードが成立しなくなるパラドックスのような気がするんですが...。

それでも興行収入は北アメリカで5億ドルを、全世界では13億を超えたそうで、映画史上12作目となる世界興行収入10億ドル超え作品となったようです。やっぱりヒットしているんですねえ。
そういわれると、見てみようかとも思いますが、マーベル・スタジオのこれからの新作スケジュールだと、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ』、などの作品の続編が作られるとのこと。『アベンジャーズ』との整合性など大丈夫かといらぬ心配をしてしまいます。しかもその『アベンジャーズ』も続編が考えられているそうですから、もうわけがわかりません(笑)。かのスパイダーマンも、リブートと称して新しいシリーズ『アメイジング・スパイダーマン』が始まりましたしね。
そういう意味では漫画の世界は何でもありなのでしょうか。まあアメコミのファンも”ネタ”として楽しんでいるのでしょう(どちらかというと私もその一人ですが)。こういう”変化”や”リセット”みたいなものが受け入れられるのも、やはり確定的なものが少なくなった今の時代だからこそなのかもしれません。

・『アベンジャーズ』公式サイト
http://www.marvel-japan.com/movies/avengers/home.html


『レーピン展』(No.552/2012.08.17)
ただいま東急Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の展覧会『国立トレチャコフ美術館所蔵 レーピン展』。ロシア革命に至る激動の時代を生き、近代ロシア絵画の旗手として素晴らしい肖像画や歴史画を残した写実主義の画家イリヤ・レーピン(1844−1930)の作品を集めた貴重な展覧会です。日本ではまだまだ知られていない画家ですが(個人的にも全然知りませんでした)、今回は日本における過去最大の本格的な回顧展とのこと。必見です。

で、レーピンの魅力をより身近にわかりやすくしてくれるイベントが開催されます(ちょこっと裏方としてお手伝いする予定です)。人気アートブログ”青い日記帳”とザ・ミュージアムとのコラボイベント『ブロガー・スペシャルナイト』です。ブログやTwitter、facebookなどで、レーピン展のレビューや感想を発信していただける方ならどなたでも参加可能っ。ご出演いただくのは、山下裕二氏(明治学院大学教授)と籾山昌夫氏(神奈川県立近代美術館 主任学芸員)。さらに人気アートブログ「青い日記帳」主宰のTak氏をナビゲーターに交え、”レーピンの魅力を語る”座談会を開催。イベント参加者には貸切鑑賞会+お土産付です!通常、美術館で開催されるトークショートは一味違う楽しさが詰まったイベントになると思います。さらに詳細&ご予約は以下のサイトからどうぞ。

・東急Bunkamuraザ・ミュージアム−イベントサイト
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_repin/index.html


『イケメン落語家』(No.551/2012.08.10)
うちのギャラリーで毎月第2水曜日の夜20時から『233落語ナイト』という落語の寄席をやっています。おとといの水曜日が開催日で、第88回目。演者は古今亭菊六さんと古今亭志ん吉さんのお二人。それぞれ演目は『七段目』と『金明竹』。楽しませていただきました。
この233落語ナイトは”真打(しんうち)”(落語家として一人前の証。お弟子さんがとれます)になる前の”二つ目(ふたつめ)”という位の若手の方6名でシフトを組んで演じていただいています。古今亭菊六さん、柳家喬之進さん、柳家わさびさん、入船亭遊一さん、春風亭正太郎さん、笑福亭羽光さんの6名です。一応真打になったら卒業、ということで、古今亭菊六さんは9月に真打ちに昇進されるので今回が最後でした。以降は志ん吉さんとバトンタッチされるので、その引継ぎもかねて一緒にお願いした次第です。

菊六さんはうちの寄席の中でも一番の実力派でした。落語の技術が高いだけでなく、声も良いし、何よりイケメンっ。学習院大学を卒業されている経歴からか、どこか上品さを感じさせる佇まい。菊六さんが落語ナイトからいなくなるのは寂しいです...。とはいえ、真打ちになるのはおめでたいこと。将来の古典落語を担う若手としても注目されています。落語に興味のある方、ぜひ菊六さんの寄席に足を運んでみてください。個人的にも若手では一押しの人です。古今亭菊六さんは9月より古今亭文菊さんを襲名されます。9月21日より真打昇進披露興行も始まります。詳細は文菊さんのサイトからどうぞ。

ちなみに菊六さんの後を継ぐ志ん吉さんは初めて聞きましたが、なかなか落ち着いていて聞きやすかったです。そしてまたイケメンっ。志ん吉さんも早稲田大学卒という立派な肩書きをお持ちの方。最近の若手落語家さんは半分ぐらいか大卒です。そういう時代なんですねえ。

・233落語ナイト
http://233rakugo.nobody.jp/


『ロンドンオリンピック』(No.550/2012.08.03)
先月の27日にロンドンオリンピックが開幕しました。現地との時差があるので、日本でのテレビ放送で、競技が盛り上がるのは大体夜の12時以降。眠れない日々が続きますねー。日本のお家芸だった柔道や体操で金メダルを獲得するなど、日本人選手のメダルもエンジンがかかってきた感じがします。意外な人がメダルを獲ったり、確実と思われていた人が逃したり、やはりオリンピックには本当にいろんなドラマがあって楽しいですね。

一方で、”誰もがそれに則るべし”というルールが存在せず、点数によって勝敗が決まることもない『アート』の世界は、自由でありながら不自由である、そんな世界のような気がします。アーティストとして世界を目指す、といった場合、明確なルールは存在しない分、作品製作や販売なども、自分のやりたいように行う事が出来ますが、誰かが点数をつけてくれるわけではありませんので、何かしらの大会や基準を満たせば、世に出る事が出来る、作品が売れると言うわけではありません。プロのスポーツ選手としてやっていくには、それなりにフィールドや業界がちゃんと存在し、このくらいの実力ならこのぐらいの収入、みたいなある種のマーケットもあります。アートの場合もなくはないですが、作品の値段からしてほとんど基準が存在しません。
年齢的にも制限はほとんどありませんので、ずっとプロを目指して活動するということも可能です。逆に、”自分はこの道でプロフェッショナルにはなれない”という判断も基本的には自分で自分なりに下すしかなく、それはそれで難しい世界であると思います。もちろん、どちらがよいと言うことではありません。
いずれにしても、オリンピック期間中は、みんなが認識している共通のルールの中で、技術や点数を競う世界だからこそ生まれるドラマを楽しみたいと思います。がんばれ、日本。


『絵本のチカラ』(No.549/2012.07.27)
前々回のコラムでご紹介した、東急Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催されている『スイスの絵本画家 クライドルフの世界』展。毎回、展覧会にあわせて開催される企画『ミュージアム・ギャザリング』の最新記事がアップされました(スタッフとして関わらせていただいています)。今回のゲストは神奈川県相模原にある絵本館『よちよち屋』の店主・中本茂美さん。日ごろから絵本に関わるお仕事をされていらっしゃる中での経験やクライドルフの魅力などについてスタッフと一緒に”雑談”していただきました。

中本さんのおっしゃる、素晴らしい芸術に”子供向け”も”大人向け”もない、というお言葉、本当にその通りだと思いました。自分がギャラリーを運営しているからという部分もありますが、年齢に関係なく人を感動させる芸術というのは本当に難しいし、素晴らしいと思います。もちろん、ここでは、主に”絵本”というメディアの作品についておっしゃられているんですが、どういうメディアの作品にも当てはまると思います。最も驚いたのは、途中、絵本の読み聞かせを行っていただいたのですが、本当に絵が動いて見えたことっ!!!感性の鈍い私でも、素晴らしい絵本の素晴らしい読み聞かせでは、何かしらを感じとる事が出来たようです。
ヘ?フ ̄ツ?メニヨ{ツ?ツ?ツ?ネ?ラpツ?ツ?ツ?テAテチテハテJツ?ハCラmミ?ユ?ハwホ?テフテCテ`テFテヒチEテJチ[テ\テモの言葉がグッときます。

