コラム
<コラムのバックナンバー>

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『2011年度ベストムービー』(No.518/2011.12.30)
今年最後のメールマガジンです。毎回ご覧いただいてありがとうございます。今年もちらほらと新規にご登録いただく方がいらっしゃって嬉しい限りです。

以前はこの時期のコラムでは、「今年もあまり劇場に足を運べなかった〜云々」という冒頭から「来年はもっと観たいです〜云々」と続き、最後に「今年のベスト10」を発表するというのが多かったのですが、ここ数年は、もう年末にいちいちそのことに言及しません(笑)。ホント劇場に足を運ぶ回数が少なくなってしまいましたから。いかんいかん、来年はもっと観ないと(あっ、結局こういう流れに...)。

ということで、ベスト10ではなく、とりいそぎベスト1を。今年最も衝撃的な作品だったのは、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』でしたね。アカデミー賞では、編集賞、作曲賞などにとどまりましたが、冒頭からマシンガンのような台詞で埋め尽くされ、さらにトレント・レズナーの音楽が重なり、最初から最後まで緊張感がとぎれませんでした。
個人的に興味のある題材だったということもありますが、ベンチャー企業の内紛ドラマとしても、うまく脚色されていたのではないでしょうか。後印象に残ったのは、コーエン兄弟の『トゥルー・グリット』、マイケル・マドセン監督の『100,000年後の安全』あたりでしょうか。『X−MEN』のファースト・ジェネレーションはそれなりに楽しめましたが、M・ナイト・シャラマンが原案・プロデューサーの『デビル』は...やっぱりイマイチでしたねえ。とはいえ『ブルー・バレンタイン』や『ツリー・オブ・ライフ』など、見逃した作品も多いので、あんまり意味無いかも。
三軒茶屋の映画館に来る作品も邦画が多くなってしまったので...。いや、他の映画館に行けばいいだけなんですが。

ということで、みなさまよいお年を。


『家族ゲーム』(No.517/2011.12.23)
急に冷え込んできましたね。まあ12月なので当然といえば当然なのですが。またこのところ訃報も相次いでいますね。立川談志師匠、俳優の原田芳雄さん、脚本家の市川森一さん、映画監督の森田芳光さん...。みなさんまだ70歳前後...早すぎます。

1983年に公開された森田監督の出世作『家族ゲーム』、当時はいろんな意味で衝撃的でした。まず、無表情でハチャメチャな家庭教師役を松田優作が演じたことがびっくり。そしてそれが見事にハマッたことにさらにびっくり。
父親役の伊丹十三、母親役の由紀さおりなど、なるほど、の配役。何かにつけやる気の無い主人公の中学生を演じる宮川一朗太も新鮮でした。もちろん、この映画の面白いところはキャスティングだけでなく、表面上は幸せな家庭を装っている家族が徐々に崩壊していく様子を淡々と描いているところも斬新でした。どれだけ関わりあおうとも、決してお互いに正面からは向き合わない”気持ち悪さ”。
『家族ゲーム』が上映されてから30年近くになりますが、あれから日本の”家族”は、少しでもいい方向に変わったのでしょうか。森田監督が私たちに投げかけたエンディング。すれ違う家族の頭上で鳴り響いく不穏なヘリコプターの音。未来に不安を残しながら幕を閉じた映画の後、私たちの世界は今も相変わらず、確実な理由の無い不安に包まれています。
森田監督の作品に関しては、90年代以降は、どちらかというと厳しい批評に晒されていた気がしますが、それでもインディーズからスタートし、誰よりも映画を愛していたでしょうし、とんねるずとの競演や黒澤監督作品のリメイクなど、常に挑戦し続けた監督であることは間違いないと思います。ご冥福をお祈りいたします。
『実写化の是非』(No.516/2011.12.16)
『ORICON STYLE』が10代〜40代の男女を対象に行った調査では、漫画等の相次ぐ実写化に6割以上が『嬉しくない』(まったく嬉しくない:16.8%、あまり嬉しくない:48.4%)と回答したそうです。..まあ、そうでしょうね。
特に最近は(特に邦画)、映画オリジナルの脚本よりも、小説や漫画の映画化が目立つ状況ですが、まずキャスティングが話題作りを優先して行われている気がしますので、無理もないと思います。
アメコミの実写版も成功したもの、失敗したものいろいろありますが、中でも1997年の第1作目、2002年の第2作目ともに大成功したのが『メン・イン・ブラック』。トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスのキャスティングがまず成功していますね。そんな人気シリーズの第3作目が、いよいよ来年5月に日本公開だそうです。
こちらはキャスティングや監督などのスタッフ陣もほぼ同じようなので、まあハズレはないと思いますが、少し気になるのが”3D”対応ということ。

個人的にも漫画の実写化にはがっかりさせられた経験が多いのですが、もう一つ危惧すべき最近の風潮があります。それは多くの映画が”子供向け”になってしまったということ。マーケティング的には、”3D”対応にして子供向けに作るのが一番収益が上がるのかもしれませんが、やっぱりそれだと楽しめないんですよね。もちろん、題材が子供の向けのものはそれで構わないんですが。ただ、『メン・イン・ブラック』も”3D”対応で、やたら意味の無いアクションが多くなったり、子供受けしそうなギャグが増えたりするのだけはちょっと...。とはいえ、今からワクワクしてしまいます。どうやら”K”がいなくなってしまうらしいです...。

・『メン・イン・ブラック3』公式サイト(http://mib-3.com/
※予告編が見られます。
『審査発表(No.515/2011.12.09)
先般、こちらのコラムでもご案内させていただいた『顔フォト!コンテスト』。カバンの止め具や蛇口、壁のしみなど、日常の中に存在する”顔”に見える写真を撮って送っていただくというコンテスト。10月末に募集が終了し、おかげさまで前回を上回る応募を頂きました。
もし、このメルマガをご覧いただいている方の中で、ご応募された方がいらっしゃいましたら、まことにありがとうございます。いえ、ありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか。

コンテスト自体は、NHKやTBSなど、テレビにも取り上げていただくことができました。...で、NHKでは、『五感の迷宮』という番組内にて”顔フォト”作品を参考画像として提供させていただいたのですが、この番組が面白かったっ。ヒトは五感を通して外界を知り、行動しているものの、脳が作り上げた世界は錯覚に満ちあふれていて、実は私たちはさまざまな錯覚の中で暮らしている、ということをオモシロ実験を通して紹介する番組。その中の実験で、サッカーの試合において、ワールドカップクラスの審判でも”オフサイド”をかなりの確率で”誤認”してしまうとか、とある条件を与えられると、目の前の群集の中にいる”ゴリラ”を見つけられないなど、驚きの連続でした。
先月ご紹介した映画『シックスセンス』の中で、幽霊たちは”見たいものしか見えない”という設定があるのですが、まさに人間の脳もそのようです。人間の性格としてネガティブ・ポジティブの両面がありますが、脳に関してはまちがいなくポジティブですね。個人的には小さなことで結構クヨクヨ悩むタイプですが、そういう風に考えるとちょっと楽しくなるかも(笑)。要するに人間みなポジティブってことで。”顔フォト”もある意味錯覚の一種だと思いますが、それを発見することで楽しくなりますからね。

ちなみに『顔フォト!コンテスト』、結果発表を行いました。こちらの公式サイトからご覧ください〜。
→→→ http://kao-photo.petit.cc/
『シンポジウム』(No.514/2011.12.02)
先日、私が講師を務めさせていただいている日本デザイナー学院シブヤプロダクツ科の授業において、他校の学生と一緒にシンポジウムを行いました。お招きしたのは一橋大学の学生たちで、商店街との協働を進める『人間環境キーステーション』のメンバー。ビジネスやマーケティングを学びながら、地域の活性化活動を行っている学生たちと、デザインによって渋谷への地域貢献を目指す学生たちによるシンポジウム。
一橋の学生たちは、商店街の空き店舗で自分たちの手によって新規事業を立ち上げているわけで、これはなかなかデザイン系の専門学校には出来ない取り組みですし、逆に経営・経済系の大学ではグラフィックやプロダクトのデザインを地域活性化のツールに活用するということは少ないと思われるので、いろんな意味でお互いに補完し合えるのではないかとの思惑もありました。
結果は、参加してくれた学生たちのおかげで予想以上に刺激的な内容になりました。やはり違う業界、業種、地域、価値観、技術に立脚する人たちと交流を持つというのは、視野が広がるだけでなく、さまざまな”気づき”があります。
個人的にもグッとくるものがありました。一橋の学生たちとはここ何年かずっとつながりがあったのですが、そもそも最初に地域の商店街活性化に動いた学生は、”成功するまで大学を卒業しない”と地域の人たちに宣言したそうです。個人的にも地域の活動にいろいろ参加していますが、そこで感じるのは、地域をよくすることができるのは、やはりそこに住んでいる人たち、ということです。もちろん、実際にすんでいなくても、当事者意識があれば構わないと思いますが、それでもやはりそこに”住んでいる”ということはゆるぎない”強度”を生みます。そういうことを察しての宣言だったのでしょう。やはり最初に始める人はすごいなあと思います。会って話を聞いてみたいです。ちなみに、この『人間環境キーステーション』の取り組みや歴史が近日書籍化されるそうです。楽しみ。

・NPO法人 くにたち富士見台人間環境キーステーション
http://human-environment.com/

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『談志師匠』(No.513/2011.11.25)
落語界の風雲児であり天才、立川談志師匠が今月21日、喉頭がんのためにお亡くなりになりました。歯に衣着せぬ発言で社会に斬りこみ、家元制度で落語界を驚かせ、それでも多くの人から愛された談志さん。本当に残念です。
個人的にも大好きで、以前、近くのレンタルビデオショップに落語関係のソフトが充実していたとき、談志師匠のビデオを片っ端から借りて、何度も何度も繰り返し見たのを思い出しました。

ここ数日、テレビで談志師匠の映像やエピソードがよく流れていますが、先日たまたま見ていた番組で、師匠の『三方一両損』の落ちの部分を流していたんですね。三両の小判が入った財布を拾って届けた男と、届けられたけれど受け取らない男のドタバタ劇。結局、大岡越前が一両を懐から出し、二人に2両ずつ渡し、二人とも三両懐に入るところを二両となったのだから一両の損。奉行も一両出したのだから一両の損。これ三方一両損なり、という噺なんですが、もちろん、この頓知の利いた裁きがメインではなく、男二人の江戸っ子気質の描写が肝。で、ラストは、その場で出された料理にがっつく二人に越前守が「そんなに食べるな」とたしなめたところ、男が「おおくは(大岡)食わねえ、たった一膳(越前)」というのが落ち。
いつの高座かわかりませんが、その映像では、談志師匠はこの「おおくは食わねえ」の台詞を何度か繰り返したんですね。この噺は江戸っ子のかっこよさが詰まった噺で大好きなんですが、最後の台詞のこの部分を繰り返すパターンはあまり聞いたことが無く、しかも、それだけ引っ張った後の「たった一膳」の”引き”具合が素晴らしく、このわかりやすい落ちを簡単に落とすのではなく、いかに盛り上げられるか考え抜いた末の結果ではないか、と思った瞬間、胸にグッと来てしまったんですね。言いたい放題、やりたい放題の感じが強い人でしたが、本当に落語に対してはストイックで、常に上を目指す、まさにプロフェッショナルでした。ほんの数分の回顧映像でしたが、そのすさまじさを再確認。やっぱり...もうああいう人は出ないかもしれませんね。
『アサイラム』(No.512/2011.11.18)
昔から映画で大ヒット作が出ると、必ずパロディ版が作られますね。作られる、というか勝手に作っているんだと思いますが。しかし近年は単なる”パロディ”ではなく、”それっぽい”作品が増えたように思います。日常に存在する車や建物が突然ロボットに変身する『トランスフォーマー』。大ヒットしたシリーズです。で、これに似たのが『トランスモーファー』。ニューヨークに突如怪獣が出現したのは、手持ちビデオによる撮影が臨場感をあおった『クローバーフィールド/HAKAISHA(Cloverfield)』で、これに対するのが『バトルフィールドTOKYO(Monster)』。いずれもアメリカのアサイラムという映画制作・配給会社が作ったもの。結構(そういう意味で)有名な会社です。