”「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない。また、もしもわたしが、すべてのこどもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」をさずけてほしいとたのむでしょう”(『センス・オブ・ワンダー』より)

感情や価値がどんどん可視化されて、課金されていく世の中で、失われつつあるもの、それが”目に見えないもの”。つまり、私たちの感覚でしか捉えられないものだと思います。この感覚を養う最も近道が、素晴らしい芸術に触れるということ。クライドルフ展、今週末までです。

・ミュージアム・ギャザリング『スイスの絵本画家 クライドルフの世界』
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/guest/index.html


『10万人デモ」(No.548/2012.07.20)
今月16日(月・祝)、に『さようなら原発10万人集会』と銘打った脱原発集会が、東京・代々木公園で開催されました。同集会は、作家の大江健三郎氏やミュージシャンの坂本龍一氏らが、原発の存続に異議を唱え、”10万人目指して集まろう”と呼びかけたもの。内容はデモ行進のみならず、トークイベントやライブも行われたそうです。結果的には(主催者発表ですが)17万人集まったとのこと。
個人的にも関心のある企画ながら仕事の都合で行けませんでしたが、知人が参加し、終了後に、デモで知り合ったフランス人とうちのお店に遊びに来てくれたので、いろいろと報告を受けたり、意見交換を行ったりしました。主催者発表なので、参加人数の信憑性は多少疑問も残りますが、それでも会場が参加者で埋め尽くされたことに変わりはなく、まあよかったと思います。

知人は日本人なのでデモは初参加でしたが、フランス人は若い男性で、やはりさまざまな内容でデモに参加経験があるとのことでした。彼が最も残念がっていたのは、今回のデモに若者の参加者が少なかったこと。これからの未来を担う若い人にも多く参加してほしかったとの思いがあるようです。その場にいらしたお客さんたちと一緒に、なぜ若者がデモに参加しないのかを意見交換したところ、やはり無関心なのではないかとの意見が多数でした。ただ、今回の一連の原発の事故や再稼動の問題などは、世代に関係なく被害や負担を被っている出来事なので、若い人たちが関心が無いとは思えません。”関心”はあるけれど、何をやっても政府や巨大企業の思惑通りにしか物事が進まない、という”諦め”があるとしたら、それこそ本当ににやばいのではないかと思いますが...。


『クライドルフの世界」(No.547/2012.07.13)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムにてスイスの絵本画家クライドルフの展覧会『クライドルフの世界』展が開催されています。日本ではあまりなじみの無い画家さんですが、スイス国内はもとより、絵本の世界では非常に有名な方。展覧会を拝見しましたが、本当に素晴らしい作品ばかりでした。
植物や昆虫、花など、小さな生き物たちへの優しいまなざしと精緻な描写が印象的で、作品の中ではさまざまな生き物が擬人化されていて、ファンタジックで楽しいです。こういう作品を描く方で男性は珍しいのではないかと思いますが、細かなディティールにこだわっているあたりはやはり”男の子”の感性かと。基本的には絵本の挿画なんですが、その絵本のストーリーを飛び越えて、一枚の絵からいろんな物語が見えてきます。”絵本”という媒体になじみの無い人にも全く問題なく楽しめますし、引き込まれること間違い無しです。

ちなみに、私が講師を務めさせていただいている日本デザイナー学院のシブヤプロダクツ科にて、当展覧会のサブイベントのワークショップなどを企画させていただきました。ワークショップは終わってしまいましたが、お子様向けの無料ワークブックの配布と、クライドルフが描いた花を擬人化した作品の顔の部分に穴が開いている、大きな写真パネル(温泉地によくあるような顔を出して遊ぶパネルです)は展示中です。ご来館の際はぜひパネルに顔を出して写真を撮って遊んでください。ツイッターやフェイスブックなどへのアップも大丈夫ですので。

・『クライドルフの世界』
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf/index.html


『45周年記念」(No.546/2012.07.06)
先月、『日曜洋画劇場』45周年記念として特集が組まれ、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』と『ダークナイト』が連続で放送されました。地上波初放送。まあ両方とも劇場でもDVDでも見たのですが、やっぱり見ました。

テレビ放送ですから、すべて日本語吹き替え。...これ本当に大事なんですよね。で、『インセプション』でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公コブの相棒アーサーの吹き替えが.....ごめんなさい。でもみんな思ったんじゃないでしょうか。
それに比べて、『ダークナイト』のヒース・レジャー演じる悪役ジョーカーの吹き替えの素晴らしいことっ。日本語吹き替えの楽しさを堪能しましたっ。ちなみにコブ役を演じた浪川大輔さんとは、昔浪川さんのラジオ番組のゲストとしてご一緒させていただいたことがあります。最近本当に活躍されていますね。

あらためて2作をみて、渡辺謙&ヒース・レジャーの演技の素晴らしさにうっとりしてしまいました。ヒース・レジャーの演技がもう見られないのは本当に残念。アメコミの実写映画化の中では、ティム・バートンが監督したバットマンの第1作はよく出来ていると思うのですが、全編にわたってリアリティを与えているのがジャック・ニコルソン演じるジョーカーでした。かの怪優の怪演ぶりも見事でした。そしてその演技を超える(というか、悪と善を一緒に背負ったまったく別のキャラクターと言っても良いかもしれません)キャラクターが登場しようとは。ヒース・レジャーが生きていたら今頃は大スターとして君臨していたでしょうね。ジョニー・デップも危うかったかも。
今月28日からいよいよ『バットマン ダークナイトライジング』が公開されます。これもまたクリストファー・ノーラン監督で、本シリーズが完結するとのこと。これは絶対見逃せませんね。

・『ダークナイト ライジング』公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/index.html


『株主総会」(No.545/2012.06.29)
6月27日(水)多くの企業の株主総会が開かれました。個人的にもいくつかの企業の株を有しているため、時間があれば行きたいのですが基本的に仕事があるのでなかなか...。最も気になるのはソニー。今年の6月4日には1980年以来32年ぶりに1,000円を割り込む始末。ソニーが元気な頃に株を購入した人間にとってはほとんど紙くずに等しい価格なんですが...まあしょうがないです。
オリンパスとの提携などもささやかれていますが、将来に希望は感じられませんねえ。現在の社長・平井一夫氏は、今年の4月に社長就任時に「ソニー復活を象徴するような、世界中をあっといわせるような魅力的でイノベイティブな商品・サービスを市場に投入する」と宣言しました。何か...思い出すと空しい...(苦笑)。

それより、当日最も話題になったのは東京電力をはじめとする電力会社の株主総会ですね。東京電力の株主総会には約2.7%の株式を保有する筆頭株主である東京都の猪瀬副知事が出席、関西電力の株主総会には約8.9%を持つ大阪市の橋下徹市長が出席。いずれの総会の様子もテレビの報道を見ただけですが、電力会社側の対応がまあひどい。予想されていたこととはいえ、本当に良識のある人間の対応とは思えませんね。全員がそうではないはずですが、少なくとも経営陣はあきらかに原発問題について本気で考えているとは思えません。国有化はやむをえないとしても、電力供給に関しては、本来なら、”いかに脱原発を進めるか”ということを議論していなければならないはず。電力も値上げ、原発の被害も最終的には税金、おまけに政府が全力を挙げて進める政策は消費税アップ...。ありとあらゆる希望やモチベーションが国民から奪われている気がします。
原発事故の被災者である株主の方が、「寄り添うと言うなら、福島に本社を移したらどうでしょうか」と提案したそうです。ほとんどあきらめの境地から口を付いて出た一言だと思いますが、本当に検討してほしい。