大体、そういう作品は、”大きく影響を受けた”と言えばかっこいいですが、ある種の記号的な部分だけまねて、本家とはまったく違う作品がほとんど。しかも多くは低予算なのでB級っぽさもあります。しかしながら、それはそれで楽しむことは可能ですので、個人的にもたまに借りたりします。
...が、先日リアルに間違えて借りてしまいました。本当に借りたかったのは、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(2011)。ちょっとアクション+SFみたいなのが見たかったんです。それなりに話題になりましたしね。で、借りたのが『バトル・オブ・ロサンゼルス』。わからなかったですねー、パッケージだけでは(笑)。もちろん似せて作ってあるんですが。
なんとなく”この時期”に、”大きな宇宙船”が映っていて、”ロサンゼルス”と書いてあれば、この映画(『世界侵略:ロサンゼルス決戦』)に間違いないだろうと思ってしまったんですね。

実際に見始めると、まず何の説明も無く戦いが始まっています。まあ、でもそれはよくあること。で、主役らしい人々が敵の小型戦闘機に追われ、ロスの街を逃げ惑う中、突然現れたのが、日本刀らしき刀を背負った女性。X−MENのようなテカテカ・ピチピチスーツを身にまとっています。小型戦闘機が、トンネルのようになった建造物をくぐろうとしたとき、その上から飛び降りて、ルパン3世の石川五ェ門ばりに上から刀を突き刺して撃破...。
「あれっ?」(笑)。これはやっちゃったな、と思いつつ、とりあえずそのまま見続けましたが、ストーリーもめちゃくちゃ、CGも安っぽく、わけのわからないうちに終了。そしてこの作品もアサイラム。さすがです(笑)。
借りたい映画があるときは、しっかりパッケージを見て選ぶ。10年経って基本に立ち返りました。
『10周年』(No.511/2011.11.11)
毎週金曜日に休まず発行させていただいている『フライデー・ビデオマガジン』ですが、ふと思いついて「いつから発行だったっけ?」と調べてみたら、何と、第1号は2001年の11月2日でした。丸々10年経ったんですね。いや我ながらなかなかの感動です。最初にメルマガでご紹介したのは、イアン・セラー監督の『プラハ』(1991)でした(いい映画です)。この号が、まぐまぐに登録するための創刊号でした。ホームページ『D-Movie』の方は、いつから始めたかちゃんと覚えていませんが、メルマガ発行までに何作かご紹介しているので、10年と半年ぐらいの感じでしょうか。まあよく続いているもんです。

大学を卒業してから会社員を11年やり、その後フリーランスとなって、今はギャラリーも運営。その中でわかったのは、何事も10年続ければ物事の本質が見えてくるということ。どんな職業、職種でも同じですね。フリーになってからも、ギャラリー運営が中心の今も、結局会社員を11年やって身に付いたことがすべて基礎になっていますから。ギャラリーも来月で丸9年。まあこれもよく続いているものです。

では、『フライデー・ビデオマガジン』と『D-Movie』を続けてきて何が見えたか。何も見えません...(笑)。もちろん、この2つを続けてきたおかげで、いろんな出会いがありましたし、嬉しいことも経験させていただきました。ほんの少しですがお金になったこともありましたし、逆に出版のお話などはまったくありません(この内容では当たり前です)。でも、このメルマガとホームページに関しては、そういうことは実はどうでもいいんですよね。どうでもいいというか、気にならないというか。
つまりは...やっぱり映画が本当に好きなんだと思います。それを10年もかけて再確認しているようなものです。ということで、これからもこんな感じで続けてまいりたいと思います。いつもご覧いただいている方には本当に感謝です。ありがとうございます。今後もお付き合いの程、よろしくお願いします。
『見るチカラ』(No.510/2011.11.04)
一時期ほどの賑わいは無いにしろ、相変わらず”落語”はブームのようですね。落語を見に行く人たちの増加はひと段落したようですが、今増えているのは、”落語家になりたい人”と”落語を演じる人”。大卒から落語家を目指したり、転職で落語家を目指したり。結構多いようです。さらに趣味で落語を演じる人も増えている気がします。
古典落語をずっと聞いていると、つくづく思うのは、「昔の大衆は頭がよかったんだなあ」ということ。今の大衆がダメだとはいいませんが、特に江戸時代は世界的に見ても文化レベルが高かったようですし、同じ噺で、演者の個性やアレンジを見抜き、良し悪しを判断するというのは、それこそ落語がちゃんとわかっていて出来ることだと思います。

中日ドラゴンズの落合監督が今季限りで退任するそうですね。監督として輝かしい成績を残し、今期もリーグ優勝を果たしましたが、一方で落合監督のファンサービスの少なさなどから、試合の動員数は減少していたのも要因のひとつだとか。
先日の朝日新聞に、いろんな業界の熱烈な中日ファンが落合監督について語っているコーナーがありました。そこで映画プロデューサーの鈴木敏夫さんのコラムが面白かった。
鈴木さんは毎年、ドラゴンズの試合のテレビ中継をすべて録画してみているそうなんですが(凄!!!)、よく見ると、公式戦の100試合目ぐらいまでは延々とチーム作りをしているとのこと。例えば、凡退続きの若手に当然代打を出すべき場面でもそのまま打たせ、やっぱりダメだった、というケースが極めて多いらしいです。つまり選手たちに機会を与えて育てているんですね。だから毎年チーム作りを間近で見られるのが楽しくてしょうがないそうです。
そういう采配をマスメディアもきちんと伝えないといけないし、その辺りをちゃんとみないと落合ドラゴンズの面白さはわからないと。つまり、”観る側”(+伝える側)の資質が問われている、ということですね。

そのあたり、落語も同じだと思います。一応、寄席を開いている立場の人間として、非常に興味深いご意見でした。昨今新作落語をやりたがる若手の落語家さんが多いのも、古典のよさを踏まえたうえで”新しい落語”を追及しているのならいいんですが、安易にその場の”ウケ”を狙っているんだとしたら...。

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『雑誌クロスビートその2』(No.509/2011.10.28)
先月久しぶりに買った雑誌『クロスビート』の話の続き。本号を買った目的は、解散したR.E.Mの特集だったのですが、実際にメインの特集は『永遠のソングライター100』という記事。中学時代から洋楽のヒットチャートを追いかけていた身には、買わずにいられない企画です。うまいなあ。
で、もちろん中身は面白かったのですが、読み終わったあと気づいたらツタヤに直行して、その100人の中に入っていたノエル・ギャラガーの初ソロ作となるCDを買っていました。ビートルズ以来、ロックで最も成功したバンドといわれる『オアシス』のフロントマン。そして稀代のソングライター。弟リアム・ギャラガーとの確執は有名で、弟も新バンドをスタートさせているのですが、どちらも”買う”までには至らなかったんですね。やはりそういう二人の個性がぶつかって生まれるもの(=オアシス)が最もスリリングだろうと。
しかしながら、記事ではノエルのインタビューなんかも載っていて、そういうのをじっくり読んでしまうともうダメですね。速攻買ってしまいました。そしてまたこれがやっぱりいい..。
楽曲についてはYOUTUBEでもほとんど聴けるのでそちらを参考にしていただきたいのですが、全く違うことを考えました。もしクロスビートの本号に名曲を集めたようなコンピレーションCDが付いていたら売れるんじゃないかと。そういう意味では、単にマーケティングとしてだけでなく、おまけを付けて雑誌を売れればいい、みたいな意味でもなく、やはり雑誌もCDも”メディア”。全く漠然とした思いではありますが、どちらのメディアもまだまだ可能性はあるんじゃないかと感じました。フリーペーパー全盛の時代だからこそ、しっかり考えたCD付き雑誌見たいなモノもありかと。ノエルの新譜を聞きながらちょっと考えてみよう。
『雑誌クロスビート』(No.508/2011.10.21)
先月のコラムで、デビュー当時からずっと見守ってきた、インディーズ発・世界制覇を実現した最強のロックバンドR.E.Mの解散について書きました。
未だその悲しみから立ち直れないわけですが、捨てる神あれば拾う神あり、で、雑誌『クロスビート』の最新号を読んでいたら、スマッシング・パンプキンズとニューオーダーの新たな活動について言及した嬉しい記事が...。これはちょっとテンション復活します。
ちょうど先週『Total: from Joy Division to New Order』という、ジョイ・ディビジョンとニューオーダーのカップリングベスト盤CDを購入したところでした。どの曲も個別にCDを持っていますし、ジョイ・ディビジョン、ニューオーダーともに、それぞれのベスト盤的CDだけでも、すでに6〜7枚(いろいろあるんです)持っているのですが、この2つのバンドの両方の曲が入ったベスト盤(ボックスセットやライブ盤を除く)って無かったんですよね。しかも全曲リマスターで音もいいし、収録されている曲のほとんどがフルバージョン。ファンなら避けて通れない盤です。惜しいのはジャケットのデザインがイマイチなところ...。まあ許容範囲でしょうか。
他にもニュー・オーダーのバーナード・サムナー、スミスのジョニー・マーによるユニット『エレクトロニック』のベスト盤(こちらもリマスター)が出たり、知らない間にザ・スミスのコンプリートボックスが発売されていたり、探せばいろいろ楽しい出来事があるもんです。全部買っていくとえらいことになるので吟味せねば。

ちなみに『クロスビート』を久〜しぶりに買ったのは、解散したR.E.Mの特集が組まれていたからです。じっくり読んでいくと、やっぱりあらためて寂しさがこみ上げてきます...。いつでもいいからまた活動して欲しい。
『個人メディア』(No.507/2011.10.14)
私が代表を努めさせていただいている『世田谷Webテレビ』というインターネットテレビがありまして、2006年の10月からスタートでしたので、気がついたら先月末で丸5年が経っておりました。早いもんです...。『世田谷Webテレビ』は毎週木曜日の19時半から生放送。ほぼ毎週休みなく続け、ここ3年は木曜日が正月だろうが大晦日だろうが、毎週休まず続けてきました。これもひとえにボランティアで関わってくださるスタッフや出演者のみなさんのおかげです。この場をお借りして本当にありがとうございます。『世田谷Webテレビ』のコンセプトは”見てワクワク、出てドキドキ”。ギャラリーという場所をスタジオとして、毎週いろんな人が司会をし、いろんな人がゲストで登場するという形式でお送りしています。完全手作りのネットテレビ、ですね。

『世田谷Webテレビ』の前は『世田谷テレビ』という名前で別の主催者の方が運営しておりまして、それを引き継いだ形なんですが、その時代も含めるとかれこれ8年ぐらいになりますでしょうか。そのあたりまでさかのぼると、今思えば、自治体やNPOなどが行うコミュニティメディアが結構出始めた頃でした。まあ、当時立ち上がった放送局で今も継続しているところはほとんどありませんが...。その理由にはいろいろありますが、こういったブロードバンド放送を行うのに、”個人”で十分可能になったと言うことも大きいのでしょうね。後、当時はそういうメディアを仕切っているのは、大体テレビ局や広告代理店で勤めていた経験者の人たちで、いわゆる”マス・メディア”がとってきた手法が、ここまでミニマム化されたメディアでは通用しなくなったということもあるのではないかと思います。昨今のSNSなど、個人をつなぎ、個人の可能性を拡張するサービスはどんどん広がりつつありますしね。
ちなみに『世田谷Webテレビ』では、出演したい方、お手伝いいただける方など随時募集しております。ご興味のある方いらっしゃいましたら公式サイトからご連絡ください。

・世田谷Webテレビ(http://233tv.web.fc2.com/

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『ジョブズ氏逝去』(No.506/2011.10.07)
アップル社の共同設立者のひとりで、コンピュータ業界を牽引し続けてきたカリスマ、スティーブ・ジョブズ氏が昨日亡くなりました..。近年では、iMac、iPod、iPhoneなどなど、常に革新的なプロダクトを世に送り続け、最後まで時代の先端で活躍を続けた人。個人的にも非常に興味を持ってその動向をウォッチさせていただいていました。ご冥福をお祈りします。

個人的にアップル社が作ったパーソナル・コンピュータと出会ったのは1990年代の半ば、まだ会社員のころでした。金融業界にいたのでパーソナルコンピュータの導入は遅く、当時はやっと社内でWindowsパソコンが一人一台になった頃。そんな折、ふとした縁からパワーブック180Cを譲り受けたのがきっかけです。そのパワーブックを触ってみて、とにかくその斬新なユーザーインターフェイスに愕然としました。パソコンを使って何かをするという以前に、直感的に操作できることそのものが楽しく、意味なくアイコンの画像を変えたりして遊んでいました(笑)。その後アップル社自体は紆余曲折があり、ジョブズ氏も一旦アップル社から離れますが、最終的には、iMacの成功以降、常にIT業界の最前線で注目され続けました。

今後、ジョブズ氏なきアップル社がどうなるのか?それなりに興味はありますが、それよりも気になるのは、コンピュータをはじめとするIT関連の技術やプロダクトが、今後も個人の生活や世界の成り立ちをよりよくするためにちゃんと機能する方向で進むかどうかです。
ジョブズ氏や共同創業者のスティーブ・ウォズニアック、もちろんビル・ゲイツもそうですが、みんなヒッピームーブメントの文化の中で育った人々。個人的には少し下の世代ですが、それでも当時生まれた文化にはかなり影響を受けています。彼らにとってコンピュータは個人や社会との成り立ちを変えるもので、決して”効率”や”利便性”、”エンターテイメント”のみを求めたものではなかったはず。”個”のつながりによってどのような”世界”を目指すべきなのか。そたのめにITに出来ることはまだまだあると思いますし、私たちがその技術をどう使うべきなのかもしっかり考えなくてはいけないと思います。
『R.E.M解散』(No.505/2011.09.30)
個人的に昔から洋楽ファンで、最初に買ったレコードは(おそらく小学生だったのでうろ覚えですが)バグルズの『ラジオ・スターの悲劇』のシングル盤ではなかったかと思います。それからも、もちろん邦楽も聴きつつですが、ずっと洋楽を聴いてきました。で、かれこれ30年以上聴いていますが、デビュー当時から聴いていて、なおかつ今でも現役というミュージシャン、バンドもあります。しかし、そんな貴重なとあるバンドとのお別れがやってきました。

USインディーズバンドとしてデビューし、世界的なロックバンドまで上り詰めたR.E.Mが、先週突然の解散宣言を行いました...。がっくり。
9月21日の水曜日に彼らのオフィシャル・サイトに次のような声明が掲載されました。
「僕らのファン、友人達へ:R.E.M.として、そして長年の友人、共謀者として、僕らはバンドを終わらせることに決めた。僕らが成し遂げてきたこと全てに対し、大いなる感謝、終了感、驚きの念を抱きつつ僕らは立ち去る。僕らの音楽に感動したという人たち、聴いてくれたことを深く感謝する」...あまりにも突然で何かあっさりしてません?今年の3月に15枚目となるニュー・アルバム『コラプス・イントゥ・ナウ』を発売したばかりだったのに。

R.E.Mは1980年にアメリカのジョージア州アセンズにてデビュー。最初は大学生たちが始めたラヂオ”カレッジ・チャート”で火がついたバンド。インディーズ時代も長く、ロック・バンドの中でも”ファンが育てたバンド”と言われていました。その後ヒット曲やアルバムを連発、とうとうロックの殿堂入りを果たします。ボーカルのマイケル・スタイプはほとんどひきこもりで、最初は何を言っているのか全然わからない発音で歌っていたりしました。しかしながら、政治性を忘れない姿勢、それでいてメロディアスな曲、卑屈になるギリギリのクールさを持った歌詞など、まさにR.E.Mにしか出来ない活動を貫いたバンドでした。

マイケル・スタイプは最後にこうメッセージを残したそうです。「賢者はこう言った。“パーティーに出席するには、帰るときを心得ているべきだ”僕らは一緒に、何か特別なものを作り上げた。やり遂げた。そしていま、僕らはそこから立ち去る。ファンには、簡単な決断ではなかったことを理解して欲しい。でも、すべてのものは終わりを迎える。僕らはそれを正しく、かつ自分たちのやり方で行いたかった。この31年間、僕らがR.E.M.でいることを支援してくれたすべての人に感謝しなくてはならない。そうすることを許してくれたみんなに深く感謝する。素晴らしかった」。

あらゆるものに終わりが来る。それはわかっているのですが...。
『嘘は真実を語る』(No.504/2011.09.23)
個人的に好きだったアメリカのTVドラマ『ライ・トゥー・ミー 嘘は真実を語る』がシーズン3を持って打ち切られることが決まったようです。う〜ん、残念...。
このシリーズは、映画俳優として活躍してきた個性派たティム・ロスが、初めてTVドラマの主演を務めたということでも話題になりました。そして主人公のライトマン博士は人間の表情やしぐさから嘘を見抜くプロ。人間の属性や性格などから思考や行動を見抜く、いわゆる近年よくある”プロファイリング”ものとはまた違う捜査方法で、キャスティングも魅力だったので好きだったんですが..。
シーズン1では視聴者数も1000万人を超えるなど、順調な滑り出しだったようですが、すでにシーズン2から人気は下がり気味だったようです。
以前こちらでもご紹介したTVドラマ『Dr.HOUSE ドクターハウス』がシーズン3の終盤からハチャメチャな展開になってきたので、もっと面白いドラマはないかと探した結果『ライ・トゥー・ミー』にたどり着き、ずっと面白いと思って見ていたんですが。
改めて客観的に振り返ってみると、確かに『Dr.HOUSE ドクターハウス』のように、従来の医療をテーマにしたドラマでありながら、病気の原因探しにサスペンス要素を絡めたというような斬新さには欠けていたかもしれません。ティム・ロス以外は目立ったキャラはおらず、地味といわれれば地味かも。またティム・ロスにしても、彼の個性(歩き方、しゃべり方など)が前に出すぎて、”ライトマン博士”というキャラが確立できなかったのかもしれません。最近のドラマにありがちな、主人公の精神的苦悩も恋愛問題が中心で比較的軽めでした。...そう考えるといろいろ出てきますね...。
やっぱり、しょうがないのかも(笑)。


『リテラシーによる格差』(No.503/2011.09.16)
メディアやコミュニケーションと言った分野に早くから注目され、ジャーナリストとして取材・執筆活動を続けていらっしゃる菅谷明子さん。最近は中学や高校の教科書にも掲載されているという著書『メディア・リテラシー―世界の現場から』(岩波新書)を出版されたのが2000年。当時、フリーランスとして歩き始めたばかりの私には非常に刺激的な内容でした。現在はアメリカにお住まいのようですが、ちょうどその本を出版されてすぐぐらいだったと思いますが、菅谷さんが経済産業研究所(RIETI)の研究員を務めていらした時に、一度インタビュアーとしてお会いしたことがあります。当時お話いただいた内容は、現在でもなお通用する内容であることに間違いありません。あれから10年以上経ちますが、メディア・リテラシーはさらに重要になりつつあります。

重要になっている、というよりも、インターネット上のサービスが加速度的に進歩しているため、そもそも私たち人間側がついていけていない、というのが実情ではないでしょうか。インターネットに限らず、新しいメディアが登場する時はいつもそうなのかもしれませんが。
インターネットに登場するいろんなサービスは、”情報発信者としての地位”が高い方が有効に活用できると思います。わかりやすく言うと、芸能人や著名人の方は新しいサービスを使ってもすぐに効果が得られます。また、そういう方は、メディア・リテラシーが低くて、何かトラブルにあったとしても(ブログ炎上など)、ネット以外のメディア上で発言する場もあることが考えられ、リスクヘッジできる可能性が高いです。一方で、情報発信者としての地位が普通の人は、しっかりとメディア・リテラシーを身につけないと、何かあった際にリスクヘッジすることが難しくなります。メディア・リテラシーというか、ネット上のコミュニケーション能力ということですね。そのあたりを気をつけないと、ネット上でトラブルが続いたり、SNSを退会せざるを得ない事態になったり、またそういうサービスを渡り歩く羽目になったり、という結果になるかもしれません。
いずれにしても、メディアが進化を続ける以上、リテラシーも常に磨き続けなければならない、そういう時代に私たちは生きているわけで、メディア、コミュニケーションと言ったテーマからはこれからもますます重要になってくると思います。

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『通販の仕組み』(No.502/2011.09.09)
4月からうちのギャラリー世田谷233のオンラインショップを立ち上げています。当初はまったく売上げが上がらなかったものの、最近ではちょくちょくご注文をいただくようになりました。
通販でお買い求めくださるお客様は今のところほぼ100%遠方の方です。なかなか簡単にお店にいけない、そんな方がネットショップを通して、他では売っていない手作り作品やアート作品を買ってくださる、まさにそのために立ち上げたようなもので、まずは感謝。
ただ、通販という仕組みを作って、その仕組みを通して販売を行う行為を繰り返す中で、どこか不安な気持ちが残るもの事実...。

通販ショップこそなかったものの、今までも通販は行っていました。ホームページをご覧になったお客様から、郵送で購入したいというご希望をいただいた場合です。しかしながら、その場合はまずメールで何度かやり取りがあります。ショップページはありませんので、ご希望にあわせて作品の写真を撮って送ってを繰り返し、場合によってはお電話でお話しつつ、最終的な受け渡しやお金のやり取りの方法などが確定していきます。
一方で、通販ショップの場合は、「買い物カゴ」のようなシステムがあって、そういうやり取りが排除されています。もちろん、その分、簡単かつ快適にお買い物を楽しんでいただけるわけですが、そのコミュニケーションの少なさが、こちらとしてはどこか不安につながるんですよね。感覚が古いといわれればそれまでなんですが(笑)。

やはり”モノを売る”という行為によって得られる大切なものは、”利益”だけではなく、お客様に喜んでいただけたという”喜び”です。そこがネット上では表現しにくいんですよね。「いいね」みたいなボタンがあったり、購入後の感想を送れる仕組みがあったり、そういうシステムで解決できるようなものでもない気がします。EC(=電子商取引)でもっと考えないといけないのはそこじゃないかと思うんですが、それを解決しているサイトってまだ出会ったことがありません。そもそも無理なのか、などと今日もまた悩みつつ、試行錯誤は続きます...。


『顔フォト2011』(No.501/2011.09.02)
昨年第1回目を開催し、かなりご好評をいただいた『顔フォト!コンテスト』。カバンの止め具や蛇口などなど、日常の中に存在する”顔”を写真に撮って送っていただくというコンテストです。今年も第2回目が9月1日より始まっております。サーバをご提供いただいたり、賞品を協賛してくださったみなさんにホント大感謝です。

コンテストの目的は、ズバリ『日常を楽しくする』ということ。普段見過ごしてしまっている日常の中に潜む”顔”。この顔を改めて意識していただくことで、日常を違う視点から捉えなおし、何気ない生活の中に楽しみを見つけていただこうというものです。視点を変えるだけで、世界は変わりますっ。コンテストを開催するにあたって敷居の低さも重要視しました。なので、ちゃんと”顔”と認識できれば、画像のクオリティは問いません。携帯からのメール添付でもOKです。

今回も富士フイルム、ロモグラフィーをはじめ、たくさんの企業の方々に賞品をご提供いただきました。賞品はデジカメ、写真集チケット、カメラバッグなど盛りだくさん。上位3賞(金賞、銀賞、銅賞)は私を含め”顔フォト”関連の5名で協議をして決定させていただきます。審査基準は楽しさ、インパクト、レア度、かわいらしさなどなど、さまざまな基準を含んだ”独断”。MIXIの「日用品の中の顔」(メンバー500名超)コミュの管理人さんもいらっしゃいます。そして協賛賞は、賞品を提供いただいた企業の担当の方に直接選んでいただきます。

どなたでもどんな作品でも入賞する可能性がある、という意味でも楽しいコンテストとなっております。ぜひ、ご応募くださいー。

・『顔フォト!コンテスト』詳細&応募はこちら↓↓↓
http://kao-photo.petit.cc/


『ツリー・オブ・ライフ』(No.500/2011.08.26)
寡作&大作で有名な映画監督テレンス・マリックの新作『ツリー・オブ・ライフ』がかなりの賛否両論を巻き起こしているようです。
テレンス・マリック監督は『地獄の逃避行』(1973)で長編デビューして以降、今回の『ツリー・オブ・ライフ』を含めて発表した作品はたったの5本。しかしながら、そのどれもが映画界を揺るがすほど話題になり、深い感動を呼び起こす作品と称され、さまざまな賞を受賞してきました。『ツリー・オブ・ライフ』も今年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いています。
個人的にも好きな監督で、どの作品も折にふれ見直したくなります。ただ、ハーバード大学やオックスフォード大学で哲学を学んでいた人だけあって、時に哲学的に、時に詩的に、映像によって見る側の感性に訴える手法が目立ち、難解さを生んでしまうことがあるのも事実。どうやら、本作はその傾向が顕著なようです。
個人的には未見なのですが、見た人の話を聞くと、”『2001年宇宙の旅』のようだった”、とか、”何が言いたいのかわからない”という声もちらほら。どちらかというと今のところ私の周辺では、完成度の高さは認めるものの、感動作であるかどうかということについては否定的な声が多い気がします。さらに主演のショーン・ペン自身も、メディアに対して本作の編集について、少し否定的な意見を述べているようです。逆に言うと、それでもカンヌのパルム・ドールを受賞したり、米映画情報サイト『Moviefone』が選出した”2011年上半期ベスト10”の4位に選ばれるなしっかりとした支持を得ているのも確かなんですよね。(ちなみに1位は『SUPER 8』だそうです)。
少なくとも、ブラッド・ピットとショーン・ペンの2大スターの演技がぶつかり合う、感動の人間ドラマ、という単純なくくりで見ると怪我しそうです。9月に入って少し仕事が落ち着いてきたらぜひ見たいと思います。