『ハリウッド女優番付」(No.544/2012.06.22)
19日のロイターによると、米フォーブス誌の電子版にて発表された最新のハリウッド女優の所得番付では、現在日本でも公開中のグリム童話「白雪姫」を映画化した『スノーホワイト』の主演女優クリステン・スチュワートがトップになったそうです。
同誌は2011年5月〜12年5月までの収入を調査。スチュワートは3450万ドル(約27億円)を稼ぎ、2位には3400万ドルでキャメロン・ディアス、3位はサンドラ・ブロック。前回1位のアンジェリーナ・ジョリーは4位に後退とのこと。ハリウッド女優界も世代交代でしょうか。
クリステン・スチュワートってあんまり印象になかったのですが、調べてみると、『パニック・ルーム』(2002)の子役だったんですね。そういわれるとなかなか印象を残していたかも。他にも当サイトでも紹介した『コールド・クリーク 過去を持つ家』(2003)などにも出演していました。派手さはないものの堅実な演技で地位を獲得、ヴァンパイア・ロマンスを基にした『トワイライト』シリーズでブレイク、『スノーホワイト』も大ヒットというところでしょうか。最初に子役で注目された『パニック・ルーム』では、主演がニコール・キッドマンからジョディ・フォスターに急遽交代、その際に娘役も当初キャスティングされていたヘイデン・パネッティーアからクリステンに代わったらしいので、しっかりと”運”も持ち合わせているのかもしれません。今後も注目ですね。
ちなみに、男性俳優の1位はレオナルド・ディカプリオが7700万ドル(約60億円)でトップでした。ファンの方には申し訳ないですが、個人的にディカプリオがだめなんですよね...。どこかいつまで経っても幼さが抜けきれない感じがして。先日民放で『インセプション』を放送していましたが、本当に素晴らしい作品だと思うものの、主人公が大好きなエドワード・ノートンだったらなあと...。そういえば、彼の活躍を最近耳にしないのが残念。


『検証 原発事故報道」(No.543/2012.06.15)
日本で唯一のフォト・ジャーナリズム雑誌『DAYS JAPAN』の4月増刊号として発売された『検証 原発事故報道〜あの時伝えられたこと』。2011年3月11日地震発生後から17日までの間に、テレビや新聞、ツイッターなどのメディアによって発信された報道を時系列で見開きページにひと目で分るようにした一冊。”他の検証本には見られない、そのとき、そのとき、あの報道がすぐに探せる使いやすさと、ツイッターまで網羅した情報の幅広さ”(PR文より)は非常に貴重な文献であると思います。発行後、売り切れ状態が続いていましたが、その後増刷され、今もまだ注文可能のようです。個人的には6月13日(水)に注文しました。※注文はコチラ→http://goo.gl/qCaQ5

当時、さまざまなメディアで報道される内容は錯綜し、いったい何を信じたらよいのかわからない状況になったのは、おそらく日本国民のほとんどが経験したことではないかと思います。肝心の政府の発言が全く信じられないのですから無理もありません。先日の時事通信のインタビューにおいて、当時首相だった菅直人氏は、当時の政府の対応を振り返り、東京電力福島第1原発事故への対応について「備えがなかったという意味で大失敗だった」と発言していました。
大飯原発の再稼動についても連日いろんなメディアで放送されていますが、政府・電力会社・地域それぞれに思惑があり、単純に原発ゼロを推進する事が日本経済にとって本当に良いことかどうかはいろんな角度から検証する必要があるでしょうし、その結果もさまざまでしょう。しかしながら、日本人がまた”被爆”した、ということは動かしようの無い事実です。この事実は絶対に置き去りにされてはならないし、忘れられてはならないと思います。私たちは、”絶対に繰り返してはならないことを繰り返してしまった”のです。その時の動揺がメディアを通してどう広がったのか、伝わったのか。個人的に見つめ直してみたいと思います。


『美の理想」(No.542/2012.06.08)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催中の『レオナルド・ダ・ヴィンチ美の理想』展を観ました。『モナ・リザ』や『最後の晩餐』などの歴史的傑作によって世界的に知られる巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの作品や、弟子との共作、弟子やレオナルド派と呼ばれる画家たちによって描かれた作品など合計80点近くの作品が展示されています。
中でも目玉は、展覧会のポスターにも使用されている、日本初公開となる傑作『ほつれ髪の女』。小さな作品ですが、その美とやさしさにあふれる聖母のような表情、立体感のある描写など、素晴らしい作品です。さらに、彼の作品という文脈のみならず、美術史上に残る傑作といわれる『モナ・リザ』の、もう一つのダ・ヴィンチ作ともいわれた『アイルワースのモナ・リザ』も日本初上陸。特にこのコーナーには他にも『モナ・リザ』作品がいくつか展示されていて圧巻。こんなにあるとは知りませんでした。
他にも貴重な作品が展示されていますし、『モナ・リザ』をダ・ヴィンチが描いたといわれる根拠となった旅行記なども展示されています。『ダ・ヴィンチ・コード』など映画化もされるほど世界的な人気を集める巨匠の作品と人物像。見れば見るほど、知れば知るほど謎多き人ではありますが、それがまた彼の魅力であることは間違いありません。今月10日(日)までの会期ですが、まだ数日ありますので、まだご覧になっていない方はぜひ。

ちなみに毎回展覧会にあわせて、いろいろなゲストの方にお越しいただいて”雑談”を行うミュージアム・ギャザリングという企画をお手伝いさせていただいているのですが、そちらの記事もアップされています。今回はマドンナやレディ・ガガなどの大スターからのオファーもあるファッション・デザイナーの廣川玉枝さん。楽しいインタビューとなりました。こちらもぜひご覧ください〜。

・『ミュージアム・ギャザリング』
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/index.html


『8mm上映会」(No.541/2012.06.01)
うちのギャラリー233では、いろんなイベントを開催したりお手伝いしたりしているのですが、233からスタートして、今、都内各所を巡回しているのが8mm上映会『! 8 - exclamation 8 vol.1 -』です。
”Spice Films”という若手映像作家の3人によって結成されたプロジェクトが主催、国内外で注目される8mm映像作家を一堂に集め、良質なフィルム作品をいろんな方に見ていただくことを目的としたイベントです。
彼らは撮影はもちろん、現像も自分たちで行い(まあ、そもそも8mmフィルムを現像してくれるところがもうほとんど無いんですが)上映会やワークショップなども手がけています。

フィルム映像の質感はもちろん、参加されている作家さんの年齢が幅広いので、昭和を感じさせるものもあれば、現代的で実験にあふれた作品もあります。個人的には映画が好き、言い方を変えると映画館が好き、という部分もありまして、、やはり映写機がカタカタ音を立てながら映像を映し出している雰囲気だけでも楽しいです。巡回展は半分が終了しましたが、6月と7月にそれぞれ1回ずつ行われますのでぜひご覧ください。詳細は以下のホームページからどうぞ。

ちなみに、今週その主宰者の一人がギャラリー遊びに来てくれまして(海外の上映会にも頻繁に招待されている作家さんです)、なぜか8mmカメラとフィルムを手渡され、「撮ってみます?」と。ここまでされて断るのも野暮なので、その場で了解してしまいました。いや、8mmカメラは何度か触ったことはあるのですが、実は撮影は始めて。しかもフィルムで撮り直しがききませんし、3分程度の短さ。その時は嬉しかったけれど、渡されてから何をとろうか悩む日々となりました(笑)。でもこの緊張感と高揚感がフィルムというアナログメディアのなせる業なんですよね。さて、いやホントに何を撮ろう。

・Spice Films:http://spicefilm.blog.fc2.com/


『ルーツ・オブ・レジェンド」(No.540/2012.05.25)
先般、最も敬愛するミュージシャンのボブ・マーリーの言葉を集めた書籍をご紹介しましたが、今年の9月にボブ・マーリーの生涯を綴ったドキュメンタリー映画『ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・レジェンド』が日本公開されることになりました(アメリカ・イギリスでは4月に公開済)。

この作品は、ボブ・マーリーの生涯を、遺族らのインタビューやプライベートな映像によって構成した、初のオフィシャル・ドキュメンタリーだそうです。監督は『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』(2006)でアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した経験もあるケヴィン・マクドナルド。
“レゲエ”という音楽ジャンルを作り上げ、世界に広めたミュージシャンでありながら、さらに、そういったジャンルを超えて世界的に尊敬を集めるカリスマ。その実像が描かれているとのことで、期待値MAXですね。息子のジギー・マーリー曰く、「父を描いたものが多数ある中で、この映画の何が素晴らしいって、伝説のレゲエ・ミュージシャンとしてではなく、一人の男として父を描いているところだ。そこに、人々は感情的に惹き付けられると思う」。ジギーがそう言うなら間違いない(笑)。

日本公開に合わせて、先週末に行われた『ワンラブジャマイカフェスティバル2012』というイベントで、映画の前売り券が独占先行発売されたそうなんですが、そちらもかなり盛り上がったようです。その時の様子がこちらに少しアップされています。いやー、楽しみ。
・公式facebook:http://www.facebook.com/bobmarley.rootsoflegend


『地球の上に生きる』(No.538/2012.05.18)
日本で唯一と言われている写真報道雑誌『DAYS JAPAN』。現在、新宿のコニカミノルタプラザにおいて特別企画展として、フォトジャーナリズム写真展『地球の上に生きる2012』を開催しています。雑誌『DAYS LAPAN』はうちのギャラリーでも定期購読中。先日、写真展を見てきました。

内容は、”戦争、災害、環境汚染など地球の真実の姿を伝える世界のフォトジャーナリストたちの作品の数々を展示いたします”とのことで、『DAYS JAPAN』が毎年開催している『DAYS国際フォトジャーナリズム大賞』の受賞作品などを展示しています。また、今回の写真展では、『DAYS JAPAN』が追い続けている、東日本大震災と福島第一原発事故の被災者たちの姿をさまざまなジャーナリストが捉えた写真も展示されています。
昨年12月に三軒茶屋にて開催された同企画の写真展から半年ぶりでしたが、相変わらず世界各地で行われている民族紛争や市民たちの闘い、貧困の様子など、現場の空気と緊張感がまっすぐ伝わってくる写真が並んでいます。

特に今回は、被災地での写真が数多く並べられており、そういう意味では、あらためて自然対人間ではなく、人間対人間の恐ろしさを感じさせられました。もちろん、被災地を襲った自然の脅威を収めた写真からは、私たちが抗うことの出来ないものに対する恐怖、不安、絶望があります。しかしながら、中にはしっかりと希望や未来が感じられる写真もあります。そして実際に、私たちは復興に向けてそれぞれがそれぞれにやれることを行っているはずです。
しかしながら、世界の問題に目を向けると、そこで行われているのはほとんどが人間が人間に対して行っていること。その恐怖と無意味さを感じずにいられませんでした。まずしっかりとメッセージを受け取ること、この写真展の意味はそこにあると思います。詳細は以下の『DAYS JAPAN』公式サイトよりどうぞ。

【DAYS JAPANフォトジャーナリズム写真展『地球の上に生きる2012』】
・日時:2012年5月4日(金)〜21日(月)入場無料 10:30−19:00
・公式サイト:http://www.daysjapan.net/


『ラスタ』(No.537/2012.05.11)
先日素晴らしい本を買いました。『ボブ・マーリー言葉集』(A-Works)。レゲエ界の、いえ、音楽界の、いえいえ地球界の伝道師、ボブ・マーリーの遺した言葉をピックアップしたものです。選・訳は高橋歩さんとロバート・ハリスさん。最初にボブ・マーリーの年表が載っていて、その後は、彼が遺した言葉と写真がずらりと並ぶシンプルな作り。いや、その言葉のひとつひとつがずっしりと心に響くんです。いくつかご紹介させていただきます。

「世間が何と言おうと、気にすることはない。俺たちには俺たちの道がある」
「音楽の良いところは、音楽にぶちかまされても、痛くないってことさ」
「雨を感じられる人間もいるし、ただ濡れるだけの奴らもいる」
「競争を止めたとき、あんたは初めて競争に勝つんだ」
「世の中は問題ばかり。あんたがするべきことは、ほんの少し与えること」
「もう、言葉は充分だろ。今すぐ、行動に移そう」
「縛られた心を、自分自身で解放するんだ。自分を自由にするのは、自分しかいない」

などなど。もっともっとたくさんの言葉が載っているんですが、ホントにどれも闘志にあふれ、優しさにあふれ、愛にあふれています。今のような混沌とした時代にこそ彼のようにぶれない強さと優しさをあわせ持った人がいてほしい...。もちろん、彼はいなくても、彼が遺してくれた素晴らしい音楽があります。それだけでも幸せです。
ちなみに、本書の終わりにはボブ・マーリーのルーツに触れるジャマイカの旅ガイドも少し載っています(このあたりが高橋歩さんっぽい)。レゲエのテーマでジャマイカへの旅に興味のある人にもおススメの本です。


『就活の季節』(No.536/2012.05.04)
3月〜4月にかけて、個人的に知り合いやお店のお客さんからの相談などでぐっと件数が増えるのが”仕事”について。
学生さんの就職活動から社会人の「仕事を変わりたい」「仕事を辞めたい」などなど。どうしてもこの時期は”就職””仕事”と言ったキーワードの相談が多くなります。社会人の方からの相談については、結果的にはいろいろ悩んで自分で決めるのが最適だと思いますので、ほんとに簡単なアドバイスやむしろ聞いてあげるだけ、という場合が多いのですが、学生さん相手やいわゆる第二新卒みたいな人には、割といろいろとお話をします。もちろん、就職相談を仕事にしている専門家ではありませんので、あくまで素人、社会人経験の先輩という程度の立場なんですが。
そこで一番最初に考えるのが、そもそも自分にあった仕事はあるのか?ということ。大体悩む人ってまずそこなんですよね。なので、自分にあった仕事を探すのはそこそこにしておいて、仕事に自分を合わせた方がいいのでは?と言うお話をさせていただきます。

『バカの壁』(新潮新書)の大ヒットで知られる解剖学者の養老孟司さんは、自分にあった仕事?自分なんて解剖学だよ。みたいな発言をされていました。もちろん養老先生はさまざまな理由があって、その道に進まれたわけですが、世の中には膨大な職業・職種がありますし、その仕事・職に就くには、単純に自分の考えだけでなく、出会いや流れ、タイミングなどさまざまな要素が絡み合ってきます。自分にあった仕事探しを追及する前に、今の仕事の中で自分にとってのやりがいを探す方が大切だと思うのですが...。そう考えると、最初に職を選ぶ選択肢もかなり広がりますしね。。

私が非常勤で講師を務めている専門学校の1年生も無事みんな2年生になりました。専門学校は2年過程なので、就活も始まります。ということで他人事じゃないんですね、これが。がんばらねば。


『DJ CAM』(No.535/2012.04.27)
前回のコラムで80年代音楽について書いたのですが、実際に日々聴いている音楽は決して80'sだけではなく、割合でいうとそれ以外の方が多いです。青春時代に聴いていた音楽も思い入れがありますが、古い時代の音楽も素晴らしいですし、新しい音楽の中にももちろん聴くべきものがあります。