・『ツリー・オブ・ライフ』公式サイト
http://www.movies.co.jp/tree-life/

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『ネタバレあり?』(No.499/2011.08.19)
みなさん、すでに上映された映画をビデオやDVDでご覧になる際、ストーリーや結末について、知ろうと思えば知ることが出来ますよね。いわゆる、”ネタバレ”ですね。さて、ネタバレはありでしょうか、それともなし?
個人的には、やはりストーリー(もちろんある程度はOKですが)や結末は知らずに見たいと思っています。
ただ先日、総合映画情報サイト『映画.com(エイガ・ドット・コム)』にて、面白いニュースを発見しました。

そこには、『ネタバレは映画鑑賞の楽しみを奪うものだと一般的に思われているが、むしろ楽しみを助長させるものだという、興味深い研究結果が発表された』とありました。カリフォルニア州立大学心理学部のニコラス・クリステンフェルド教授と大学院生のジョナサン・リービットさんの二人が、大学生数10人を使ってネタバレの影響に関する実験を実施したところ、何も知らされていない状態よりも、結末を知らされているほうが読書を楽しんだことが明らかになったとのこと。う〜ん本当でしょうか。”原因については不明だが、結末を知っていたほうが読書により深く没頭できるからではないか”と推察されているそうです。
そう言われてみると、古典落語なんかはストーリーも結末もすべてわかっていて、あれだけ楽しめるわけですから、何となく納得できる気もしてきます。映画でも、好きなモノは何回も見ますしね。とりあえず、初めてみる場合はやっぱり結末を知らずにドキドキしたい気がしますが、結局は内容によるというところでしょうか。
そういう意味では『シックスセンス』とか『ソウ』シリーズとかは、やっぱりダメだろうなあ...。本日ご紹介する映画もそんな感じです。

・『映画.com』(http://eiga.com/

『一日一枚』(No.498/2011.08.12)
うちのギャラリーつながりの仲間で行っていた写真プロジェクト。1987年に京セラより発売され、独特のフォルムで人気を博したフィルムのハーフカメラ『サムライ』という機種で一日一枚、一年間毎日撮る、という企画。飲んだ勢いもあって(笑)、うっかり参加してしまったんですよね。
始まったのは2010年4月1日。その後参加メンバーが増え7名になったのをきっかけに、同年7月1日から仕切りなおしてスタート。付けられたプロジェクト名が『7人のサムライ』(笑)。1年経ったらどこかで写真を展示するとかしないとか、とりあえずやりながら決めようと。で、先月末で無事1年間が経過。まあ結局ちゃんと撮りきったのは私一人だったんですが(笑)。

個人的には毎回ちゃんと考えて撮ったわけではなく、まったく意味の無いショットや、自宅の観葉植物や栽培していた野菜(ピーマン&プチトマト)がよく登場するなど、クオリティはたいしたことありません(笑)。それでも後から振り返るとそんな写真たちでもそれなりに面白いんですよね。...で、結局今も続けています。最初から数えると1年と4ヶ月目に突入です。何かやめられなくなってきました。

村上春樹さんがご自身のエッセイで、サマセット・モームの「どんな髭剃りにも哲学はある」という言葉を引用されていました。”些細なことでも毎日続けていれば、そこに哲学が生まれる”という意味のようです。毎日撮った写真からは哲学までは感じられませんが、それでもちょっとした喜びや楽しみのようなものはいくつか発見できます。一日一枚、結構大変ですがそれなりに得るものはありますよ。もし実行されるならフィルムではなく、デジタルをオススメします。やっぱり現像&プリントが高いっ。


『哀愁の音楽』(No.497/2011.08.05)
フランスの映画監督パトリス・ルコントの出世作『髪結いの亭主』(1990)は個人的に人生のベスト5に入る映画なんですが、心に残る場面、演出、映像などがたくさんあるのはもちろん、音楽がいいんですよね。マイケル・ナイマンのピアノもそうなんですが、やはりインパクトが強いのは、いろんなダンスシーンで流れるアラビアン・ミュージックっ。この映画を見た当初、当時あった『WAVE』という輸入盤ショップで、中東の音楽を買いあさりました。そういうニッチなジャンルのCDってホント高かった。

さすがに最近はじっくりとこれらの音楽を聴く機会は減りましたが、近年はアラブ系の音楽のCDが充実していてうらやましい限りです。UKのヒット曲を丸ごと収めた『Now That's What I Call Music』というCD2枚組みのヒット商品があるのですが(現在、Vol.78まで出ていますっ)、このシリーズで『Now That's What I Call Arabia』というのが出ています。こちらも10作以上リリースされていますので、結構人気があるのではないでしょうか。解説も充実していますしね。また買い出すときりが無いので、手は出していませんが(それでも数枚は持っています...笑)。

そもそも、中東の音楽のどこがいいのかと言われると、これは感覚的なものなので、ちゃんと答えることは難しいです。音楽の歴史やリズムの理論的なことには詳しくありませんし、CDはたくさん買ったものの、中東の音楽事情に詳しいわけでもありません。ただ、何に惹き付けられるかというと、あの揺れ動くようなメロディーと独特のこぶしですね。これが何とも病み付きになるんです。そういえば、ひとつだけ思い当たる節があるのですが、それは”般若心経”です。母親が信心深い人で、幼い頃仏壇の前で毎日のように般若心経を聞かされていたのですが、実は般若心経のリズムとメロディが中東の音楽と似ているのではないかと。本当に単なる想像なんですが。

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『消費の終焉』(No.496/2011.07.29)
相変わらず政治は混乱を極め、震災による原発の被害も収束する見通しが立たず、またヨーロッパやアメリカでは財政危機、金融危機が続き、日本も不本意な円高に見舞われるなど、世界は混沌としつつある気がします。それでも、こういう状況だからこそ気づけることもありますし、そういう考え方をすることが、ポジティブということなのではないかと。
たとえば、私たちの”喜び”というものの意味が変化しつつある、ということが言えるのではないかと思います。今までは、基本的に私たちの喜びの多くは”消費”でした。
しかし、震災や災害など、私たちが安全に、平和に暮らせる基盤が実は思ったより強固でない、ということがあらためて浮き彫りにされた今、消費することそのものへの危うさも同時に噴出しています。消費には、相応の、かなりのエネルギーが必要であり、そのエネルギーの創出のプロセスそのものが私たちの生活基盤を揺るがす原因になっているというジレンマもはっきりと見えてきました。消費する喜び、楽しさが無くなるとは思えませんし、まったく無くなることがよいとも思いません。しかしながら、喜びとは、消費によってもたらされるものではなく、”承認”によってもたらされるものだという考え方へのチェンジ、価値観のシフトが必要なのではないかと思います。また、実際にそうなりつつある気きがします。
モノ作りを行うクリエイターやアーティストは、自分の作品を褒めてもらう(=承認)だけでも大きな喜びを感じます。その上でその作品が購入されれば、もっと嬉しいわけですが、実はその間には思ったほどの差はないようです。もちろん、お金が動かなければ経済が停滞しますし、お金も私たちの生活の大事な基盤のひとつです。それでも、今まで以上に”消費”ではなくて”承認”が喜びであることを認識すれば、私たちの欲求とその充足のバランスはもう少し安定したものになるのではないでしょうか。


『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』(No.495/2011.07.22)
震災の影響によって公開が延期になっていた、世界を揺るがす謎のグラフィティアーティスト、バンクシー(BANKSY)が手掛けた初監督映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を見ました。

とりあえず1回目ですが、まだまだ見たいですね。パーカのフードを被って顔が見えない状態でインタビューに答えるバンクシー(偽者の可能性も否定できないわけですが...笑)がかっこよすぎっ。
登場するのは、ふとしたことからビデオカメラを手にし、その魅力に取り付かれた男ティエリー・グエッタ。街をキャンバスにするグラフィティアーティストたちを映像に収める行為に没頭。やがてバンクシーと出会い、心酔していき、自らが『ミスター・ブレインウォッシュ』という名前でストリートアートを手がけるようになります。そしてこの”バンクシーになろうとした男”が辿る運命の結末とは...という物語。
バンクシーが出演はしていますし、ナビゲーター的に進めていくので、バンクシーの映画といっても間違いではありません。彼の作品もたっぷり登場しますしね。
ただ、予想よりもはるかに深い内容でした。
単なる世界を席巻した謎のアーティスト、ストリート発のアートを定着させた始祖のドキュメンタリーではなく、ストリートアートとは何か、さらに現代においてアートとは何かという根源的な問いを発しています。作品だけではなく、良くも悪くもそのアーティストの人間性や、作品発表の手法なども含めてすべてアートとして存在するのが”現代アート”。その光と影の両方を描いている気がします。さまざまな区別やボーダーが存在する人間社会。もしそれらの境界が無くなってしまったら人々は幸せになるのでしょうか。それとも、境界があるからこそ、私たちの自我や社会は存在できるのでしょうか。

・『EXIT THROUGH THE GIFT SHOP』アップリンク・サイト
http://www.uplink.co.jp/exitthrough/
『連続する絆』(No.494/2011.07.15)
うちのギャラリーもそうですが、ここ数年、カフェやギャラリーなどで、自らイベントをたくさん開催して集客につなげようという店舗が増えてきた気がします。同じイベントでも、従来の形は貸切でレンタルするというもの。場所代が発生するわけですから、お店側は何もリスクを負わないんですね。ただ、景気の停滞、デフレ、レンタルスペースの多様化などの理由から、そういうビジネスモデルはほとんど成り立たなくなりました。なので、お店側が自らイベントを企画し、本来入ってくるはずの場所代をイベントの入場料やお酒の売り上げでカバーするなど、ある程度リスクを負う形に移行しています。そうでない最たるものが、いまだに出演者に”ノルマ”という形でリスクを負わせているライブハウス、なんですが。

ここで、この”イベントを開催し続ける”というビジネスモデルを改めて考えてみると、面白いことに気づきます。少し語弊があるかもしれませんが、要するに”質”より”量”ということだと思うんですね。一回一回のイベントでの集客や売り上げはほとんど問わない。だけれども、継続して開催すれば、トータルとしてそれなりに人が集まって売り上げが上がっていれば、経済的にも成立すると。これって、ビジネスの手法としては”ロングテール”と似たような考え方でしょうし、人間関係としてみれば、細いつながり(もちろん、時に大きなイベントになることもありますが)が連続している、ということで、結局”アナログ”ということなんじゃないかと。アナログとは決してデジタルより古い、ということではなく、あくまでも”連続性”によって表現される価値のことですから、絆、やつながり、地縁、血縁、のようなものが薄れていく世の中で、あらためて”連続性”が求められているのではないかと。
ファッションの流行が数年単位で繰り返されるように、我々が求める価値もまた繰り返されるのでしょうか。かといって前回のコラムでご紹介した”ムカデ人間”のようなつながりは遠慮したいですが(笑)。
『ハートプロジェクト』(No.493/2011.07.08)
東京・目黒区祐天寺にある写真店・フォトタカノスタジオさんが今回の震災での被災地支援の一環として取り組まれている『ハートプロジェクト』。大津波に流された思い出の写真を洗浄して持ち主にご返却。その写真を見て、明日への活力を取り戻してもらおうというプロジェクトです。
私が運営するギャラリー世田谷233には、いろんなサークルがありまして、その中で『233写真部』というサークルがあるのですが、そちらのメンバーも何名か参加されています。
基本的には東京で開催されているため、ボランティア活動としては比較的参加しやすく、薄手のゴム手袋・洗濯ハンガー・セロテープなどなど、物資の提供だけでも大歓迎とのことです。

近年、写真というメディア自体が多様化し、果たす役割も広がっていますが、やはり基本的には”記録”ということが大きな要素なのだろうと思います。地震と津波によって多くの”モノ”が被害にあいました。しかし、楽しい思い出や記憶はどんな災害が起ころうとも、決して消えることはありません。そして、”写真”はその大切な思い出や記憶をあらためて呼び起こしてくれる大きなきっかけとなります。心のケアの面でも非常に意味のあるプロジェクトであると思います。
実際に参加された方のお話では、やはり時間がたつと劣化が進み、洗浄なども困難になるとのこと。現在もボランティアを募集されています。詳細は以下のサイトをご覧ください。

・ハートプロジェクト(http://takanoinfo.exblog.jp/

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『つなげてみたい』(No.492/2011.07.01)
先日、知人から強力に勧められた映画があります。オランダとイギリスの合作映画で、原題は『The Human Centipede(First Sequence)』。邦題は直訳ですが『ムカデ人間』...。
ヨーロッパを旅行中のアメリカ人女性2人がドイツの森の中で立ち往生。それを助けたのがマッド・サイエンティストのハイター博士。ハイター博士は、かつてシャム双生児の分離手術の専門医として活躍した男。ところがこの博士がかなりおかしくて、かねてから、人間の口と肛門をつなぎ合わせた”ムカデ人間”を創りたいという夢(!)を持っていた。女性2人を手に入れた博士は、自身の邸宅にいるもう一人の男をあわせた3人を、ムカデのようにつなぎ合わせるべく、狂気の実験を開始する...という物語。

えーっと、すごい話ですね...。本国オランダやアメリカではすでに『伝説のカルトムービー』の呼び声も上がっているようです。クエンティン・タランティーノ監督も大絶賛したとか。確かに好きそう。この発想だけでも歴史に残る気がします。監督・脚本を手がけたのはトム・シックス、ハイター医師役を演じているのはディーター・ラーザー。で、本作で興味深いのは、ムカデ人間の実験台にされる男が日本人というところですね。この俳優さんはハリウッド在住の北村昭博という方で、大人気TVシリーズ『HEROES』何かにも出演されているようです。

個人的には、そこまでホラー映画が好きなわけではありませんが、さすがにこれは見たいですね。いよいよ明日7月2日(土)から、渋谷のシネクイントにて公開されます。人と人とのつながりってホント大事ですが、さすがにこれは...(笑)。

・『ムカデ人間』公式サイト
http://mukade-ningen.com


『美花選』(No.491/2011.06.24)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催中の花の画家ルドゥーテ『美花選』展を観ました。ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテは、フランス革命前後の時代に活躍した画家で『バラの画家』として、生涯にわたり植物画を描き続けました。その作品は、植物学的見地からの正確な描写でありながら、芸術作品としての美しさも兼ね備え、現在でもなお、世界中の人々に愛され親しまれています。今回の展示はルドゥーテが残した『美花選』という版画集から、美しい花々やブーケ、果物など144枚の作品が展示され、画家ルドゥーテの集大成と呼べる内容となっています。
Bunkamuraザ・ミュージアムでルドゥーテ展を開催するのは今回で3回目。個人的には3年前の開催となる前回に続いての鑑賞となりました。ルドゥーテの作品は基本的には平面の”花”作品なので、どちらかというと女性向けのような感じが否めませんが、実は空間としては”癒し”の雰囲気をかもし出しながらも、その植物の生命感あふれる瞬間を切り取った美しさと、植物学的なコレクションとしての面白さも有していて、性別や年齢に関係なく楽しめると思います。
また、本展覧会にあわせて、華道家の假屋崎省吾さんに作品をごらんいただいていろいろお話を伺うミュージアム・ギャザリングという企画をお手伝いさせていただきました。假屋崎さんの感性やプロとしての姿勢に触れることができる貴重なインタビューとなっています。こちらをご覧いただくと『美花選』展がよりいっそう楽しんでいただけると思います。ぜひご覧ください。

・ミュージアムギャザリング
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/index.html

『10万年後』(No.490/2011.06.17)
マイケル・マドセン監督の『100,000年後の安全』を渋谷アップリンクにて見ました。この映画は2009年にデンマーク、フィンランド、スウェーデン、イタリアの合作として作られたもので、フィンランドのオルキルオトに建設中の、原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場”オンカロ(=隠された場所)”と呼ばれる施設に、世界で初めてカメラが潜入したドキュメンタリーです。マイケル・マドセン監督は、安全なレベルになるまでに10万年を要するという放射性廃棄物を保管するこの施設で、果たしてそんなに長期にわたって人類が安全に管理できるのかという問題を、オンカロに関わる人々へのインタビューによって、私たち人類に問いかけます。

オルキルオトという場所に18億年前から残っている地層。そしてその地下500m、全長5kmにわたって長く深いトンネルを掘り、その奥深くに廃棄物を埋める。そして管理を続け、人を遠ざけ続ける...。これが私たちを含む人類が出した、放射性廃棄物処理のひとつの、そして最も先進的な答えなのです。
映画自体は社会的なアプローチというよりは、未来の人類に対してのメッセージとして成り立っています。なので、当該施設を作るに至った経緯や政府の考え方などはあまり示されず、本当にこの廃棄物の危険性を未来に伝えることができるかどうか?に焦点が絞られています。あまりの時間的スケールの大きさに、現実感が奪われてしまいます。
地上は天災も起こるし戦争もある。18億年前から残っている地層なら安全だろうという判断。今後未来の人類を遠ざけるために、用意された言語を越えた伝達手段としての”絵”。この映画は原発や放射能、エネルギー問題だけでなく、私たちが生きる、ということ、そのものにまっすぐ疑問を投げかけてくるかのようです。私たちは、考え、そして選択しなければなりません。

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『モンティ・パイソン』(No.489/2011.06.10)
現代のあらゆるお笑いに多大な影響を与えたと言っても過言ではない、20世紀を代表するコメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』。1969〜1974年に英国国営放送BBCで放送されたコメディの金字塔です。コメディ界のビートルズ、というのはよく聞く例え。社会風刺や毒が強烈なところが個人的にも大好きです。
先日、私が講師を努めさせていただいている専門学校・日本デザイナー学院のシブヤプロダクツ科にて、日本における『モンティ・パイソン』研究の第一人者である須田泰成さんをお招きして授業を行いました。で、授業の前にYOUTUBEにアップされているモンティ・パイソン作品を見たのですが...やっぱり面白いっ。久しぶりに見た作品の中で大好きな作品をいくつかご紹介させていただきます。

・『スパム』
(スパム・メールの語源になったコントです)
http://www.youtube.com/watch?v=bDXUWLeI7M0&feature=related

・『ビルから落ちる』
(会話の間が絶妙です。何度も見てしまいます)
http://www.youtube.com/watch?v=sDgzYFu38tg&feature=related

・『「バカな歩き方」省(シリーウォーク)』
(最も?有名な作品。しっかり風刺にもなっています)
http://www.youtube.com/watch?v=F8xur_TLFyY&feature=related

・『ベッドを買いに』
(このしつこさがモンティ・パイソンの売り。クセになります)
http://www.youtube.com/watch?v=AnhHGY46v1k&NR=1

須田さんはいろんな活動をされていて、現在は自身が経営されている世田谷区の経堂にある居酒屋『さばの湯』を中心に、宮城県石巻にある缶詰メーカー株式会社木の屋石巻水産さんの復興を支援されています。個人的にも応援させていただきたいと思います。ぜひWebをご覧ください。

・さばの湯(http://sabanoyu.oyucafe.net/
・木の屋石巻水産(http://kinoya.co.jp/eccube/


『適正規模』(No.488/2011.06.03)
今回の東日本大震災によって、直接または間接的に被害を受け、倒産に至った企業は阪神大震災時の2倍の速さで100社を超えたそうです。倒産の理由としては、直接被害をうけたことによる会社が1割ちょっとで、その他は取引先の倒産など間接的な影響によるものだそうです。また業種では旅館・ホテル業や機会・金属製造業、建設業などが上位を占めたとのこと。個人的にも、直接または間接的な知り合いの方で、事業を廃止したり解散したりしたという話をちらほら聞きます。その中には、もちろん今回の震災で何らかの被害を受けた方もいらっしゃいますが、あらためて日本を取り巻く長いデフレや不況の影響というものが浮彫りにされた部分もあるのではないかという気がします。

個人的にも商売に影響が無いわけではありませんが、基本的には”適正な規模”=小規模を守ってきた事が幸いしたようです(もちろんその分、そもそもの利益も少ないわけですが)。この”適正な規模”というのがこれから更に重要視される気がします。ただ単に規模を縮小すればいいと言うものではありませんし、また”その土地や風土、文化にあわせた”、ということも”適正”の範疇に入ってくるのではないでしょうか。もっと解釈を広げれば、あらゆるところで”適正”であるかどうかということが、判断基準になるケースが増えてくるのではないかと思います。

売上、利益、動員数などなど、”数”を基準にした論理、費用対効果、人件費の削減などなど”効率”を基準にした論理、そういった価値観がいよいよ揺らぎ始め、それぞれがそれぞれの活動や目的に沿った判断基準を定める必要がある、そんな時期に来ているような気がします。
『James Blake』(No.487/2011.05.27)
最近買ったCDに当たりがありました。昨年発表したシングル盤が絶賛され、『BBC Sound of 2011』にも選ばれたJames Blakeのニューアルバムです。
シングル盤はちょっとストイックなクラブミュージックという感じで、個人的にはそこまで響かず、先般発売されたニューアルバムにも触手は伸びなかったんですが、先日たまたま試聴してみたところ、その独特の未来的な音空間と相変わらずソウルフルなボーカルとの組み合わせにノックアウトされてしまいました。それまでのシングルとは異なる、かなりミニマルで実験的なダブステップの方向性。そこに力強くも繊細なボーカルが乗っかるわけですから、ホント面白い。ミニマルだけれど曲によってはメロディーラインもしっかりあって、非常にオリジナリティあふれる内容になっています。やっぱりUKっていつも面白い音楽を届けてくれますね。フューチャー・ソウルとでも言うんでしょうか。毎日聴いています。

音楽もアートもやはり今はアメリカよりもUKの方が元気なようで、かのローリング・ストーンズもキース・リチャーズの自伝『Life』が出版されたり(日本語版は5月14日に発売)、ミック・ジャガーが新バンドを結成したり(!!!)すごいですねっ。ミックの新バンドは『Super Heavy』という名前で、元ユーリズミックスのデイヴ・スチュワート、ジョス・ストーンらと結成したそうです。故ボブ・マーリーの息子ダミアンや、映画『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞歌曲賞を受賞したA.R.ラフマーンも参加しているとのこと。ベテランが元気だとシーンそのものも元気になるんですかねえ。今年キースもミックも現在67歳。...凄すぎて言葉もありません。

ちなみにジェームス・ブレイクの曲はyoutubeにアップされています。ぜひ。
http://www.youtube.com/user/jamesblakeproduction

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『昔ばなし』(No.486/2011.05.20)
小さい頃、毎週のように楽しみにしていたアニメ『まんが日本昔ばなし』。日本各地に伝わる昔ばなしをアニメーションによって紹介するもので、素朴で楽しい絵柄や市原悦子氏と常田富士男氏のお二人がそれぞれ何役もの声を使い分ける独特の語り口が印象的でした。スタッフにはかなり一流の方々が揃っていたようですね。『文化庁優秀映画作品賞』など、受賞歴も多数あります。中には怖い話やぞっとする話も多く、”印象的”を通り越してトラウマになっている作品もあります(笑)。

個人的に最も怖かったのが『牛鬼淵』。奥深い山の中で牛鬼に出会った二人のきこりのお話。今でも思い出すだけでぞっとします。後、カット割りや話の構成が素晴らしく、良質の短編映画を見ているような気分になる『十六人谷』。いや、とんでもなく怖い話なんですが。さらに『吉作(きっさく)落とし』は行き場の無い崖っぷちに一人たたずむ羽目になった若者の話。救いも何もありません...。トラウマ度100%ですね。その他記憶にあるのは『耳なし芳一』『イワナの怪』『雪女』などなど。

とはいえ、もちろん物語は怖いものばかりではありませんし(やはり怖い方が記憶に残るということなのでしょうか)、ところどころに日本人の気質や優しさがちりばめられていて大人になってから見ても、いろんなことに気づかされたり、心を癒されたりすることも少なくありませんでした。日本中が震災の影響で心に傷を負ってしまった今だからこそあらためて再放送してほしいものです。