このところ一番聴いているのは、先日新譜が出たばかりのミュージシャン、DJ CAM(カム)。フランス人なんですが、JAZZネタをヒップホップ・テイストでサンプリングして一躍有名になった人です。この人のCDはほとんど持っています。彼の音楽をBGMでかけるだけで酒がうまくなる、というのは言いすぎでしょうか(笑)。でも個人的にはそんな雰囲気。先日リリースされた新譜『SEVEN』もいいですね。
彼の曲で『Friends and Enemies』というのがあるのですが、これはジョン・コルトレーンの『Wise One』という曲をサンプリングしたもの。これがめちゃくちゃかっこいい。この人のすごいのは、原曲の美しさを引き出しているところ。これを聴くたびに、『Wise One』って美しい曲だなあと思うのです。
サンプリングも見方を変えれば”コラボ”。単純に足し算ではなく、掛け算になっているのが本当のコラボだと思うのですが、DJ CAMの曲はまさにそう。YOUTUBEにもたくさんアップされていますのでぜひ。

・DJ CAM ”Friends and Enemies”
http://www.youtube.com/watch?v=2aqb93B9FR8


『80's Music』(No.534/2012.04.20)
80年代に青春時代をすごし、中でも洋楽を中心に聴いていた世代からすると、最近の80年代音楽の再評価はホント嬉しいです。当時はいわゆるポストパンク、ニューウェイブが全盛で、ヒップホップも台頭していた、という感じでした。全体的にポップでもありましたね。UKのミュージシャンががんばっていたのも印象的です。結果的にクラッシュ、ストラングラーズらが、ヒットチャートに食い込み、ジェネシスも大ブレイクしました。ローリング・ストーンズもニール・ヤングも時代を意識した実験的なアルバムを出しました。面白い時代でした。

自分でお店を持ち、そこで自分の好きな音楽を流す、というのが夢で、その夢はとりあえず叶ったわけですが、それでもオープンしての2、3年(7〜8年前)の頃は、バリバリ80年代の音楽をかけると「おっさん扱いされるのではっ」と恐怖が先に経ちました(笑)。ヒューマン・リーグやらハワード・ジョーンズあたりはまだしも、ネーナの「ロックバルーンは99」、メン・アット・ワークスの「ノックは夜中に」、アース、ウィンド&ファイヤーの「レッツ・グルーブ」あたりはかなりやばかったですね(笑)。ディスイズおじさん音楽、みたいな。
最近は、お客さんで20代の人と話をしていても、割と洋楽好きの人はニュー・ウェイブを聴いていたりして安心します(笑)。そんな中で、一番驚くのは、ザ・スミスの人気の高さ。店内にはザ・スミスのジャケットをずらーっと並べているのですが、コレに反応してくれる若い人が多いです。特にバンドをやっているような人たちにとって、世代に関わらず、誰もが一度は通る道なんでしょうか。...やはり偉大なバンドでした。
でもって、残念なのは、そんな人たちでも解散後ソロ活動を開始したフロントマンのモリッシーについてはあんまり聴いていないってこと(笑)。いや、わかります(笑)。わかりすぎます。私もそうです。最初は聴いていたんですが..。ということで、がんばれ、モリッシー。


『仮面合コン』(No.533/2012.04.13)
先日の日経流通新聞で特集されていたのですが、今、仮面をつけたまま行う”合コン”が人気だそうです。基本的な趣向は従来の合コンと同じで、複数の男女が参加して、一緒にご飯を食べたり、ゲームを楽しんだりしながら親交を深める、というものですが、参加者全員が仮面(まさに仮面舞踏会をイメージさせるような)をつけて参加するところがポイント。最後には仮面を取るようなんですが、参加者曰く、「仮面をつけたほうが見た目に左右されない」し、「顔を隠している方が素の自分を出せる」んだそうです。確かに自分や相手の顔(=表層的な情報)が無いほうが、あまり気負わずにコミュニケーションが取れるのかもしれません。
ソーシャル・ネットワークサービスでは、Facebookのような巨大サービスが成長し、しかもその売りが”実名”と、個人が可視化しているのに対し、現実のイベントの方が個人の一部を隠す方向に向かっているというのは何とも面白い話です。
Facebookが基本的に実名とはいえ、繋がる相手を限定できたり、開示する情報も選択できたりすることを考えると、リアルでもバーチャルでも、”どこまで見せるか”というバランスが重要になってきているのでしょうか。

個人的には仮面をつけない”合コン”の方がいいなあと思いましたが(笑)、新聞に載っていた写真では参加者がみんな仮面をつけている様子はなかなかに怪しく(笑)、場を盛り上げる一因にもなっているんでしょうね。
そういえば、うちのギャラリーでも毎月満月の日に『満月カフェ』というイベントをやっています。営業時間終了後に電気をすべて消して、ろうそくの灯りだけで過ごすイベント。まあ飲み会です。確かに、初めての人同士でも、お互いの顔がうっすらとしか見えないこともあってか、コミュニケーションが活発な気がします。うーん、知らず知らずのうちにやっていたのか(笑)。


『ダンカン・ジョーンズ』(No.532/2012.04.06)
三軒茶屋シネマ映画館で『ミッション: 8ミニッツ』を観ました。監督は、本作がまだ長編二作目ながら着実に評価をあげているイギリス人のダンカン・ジョーンズ。デヴィッド・ボウイと最初の妻である元モデルのメアリーとの間に生まれ、大学で哲学を学んで博士号も取得、その後ロンドン・フィルム・スクールで映画制作を学んだという経歴の持ち主。う〜ん、すごい。

ダンカン・ジョーンズ監督の長編デビュー作は『月に囚われた男』(2009年)。サム・ロックウェルを主人公にしたSFスリラー。月を舞台にしたスケール感こそ大きいものの、登場人物も少なく、シンプルな短編のような出で立ちながら、しっかりと物語や驚きがある秀作でした。で、本作。
2001年公開の『ドニー・ダーコ』以来ファンになったジェイク・ギレンホール(最近では、ジェイク・ジレンホールと表記されているようですね)が主役を演じるということもあって期待して観ました。結果は面白かったですっ。
過去に何度もさかのぼるというサイバーなシチュエーション自体は、すでに使い古されている感もありますが、ストーリーにひねりを加え、同様の作品とは一線を画す仕上がり。
『月に囚われた男』もそうですが、このダンカン・ジョーンズ監督のリアリティの保ち方のバランスが個人的に合うようです。どんなに面白くても、このバランスが崩れて(いや、もちろん非現実的には違いないんですが)あまりにもリアリティが失われてしまうと興ざめしてしまうたちですので。
さすがに最後はちょっとやりすぎな感じもしますが、これは監督の”観客をもっと楽しませたい”という欲求の表れとみました。
ちなみにこの作品は、『月に囚われた男』を観たジェイク・ギレンホールがダンカン・ジョーンズに製作の話を持ちかけたそうです。業界でも注目されているということでしょうね。これから要注目の監督です。

それにしてもジェイク・ギレンホールがまだ32歳なのに、作品の中では急に老けて見えたのがちょっとびっくり...。役作りやメイクのせいならいいけど(笑)。


『スコセッシ先生』(No.531/2012.03.30)
週刊シネママガジン(http://cinema-magazine.com/)に興味深い記事が載っていました。最新作『ヒューゴの不思議な発明』が大変話題になっているマーティン・スコセッシ監督が、先月、映画業界を目指す日本の学生たちの前で一夜限りの特別授業を行ったそうです。授業の内容について簡単に触れられているのですが、学生たちからの質問に答えるスコセッシの発言が素晴らしいです。