ちなみに、毎日放送(MBS)の開局60周年記念事業として『まんが日本昔ばなし』の作品がDVD−BOX化されるようです。その第一弾が先月発売になりました。1巻に4話収録で5巻組のBOXが2つ。各1万4千円。それが今後2年にわたって全60巻発売されると。うーん、全部欲しいですが、コンプリートすると相当な金額になりますね。いくつかのお話はYOUTUBEで見られるようです。もっともネット上では権利関係なんかがいろいろ難しいようで、消えてしまっているものも多いですね。
『久しぶりの歩く人』(No.485/2011.05.13)
東相変わらず家電製品というモノは突然壊れますね(笑)。通勤時に(といっても片道自転車で10分ちょっとですが)聴いていたipodが壊れてしまいました。

ある朝起きて使おうとすると全く電源が入らないんですね。それでパソコンにつないだりリセットボタンを押したり悪戦苦闘していたんですが、どうにも動かない。3年近く使っていましたから、まあ壊れることもありうるなと思ったのですが、それでも何とかならないかと粘っていたら、何かの拍子に電源が入ったんです。そこであわててパソコンにつないでみると、中身もちゃんと表示されるし音楽も聴ける。ああよかった、と思ってパソコンから抜くとまた画面が真っ黒けになるんです。そうやって1日ipodと格闘していたんですが、結果的にはどうやら電源がだめになってしまったようでした。バッテリーが充電できなくなった、というのではなく、何かの拍子に勝手に電源が入ってしまうんです。...で、ずっと電源が入りっぱなしの状態が続くので、放電状態になってしまうようなんですね。だからAC電源に繋がったパソコンやスピーカー付きのドックのようなものに接続するとその間は普通に動くんです。

ということで、ipodはそのままお店のBGM用に配置転換。通常使用するために新しいプレーヤーを買いました。今度はipodではなく、ウォークマンです。久しぶり。もともとウォークマンの方が音がよいし、最近はアップル社の圧縮方法で取り込まれたCD音源もソニーのウォークマンで問題なく聴けるようになったそうなんですね。で、何となくソニーにしてしまいました。結果は...全然問題なし。というか、やはり音が良くて気持ちいいし、使いやすい。やっぱりタッチパッドよりボタンがいいですね。もっとも何が一番良かったかって、本体にストラップを付ける穴が開いていて、そのまま首にぶら下げられることです。今までは一度カバーをつけてから紐を通していたんですね。日々使うものって、こういうちょっとした利便性が大きいんですよね。しかもFMも聴けたのも得した気分。ソニーのウォークマンシリーズ、知らない間にがんばっていたんですねえ。
『チャリティ写真展』(No.484/2011.05.06)
東日本大震災のチャリティー写真展のご案内です。私が運営する東京・三軒茶屋にあるギャラリー世田谷233の壁面展示スペース『wall』にて、233写真部による『ポスカ展』を開催しています。毎年秋に開催している人気展示なのですが、今回は東日本大震災のチャリティー企画として急遽開催の運びとなりました。233写真部員350名のうち、約70名によるポストカード展示です。一人一種類、これぞという作品を展示いただいています。チャリティーボックスを設置しておりますので、寄付いただいた方は、ポストカードをお好きなだけお持ち帰りいただけるという企画です。
また同時に、三軒茶屋の超人気店『ラヂオ焼き』屋さんでも壁面をご提供いただいて233写真部による投票型写真展『つながり』を開催しています。こちらは233写真部員約40名が参加するチャリティ展示。展示はいずれも出展料と募金箱にいただいたお金から必要経費を差し引いた分を寄付させていただきます(日本赤十字社宛を予定)。
ちなみに”ラヂオ焼き”は、たこ焼きの元祖のような食べ物で、たこの代わりに牛スジが入っています。冷めても美味しい三茶の新名物です。

『ポスカ展』は30日(月)まで、『つながり』展は28日(土)までの開催となっています。詳細は以下のサイトからご覧ください。

・『233写真部』公式サイト(http://233photos.net/

・『ギャラリー・世田谷233』公式サイト(http://233.jp/

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『地理学者』(No.483/2011.04.29)
3月3日より渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムにて開催されている展覧会『フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展』。17世紀オランダ絵画とフランドル絵画の見事なコレクションを所蔵しているドイツのシュテーデル美術館のコレクションが見られる貴重な展示です。
1ヶ月半ほど前にこのコラムでもご紹介しましたが、早くも来場者十万人を突破したようです。すごいですね。仕事でちょっと関わらせていただいていることもあり、個人的に二度観ましたが、いずれも平日ながらかなりの混みようでした。テレビでの特集が組まれたことなど、宣伝効果もあると思いますが、実際本当に楽しめる内容だと思います。
フェルメールの<地理学者>はもちろん貴重なんですが、それ以外の絵画も素晴らしものが多く、当時勢いのあったオランダを中心に、展覧会全体から、世界がとめどなく広がり続けていた時代の壮大なスケール感が伝わってきます。そんな中で<地理学者>を観ると、まだ見ぬ土地に思いを馳せているような学者の遠いまなざしに感情移入し、自分もこれから冒険に出るかのようなワクワクする感じがしてしまいます。

二回目に会場に行ったのは今週でしたが、人の多さには辟易としつつも、震災の被害がまだ続く状況の中でこれだけの人が芸術に触れるために外に出ているのだと言うことに、どこか納得したのも事実です。”モノ”と”心”の問題は別。どちらかと言うと”モノ”がまず必要かもしれませんが、逆に言うと”モノ”はいずれ満たすことが出来るでしょう。実際、ボランティアに行った方の話を伺うと、避難所でもモノは揃っているところが多いようです(もちろんそうでないところもまだまだあると思いますが)。いずれ心の問題にしっかり対処しないといけない時が来るはず。その時にアートが果たせる役割は決して小さくないと思います。
『フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展』会期は5月22日(日)までです。

・『フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展』公式サイト
http://www.vermeer2011.com/

・『ミュージアム・ギャザリング』公式サイト
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/

『とどまるという意志』(No.482/2011.04.22)
2007年の12月にうちのギャラリーの5周年記念Exhibitionとして、写真家・鷲尾和彦氏とともに企画写真展「STAYER(ステイヤー)」を開催しました。意志を持ってその地にとどまる人を”STAYER”と呼び、その意志や人、場所をテーマにそれぞれが撮影した写真を展示しました。この”STAYER”という概念、個人的なテーマとしてずっと考え続けています。
つまり”旅”というのは、基本的に自らの見識や可能性を広げるものであり、人間を成長させるというような考え方が一般的かと思いますが、一方であえて旅を”しない”という選択肢、またはそれを選択する人にも、同様の価値があるのではないかということです。
以前このコラムにも書きましたが、もちろんここで言う”旅をしない”というのは、ただ単に家を出たくないとか、新たな文化に触れたくないというようなネガティブな意味ではありません。身体を移動させるということはしないけれども、常に新たな視点を持って世界を捉え続けるということです。

震災によって放射能が流れ出し、場所によっては避難区域になったり、警戒区域になったりしています。おそらくそうなれば避難するのが正しいのでしょう。遠く離れた方が安全なのでしょう。逆に従わないと余計な人やモノを投入しなければならなくなってしまうかもしれません。しかしながら以前、本橋成一さん監督の『アレクセイと泉』(2002)のレビューを掲載した時に書いたのですが、中東には村民の半分が砂で目をやられても、先祖代々の土地だからと、そこを動かない人がいるそうです。また九州・熊本県で水俣病が発生した際も、汚染された魚を、そうと知っていながら、生まれ育った地元で獲れた魚だからと食べた人がいました。
そこには放射能と同じように目には見えませんが、理論や経済合理性などではとうてい説明できない、人間と土地とのつながりが存在しています。そしてそのつながりを一時的にせよ断ち切るかどうかは、個人がそれぞれ判断できる事が大事だと思います。もちろん難しいことはわかっていますが、それを踏まえたうえで、国や行政の判断が実行されることを望みます。

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『ピンク・スバル』(No.481/2011.04.15)
先週、試写会にお招きいただきました。イスラエルとパレスチナ境界で繰り広げられる日本車をめぐる大騒動『ピンクスバル』です。
妹の結婚式を控えたある日、夢にまで見た新車の”スバル”を購入したものの、翌日に盗まれてしまった主人公ズベイルが、車を取り戻すために奔走するヒューマンドラマ。新人・小川和也監督のデビュー作です。イスラエル、パレスチナというと、日本人にとっては”紛争地域”、”長期かつ複雑な民族問題”という状況が真っ先に浮かびますが、とある事情から富士重工という自動車メーカーの”スバル”という車種が国民的人気を誇っているんだそうです。
イスラエルとパレスチナの軋轢を描きつつも、内容はズベイルのとぼけた振る舞いを中心に、楽しい人間ドラマとなっています。さすがに日本人が普通に登場するところに違和感がありますが、まあ日本人はどの国にもいますからね。国家間の対立をさらっとコメディで描いた作品はたくさんあります。
セルビアとボスニアとの紛争を背景にした『ノー・マンズ・ランド』、日中の溝を描いた『鬼が来た!』など。本作も同様に、民族の対立で見えなくなりがちな、その地域に暮らす人間の生き様がしっかり描かれています。

ちなみに、小川監督は9.11の事件の後、イタリアのワイン農園で働いていた経歴の持ち主。面白そうな方なので、私が主宰している世田谷Webテレビに出演いただくこととしました。そこでいろいろお話が伺えればと思います。放送は4月21日(木)の19時半からです。パソコンとネット環境があればどなたでもご覧いただけます。ぜひ。

・ピンク・スバル公式サイト(http://www.pinksubaru.jp/

・世田谷Webテレビ(http://233tv.web.fc2.com/
『新書を読む』(No.480/2011.04.08)
前回に引き続き最近読んだ書籍のご紹介。新書バージョンです。最初にご紹介するのはITジャーナリスト佐々木俊尚さんの『キュレーションの時代』(筑摩書房)。”「つながり」の情報革命が始まる”というサブタイトルにもあるように、テレビ、新聞など従来のマスコミが滅び行く中で、情報を求める人が集まるコミュニティ(佐々木氏はビオトープと名づけています)の重要度が高まっているという、まさに情報インフラの変革が起こっていることをずばり指摘されています。編集者の後藤繁雄さんが『僕たちは編集しながら生きている』(マーブルブックス)を出版されたのが2004年。編集という技術が、インターネットというインフラの中でキュレーションという役割も担い始めたのかもしれません。非常に示唆的な本ではありますが、ではこれから新しいマスメディアの形成や広告を行うには、どうすればいいのか、というところがちょっと不透明。でもまさに”今”情報社会の中で何が起こっているのかを知るためには、読んでおくべき一冊だと思います。

もう一冊は山竹伸二さんの『「認められたい」の正体』(講談社現代新書)。現代社会を覆う”承認”規範の喪失。その中で私たちは日々”空虚な承認ゲーム”を繰り広げていると著者は警鐘を鳴らします。こちらはそこからの解決策を思索。これが興味深い。先日、渋谷のギャラリー『スペースターボ』のオーナーさんとトークイベントを行ったのですが、その時の結論は、『自分とその周りの人間をいかに幸せにするかが大事』、というところに落ち着きました。私もギャラリーを運営させていただいている以上、家族や友人というカテゴライズではなく、自分と大切な人たちという考え方を基本に、まずその中で集団的承認を獲得することができるような場を提供する事が今の時代に必要なのかも、とあらためて感じました。

『世界を変える人間』(No.479/2011.04.01)
エネルギーを使わずに過ごすにはやはり本を読んで過ごすのが一番ですね。もちろん停電が無い事が前提ですが...。
先日読んだのは、世界最大規模のソーシャル・ネットワークサイトとなった『Facebook(フェイスブック)』の創設者マーク・ザッザッカーバーグとその周辺人物を描いた『フェイスブック 若き天才の野望』(日経BP社)。映画もよく出来ていて面白かったのですが(映画の原作は別の書籍です)、もう少し彼の心の奥深くにあるものを知ろうとするとこちらの方が面白いです。いろいろと刺激を受けるところはありますが、最も納得できたのが、とにかく顔を突き合わせてのミーティングを頻繁に行っているところ。フェイスブックにどんなサービスが必要か、このサービスは必要かどうかなど、ずっと話をしている場面がよく登場します。単純に、顔を突き合わせての対話が大事、ということではなく、同じ寮の同じ部屋にいた人間関係が中心なので、おのずとそうなった部分が大きいと思いますが、結果的にそういった話し合いや対話というコミュニケーションから新しいサービスが生まれ、またブラッシュアップされてきたのだと考えると、これだけ大勢の人に支持されている理由も納得がいきました。これはあらゆる物事を進める上での基本ともいえると思います。