ある学生から「想像力の源はなんでしょうか?」と訊かれたスコセッシは、「子供のころ、僕は喘息でスポーツを禁じられて、大笑いすることも禁じられた。だから、僕は色々なことを観察するようになった。観察しているうちに次第にドラマティックなものに気づくようになった。そしてそれを映画で描いたら面白いだろうなと考えた。今でも映画を作っているときには子供の頃に感じた頭の中がスパークしたときの衝動に戻っている」と語ったそうです。すっかり巨匠という形容詞が定着した感のあるスコセッシ監督ですが、いつまでも少年の心を忘れていないんですねえ。
さらに別の学生の「将来は映画の世界に入りたいのですが、スコセッシ監督を超える映画監督になる法則を教えてください」という質問には、「僕は子供のころ、絵が動くことに夢中になって映画の世界にのめり込んでいった。大切なことは自分の持っている媒体へ情熱を持つことだ。どんな困難があってもその媒体を持って自己表現を続けること。夢を追ってクレイジーなほどそれにこだわりつづけることだ」と熱く語ったとのこと。

”自分の持っている媒体へ情熱を持つこと”、しびれる言葉です。もっといえば”媒体への情熱を持ち続けること”ということなんでしょうね。
最近、電子書籍の台頭などもあって、長年務めた出版関係から別の業界に移った人の話をよく聞きます。時代を読んでその場その場で媒体を移る生き方もあれば、愚直に自分の愛する媒体にこだわり続ける生き方もあります。どちらを選ぶかは本人の自由ですし、どちらが正解というわけではありませんが、歴史を超えて愛される重みのあるものは、後者の生き方からしか生まれないような気がします。肝に銘じるに値する金言。ありがとうスコセッシ。


『魔法少女』(No.530/2012.03.23)
”これは絶対観た方がいい”と知人からDVD全巻を借りていたテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』。興味はあるもののボリュームもあるのでしばらく放置だったのですがやっと観ました。いやー、面白かった。
主人公の鹿目まどかが魔法の使者であるキュゥべえという動物(?)と出会い、”何でも願いを一つかなえる”という条件と引き換えに、魔法少女達の戦いに巻き込まれるという物語。昨年放送されたテレビアニメも大ヒットしましたし、第15回文化庁メディア芸術祭にて「アニメーション部門大賞」も受賞しました。

一言であらわすと、キャピキャピ(古い?)した少女たちが魔法使いとなって地球を守るファンタジー。...といえば秘密のアッコちゃん以降、綿々と続く、美少女+魔法ものァンタジーに聞こえますが、内容はとてつもなくダーク。でもこの”ダーク・ファンタジー”度合いが今の時代性なんでしょうね。『機動戦士ガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』以降の流れ(というのがあるかどうか知りませんが)をしっかりと感じます。
それでも最後にはある種の希望が感じられるところが、一応子供向けアニメの定石を踏まえているといえるのかも。まあそうでないとさすがにキャラクターグッズなんかも売りづらいでしょうし、ダークなだけだと多くの人に認められるのは難しいですから。

見終って思ったのは、この作品は実写による映画化が可能なんじゃないかということ。ビジュアルをそのまま生かしてCGで表現しちゃうと全然ダメになっちゃうと思うんですが、ストーリーだけ生かして、ダークファンタジーとして再生すれば、かなり面白いものになる気がします。
ハリーポッターに続くファンタジーの傑作になる予感も。昨年末に映画化プロジェクトの始動が発表されましたが、いずれハリウッドによるリメイクもありえそうな話です。


『水平線の向こう』(No.529/2012.03.16)
前回こちらでご紹介した『ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11』。この企画展に参加している盟友・鷲尾和彦氏の『遠い水平線』が始まったので見てきました。会場に向かう途中、新宿駅で偶然にも鷲尾氏と出会うという奇遇も。そのまま一緒に会場に向かい、写真家の解説入りでしっかりと拝見しました。彼とはこういうプチ奇跡がよく起こります(笑)。

展示されているのは、昨年4月から昨年末までの間に、青森から福島の海岸線沿いを中心に撮影された写真。オールモノクロです。彼の場合は、単なる写真撮影にとどまらず、作家の池澤夏樹さんと一緒に『春を恨んだりはしない』(中央公論新社)を出版したり、今回も自費出版で『遠い水平線』の小さな写真集を作ってチャリティーを行ったり、被災地に対する視点と姿勢がちゃんと伴っているところが信頼できるのはもちろん、やはりもともと海やサーファーたちを撮り続けて来た彼らしい、寄り添うような憧憬というでもいうべき写真にグッときました。
編集者の後藤繁雄さんが”写真は自己表現のためのメディアではない”という主旨のことをおっしゃっていたことがあるのですが、まさにそう思います。ちょっと乱暴かもしれませんが、やっぱり大事なのはやはりそれを受け取る側の感性と想像力なのではないかと。
私は鷲尾氏の写真から、被災地に生きる人たちの”動き”を感じました。動きはエネルギーを必要とします。今回、とてつもない自然の動きは人間にとって脅威となってしまいました。それでも被災地の人々の動きは未来に向けて止まっていません。私もこの震災からの復興に向けて、ささやかですが私に出来ることを続けて行きます。

・鷲尾和彦ウェブサイト:http://www.washiokazuhiko.jp/


『一年の記憶』(No.528/2012.03.09)
東北を、日本を襲った未曾有の大震災から1年が過ぎようとしています。被災地の復興もまだまだしっかりとした形は見えてきませんし、福島の原発も小康状態が続いているだけで、とても安心できるレベルにはいたっていないように思われます。私のように東京で暮らしている分には、”モノ”に関しては、ほぼ通常の状態に戻り、特に不自由することはありません。しかし、”ココロ”に至っては、その一部がずっと崩れているような不安を感じない日はありません。最近たまに叫ばれる”首都直下型地震”への恐怖などというものではなく、やはり東日本大震災は被災地にいる・いないを問わず、私たち日本人の心に、大きな傷を残したことは間違いありません。

あの日からあらためて”3.11”を迎えるにあたって、さまざまな場所でさまざまな試みが行われようとしています。その一つが2月より銀座・新宿ニコンサロンで開催されている連続企画展『Remembrance 3.11』。
「大震災から一年という節目にあたり、8つの特別展と5つのシンポジウムを企画し、あらためてこのカタストロフィの意味を多面的な角度から省察」する企画だそうです。
記録としての写真、それは多くの人々の記憶と重なり合い、時に痛みを思い出させ、時に未来に目を向けさせるでしょう。”写真”というメディアはそういうメディアのひとつであると思います。しかし、何かしらのメディアを見て”思い出す”ことと、人間の心に刻まれて”忘れない”ということとは本質的に違う気がします。誤解を恐れずにいえば、現地に写真家が行って撮影し、それを東京で展示することにどんな意味があるのでしょうか?”忘れない”という生き方、”学ぶ”という姿勢。そのために写真に、写真家にできることは何なのか、ぜひ見てみたいと思います。

・『ニコンサロン連続企画展 Remembrance 3.11』:http://bit.ly/wcR73W


『第84回アカデミー賞』(No.527/2012.03.02)
先月の26日に、第84回米アカデミー賞授賞式がロサンゼルスで開催されました。毎回最も注目を集める作品賞を受賞したのは、異色のサイレント・白黒映画『アーティスト』。作品賞を含む最多5部門での受賞でした。サイレント映画が受賞するのは第1回の『つばさ』以来83年ぶりとのこと。また、フランス映画が受賞するのは今回が初だそうです。快挙ですね。
今回、『アーティスト』とともに注目されていたのがマーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』。こちらも撮影賞など5部門を受賞したようで、数の上では『アーティスト』と引き分けだったようです。2010年の『アバター』に続いて、またまた鳴り物入りの3D映画が作品賞で敗退...。アカデミー賞は3Dが嫌いなんですかねえ。
そもそも、2007年に香港映画『インファナル・アフェア』のリメイクでマーティン・スコセッシ監督の『ディパーテッド』に作品賞を与えてから、なんとなく「えっ?」て感じの受賞が多い気がします。今回『ヒューゴの不思議な発明』に与えてしまったら、「じゃあ、2010年はやっぱり『アバター』でよかったんじゃないの」、という人が絶対いそうですよねえ。

近年、コンテストやランキングといった企画がいたるところにあふれています。優劣のわかりやすさがウケている理由の一つだと思いますが、結果は意外であればあるほど、「正しいっ」「違うっ」と盛り上がるもの。まさかそういう効果を狙ってのことではないと思いますが。


『ホイットニー』(No.526/2012.02.24)
米ロサンゼルスで今月の11日に、世界的大スターである女性歌手ホイットニー・ヒューストンさんが亡くなりました。本当に昨年末から偉大なるスターの訃報が続きますね。
ホイットニー・ヒューストンと言えば、私のような80年代に洋楽〜ブラックコンテンポラリーを聴いていたファンには(もちろんそうでなくても)、マイケル・ジャクソンと並んで無くてはならない存在。
デビューアルバム『そよ風の贈りもの』を聴いたのは大学生のとき。当初から鳴り物入りでしたし、何より出すシングルが次々とビルボードのシングルチャートのNo.1を獲得するという(実際には7曲連続で全米シングルチャート1位の記録)すさまじい人気ぶりでした。大学生のときはもう少しロックよりの曲やアップテンポの曲が好きだったのですが、それでもホイットニー・ヒューストンだけは、バラードをよく聴いていました。

残念ながら、『ザ・ボディガード』のサントラ以降はあまり聴かなくなってしまいましたが。というのも、個人的には彼女のMAXまで搾り出すような歌い方がだんだんと合わなくなってきたんですね。やはりアレサ・フランクリンやチャカ・カーンなど、もう少し体格が良くて(デビュー当初はモデルのようなスタイルも話題になりました)、どれだけシャウトしても「まだまだ出るわよ」的な余裕を感じさせる(いや、ホイットニーもそうなんだとは思いますが)女性歌手が好きなことと、『ボディガード』のサントラあたりからあまりにもポップになりすぎた感がありまして。
それでも、最初の2枚のアルバムだけでも、十分音楽の歴史にしっかりと名を残すシンガーであることは間違いないと思います。
グラミー賞に出演する前日、ということですから、やはり薬物による事故でしょうか。ボブ・マーリー、マービン・ゲイなど、黒人歌手の偉大なスターほど最期がやりきれない事態になるのは本当に残念です。ご冥福をお祈りします。


『時間の価値』(No.525/2012.02.17)
アンドリュー・ニコル監督、ジャスティン・ティンバーレイク主演のSF映画『TIME(タイム)』が、本日より全国ロードショーをスタートします。
人間の成長が25歳で止まり、貨幣の代わりに時間が通貨となる近未来。腕に埋め込まれた「ボディ・クロック」が残りの寿命を刻む中、富裕ゾーンの住民は十分な寿命を持つのに対し、スラムゾーンの住人は日々時間に追われる人生を送っているという物語。
まさに”時は金なり”がルールとなった近未来社会SF。テレビでもバンバン予告編を放送していますが、SFドラマの中でもどこか『ガタカ』や『インセプション』のようなクールな世界観が感じられ、ちょっと期待しています。楽しみ。

私は誰かと一緒にいるときには、基本的に携帯に電話が来ても受けません。かといって、相手が受ける分にはいい気持ちはしないものの、いちいち注意をすることはしません。まあみんな考え方はいろいろですから。仕事の時はしょうがない部分もありますし。
これだけ”つながる”ツールが発達してくると、最も贅沢なのは、相手のために”時間を使う”ということなのかもしれません。目の前にいる人よりも電話の向こうにいる人を優先するのではなく、今、目の前の相手のために自分の人生の一部分をすべてゆだねるということ。それが相手に対して最高の敬意なのではないかと。
心ここにあらず、ではなく、あなたのために身も心もささげていますということ。ちょっと大げさですが、ただ、そういう感覚に鈍感になっていくというのはやっぱりどこか怖い...。

『TIME』で描かれている世界。自分たちが生きている社会において、とにかく”効率”を最優先させてきた私たち人類が到達する未来として、時間=生命という究極の考え方は、ひょっとしたらリアリティがあるのかもしれません。

・『TIME』オフィシャルサイト(http://www.foxmovies.jp/time/


『つながりの意味』(No.524/2012.02.10)
個人的に、いわゆる”ゲーム”に関しては、大学〜社会人2年目あたりまで、ハマりにハマッていた時期がありますが、それ以来ぱったりと興味がなくなりました。”卒業”ということでしょうか。大学時代はちょうど『ポートピア連続殺人事件』(書いているだけで懐かしいっ)が流行っていて、毎日やってましたが(笑)。『テトリス』『ぷよぷよ』などの”落ちモノ”系も相当やリました。面白かったなあ。

ゲームに関しては、熱中しすぎることによる脳への弊害などがよく語られますが、まあ、廃人にならなければ別に構わないのではないかと思っています。
『モンスターハンター』なんかはかなり流行っていますが、オンラインで複数人でワイワイ言いながらプレイしている場面なんかを見ると、それはそれで楽しそうだなあと思います。飛び交う用語が全く理解できませんが(笑)。

ただ、他者と一緒に共同作業を行うことの楽しさ=”つながり”かというと、別の話だと思うんですね。専門学校で学生たちと話をしていても、他者と関わること自体は、巷で言われているほどみんな苦手じゃない気がします。並列的なつながりを作ったり、生かしたりする意味では、現代はいろんなツールがありますからむしろうまい。しかしながら、他者との関係性で大事なのは、”自分ごと”として捉える感性だと思います。”並列”になぞらえて言うと、自分の延長に他者がいたり、他者の延長に自分がいたりするような、縦の関係とでもいいましょうか。
いわゆる”つながり”とは、時間軸に沿って認識されるもので、並列的にいくら関わりあっても、自分が自然や歴史などの環の中にいるある種の安心感見たいなものは得られないんじゃないかと。
震災以降、”つながり””絆”という言葉がよく聞かれますが、やはり縦の時間軸をしっかり認識しないと、単純にその場限り、この時限りの連携に終わってしまう気がします。
インターネット上では簡単に”つながる”事が出来る時代だからこそ、時間をかけて信頼関係を築くという意味での”つながり”がより重要になってくるのではないでしょうか。


『機能過剰』(No.523/2012.02.03)
今年最初のメールマガジンのコラムで、PHSを買い換えたことについて書きました。そこで、人生で初めて”カメラ付き”携帯、いやPHSを持つこととなったことも。携帯って、ホント通話しかしないんです。...で、まあその時は、新しい機種になってサイズもちょっと小さくなったし、携帯だけ持って出かけた際にメモ代わりに写真が撮れたり、Webも繋がるのでいろいろ調べものが出来たりするので、これはこれで満足しています、的な感じでぼんやりとコラムを締めくくったのですが...嘘です。ごめんなさい。カメラもWeb機能も全然使っていません(笑)。いやー、自分でもびっくりですね。ここまで使わないとは。

そう考えると、このシンプルな機種でさえ、個人的に無駄な機能の多いこと多いこと。携帯にやたら機能を求めたがるのは日本人の特性らしいですが、実際みんなそんなに求めているんでしょうか?ちょっと疑いたくなります。なんとなく、ですが、パソコンにしてもなんにしても、日本人はツールとして割り切る人種ではないような気がします。持っていることによるステイタスとか安心感とか、どこかにモノへの愛着が捨てきれずに残る体質なのではないかと。もし飛躍してすべてのものに生命が宿る、みたいなアニミズムが根源にあるとすると、そういう風に思うのは日本人だけではないはずですが。モノにその機能以上の情緒的なものを求める傾向があるのだとすると、逆にfecebookが日本で他国ほどの広がりを見せないのも、何となくうなづける気もします。