もう一冊面白かったのは、『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』(英治出版)。”本書は人と人、個人と集団、人と社会の間にひそむ関係性のルールを明らかにする。犯罪を激滅させた“ボストンの奇跡”、HIV/AIDSとの草の根の闘い、いじめを防ぐ共感教育プログラム、失業・貧困対策、野生動物保護、障害者支援・・・それぞれの夢の軌跡から、コミュニティを、ビジネスを、世界を変える新たな方法が見えてくる”とのこと。この宣伝文句に偽りありませんでした。これを読めば、個人という単位が最小でありながら、それでいてすべての”始まり”であることがあらためて確認できます。実例がベースになっているのも説得力があります。2000年代は個人の”想い”を中心とした活動が世界を動かす時代に入ったといえるのかもしれませんし、そういう土壌があっての『Facebook』なのかもしれませんね。

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『正しい行い』(No.478/2011.03.25)
ここ数日、都内では、というか直接自分の目で確かめたという意味では、世田谷では、という方が正しいかと思いますが、スーパーやコンビニでのいわゆる(震災の先行き不安から来る)”買い占め”が一段落し、商品棚にある程度物が戻ってきました。連日メディアでは不安をあおるような報道が続き、物を蓄えたくなる気持ちもわからないではありませんが、やはり不必要な混乱を招いていると思います。もうこういう状況になると、メディアが不安があおる、というより、メディアの言うことは安心できる情報でも信じられないという感じですね。

大勢の人が何らかの情報によって不安をあおられ、そして誰かに導かれるかのように暴動やデモを起こす(さすがに日本ではそこまでいくことは稀ですが)、という状況を見るといつもある映画を思い出します。スパイク・リー監督が1989年に撮った『Do The Right Thing』。いまだに人生のベスト10に入っている映画ですが、この映画で描かれているのは、人種、宗教、価値観の違う人たちがそれぞれに思う”正しいこと”をやった結果、人種間の軋轢が激化し、暴動に発展するという悲劇。何が正しいかということがますます見えにくくなっている現代では、さらに深く、しっかりと”正しさ”というものを考えなければならないような気がします。この問題で厄介なのは、”正しさ”は時と場合によって必ずしもひとつではないということでしょう。

そんな中でも、何かに正しいという結論を出して行動するしかないわけですが、それと同時に常に”本当にこれが正しいことなのか”を問い続けることが必要になってきていると思います。そういう意味では価値観が多様化した大変な時代といえるかもしれませんが、それでも人と人が手をつなぎ、力をあわせることは可能なはず。その方法論を具体的に論じたり、実際にやってみたりしながらさまざまなものを蓄積していくことが求められているのではないでしょうか。


『東日本大震災』(No.474/2011.03.18)
3月11日午後に起こった東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた東日本大震災。連日いろんなメディアで信じられないような光景・状況が報告されています。本当に一人でも多くの方が無事でありますよう心からお祈り申し上げます。
余震も相変わらず続いており、被災地のみならず、今はまだ日本全体が予断を許さない状況といってもいいと思います。みなさまにおかれましても十分ご注意ください。

個人的に東京でギャラリーをやっている関係もあって(ほとんど被害はありませんでした)、被災地支援についてもいろいろと考えています。もちろん、常時ご契約いただいているクリエイターは100名程度。イベント会場などとのつながりもありますので、チャリティーイベントなども開催することは可能です。しかしながら、個人的には、まず各個人が最も安全な場所で、確実な方法にて”お金を寄付”すること、そして出来るだけ”エネルギーを使わずに暮らす”ことが優先順位として一番だと考えました。なので、ギャラリーとして、の前に、まず個人として今できること、やらなければならないことをしっかりやりたいと思います。寄付については個人的には日本赤十字社を利用しています。同団体への寄付の方法については『ほぼ日刊イトイ新聞』の”東日本大震災のこと”のページにわかりやすく書かれています。また、今回の震災についての糸井さんのお考えにも個人的に非常に共感します。私たちは実は”たいしたことのない存在”。だからこそ、力をあわせる必要がある。
とにかくこの異常事態が一日でも早く終息を迎えますように。

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『フェルメールとツイッター』(No.473/2011.03.11)
3月3日より渋谷・Bunkamura ザ・ミュージアムにて開幕した『フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展』。東京と愛知県の豊田市美術館(6月〜)での巡回展です。17世紀オランダ絵画とフランドル絵画の見事なコレクションを所蔵しているドイツのシュテーデル美術館のコレクションが見られる貴重な展示。シュテーデル美術館の展示はなかなか外に出ないそうなんですが、今回同美術館の改装などが重なったこともあって実現したそうです。

で、この展覧会にあわせて、Bunkamura ザ・ミュージアムと渋谷の専門学校日本デザイナー学院がコラボ企画を実施。会期限定でツイッターを行います。この企画に個人的に携わらせていただいています。なのでちょっと宣伝。ツイッターのユーザー名は『ミュージアム・ギャザリング』。ミュージアム・ギャザリングはアートの読み解きを目的としたプロジェクトで、毎回展覧会にゲストをお招きして作品をご覧頂き、みんなで”雑談”を行っています。今回は『ミュージアム・ギャザリング』×『日本デザイナー学院』のコラボ企画で、専門学校のお力もお借りしながらツイッターを運営。会期中、展覧会にあわせていろんなことをつぶやきます。アカウントは『@mg_vermeer』。
こういったコミュニケーションサービスはほとんどちゃんと使った事がないので、戸惑うことも多いですが、何とかがんばってつぶやいています。いや、がんばって”つぶやく”というのも変ですが(笑)。アカウントお持ちの方、ぜひフォローよろしくお願いします。

・『フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展』公式サイト
http://www.vermeer2011.com/

・『ミュージアム・ギャザリング』公式サイト
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/

『第83回アカデミー賞』(No.472/2011.03.04)
今週、第83回アカデミー賞が発表されました。日本で公開中の『英国王のスピーチ』と『ソーシャル・ネットワーク』のガチンコ対決となった作品賞は『英国王〜』に軍配が上がりました。同作は他に監督賞、主演男優賞、脚本賞も受賞、一方『ソーシャル・ネットワーク』も作品賞は逃したものの、編集賞、脚色賞、作曲賞の3部門を受賞しました。個人的にベスト作品だった『インセプション』も撮影賞、視覚効果賞、録音賞、音響効果賞の4部門を受賞。いずれも素人にはよくわからん賞ですが(笑)、とにかくよかった。
昨年のアカデミー賞は大本命の『アバター』が『ハートロッカー』に敗れる大波乱がありましたが、今年はその揺り戻しか、ほとんどサプライズ受賞がなかったようです。
それよりも、授賞式のホストを務めたアン・ハサウェイとジェームズ・フランコの史上最年少コンビの評判の悪さがかなり目立ったようですね。視聴率は前年より約9%も低下、史上4番目の低視聴率だったとか。

ちなみにアカデミー賞の時期に楽しみなのは、その前日に発表されるゴールデンラズベリー賞(=ラジー賞)の結果。第31回となるラジー賞は8部門で9ノミネートされていたM・ナイト・シャマラン監督の『エアベンダー』が最低映画賞、最低脚本賞、最低監督賞、最低助演男優賞、最も3Dの使い方が間違っている映画賞、と5部門を制覇しました。”最も3Dの使い方が間違っている映画賞”は、3Dブームを受けて今回から新設された賞で、シャラマン監督、最初の受賞者となってしまったようです...。『サイン』(2002)以降の4作すべて不発に終わっているシャラマン監督、今回もダメでしたね。『シックスセンス』(1999)を未だにDVDで見返すほどのファンとしては、何とかミステリーないしはサスペンスでもうひと花咲かせて欲しいんですが。


『フェイスブック』(No.471/2011.02.25)
デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』を見ました。今年のアカデミー賞の有力候補に挙げられている注目作。日本公開から1ヶ月ちょっとですが、平日にもかかわらず、中々の混み具合でした。

同作はユーザー数5億人という世界最大規模のソーシャル・ネットワークサイト『Facebook』の創設者マーク・ザッカーバーグとその周辺人物との人間模様を描いたドラマ。日々めまぐるしい進歩を遂げ、あっという間に主役が入れ替わるIT業界の中での内幕を描いた作品と思いきや(もちろんそういう部分もありますが)、基本的にはマークの恋愛物語が中心となっています。

当初は3時間を越える長さだったのですが、興行成績に影響するとの理由で短縮を余儀なくされたものの、”無駄な脚本がない”との監督の判断から、ほとんどの登場人物が早口でしゃべるという結果に。とは言え、音楽を担当したのがインダストリアル系のカリスマであるトレント・レズナーで、彼のデジタルでクールな質感と相まって、非常にスピード感のある作品に仕上がっていました。インターネットやデジタルメディアに少しでも興味のある人には、すんなり受け止められ、なおかつ高評価を得るだろうな、という印象。
マーク本人は製作にあたって監修などに関わっていないようなので、どれが真実でどれが虚構なのかが微妙で、それもまたある意味面白いです。ただ、これだけコミュニケーションの出来ない人間が、非常に有用なコミュニケーションツールを生み出すというのは、いろんな意味で深く、皮肉でもある気がしました。

それにしても音楽配信サービス『Napster』の設立者で、一時はIT業界に名を馳せ、作中でもマークに助言を与え尊敬される役割のショーン・パーカーが、結果的に悪人っぽく描かれていてかわいそうでした。まあ、ドラッグでフェイスブック社を追われたのは事実なので、しょうがないのかもしれませんが。

・『ソーシャル・ネットワーク』オフィシャルサイト
http://www.socialnetwork-movie.jp/

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『映画の見方』(No.470/2011.02.18)
個人的に映画が好きなので、こういうメルマガをやらせていただいていますが、では映画の最新事情に詳しいかというと全くそうではありません。一時期は結構いろんな映画情報誌やサイトなどをチェックしていた時期もありましたが、面倒くさがり屋のため、だんだんとそういう作業をしなくなりました。ただ、今でもたまにチェックしているのが映画評論家の町山智浩さんのサイトです。

町山さんの『〈映画の見方〉がわかる本』シリーズはアメリカ映画を深く読み解くことによって、アメリカそのものの病理や問題点が見えてくるという非常に興味深いシリーズでした。今でもふとした時に結構読み返します。『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』など、テレビ、雑誌、ネットなどいろんなメディアで活躍されていますが、基本的にあの”熱い”語り口が好きなんです。時にヒートアップしすぎていろんな問題もあるようですが(笑)。
特に、自身が”映画評論家”を名乗っていることに対しては並々ならぬ責任とプライドを持っていらっしゃるようで、知識に乏しい”映画ライター”や”(映画)コラムニスト”を徹底的に口撃することもしばしば。こっちがはらはらします(笑)。

映画の読み解きや解説は非常に切れ味鋭くわかりやすいです。先般世界中で大ヒットを記録したクリストファー・ノーラン監督の『インセプション』では、ベルナルド・ベルトルッチ監督の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』とアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』からの影響をずばり指摘されていました。うーん、さすが。

ちなみに町山さんのブログに、いよいよ今月末に発表される第83回アカデミー賞の予想が載っていました。作品賞はデヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』と『トゥルー・グリット』『英国王のスピーチ』の三つ巴だそうです。『ソーシャル・ネットワーク』早く見たいなあ。

・ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/

『働くということ』(No.469/2011.02.11)
いろいろと学生さんたちと付き合うことも多くなってくると、どうしても彼らの行く末、就職という事が気になってしまいます。大卒の就職難が叫ばれる昨今、私がお付き合いさせていただいている中での感想ですが、大学や専門学校を卒業しても、”自らの意思として”就職しないケースが増えているように感じます。

これには良い面と悪い面があると思います。良い面は、起業を視野に入れている人が増えていること。私たちの頃は就職が売り手市場ということもあって、ほとんどの学生が何の疑いもなく就職しました。大学の就職率も9割台が当たり前の時代でしたしね。まれに起業しようという学生がいても、とりあえず就職して実力を身につけようという人が多かったように思います。
しかし、今は違います。学生時代からインターネットなどのインフラを駆使して、いろんなネットワークを構築している人も多く、いい意味で野心に燃えている人は思った以上にいます。一方で、悪い面は、ただ単にモラトリアムの期間を延ばしているようにしか見えないパターンです。さほど研究したいテーマがあるわけでもなく大学院に進学したり、大学生だと専門学校に入りなおしたり。よくよく話を聞いてみると、実は社会に出るのが怖かったり、働くことに対してモチベーションが上がっていなかったりするだけの学生さんもちらほら。

個人的には、今でこそフリーランスとして活動していますが、もともとはサラリーマン。で、そのサラリーマン時代に学んだ事がすべての基礎になっています(社会人としての常識だけでなく、もちろんビジネスの知識と実践という意味で)。なので、進路について相談を受けた場合はとりあえずどこでもいいから(というと乱暴ですが)、就職することを勧めています。で、その時に必ず付け加えているのが、私自身、サラリーマン時代に感じた”仕事の楽しさ”。これは当時がバブルの終わりかけで、今よりはまだ景気が良かったこともあるかもしれませんが、社会にでて仕事をすることで感じられる充実感はいつの時代も同じだろうと思います。どうも、今の時代の悪い面ばかりを語ったり、昔の武勇伝ばかりを語る人やメディア多すぎる気がしてなりません。学生の資質云々は今も昔もそんなに変わらないだろうというのが持論なので、むしろ大人の姿勢や生き方がどう反映されているかが鍵なのかなと。仕事=お金=大変、という図式ばかり見せられて、働きたい、と思うわけがありません。かといって、では仕事が楽しことばかりかというと、もちろん大変なことの方が多いんですが(笑)。


『インセプション』(No.468/2011.02.04)
久しぶりに三軒茶屋で映画二本立てを見ました。まずはシルヴェスター・スタローンが監督したアクション映画『エクペンダブルズ』。アクション映画には欠かせない存在となったジェイソン・ステイサムを筆頭に、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ロークら大物俳優を集結させ、さらにチョイ役ながらアーノルド・シュワルツェネッガーやブルース・ウィルスを出演させるなど、その贅沢なキャスティングが話題となりました。冒頭からド派手なアクションの連発で勢いのある作品でした。ちょっと殺人の描写がどぎついのが目に付きましたが(米国ではR15+指定)、相変わらず男気のある内容でアクション映画としては楽しめました。

もう一本は『インセプション』。...やっと見れました。こちらはもう文句無く面白かったです。ひさびさに大満足でした。やっぱりクリストファー・ノーランが好きなんだなあ。出演陣では渡辺謙さんがめちゃくちゃかっこよかった。この人はハリウッドに進出してら本当にオーラが出てきましたね。
主役はディカプリオだったのですが、個人的にあまり好きではないので(どうもあの子供がそのまま大人になったような見た目が...すみません)、主役がエドワード・ノートンならなあ、と思いつつ、さすがに渡辺謙さんの役は彼にドンピシャのキャスティングでした。実際、そうやって監督自らオファーしたそうですが。ホント『メメント』(2000)もそうでしたが、この人の脳の中こそ入ってみたい。
映画料金の値下げが話題になっていますが、『インセプション』は2,000円でも十分見る価値があると思います。ちなみに、観た日が2月1日だったので割引(毎月1日は割引されます)が適用され、二本で900円でしたが(嬉)。

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『中古レコード』(No.467/2011.01.28)
講師を務めさせていただいている渋谷の専門学校で、たまにレコードを使った授業を行っています。現在20歳前後の学生たちは、レコードを知らない世代なんですね。まあ”知らない”というのは正確ではなくて、存在は知っているけれども、実際に触ったり、音を聴いたりしたことはないということなんです。
なので、LP盤を持ち込んで、ためつすがめつ触れてもらって、音も聴いてもらう。特に60年のロックの分野では、本当にさまざまな実験が行われましたから、レコードジャケットも先鋭的なデザイナーが手がけているケースが多く、非常に学ぶべきことの多いメディアなんです。また、学生たちは、やはりデザインを学んでいますので、友人がやっているバンドやちょっとお仕事っぽい感じで、CDジャケットの製作を行う機会があるようなんですが、その際に音楽が記録されたメディアの歴史を知っているのと知らないのではやはり差が出るだろうと。そういう想いもあります。

いろんなデザイナーが手がけたジャケットを見て感想を言い、その製作過程を知ることでデザインのプロセスを学ぶ。さらにジャケットから音を想像してもらうのもなかなか楽しい作業です。もちろん、”つかみ”に使うのは、世界を代表するプログレッシヴ・ロックバンドのキング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』。赤ら顔のおじさんが目をむき出しにして驚いているジャケットですね(笑)。1969年にリリースされ、初登場で全英アルバム・チャート5位にランク。衝撃的な内容はもちろん、ずっと1位だったビートルズの『ABBEY ROAD』を蹴落としてトップにランクされたことで伝説となりました。どうしてもプログレのレコードが多くなるのはそれだけ彼らの作ったロックが時代の先を歩んでいたからでしょうか。

基本的にレコードは自前のものを使うのですが、学生たちに見せたいレコードが手元にない場合は中古レコードショップで購入します。...で、結構困るのが80年代の音源。個人的には一番所蔵する枚数の多い時代なんですが、新たに購入しようとするとちょっとマイナーなものは商品があまり無いんです。レコードとデザインというと、80年代にイギリスのマンチェスターから起こったニューウェイブのブームを避けて通れないんですが、例えばジョイ・ディヴィジョンやニュー・オーダーあたりのレコード盤ってあまり市場に出てないんですよね。CDメディアへの過渡期ということもあってプレスされた数も少なかったのかもしれません。もちろん、大メジャーなミュージシャンやバンドのものはそれなりに手に入りやすいんですが。たまに見つけても数万円という値段がついていることもしばしば。学生時代にお金が無くてレコードを何度か大量に売ったことがあるんですが、まさか今ごろになって後悔する日が来るとは...(笑)。

・クリムゾン・キングの宮殿
http://www.amazon.co.jp/Court-Crimson-King/dp/B00065MDRW

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『バーレスク』(No.466/2011.01.21)
先日結果が発表された第68回ゴールデン・グローブ賞。その中で3部門にノミネートされ、”主題歌賞”を受賞した作品が現在日本で公開されている『バーレスク』。人気急上昇中の歌手クリスティーナ・アギレラや大ベテランシェールが主演。豪華絢爛な映像と演出が話題になっています。
”バーレスク”とは、ハッキリした定義はないそうですが、基本的にはセクシーなダンサーたちがゴージャスなショーを繰り広げる大人のためのエンタテインメント。日本でも銀座に同様のショーを見せる劇場が多数あったようですが、現在はほとんど残っていません。その”バーレスク”を復活させ、広めようとしているのが、『BAPS JAPON(バップスジャポン)』を主催するToyさん。”BAPS”とは”Burlesque And Pin-up S”の略。Toyさんとはうちのギャラリーの展示を見に来てくださったのがきっかけでお知り合いになりました。現在サイト運営やさまざまなイベントを企画しながら、”バーレスク”を広めるべく活動されています。映画『バーレスク』の上映ももちろん追い風になっているようですが、実はちょっと内容的には違うみたいなんですね。
女性がセクシーなダンスを踊る、と言えばさまざまな種類のダンスがあります。一時期流行った”ランバダ”何かもそうですし、最近では”ポールダンス”もかなり広まりました。”バーレスク”も見た目には非常にセクシーなんですが、ただ露出をしたり、エロティックに踊るだけではなくて、どちらかというと女性らしさや美しさを表現しているそうです。また、映画の中では、ダンサーたちが歌いますが、基本的に歌わないようです。まあ映画というメディアになる以上、ストーリー性や興行収入など、いろんなことを考えなければいけませんから、そういう部分が出てくるのは致し方ないのかもしれませんね。それでも”バーレスク”を知るきっかけとしてはいいと思いますが。映画を見る前でも後でも構いませんので、『BAPS JAPON』サイトをぜひのぞいてみてください。
ちなみに『バーレスク』の公式サイトでは、クリスティーナ・アギレラの吹き替えができるコンテンツがあるようです(Webカメラが必要)。面白い。

・『バーレスク』(http://www.burlesque.jp/
・『BAPS JAPON』(http://www.bapsjapon.com/
『モネとジヴェルニーの画家たち』(No.465/2011.01.14)
東急Bunkamuraザ・ミュージアムにて開催中の展覧会『モネとジヴェルニーの画家たち』を観ました。
印象派の巨匠クロード・モネが晩年に移り住んだパリのジヴェルニー。そしてモネの下に集まってきたアメリカ人の画家たち。彼らがジヴェルニーの美しい風景に触発されて描いた作品75点で構成された展示です。モネの作品はもちろん、日本で殆ど紹介されていないアメリカ人画家による印象派絵画が多数展示されていてるところも見所です。
ザ・ミュージアムで前回開催された『フランダースの光』もそうでしたが、印象派絵画の光の美しさに目を奪われます。決して明るくない室内での展示ですが、時に”まぶしい”とさえ思います。また、いずれもその土地に魅せられて画家たちが集まり、コミュニティを形成していたことも興味深いです。個性溢れる画家たちが集まってお互いに切磋琢磨しながら作品を仕上げるという状況は、どれほどクリエイティブでスリリングだったことでしょう。

個人的にはモネの睡蓮のシリーズが好きなので、会場の最後に設営されたモネのコーナーに釘付けになりました。そして最も印象に残ったのは、最後に展示されていた作品。《睡蓮、柳の反影》と題された作品は、サイズも大きいですし、何より他の睡蓮の絵と比べて、断然暗いんです。ただ暗いだけじゃなくて、ほとんど抽象画のような勢いのある筆致にどこまでも深く沈むような色彩。実際にはどんな景色がモネの目の前に広がっていたのかなど問題ではないと思わせるほどの深遠な世界観に支配されています。まさにモネは”末期の目”を手に入れたのかもしれません。輪廻のように繰り返す睡蓮のはかなくも美しい様子が好きだったのですが、このモネの命が刻まれたかのような大作にも心を掴まれました。会期は2月17日(木)まで。ぜひ。
ちなみに個人的にちょっとお手伝いしているゲストをお招きしてのトーク企画、ミュージアム・ギャザリングもぜひご覧ください。こちらも非常に楽しいお話が聞けました。

・ミュージアムギャザリング
http://www.bunkamura.co.jp/gathering/index.html

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『プリンタ大誤算』(No.463/2011.01.07)
あけましておめでとうございます(ちょっと遅いですが)。新年最初のメルマガです。今年も「フライデー・ビデオマガジン」をよろしくお願いします。

いきなり年またぎの話題で恐縮ですが、昨年末プリンタを新調しました。3年ぶりの買い替えです。こういう家電系は基本的に型落ちの安いのを買うんですが、今回は時間が無かったので、近所の量販店で最もポピュラーなものを買いました。価格は2万円ちょっとで想定よりちょっと高め。まあでも、最新型ですし、相応の機能アップもあるだろうと。
...なんですが、思ったよりプリンタに関しては、ここ数年で進歩は少なかったようです。印刷技術に関しても新機能に関してもほとんど頭打ちということなんでしょうか。新しくなったところは液晶パネルが付いていて、操作が簡単になった、という程度。もちろんそれでも必要な方には嬉しい機能アップだと思いますが。

先般、知り合いの方が千葉でDPEショップを始められるというお話を聞きました。DPEショップとは基本的に撮影したフィルムの現像やプリントを行うお店のことで、D・P・E=Development・ Printing・Enlargementの略です。写真のデジタル化やプリンタの低価格&高画質化などが進み、近年DPEショップは減少傾向にあり、街の写真店さんなんかはどんどん閉店している状況です。そんな中で新たにDPEショップ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どんな業界のどんなサービスにおいても”やり方”次第で十分生き残れるのがビジネスの世界。DPEしかり。フィルムは衰退の一途を辿っていますが、写真を撮るということ、それをプリントするということにはまだまだ発展する余地があると思います。その方もいろいろとアイデアをお持ちで、うちのギャラリーとしてもぜひ応援させていただきたいと思いました。
そういう意味で、実はプリンタを使った”お家プリント”にももっと新しい可能性があると思うんですが、どうも今回最新機種を買った限りでは、そのあたりの可能性をメーカーさんが上手く引き出せていない感じですね。先月、大手量販店のビックカメラがDPEショップ「BIC PHOTO(ビックフォト)」の展開を始めたというニュースが話題になりました。写真のプリントという分野、これから熱い戦いが繰り広げられそうです。いずれにしても、また壊れるまでは、このプリンタで我慢っ。

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