個人的にほとんどモノに執着心がないということもあるのかもしれませんが、やはりどう考えても機能が多すぎだよなーと思っていたら、先日、ウィルコムより新製品が発売されました。何とフリスクサイズ(3cm×7cm程度)で重さ約33gの超小型&軽量とのこと。カメラもブラウザもなし。いさぎよし。あー、これがよかったなー。


『映画と音楽』(No.522/2012.01.27)
このところ『D-Movie』でご紹介した映画の音楽がすごくよくて(『ダージリン急行』『ライフ・ドア 黄昏のウォール街』)、久しぶりにサントラを買ってみようかとネット上で検索してみました。ところが『ダージリン急行』は輸入盤で1,500円程度なんですが、DVDだと中古で980円。ちょっと迷った挙句結局買わず、『ライフ・ドア 黄昏のウォール街』は、輸入盤でも見つけられませんでした...。日本未公開ですし、映画としてもあまり評判がよくなかったのでしょうか。残念。まあ、『ダージリン急行』に入っているキンクスのアルバムは結構持っていますし、『ライフ・ドア〜』の方もそれぞれの曲を提供しているバンドのアルバムは大体持っているんですが、サントラに収録されている曲順で聴くと新鮮でいいんですよね。

80年代に、ハリウッドが音楽業界(特にロック)と結びついた時期がありまして(もちろん、お互いに売上げを上げるためです)、当時青春時代を送った身としてはやはり映画と音楽は切り離せません。最近でも『バーレスク』や『ソーシャル・ネットワーク』など、音楽が素晴らしい作品がいくつもありました。このあたりは、サントラからもその映画に対する想いや姿勢みたいなものも伝わってきますね。昨年、シリーズの最新作が公開された『猿の惑星』シリーズも、最初の作品の音楽を手がけたのは、映画音楽の巨匠ジェリー・ゴールドスミス。これは革新的で映画史上に残る素晴らしいサントラでした。M・ナイト・シャラマン監督を世界に知らしめた『シックス・センス』もサントラ盤は一人っきりで聞けないぐらい怖いです。挙げだすときりがありませんが、やはり、名作と呼ばれる映画には素晴らしい音楽が欠かせませんね。


『場の可能性』(No.521/2012.01.20)
『Twitter』や『facebook』のような、インターネット上のソーシャルサービスはものすごい勢いで増えていますね。iPhoneのアプリなんかでも、他の人とつながれたり、情報交換が出来るようなサービスがどんどん作られているようです。私はそういったサービスはほとんど使いませんが、先日知った『斉藤さん』というアプリなんかは、概要を読んでいるだけでも楽しそうだと感じました。いろんなことを考える人がいるんですねえ。
(斉藤さん:http://itunes.apple.com/jp/app/id458288241?mt=8

インターネット上のビジネスや楽しみが創り出され続けている世界を見ているといつも思うのは、「ではリアルの場はどうなのか?」ということです。飲食店や雑貨店など、新しいお店は次々とオープンしています。私が経営しているような”ギャラリー”や”カフェ”も、新しいお店が出来たという情報をよく耳にします。しかしながら、従来にない画期的な仕組みやサービスという意味ではどうでしょうか。ソーシャルサービスほどのダイナミックさや斬新さはないように思えます。
先週、品川区と同区内のマンション管理組合とが、マンションの共有スペースを避難場所として提供する協定を結んだという報道がありました。二十三区内では初めてのケースだそうです。震災対応の新しい試みですね。こういう話を聞くと、新しいリアルの場を作ることはもちろん、既存の”場”をいかに有効に活用するか、新しい使い方を提案するかということも、もっともっと考えられるのではないかと思います。
個人的には大学や専門学校などの教育の場をオープンに出来ないかとずっと考えています。避難場所はもちろん、学生たちと共に地域のソリューションとしてや、新たな文化創造なども可能ではないかと。
リアルの場は、基本的には無料やそれに近い経済性では提供できません。しかも現実の場というのはそれだけで体験・感覚として強度があります。だからこそ、その先に考えが及びにくいのではないでしょうか。どんな場でも、公共の場でも民間の場でも、もっと可能性を有していると思います。そこを日々考える事が、リアルの場に関わる人間の役目でもあると思います。


『2012年始動』(No.520/2012.01.13)
年が明けて、気が付けばもう1月も半分が過ぎようとしています。特に、こういう”毎週”という単位での企画をやっているとホント日々の過ぎ去るのが早いこと早いこと。まあそれでも、普通の生活がちゃんと送れているわけですから感謝。
ギャラリーの営業は5日から、講師をやらせていただいている専門学校の授業も始まり、またいろんな方々と出会い、語らう日々が始まりました。そんな中でやっぱり話題に上るのが震災のこと、復興のこと。
被災地関連のビジネスがベースとなった感動的な物語や”金”絡みの嫌な話。現地でボランティアをした人たちから聞く、気持ちのいい話やトラブルの話。いろんな人がいろんな思惑で動いている状況ですから、残念ながらいい話ばかりというわけにはいかないようです。それでも間違いなく復興に向かって希望の感じられる話の方が多いのが救い。炊き出しの際にスタッフが少ないので、受け取る側が欲しいだけ持っていくというシステムにすると、「他の人の分がなくなると悪いから」と、少ししか受け取らない人が多くて困ったという話も聞きました。私たち日本人の世界に誇れる気質の一面を垣間見た気がします。
そういった我慢強さも日本人ならではなら、喉元過ぎれば熱さを忘れる、という部分があるのもまた日本人。少なくとも、現場から離れた場所にいる私たちにとって、「忘れない」ということがまずは基本。復興はまだまだ先の長い道のりです。引き続き、それぞれがやれることをやる。今年もそこからスタートですね。そして残念ながら年明けからのゴタゴタを見ているとやっぱり今年も政治家はダメそう...。


『新たにPHS』(No.519/2012.01.06)
あけましておめでとうございます。2012年、最初のメルマガです。今年も引き続き『フライデー・ビデオマガジン』をよろしくお願いします。

いきなり私的な話で恐縮ですが、PHSを買い換えました。先日、突然充電が出来なくなったんです。今の機種を買ったのが、もう5年以上前ですから、そろそろ寿命化と。なので、充電器だけ買うのならいっそ買い換えた方がいいかと。何やらポイントも貯まっていたので、事務手数料だけで済みそうでしたし。
ということで、人生で始めて”カメラ付き”携帯、いやPHSを持つこととなりました。今まで持ったこと無かったんですよね。そもそも、携帯って、通話しかしないんです。メールもしないしWebも必要ない。カメラもなきゃないでいい、みたいな。ミクシィ、ツイッター、フェイスブックなどののソーシャルサービスも使ってませんし。だから今までとにかくシンプルな機種しか使ったことがありません。先日まで使っていた機種は、今ではほとんど見かけないタイプです。アンテナが伸びますから(笑)。このタイプは、知人や友人には誰も持っている人はいないんですが、結構大企業の社内用携帯として使われています。仕事で、相手の会社を訪問した際、何度自分と同じ内線電話を見かけたことか(笑)。これはこれでネタになるんですが。

まあでも、新しい機種になってサイズもちょっと小さくなりましたし、携帯だけ持って出かけた際にメモ代わりに写真が撮れたり、Webも繋がるのでいろいろ調べものが出来たりするので、これはこれで満足しています。ただ、これまた一世代前の機種なので、すでに在庫が少なく、欲しかったボディー色の”黒”が選べませんでした。ということで、結果”青”に。しかも全体的にかなりポップ。会社の内線電話タイプからいきなり”ポップ”で”ブルー”に大変身。ちょっと恥ずかしいなあ...。


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